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【雑感】パーパスというキーワードから最近のコーポレートサイトリニューアルに思ったこと

2021年の夏にキリングループさんのコーポレートサイトがリニューアルしました。気づいたのは最近ですが、「おっ」と思うところがありましたので勝手ながら雑感としてまとめておきます。
なお、きちんとした考察はWeb担当者の記事がありますのでこちらをどうぞ。

対象のサイトは、商品情報のキリンさんではなく企業・IR情報のキリンホールディングスさんのサイトです。

まず、サイトを見てすぐにグローバルナビゲーションのキーワードに気づきました。

「パーパス」

最近よく聞くようにはなってきた「パーパス」。

パーパス
「パーパス(Purpose)」は、一般に「目的、意図」と訳される言葉です。近年では、経営戦略やブランディングのキーワードとして用いられることが多く、その場合は企業や組織、個人が何のために存在するのか、すなわち「存在意義」のことを意味します。
引用元:日本の人事部

企業情報サイトにおけるこういったコンテンツが多様になってきました。こういったコンテンツとは、企業が社会課題に対する指針を表すコンテンツ。そこにまた新しいキーワードがナビゲーションの目立つ位置に登場してきたのです。

一応、長いことサイトのリニューアルをやってきましたので、特にそのラベルやコンテンツの変遷、それとサイトの構成をゆるーくまとめてみます。

パーパスに至るまでのラベルの変遷

前述した「こういったコンテンツ」が、グローバルナビゲーションに登場するときのラベルをパーパスに至るまでの変遷としてまとめてみたいと思います。

環境への取り組み / 社会貢献活動

1990年代後半から2000年代前半でしょうか。
当初はこういったわかりやすいラベルでした。今もあるコンテンツですが、環境、社会貢献と限定的でだんだんと内包されていき、ナビゲーションなど目立つ位置には現れなくなりました。

CSR
(Corporate Social Responsibility / 企業の社会的責任)

2003年の「CSR元年」を経て、2000年代後半から2010年代前半ごろに実施されたリニューアルで一気にCSRに変わりました。
CSRへの取り組みCSR活動といったラベルがよく使われていたと思います。また、CSRとセットでサイト上に登場した言葉がステークホルダー。CSRでは環境、社会貢献だけではなく、企業にかかわるすべてのステークホルダーへコンテンツが用意されました。

サステナビリティ

今、最も多いのはこのサステナビリティ。
2010年代後半ごろからこのラベルをよく見かけるようになり、今もほとんどのコーポレートサイトで採用されています。CMなどでもよく聞くので、すっかり世の中に定着した印象です。
CSRは企業とそのステークホルダーを対象としていますが、サステナビリティは、地域、国、はては地球全体までを対象として、持続可能性を高めていくことを目的とします。
したがって、CSRもサステナビリティの中の1つのコンテンツとなっていきました。

ESG
(Environment:環境 / Social:社会 / Governance:ガバナンス)

2006年に国連が「責任投資原則(PRI)」を発表し、ESG投資という言葉が認知されます。日本では、2014年に金融庁が「責任ある機関投資家の諸原則」を発表したことで拡大しました。
これらをきかっけにサイト上にもESG経営ESG投資といったラベルでたまに登場します。サステナビリティより企業目線となりますので、サステナビリティ>ESGとして組み込まれることが多いです。が、よりESG評価機関や機関投資家への訴求を重視しているのか、下の清水建設さんのように上位階層のコンテンツとしてESGというラベルがナビゲーションに現れることもあります。

SDGs
(Sustainable Development Goals / 持続可能な開発目標)

2021年の流行語大賞にノミネートされるほど定着したSDGs。
SDGsは2015年に国連で採択されたことにより誕生しました。ここで国連は2030年までに達成すべき17の目標を定めています。
企業は自社の事業や活動が、各目標をどのように達成していくか、もしくは各目標へどのように貢献していくか、その達成状況をまとめたコンテンツを掲載しました。
これもサステナビリティの中のコンテンツとなることが多いので、下の大和証券さんのようなパターンは少しめずらしいかもしれません。ただ、これだけ一般的に認知されているSDGsなので、もっと表に出る機会が増えるかもしれません。

CSV
(Creating Shared Value / 共有価値の創造)

CSVは2011年に米国の経営学者が提唱したことで注目を集めました。
CSVは自社の事業を通して「社会課題の解決」と「企業の利益」の両立を目指します。これまでのCSRやサステナビリティは事業以外で社会貢献するのに対し、CSVは事業自体で社会貢献します。これまでの考え方よりも現実的でバランスのとれた戦略になりました。
サイト上ではCSV経営共通価値の創造社会との共創価値など様々なラベルで使われています。CSVを事業に積極的に取り入れている企業では、サステナビリティなどの広義な言葉よりも、一歩踏み込んだCSV経営などを使っている印象です。

パーパス

やっと、パーパスまでたどり着きました。
パーパスは冒頭紹介した通り、「存在意義」と訳されます。CSRやサステナビリティ、CSVと変遷してきた流れは、何のために企業が存在するのか、なぜその事業を行っているのか、自然とその存在意義を再定義する流れとなりました。その概念は、企業や組織だけでなく、社員一人一人にも理解を求められ、ここを理解していない企業は今後生き残れないとも言われています。

このパーパスですが、キリンホールディングスさんのように1つのコンテンツのラベルとしてサイト上に大きく掲出しているのは初めてかもしれません。
企業理念に近いので、企業情報の1つのコンテンツとして、「Purpose」「パーパス」「Purpose & Values」「わたしたちの存在意義」などのラベルで構成されていたり、企業理念の中にしれっと「存在意義」として鎮座しているパターンもあります。「Mission Vision Value」 とセットで紹介されるパターンも。
また、IR情報の経営計画の中に紹介されたり、「〇〇 Way」(〇〇には企業名が入ります。例えば、Fujitsu Wayなど)といった行動指針を掲げてその中の1つとして構成されていたりします。別で特設コンテンツを作るパターンなんかもありました。
企業によって、パーパスの考え方や表現方法は様々ですね。オレンジページさんの場合は、フッターに「ブランドパーパス」としていました。

パーパスを中心としたサイト構成

というわけで、キリンホールディングスさんのサイトは、パーパスを中心としたサイト構成になっています。

グローバルナビゲーションの並びも、パーパスから始まっています。

すぐ下には、パーパスを一言で表したスローガンを中心に、関連するビジュアルがファーストビューいっぱいに切り替わります。

パーパスは、スクロールしてもついてくるぐらいに主張してきます。

一般的な企業情報サイトの構成は、どの企業もあまり変わり映えのしないものでした。だいたいが、

企業情報
株主投資家情報
サステナビリティ
採用情報
ニュース

に収まります。並びもだいたいこれです。
ですが、キリンホールディングスさんは、

パーパス
社会との価値共創
事業領域
組織能力

企業情報
IR情報
採用情報
ニュースルーム

CSVで例に挙げたアフラックさんだと、

コアバリューに基づくCSV経営
価値創造ストーリー

ESG
会社情報
採用情報

どちらも独自性のあるラベリングを中心に据えることで、企業の姿勢を明確に打ち出したメッセージ性の強い構成になっています。
今後、パーパスなどますます注目されていくと思いますので、このようなサイト構成がトレンドになっていくのかもしれません。

まとめ

Webサイトで使用される経営用語や環境用語が多種多様になってきたので、一度整理してみました。ただのWEB制作会社の人間の乏しい知識なので、いろいろとご容赦いただきたい部分もありますが、Webサイトとの変遷とあわせて何とかまとめてみました。

Webサイトの変遷と言っていますが、報告書の変遷ですね。企業情報サイトはほぼ報告書(や会社案内)から作成されます。その報告書は、環境報告書 → CSR報告書 → サステナビリティレポート → 統合報告書と変わっていきました。その度にWebサイトも変わっていった歴史があります。

「環境への取り組み」なんてラベリングしていたのが懐かしいですが、そこから企業の考え方も社会に合わせどんどん変わっていき、様々なキーワードがいつの間にか増えていきました。

上で挙げた以外にも

マテリアリティ、GRI対照表、SASB対照表、サプライチェーン、バリューチェーン、ダイバーシティ&インクルージョン、コンプライアンス、健康経営、コアコンピタンス、エコシステム、ミッション、ビジョン、バリュー、クレド…

(適当に並べてみましたが、全部説明しろと言われても無理ですね)

そんな中、これからのコーポレートサイトは

CSR → サステナビリティ → CSV → パーパス

の流れになっていくのか。
広く浅くこれらを学習しつつ、見ていきたいと思います。

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