ブランコのチェーンをもどした話
私は偏見の塊だ。
見た目で嫌いな人間はごまんといる。
クロックスを履いてる人間を信用したことがない。
パーマやツーブロックの営業の話なんて
聞く気にもなれない。
助詞のチョイスに違和感を持っただけで話さなくなる。
妻の唯一、私の嫌いなところが「これ」らしい。
だから、やりもしないで馬鹿にしてるイベントは
数えきれない。
世の中やってみないとわからない事は、多々ある。
AKB総選挙への投票や、ガールズバーで飲むなど
馬鹿にしてた事も実際にやると面白い。
今日、娘と散歩に行った。
娘は昨日、知り合いからもらった
牛乳瓶柄のマスクがいたくお気に入りだ。
これをつけながら、ブランコをしたいらしい。
住宅街のど真ん中にあるいつも行く公園は
小さくて誰もいない。
すべり台とブランコ、ベンチがあるだけの公園。
「ぶらんこする~」と言う娘について行った。
ブランコのチェーンが絡んでいた。
それを見た瞬間。
私は血が沸騰するくらい腹が立ち
刹那「絶対にはずす!」と思った。
1つ1つ捻れたチェーンを真っ直ぐにしていく。
楽勝だと思ったが、一番下の椅子の金具部分が上手く
ほどけない。下からまた同じ事を繰り返していく
一番上の金具部分が上手くほどけない。
20分位格闘した。出来ない。ほどけない。
娘は完全に飽きてちょうちょとお話ししてた。
手がチェーンの油まみれになった。
そんなの関係ない。俺は怒っている。
私は偏見の塊だ。
どうせ、これをしたのは暇人だ。
ここで俺が諦めたら、暇人に負けてしまうのだ。
絶対に元どおりにする。くだらない人間には負けない。
怒りすぎて椅子の部分をクルッとぶん投げた。
すると、今まで無能上司のネチネチした説教みたいに
まとわりついていたチェーンが一気にはずれたのだ。
脳内麻薬がドバッと出た。快楽に溺れた。
となりのブランコは3分もかからずにチェーンが
ほどけた。
いい仕事のあとのブランコは格別だ。
世の中やってみたいとわからない事は、多々ある。
ブランコのチェーンをほどくことも
ブランコに乗ることも
実際にやってみると面白い。