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小川淳也の話は、なぜわからないのか。

今の立憲民主党の幹事長である小川淳也さんという方がいます。

世の中では「総理になれない男」や
「消費税25%男」として、ちょっと有名です。

なぜ「総理になれない男」と呼ばれているかといえば、
彼の政治家人生が取り上げられたドキュメンタリー映画が
コロナ禍の2020年に公開されたのですが、そのタイトルが、
「なぜ君は総理大臣になれないのか」だったからです。

では、なぜ「消費税25%男」と呼ばれているのかと言えば、
彼が2011年にテレビ番組に出演したときに、
消費税は何%必要なのかと問われて、
2050年までに25%と答えたことがその理由です。

今から14年も前の話ですが、
それ以来、小川淳也といえば「消費税25%」となりました。

私は、そんな小川淳也さんという政治家、というか人間を、
心から信頼しているわけなのですが、
世の中からは「消費税25%男」という言説と、
「彼の言っていることは訳がわからない」という批判が絶えません。

それがどうしてなのか、ということをずっと考えているのですが、
いや、その理由はもう私の中ではわかっているのですが、
その問題を解決する方法はなかなか難しいということも、
またわかっているので、ムズムズした気持ちなんですね。

今日はその辺りのメカニズムを一般論的に少し解説してみます。

先に、なぜ私が小川淳也という人物を信頼しているか、
という理由を説明します。

それは、彼が、私が抱えている問題意識と、
ほぼ同じ問題意識を持った人物だからです。
だから、私は小川さんという人物の存在を知ったとき、
(それは国会中継のYouTube動画でした)
初めて「自分と同じことを思う人間に出会った」という事実に、
身体中に電気が走ったような感覚を覚えたのです。

私は、彼を最初に動画で見たその時から、
彼が言っていることの内容が、スルスルと理解できました。
何を言っているのか、その背後になにがあるのか。

繰り返しますが、
なぜなら、私自身がそれを待ち望んでいたからです。

私は、自分の考えが人に通じにくいことを理解していました。
今もそう思っています。
その理由を書くと、「偉そうだ」と嫌われる可能性がありますが、
今日はそのテーマなので、敢えて書きます。

私はいつでも考え事をしていて(本当にいつでもです)、
私がある時点で辿り着いている答えのようなものは、
あることについて、ものすごくものすごく深く考えていった先に、
ようやく辿り着いているものなので、
その思考の起承転結を共有せずに、起と結だけでは
まったく話が通じないからなのですね。

私は人生の中で、最初にいったことはまったく理解されず、
ずっと後になってから「あぁ、こういうことだったのね」と言われる
という経験を何度もしてきました。

これは自慢ではなく、悲しい話です。
もちろん、今ではそのメカニズムがわかっているので、
思っていることをそのまま話しても理解されないだろう、
という前提で人とコミュニケーションしています。

考えた結果を提示するのではなく、
考えるプロセスそのものを共有する方法に変えています。

しかし、私でさえ、ごく稀に、話がビビっと通じてしまう人がいます。
私もその人の言うことがわかるし、私のいうことも、その人はわかる。

実は、これはあなたにも、誰にもに起こっている
コミュニケーション・メカニズムのルールなのです。

人間の言語コミュニケーションは、
ラジオなどの電波に例えることができます。
電波は送信側と受信側が周波数を合わせることで
初めてメッセージを伝えることができます。

周波数を合わせない間は、ザザーっと雑音だけが聞こえていますが、
周波数が合ったとたんに音声が綺麗に聞こえますね。

あれです。

言葉を発する側と受け止める側には、
それぞれの異なる常識や言葉の定義、思い込みなどがあります。
しかも、それは自分だけのものではなく、
相手も同じように考えるものだ、という決めつけがある。

しかし、それらを本当に共有できる人は
この世にほんの少ししかいないのです。
家族でさえ難しいのが現実でしょう。

もちろん、そういうものがバラバラの状態でも
底の浅い話はすることができます。
こういうのを、ロー・コンテキストと言います。

しかし、その人の人格がかかったような重要な話は、
それぞれの人のバックグラウンドすべてを背負っているので
その周波数が合った人にしか伝わらないのです。

これが人間の言語コミュニケーションのルールなのです。

ちなみに、英語という言語は、
それらの不確定要素を排除しようとする性質があるので、
ロー・コンテキスト言語と呼ばれます。

で、小川淳也さんに話を戻しましょう。
なぜ小川淳也さんの話が通じないのか。わからないのか。

それは、受け止める側が思い込んでいる、
あるいは当てはめている政治家像や、
政治家が話すべきことのモノサシに、
小川さんの言説が当てはまっていないからです。

小川さんが主張し続けていることは、
首尾一貫して変わっていません。
それは、国の在り方を「人口減少・超少子高齢化・地球の環境限界」
という現実に合わせてモデルチェンジすることです。

地球までが入ってますから、
トータルには日本の話だけでは収まっていません。

しかもそれらを実現するための大前提は、
政治家と国民とが信頼で結ばれている政治文化が
構築されていることなのです。

そういう視点からの話を政治家自身がしなければいけないのですが、
日本の政治家は永田町界隈の話題しかせず(←これが自民党)、
あるいは逆に、
暮らしにあまりに密着した半径5メートルの話しかせず(←その他野党)、
それらから離れた、国のグランドデザインという視座がない。

これは政治家だけでなく、もちろん有権者もです。
その国の政治文化というのは、実は政治家と有権者が
(政治家が悪い!という他責も含めて)
共同して生み出しているものですから、
その既存の枠組みを離れた話をしても、
何を言っているのか、全然わからないわけですね。

例えば、先ほど出た消費税25%ですが、
今は小川さんはそれは必要ないという考えです。
が、そもそも世間がなぜ「消費税」を嫌うかといえば、
それは、今の消費税が悪いからですね。

今の消費税とは、自民党政権が作った消費税です。
自民党が作った今の消費税は、取られるばかりで
何の恩恵も感じられません。

政府は口では社会保障に使われていると言っているけれど、
実際は法人税引き下げの穴埋めに使われているわけで、
政府や与党は国民を騙そうとしている。

そういう政治への不信感があるわけですね。
それを前提にしているからこそ、消費税そのものが悪なのであって、
それを25%にするなんて、とんでもない!と感じるわけです。

私も、自民党と同じままの消費税なら、
これ以上の増税にも、消費税そのものにも反対です。
けれども、もし、消費税の恩恵が実感できる形で
自分に返ってきていたら、そんな気持ちはなくなるかも知れません。

例えば、これは脈絡のないたとえ話ですが、
都内の地下鉄に全部ただで乗れたらどうですか?
それが消費税の恩恵ですと言われたら?
実際、オーストラリアのメルボルンでは、
街の中を走るトラムがただで乗れます。
私は素直に「いい国だなぁ」と感じました。

そんなふうに、公のサービスが自分に感じられて、
それが消費税によって賄われているのだとわかれば、
ちょっと気持ちはちがうのではないでしょうか。

それが教育の無償化とか、医療の無償化などになったり、
あるいは将来、老後のために2000万円貯める必要がないと言われたら?

小川さんは、自分のビジョンの通りの社会ができあがれば、
老後のために貯金をしておく必要はないと言っています。
つまり彼が語っている消費税の姿は、
我々が今、向き合わされている自民党の消費税とはちがうのです。

そこに「意識の乖離」が生まれているからこそ、
小川淳也が言っていることはわけのわからないこと、に見えているのです。

そういう点において、いま、いちばん成功しているのは、
国民民主党の玉木さんです。

彼の言う言葉、たとえば「手取りを増やす」とか、
「対決より解決」は、生活者の直接の悩みに働きかけると同時に、
それらが解決しない理由を
「不毛な永田町の論理」ということに充てることで、
テレビから流れてくる「与党を批判する野党」そのものを踏み台にして、
つまり既存の国会全体を踏み台にして、
そういうことに辟易としている主権者(主に若者)の心を
グッと捉えているわけです。

「どうでもいいから、暮らしをラクにしてくれ!」という思いですね。

しかし、小川さんの観点から見れば、
恐らく国民民主の言うことはずべてが手法論的に間違ってはおらず
自分のビジョンにも包含されていて
「どんどんやればいい」ということなのだけれど、
今の日本の問題はそういう「枝葉」にあるのではなく、
国家構造そのものにあるので、
そこを解決しない限り、手取りを少し増やしたところで、
状況はそれほど改善されないだろう、ということを言っているわけです。

私もそう思います。

我々自身が置かれた現実を、
「それはなぜだろう?」というふうに、どんどん深く掘り下げれば、
恐らくほとんどの人が同じように思うことでしょう。

しかし、時代はショート動画です。
コスパにタイパです。

グダグダ言わずに、さっさと結論を言え、の時代です。

そのように要求し、そのような話が聞きたい人には、
小川さんの説明は込み入っているし、理解できないのです。
そもそも周波数が合っていませんからね。

しかし、いくらそのように要求されても、
小川さんが一切その要望に応じず、
比較的長めの説明をするのはなぜだと思いますか?

それは、今の社会の課題は、
現実として一言で説明できるようなものではないからです。
そしてそれを一言化してくれ、という要望そのものが、
社会課題を深刻化させる要因でもあるからです。
さらにそれを一言で説明した瞬間に、
それはごまかしの領域に入ってしまうからです。
事実を歪めて伝えることになってしまうからです。

小川さんが考え続け、たどり着いた思考の起承転結の
起と結だけを聞いても意味はわからない。
だから、長くなっても起承転結を理解してもらわなければならない。
国民にも本気で向き合ってもらわないと解決できない問題だからこそ、
それを理解するだけの胆力を国民にも要求したいわけですね。

しかし、私は最近、感じていることがあるんですね。
幹事長になった小川さんは、
以前より圧倒的にメディアに露出が増えています。

そうすると、世の中が彼の言葉に接する機会が増えますね。
すると、人はだんだん、慣れてくるということがあるのです。
まず初めに、彼と接する記者や司会者が慣れてくるのです。

今は幹事長の定例記者会見があるのですが、
そこでの記者とのやりとりを聞いていると、そのことを実感できます。

それと同時に、もうひとつの作用があります。
こっちがさらに重要なのですが、
時間が経過していくにつれて、社会や環境が変化していって、
小川さんがずっと訴えていたことが、
現実のものとして誰にも実感できるようになってきているのです。

例えば、いま、気候変動が起きていないとか、
地球温暖化は起きていないと主張する人は
数年前に比較して圧倒的に少なくなりました。

それは、実際に夏が暑いからですね。
夏の暑さは年によって変わりますから、これからも冷夏はあるでしょう。
しかし、全体としては暑くなっているということは
否定しにくい「現実」です。

もちろん今でも、
「地球温暖化は起きているだろうが、人間が原因かはわからない」
という人はいます。
そういう人は、人間が原因である可能性を示すデータなどに関して
あまり調べませんから、情報が更新されていきません。

ずっとまえに科学的に否定された内容のことを
今でも根拠にしたりしているのですが、
まぁ、人ってそんなもんですよね。
たいして関心がないのに、自分の意見とちがうと否定するものです。

ちなみに、小川淳也さんは、今は「消費税25%」とは言っていません。
海外には25%の国もあるが、軽減税率などを加味した
実質の税率はどの国も10%~12%程度であり、
日本の消費税率はすでに世界と同等レベルだというのが、
今の小川さんの意見なのです。

人は他者に首尾一貫性を求めますが、
小川さんは「社会と地球の持続可能性」という点で
どんなときも首尾一貫しています。
が、方法論は状況に応じて変化できないといけないのです。
そして小川さんはちゃんと変化しているのです。

周りが情報を更新していないだけなんですね。

ともあれ、地球温暖化に関する課題意識は、
格段に定着したといえるでしょう。
その対策を実行しているか?といえば、まだまだそうはいきませんが、
意識のレベルでは大きな変化が起きていると思います。

それと同じように、
未曾有の人口減少が加速する日本において、
社会の仕組みが破綻するということは、
これから次々と現実化していきます。

学校や地方自治体が消滅していきます。

誰もがそのことに気づき、変化を肌で感じていくでしょう。

するとそのときになって、小川さんの言っていたことは
ようやく耳の穴に入る音の波としてではなく、
その人の脳の中に、自分と関係のある情報として届くようになるのです。

こうして周波数が合ってくるのです。

最近、国民民主の玉木さんの言葉が伝わるようになってきました。

それは、もちろん玉木さんの努力・功績もあるのですが、
同じような主張は昔からあったはずなんですね。
それが今、届くようになった理由のひとつは、
明らかに受け止める側が変化したこともあるのです。

「啐啄の木」といって、
物事は送る側と受ける側が同時に変化したときに
大きなうねりを巻き起こします。

いま、玉木さんはもはやショート動画に頼る必要がなくなっています。
彼のYouTubeチャンネルでは、
彼がダラダラと話す長尺のライブ動画などを
たくさんの人が視聴するようになっています。

これは明らかに、見る側の変化であり、
受信側が周波数を変え、アンテナの角度を変えて、
玉木さんをキャッチすることができるようになったのです。

キャッチできるようになってしまえば、
そこにはすでに主体的な関心がありますから、
尺が短い必要はなくなるのです。
人間は好感を抱いている人の話はどんなに長くても聞くことができます。

すると、今まで以上に込み入った話もできるようになっていく。
理解できるようになっていく。
知的な好循環が生まれていくわけです。

そこでは玉木さんと視聴者の間を、「信頼感」がつないでいます。

この玉木好循環は、実は最終的には
小川さんへと返っていくことになると私は踏んでいます。

つまり、玉木さんをきっかけに社会が現実として抱えている課題が
眼中に入ってくるようになれば、
玉木さん以外の情報への感度も上がってくるからです。
そして、より深い論点に意識が向くようになる。

そのような内面の変化と、
社会の現実という外的な変化は常に同時に進行するので、
これから先、小川さんが何を言っているのかは
どんどん伝わるようになると私は感じています。

実際、そのようなことを様々な場面で見るようにもなっています。

あとは時間とのせめぎあいでしょう。
刻一刻と、社会状況は「もう取り返しがつかない」という
臨界点にむけて進んでいきます。

小川さんも(私もですが)年をとっていきます。
加齢はその人間の物理的・精神的な活力の最大値を下げる効果があります。

人々の脳の中で、たったひとつのきっかけで
シナプスがつながれば、あとは一気に理解の輪は出来上がります。
小川さんの主張の通り、
社会の課題はすべてが輪のようにつながっているからです。

ひとつが見えれば、数珠繋ぎに、つぎつぎと隣が見えてきて、
やがて全体像が浮かび上がります。
そのときに初めて「ここが問題なのではないか?」という
具体的な病巣が明らかになるわけです。

しかもそれは、人間の中にある可能性が高い。
やがてその事実にも気づくことでしょう。

あとは、間に合うかどうかだけです。

まとめてみますと・・・
人間は、自分の意識外のことを言われても、
何を言っているのかがさっぱりわからないものなのです。

脳がそのような構造になっているから
ある程度、仕方がない。

しかし、何かをきっかけに脳のシナプスが一箇所つながると、
一気に全体の輪郭が見えてくる。
一気に「何を言っているのか」がわかるようになる。

シナプスをつなぐきっかけは、内外で同時に起こる必要がありますが、
その要件は整いつつあります。

繰り返しますが、あとは間に合うかどうかです。

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