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歯科医師1年目だったころの自分に伝えたいこと

歯科医師をしています。

この記事は、歯科大学生や卒後1、2年だったころの自分に向けて、こんなこと知ってたらいいよと思うことを書こうと思う。

内容としては、歯科医師業界というのは、開業してからが大変になるよって言われるけど、そうなりがちな構造はこういうことだよってことです。

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まだ若手と呼ばれる部類だが、そこそこ業界のことがわかってきた今日このごろ。

よく一般人の間で歯科業界について話題になるのが、歯科医師はワープアだとか稼ぎが少ないとか、業界が先細りだとかだろう。

そして、歯科学生-卒後数年の超若手のころの話題としては、開業いつするの?的なことだ。


歯科医師という人々は、通常6年間の大学生活をし、国家試験を受験(合格率70%弱)、1年間の臨床研修をしたら開業していいよという資格を得る。

つまり大学卒業後1年のトレーニングで院長&経営者になれるのだ。

最も若くて25歳で開業し院長になれる。普通ならないけど笑


歯科医師というのは、医師と違って基本的に開業する場合がほとんどだ。

無論、近頃は歯科医院も大型化し、1診療所に3〜4人からもっと歯科医師を抱えた大規模なものや、分院展開している法人の雇われ院長という働き方もあるため、一概に開業が全てではなくなったが、それでも開業が一般的なように思われる。

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開業までのよくあるキャリアパスとしては、卒後1年大学で研修→どこか大きめの診療所で勤務医を数年×2箇所→35歳くらいまでに開業、というパターンだ。

なぜ35歳くらいまでが目安になるかというと、借金の返済期間がある。

大体6000万-1億くらい借金し、それを60歳になる25年くらいのローンで返済する。

60歳にもなれば、体力も落ちるに何より老眼で目が見えなくなり、精度の高い治療ができなくなる。

なので、そのへんが大体引退を考える歳だ。

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さて、冒頭の、歯科医師は開業してからが大変になる、とよく言われるが、そうなりやすい構造について説明してみる。

それは、経営者的な感覚を養えないまま急に経営者になってしまうからだ。

どういうことか、流れを書いてみよう。


卒後すぐの若い頃で、やる気に溢れて勤務医をしている間はとにかく技術を身につけたいという欲が強い。

歯科医師になったからには一人前の治療がしたい、と感じるのは当然だし、患者さんから直接反応が返ってくるのも治療技術が多い。

また歯科医師仲間でも治療の話は話題が尽きない。

勉強会で新たに歯科医師と知り合ったときも、治療技術や知識についてが共通の話題になる。

そして、難しい治療法やテクニックを使った症例を見せると歯科医師仲間からは褒められる。

そしてまた技術に傾倒していく。とにかく技術!より高い技術を!!と。


これが非常によくある。やる気ある意識高い系若手歯科医師の姿だ。

経営的な観点や売り上げのこと、集客のこと、顧客(患者)満足度のことはあまり考えず、ただただ治療する。

そんな考え方だと、どこかで患者さんは「この若造は私自身に興味があるのではなく、治療すべき歯だけに興味があるのだな」と感じ離れていくのだが、それでも院長や理事長が患者を集めてくるので治療はできてしまう。


次第に技術はつき、普通に治療している上では自分だけでとりあえず完結できるようになる。

そうすると勘違いして、「技術も1人でやれるぐらいは身についたし、治療で困ることなくなったし、そろそろ独立かな」なんて思ってしまう。

特に意識高くガツガツ治療してきた若手歯科医師ほど、早く開業したいと思っていたりする。

そして上司とトラブルがあったとき、もうここで学ぶことはないなんて思い、退職。

開業斡旋業者の提案するプランのまま開業する。


最初は慣れない歯科医院運営でドタバタするが、半年もするとなんとか日々をやっていくことには慣れてくる。

ここで、急に気づく。

あれ、学んできた難しい技術が使えるような患者がこない。そもそも患者が少ない。

スタッフが足を引っ張るから、俺の真の技術が発揮できない。

スタッフ同士でトラブルが頻発して俺の真の技術が、、

スタッフが辞めてしまい俺の真の、、、

売り上げが上がらず借金返してたら最新機材が買えず俺の真の、、

みたいになる。


そこで初めて、いままで治療できてたのは自分の力ではなく、院長や理事長の作り上げた環境のおかげだったと気付く。

そしてその環境を作り上げるためには経営者的な視点が必要だ。

しかし、勤務医時代にはそんなことに気付いていないし、大事さもわかっていないし、そんな視点で考える訓練もしていない。

そこで苦しみながら経営というものを体験していく。

がんばりきれればいい歯科医院になるだろうし、がんばりきれないと不幸せな歯科医院になる。

不幸せな歯科医院でも借金を返すために20年以上は働き続けなくてはならない。


傍からみたら、歯科医師になって開業して凄そうに見えるため、外ヅラ的には格好はつくかもしれないが、内実不幸さを感じてる歯科医師っていっぱいいそう。

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今日の記事のポイントは、

技術だけ身についた段階で開業しちゃうと苦しむ

ということだろう。

歯科治療をやることと、会社を運営することは別のスキルだ。

部活でプレイヤーとして頑張ることと、キャプテンとしてチームをまとめることは少しレイヤーが違うのと同じ。

歯科治療+経営力が必要になる。

そして、その経営力というものが、なかなかに難しい。


世の中には経営だけで飯食ってる人がいる。

経営だけで大きな1つの仕事になるぐらいの特殊スキルということ。


いまは歯科治療技術という特殊スキルだけで飯食ってる自分がいるわけだ。

歯科治療技術を身につけるのとせいぜい同じくらいの努力をしないと、経営というものが身につかないと理解したほうがいいのでは。

経営コンサルタントという、経営のおてつだいで飯食ってる人がたくさんいることでもわかるかもしれない。


歯科治療と経営、2人分の役割を1人でやるわけだから、2人でやるよりももっと大変だし気合もいるし努力も必要。

そんなことを歯科医師1年目もしくは学生時代に丁寧に説明してくれる人がいたらよかったな。

おしまい。

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