立憲民主党代表選・吉田候補は出られない方が良かった説
さて、いよいよ立憲民主党の代表選の告示が行われ、
枝野・野田・泉・吉田の四氏が推薦人20人を集めて
立候補することとなりました。
私は正直、エライことになったと思っていますので、
そのことについて今日は書きます。
あくまでも「私的意見」です。
※
今回の立憲民主党の代表選で、ドエライことがわかったと、
私は思っています。
立憲民主党という政党が抱える本質的な問題点です。
それは昭和な体質を持つ(といわれている)、
与党自民党に対して、野党であり、既得権に反対し、
多様性やリベラルな主張を持つ政党である立憲民主党の方が、
もっと古い(古臭い)体質を持っていることが
露呈したということです。
そもそも、今回の問題点は、代表選のシステムと、
立候補者の顔ぶれにあります。
立憲民主党の代表選に出馬するには20人の推薦者が必要です。
これは自民党の総裁選と同じ人数です。
しかし、問題なのは政党の国会議員の数です。
衆参合わせて約400人の国会議員がいる自民党の20人と、
140人に満たない立憲民主党では、
絶対的な人数は同じでも意味が全く異なります。
割合で置き換えるとわかりやすいのですが、
自民党の20人は立憲では6人に相当し、
立憲の20人は自民党の60人に相当するのです。
これはどういうことかといえば、
自民党より、立憲の方が、リーダーに立候補するための
参入障壁がずっと高いということなのです。
参入障壁の高さとは、既得権を守ることにつながります。
日本では諸外国に比べて選挙に出るための供託金がべらぼうに高く、
しかし、それを国会議員たちが一切議論しないメカニズムと同じですね。
それを「多様性」を主張する政党が是としている。
そのことが明らかになっているわけです。
奇しくも自民党の方は若手や女性も立候補し
総裁選が多いに活況を呈する中、
立憲は本当に「にぶい」ところを露呈している。
しかも、自民党の総裁選は日程が立憲よりも遅いため、
立憲の新代表が決まった後に戦略的に投票ができる。
これではその後に控える総選挙で政権交代など
すでにありえないことだと思われます。
まったく困ったもんです・・・
※
ご存知の通り、枝野さんは、
立憲民主党を立ち上げた人であり、
そのときは、あの小池百合子の「排除します」発言を機に、
「枝野立て!」と世論の声を集めました。
そのときの枝野さんは確かに良かった。
けれども、残念ながら、時間は流れたのです。
そしてその後の立憲の伸び悩みからすれば、
ご本人がどんなに素晴らしい人かは別にして
枝野さんの賞味期限は切れています。
ここでいう賞味期限というのは、
一般市民である有権者が感覚的に感じているもので、
「この人に任せてみたら、おもしろそう、何か変わりそう」
という感覚です。
庶民とすれば「景気が良くなりそう」とか、
「生活がラクになりそう」とかでしょうか。
そういう意味です。
そういう点において、
「いちどやったことがある人」で、
「それほど成功していない人」に
セカンドチャンスが来るということは、
滅多にないと考えていいでしょう。
安倍晋三が二度目のチャンスを得たのは
日本中の庶民が望んだというより、
永田町を中心とした右派的な思想があったことが大きいと思います。
つまり、大変申し訳ないですが、
枝野さんが代表になっても、
立憲民主党に光明が指すことはあまり考えられないということです。
ご本人がその辺りをわきまえられないことは、
本当にまずいことでしょう。
人間としては、難しいことですが・・・
※
そのうえ大変まずいのは、リベラル野党である立憲の中に、
ベテラン待望論が存在しているということです。
その声に押されて、
なんと立候補を決めたのが野田元総理です。
野田元総理について深く言及はしません。
私はご本人の演説も何度も聞いていますし、
人間として嫌いなわけではないです。
しかし、世の中から見れば
彼は旧民主党政権を終わらせた主犯であり、
その後につづく消費税増税を断行した戦犯です。
しかも、「消費増税はしない」と言っていたのに・・・
そういう人を「首相経験者だから」という理由で
持ち上げてしまう立憲の人々・・・。
その声に乗ってしまう野田元総理・・・。
このセンスのなさ、世間の意識との乖離はヤバいです。
世間というのは、立憲支持者や、
世の中に対する課題意識が非常に高いリベラル層のことではなく、
この日本の大部分を占める無党派層のことです。
そこを動かさなければ、政権など絶対にありえませんからね。
世間と立憲民主党は、考え方が圧倒的に乖離している。
もちろん世間が正しいわけではないので
己が信じる道を進もうとすることはまちがいではありませんが、
その方法は重要です。
だって、独断で進めることはできないのが民主国家ですからね。
いかにして世間を巻き込むか、が重要なのです。
※
私が問題視しているのは、
これらの問題は今、突然起こったことではなく、
ずっと前から存在している課題が、
今回、露見したということなのです。
党が本質的に抱える問題点だからこそ、
絶対的に解決しなければいけないことでもあります。
政権運営能力があると国民から思われるには、
その解決は必須でしょう。
そのために絶対的に必要だったことは、
党を構成する一人ひとりが、この問題を自分ごと化し、
真正面から向き合うことでした。
それは、この「裏金問題」を起因に
政権交代の可能性が高まったタイミングで、
「枝野・野田・泉」という、
国民がまったく興味のわかない代表選を展開するということを
やってしまうということでしか実現しなかったと思います。
大変申し訳ないですが、
泉さんは「何もできなかった現職」という位置付けでしょう。
ですから、立憲は、自民党が「変わろう」としている
意思だけは少なくとも見せている総裁選を展開するときに、
「枝野・野田・泉」で代表選をやって、
自分たちの立ち位置、本当の姿を把握すべきだったのです。
でないと、都知事選で蓮舫候補が負けたことの
分析ができていないということになります。
蓮舫さんは、たくさん人数のいる参議院議員のひとりとしては、
無敵の候補者でした。
しかし都知事は東京という国の大統領です。
日本は国政は議院内閣制ですが、地方自治は大統領制で、
たった一人のトップを直接有権者が投票して決めます。
そういう場面では、蓮舫さんは弱いのです。
それはなぜか?を人のせいにせず、
共産党のせいにもせず、自分の責任としてちゃんと分析したか?
そういうことができていないからこそ、
「枝野・野田・泉」という代表選になっていくわけです。
※
しかし、逆に言えば自浄作用を働かせられる唯一のチャンスが、
吉田さんの立候補によって遠のいてしまったのです。
今回、なぜ前日になって吉田さんの推薦人20人が集まったのか。
詳細はわかりませんが推測はできます。
同じく立候補を画策していた江田さんが諦め、
その推薦人がごっそり吉田さん側に動いたのは明らかですが、
なぜ、そうなったか、です。
恐らく、「枝野・野田・泉」では
立憲の評判が本当にまずくなると思ったのでしょう。
そういうときに必要なのは、
多様性やジェンダーの印象をよくしつつ、
決して当選することはない候補者です。
その点で、一期生で女性である吉田はるみさんは
最も適した候補者でしょう。
しかし、今回の代表戦は、「総理大臣の候補」を選ぶ選挙です。
果たして吉田はるみさんは、
この国の未来についてのビジョンを掲げていた政治家でしょうか。
もちろん、本人はそれを持っているかもしれませんが、
私はそれを聞いたことがありません。
吉田さんが悪いということではなく、
現時点で、一国のトップとして可能性が本当にあるか、
ということです。
その点において、本当に申し訳ないですが
(私自身は吉田さんは好きですし、応援もしていますが)、
吉田さんは絶対に勝たないからこそ、
選挙の見栄えを良くするために立候補できるようになったと
私は感じています。
そのことによって党員や有権者が満足してしまうと、
立憲民主党が本質的に抱えている問題への対処は
数年単位で遅れることになるでしょう。
私が危惧しているのはそこなのです。
※
・・・ということで、今回の代表選、
もっとも立憲にとって良いことは、
吉田さんが立候補したかったけれど、推薦人が集まらず、
今回は立候補できなかった。
その上で「枝野・野田・泉」という
国民にとって魅力と関心の湧かない選挙が実施され、
政権交代ならず・・・という展開だったと感じています。
吉田さんの立候補が叶ってしまったばかりに、
選挙のパッと見の見栄えが良くなったことで
絶対に根治が必要な深い傷に
表層的な絆創膏がまた貼られてしまいました・・・。
私はずっと政権交代を望んでいますが、
政権交代は目的ではありません。
ですから、政権が変わればなんでもいいというものではない。
どんな政権に変わるのかがもっとも大きなポイントです。
そのとき、少なくとも今の自民党が構築してきた日本ではない、
新しい日本がどんな姿なのかということを
真剣に伝える人でなければいけません。
自民党の小林鷹之氏のように
「もういちど世界を引っ張れる日本」のような考えもちがうでしょう。
今までと同じや、今までを引きずった国家論は
これからの日本には実現不能です。
価値観の根幹からのリフレームが必要であり、
その新しい価値観によって世界から尊敬される国、
ということなら、あり得ると思いますが・・・。
ということで、今回の立憲民主党代表戦、
吉田はるみさんが立候補できたことで喜んでいては、
本当の問題解決はできないのだということをお伝えして、
この長いブログ記事を終えたいと思います。