漫才のボケとデザイナーの役割
前回は漫才の「ツッコミ」の役割と、デザインを関連づけて、検索サイトの「結果がなかったとき」のふるまいを分解してみました。ユーザの行動に対するフィードバックを「ツッコミ」としたとき、シーンによりますがどのようなやりとりをすればいいのかを、これまでと少し違った観点で検討するきっかけになりました。
今回は漫才のもうひとつの役割「ボケ」とアイディエーション。また、デザイナーの役割について書きます。
ボケの役割
漫才の「ツッコミ」の役割の整理と同様に「ボケ」の役割も論文や書籍などを読んで調べてみました。やはり漫才の「ボケ」も「ツッコミ」と同様に、聞き手が物事を認識したり理解する仕組みや、知っていることをうまく利用しているのがわかります。わかりやすい表現だな、と感じたのは田中 泰延氏の著書『会って、話すこと。』にあった「ボケ」についての説明です。
この説明からも、漫才の「ボケ」は聞き手が知っているもの、漫才のやりとりのなかで得たものをうまく活用して、たとえば「(ご存知のものが) こうだったらおもしろくないですか?」のような別視点からの仮説を提示しているのだなとわかります。
また、本書では日常会話のおもしろさを以下のように説明しています。
書籍を読んで、私はアイディエーションについて学んだときにも認識した話に似ているな、と思い出しました。たとえば「ブレインストーミング」でのルールにもそれが表われていると思います。
だれかの意見にのっかる
人の意見を否定しないで共感する
質よりも量を意識する
Out of the box thinking (枠にとらわれない)
ブレインストーミングに限らず、アイデアを大きくふくらませたり、新しい見方を得たいとき「ボケ」の役割の大切さを感じます。
前回書いた「ツッコミ」の役割で引用した論文にもあった「エラーに対するやり直しの指令」は、自由な発想を持ち寄り組み合わせて (実現可能なのかはおいておいて) 独創的な、おもしろいアイデアを生み出す発散の場では重要ではないのかもしれません。しかし収束させたいときにはとても重要な役割であるとわかります。
イノベーションの背景にある壮大なボケ
今、私の手元にある携帯電話や、先日利用したオンラインでのフード注文・配達、もちろんそこにいたるまでの新しい価値と認識されてきたものの裏側には、きっと壮大な「ボケ」と「ボケ」の重なりがあったんじゃないかなと思います。収束させて新しい視点を得る場合もあると思いますが、ボケに対して「そんなの無理でしょ」と「ツッコミ」が入っていたら面白いアイデアはつぶれてしまっていたかもしれません。
仮説を重ね、こうなったらおもしろいんじゃないか (コンセプト) と「もっともらしい姿」をつくる。そこからさまざまな専門的知識を通してレビューしながら現実的な視点を加えて着地させる。現在地との差分を解決するロードマップを描く。ことばで書くとかんたんに見えますが、私たちもチームとしてこれを実現していくために失敗を繰り返しながら学んでいます。
デザイナーができること
私はデザイナーの重要な役割に「ファシリテーション」があると考えています。全員をリソースとして、大きな成果を生み出す。リーダーシップ(自分が実現できる以上の成果をイメージできて、その実現のために協力を求めること) を持って、プロジェクトやチームに深く関与するイメージです。デザインはデザイナーだけの仕事ではありませんが、組織やチームにデザインの背骨を通す (デザインを伝える) 役割をデザイナーは担えると思っています。
チームでもよくプロジェクトやチーム、組織へのデザイナーの関与について話します。これは関与を深めることを重要視しているからです。
たとえば、プロトタイピングする目的は「議論を発生させること」だと考えています。フェーズによりますが、プロトタイプは「問い」であり議論の結果、判断するための情報を得たいです。プロトタイプとして「もっともらしい姿」を示した結果、発生させたい議論が、発散なのか収束なのか。それはだれとどんな場をつくれば実現できるのかをいつも考えて実行したり、実行した結果をチームで共有し合っています。
今回も前回に続き、隔週で実施しているチームの LT (ライトニングトーク) 会で話した「漫才とデザイン、デザイナーの役割」の一部を記事にしてみました。チームミーティングの後の雑談でも、メンバーがそれぞれの担当したプロジェクトで学んだ経験を持ち寄って、チームとしての強さを高めています。
そんな私たち Da Vinci Studio ではデザイナー、エンジニアともに積極採用中です。どうぞよろしくお願いします!
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