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【全文無料】へそ曲がりデッキビルダーのゼロベース構築概論

はじめに


R君「あ〜このデッキ、ジバコネクロズマだよね?よくあるよね〜こういう構築。」


約5年前、ポケカを始めて間もない頃、私のデッキを見て友人R君が口にした何気ないその一言が頭から離れず、以来私は今に至るまで断固として他人のレシピコピーをベースとした構築を避け続け、ゼロベースのオリジナル構築にこだわり続けてきました。

…要するにへそ曲がりなデッキビルダーです。
はじめまして。熊本でポケカをプレイしているたけるんと申します。


時は流れて最近、ポケカ友人N君との飲みの席にて…

N君「そもそもゼロベース構築のデッキビルダーって実は周りにそんなに多くないのでは?」

それが事実か否かはさておき、昨今、デッキレシピ解説について文書化・言及されているものはよく見かけますが、デッキ構築自体について体系的に文書化されているものはあまり見たことがないとは感じていました。 

また、昨今SNS上で大会入賞レシピの出回るスピードは急加速しており、「自分でいちからデッキ組むのは時間がかかるし難しそう。ほかの人の大会入賞レシピをカスタマイズしたほうが勝ちやすく効率が良い。」という考え方のプレイヤーも少なからず見かけるようになったと感じています。
しかし、私はそれに異を唱えたい。ゼロベース構築というものは、ポイントをおさえれば誰しもが鍛錬によって身につけ習慣化することができ、誰しもがゼロベース構築によって自分に合った自分だけの勝てるデッキを作り出すことができる、ということを。

もしこの考えが正しければ、私が4年以上続けているゼロベース構築について、体系的に文書にしたらなにか役に立つかな?そんな疑問をもつようになり、文書化に至りました。
また、CS2023シーズンの最終的な目標として「デッキ構築のマニュアル化・テンプレート化」を個人的に設定していたので、いずれにせよ言語化は必要と考えていました。これが文書化の経緯になります。

この文書がゼロベース構築に少しでも興味があるどこかの誰かの一助になればいいなと思います。


文書の目的

この文書を通して、ゼロベースのデッキ構築について興味を深め、実践する人が増えてくれること

こんな人向け

  • ゼロベースのデッキ構築について少しでも興味がある人

  • オリジナルデッキで新弾バトルやジムバトルに入賞したいと考えている人

※こんな人には向かない

  • とにかく手っ取り早く勝ちたい、目先の1敗でも苦しいと感じる人

  • デッキ構築をすでにマスターしている人

本書の構成について

以下の3章で構成しています。

  • A.導入編では、ゼロベース構築の定義、メリットについて解説しています。

  • B.構築編では私が実践しているゼロベース構築の方法(概要)を説明しています。

  • C.マインド編では、ゼロベース構築を実施するうえで私が重要と考えている心構え・所作を解説しています。

本書で1番伝えたい内容は最後の"C.構築マインド編"に記載しています。
ただし、マインド編のみでは抽象的すぎて説得力がないので、マインド編の根拠の位置づけで導入編・構築編を解説していきます。
なお、構築編については実践レベルの具体性を求めると分量が莫大になるので、なるべくポイントに絞ってあくまで”概要”として解説します。ご了承ください。

※注釈

※はじめてnote書きます。国語のセンター試験は当時現役で全国平均以下です。どうか叩かずに生暖かい目でお願いします。

※特定の人物や考え方を批判・煽り・称賛するものではありません。あくまで私が勝手に頭の中で考えていることです。

※断じて読み手に考え方をおしつけるものではありません。他者のポケカの楽しみ方を否定するものでもありません。楽しみ方はひとそれぞれ。あくまで参考程度に。

※私は知り合い以外のnoteを読む習慣があまりありません。もし内容に既出なものが含まれていて不快な思いをさせてしまったらごめんなさい。


A.導入編

A-1.ゼロベース構築とは?

他人が作成したレシピを一切参考にすることなく、他人のバイアスを完全遮断し、カードプールを参照しつつ自身の考えに基づきカードを1枚ずつ選定して60枚のデッキを構築することを本書では「ゼロベース構築」と呼称しています。

なんか鼻につくようなカッコつけた言い方をしていますが、情報があまり流通していない・ポケカ友達もろくにいない時代ではむしろ「ゼロベース構築」しかなかったので、それを経験している方はそちらをイメージしてもらったほうが早いです。

A-2.ゼロベース構築のメリットは?

近年、SNS上で店舗大会や大型大会の入賞レシピをまとめてくださる方もいらっしゃるので、掲載されている情報を参照すればレシピの入手はたやすいです。入賞実績があるので、仮にそのままコピーして使ったとしてもある程度大会で結果を残すこともできるかもしれません。

それではなぜ敢えてゼロベース構築にこだわるのか?
ゼロベース構築のメリットは大きく以下の3つになります。

  1. 仮説立案・検証を繰り返すことで、自分だけの構築知見が蓄積できる

  2. 自身のプレイング・引き運にあった自分だけの構築を作ることができる

  3. 環境・カードプールを大局的に掴むことで、環境変化にいち早く柔軟に対応するデッキ構築とプレイングを身につけることができる

1.について、
これはTCGに限ったことではないですし、某有名プロゲーマーの著書にも同様の論述があります。
出回っているレシピはいくらでも真似ることはできますが、蓄積された構築力を他人が真似ることは絶対にできません。そして、構築力とは真似るものではなく、繰り返し仮説立案・検証して鍛えて身につけていくものだと考えています。
構築力とは、例えるならば筋肉と似たようなもので、日頃からトレーニングをしていればどんどん鍛えられるし、トレーニングをサボっているとどんどん鈍っていくものだと考えています。
鍛え抜かれた独自の構築力によって、他人ではたどり着きえないオリジナルデッキに到達することができます。

2.について、
他人が作成したデッキレシピは、デッキ作成者のプレイング・引き運を紐解き自分にアジャストしないと構築の真意を理解するのは難しいと考えています。本書では、特定の機能・役割をもったデッキの構成要素をコンポーネント(※1)と呼称していますが、リストやレシピ解説を見ただけではコンポーネントの定義やプレイングを理解するのは厳密には難しいですし、ゼロベースにくらべると自身の仮説検証工程を省いているがゆえにどうしても中途半端な理解にしかなりません。
一方で、ゼロベース構築はデッキを構成するコンポーネントからすべて自分で定義し、基本的に自分で仮説検証したコンポーネントの集合体になるので、自身のプレイング・引き運にあわせた構成が可能です。また、レシピを作成した後も、コンポーネント構成・プレイングについて熟知できているため、柔軟にコンポーネントを調整し、カスタマイズすることが可能です。

※1.コンポーネントについてはB.構築編にて詳述します。

3.について、
"2.について"でも言及したとおり、ゼロベース構築ではデッキを構成するコンポーネントの定義、検証をすべて自身で実施します。それは無論、今までゼロベース構築をしてこなかった人が急にできるようになるものではなく、B.構築編にて詳述する日々の構築鍛錬のもとに成り立つものです。
日々の構築鍛錬の過程として、カードプールを熟知し、カードプールの状勢と環境を紐づけ大局観を身につけるステップが存在します。(B.構築編で詳述します)これができるようになれば、環境に流行する前の段階で、カードの環境の立ち位置変化をある程度推測できるようになります。事前にある程度推測できていれば、あらかじめ戦略を練っておけるので、環境の変化にも瞬時に対応できるようになります。世間的に露出度の低いデッキと対面する場合でも、大局観を身につけるステップで、ある程度どのようなギミックが搭載されているかを想定することができるので、プレイングにおいても優位にたつことがでます。

A-3.ゼロベース構築って時間がかかるし非効率なのでは?

仮にずっとコピーベース構築を実施してきた人が、初めてゼロベース構築を実施する場合、慣れないことをするために時間はかかるとは思います。
しかし、前述の通り構築力は鍛えられるものなので、仮説立案〜検証を繰り返していけば、独自の構築知見が徐々に蓄積されていくので、かかる時間は確実に短縮されていくものと考えています。

また、ゼロベース構築はコンポーネントを自身で定義し、自身で仮説検証を実施したコンポーネントの集合体となるため、基本的にデッキは自身のプレイングと引き運に順応した形になるはずです。
コピーベース構築ではそもそもそれら(コンポーネント定義、検証有無、引き運、プレイング等)を紐解く作業からスタートすることになります。
よって「効率性」について、「自身のプレイング、引き運にあった構築にたどり着く早さ」と定義するならば、長い目でみれば前者のほうに分があると私は考えています。


B.構築編

ゼロベースデッキ構築のフェーズ 

ゼロベースデッキ構築は上図の通り、0~7のフェーズにて構成します。各フェーズの概要を解説していきます。

B-0.事前準備:カードプール熟読習慣

B-0.事前準備:カードプール熟読習慣

デッキを構築する準備の段階で、まず意識・実行しておくべきことはカードプールを読み込む習慣をつくることです。
後述の構築マインド編でも言及しますが、前提として、カードプールに存在するすべてのカードに可能性があり、環境に影響を与えています。一見、使うのが難しそうなカードでも、環境が変化して使用頻度が急増する、なんてことは珍しいことではありません。
「手っ取り早く流行っているカードのテキストのみ把握しておけばいい」というように捉えてしまうと、デッキ構築の幅を著しく狭めます。これこそが他人のバイアスに縛られたデッキ構築の始まりであり、デッキ構築の際にどうしても引き出しが少なくなり、他人の作成したリストと似通った代わり映えのないデッキしか構築できなくなります。

一方で膨大にあるカードリストを一字一句すべて把握しろ、というわけではありません。それができれば理想ですが…。私は主に以下の2点を重点的に意識してカードリストを見るようにしています。

  1. ユニークテキストの把握

  2. カテゴリ毎の傾向把握

1.について、
カードにはそれぞれの個性が存在し、たとえあまり流行していなくても、中には特定のカードにしかないテキストというものが存在しています。
たとえば、
「相手のベンチポケモンを1匹選び、バトルポケモンと入れ替える。」
というテキストを持つポケモンはすぐ頭に浮かびますか?
2023/9時点で大型大会の入賞レシピを参照すると、LO・コントロール系統のデッキはあまり見かけません。しかし、環境が変化してそのような系統デッキと初対面した場合、これらを事前に把握しておかなければ、プレイングにブレが発生し、いわゆる初見殺しに合う危険性があります。逆にデッキ構築の観点でいえば、これらのカードを把握しておくことによって、LO・コントロールのデッキ構築の引き出しとしてストックしておくことができます。「流行する前に新しいデッキの可能性を見出しておける」と言い換えることもできます。
また、同じテキストでも要求エネの個数・色が違ったり、進化・たねの違いがあったりします。(下図参照)

わざ「相手のベンチポケモンを1匹選び、バトルポケモンと入れ替える。」が使えるポケモンの例

例えばミカルゲであれば、種ポケモンで悪1エネでその技が打てるので、メタモンの特性を生かしたルミナスエネ主体のメタモンコントロールデッキが組めるかもしれません。
例えばクサイハナであれば、無1エネでその技が打てるので、ゲーム終盤雪道ツツジと絡めてラフレシア・キレイハナ主体のビートデッキの時間稼ぎに使えるかもしれません。
あくまで上述は一例ですが、このように、カードにはそのカードにしかない個性が存在します。プレーンテキストのカードでも、火力増強・エネ加速・弱点メタ変化など新しいプールが増えれば評価が一転する、なんてことがありえます。よって、たとえあまり使われていないカードであっても普段からユニークなテキストを探して把握し、引き出しとしてストックしおく、ということは習慣づけておきましょう。おもしろそうなテキストをみつけたら、公式HPでテキスト検索して同種のカードを把握しておく、などしておくとやりやすいです。

2.について
カテゴリというのはカードプール上で近しい特定の機能や性質を持ったカードの集合を指します。カテゴリの例をいくつかあげると、「●●タイプ」「ドローシステム」、「∞火力」、「妨害」、「耐久」、「バラマキ」、「エネ加速」などです。カテゴリは独自に様々な表現で定義してストックしておくといいと思います。

「∞火力」のカテゴリのポケモンの例

例えば「∞火力」のカテゴリ傾向に着目すると、大会入賞デッキではパオジアンex、サーナイトex(ザシアンV等)はよく見かけますが、それ以外にもたけるとうきルカリオ、デカヌチャンex、輝くヒードランなどがいます。(※ほかにもいます)
これらを比較したときに、なぜ前者は流行していて、後者は流行していないのでしょうか。理由はいくつか挙げられますが、これらの環境の立ち位置の理由をカードプールと照らし合わせて自分なりに言語化して答えを持っておくことは極めて重要です。誰にも答え合わせはできないので正解はないですが。一例ですが、私は以下のように捉えています。

  • たけるとうきルカリオ:自身の特性によってHPラインがHP100以下になるため、ロスト系統の非エクたねのビートラインに容易におさまってしまうため、サイドレースが厳しい。闘エネルギーの加速手段は、ガッツのつるはし、キバナ、ネンドール特性と限定的すぎる。サイドレースをずらせるような他のアタッカーとあわせて運用できれば、エネテンポ・火力増強が見込めるかもしれない。

  • デカヌチャンex:ほかの∞火力のポケモンの一撃圏内要求値を加味するとHP300は低すぎる。環境に弱点の鋼が少ないことはメリットなので、ほかの∞火力ポケモンを足止めする強力なルール持ち特性妨害のカードが出たり、HPラインの増強(+40くらい)ができればやれるかもしれない。

  • 輝くヒードラン:特性を持たない数少ない輝くポケモンの一匹。技の要求エネ・性質上、マグマの滝壺を使うことを想定されているように感じるが、折角ルール持ち特性がないのにスタジアム依存なのはもったいない。仮に今後強力なルール持ち特性妨害のカードがでて、他の特性持ちの輝くポケモンの価値が低くなり、滝壺に依存せずヒードランにエネ加速ができ、かつダメカンを乗せる手段(例えばネジキを搭載するルール持ち特性に依存しない炎エネ搭載デッキなど)が確立できればやれるかもしれない。

 ➡「∞火力」カテゴリの傾向として、ルール持ち特性を主体としたものが環境の主流であるため、耐久を活かす戦術をとるならば頂きへの雪道等のルール持ち特性の妨害は必須。

上記はあくまで一例ですが、入賞デッキなどで環境を把握する以前に、カードプールにおいて、(プール拡張の仮説想定含めて)カテゴリ毎の状勢がどのようになっていて、それがどのように環境に紐づいているか、という大局観を身につけておくことが極めて重要ということです。その大局観を普段から身につけておくことによりカードプール拡張↔カテゴリ状勢変化↔環境の変化が連動して予測できるようになります。それができるようになれば、たとえばプール拡張のタイミングでは、流行前に立ち位置の良くなるカテゴリに着目することができ、既存環境からすれば新しいアプローチのデッキを生み出すことができるようになります。

B-1.環境分析:静的/動的

B-1.環境分析:静的/動的

カードプールの状勢が頭に入ったうえで、どのようなカードが流行しているか・流行しそうか、いわゆる環境分析について解説していきます。環境分析には下記の2つがあると思います。

  1. 静的環境分析

  2. 動的環境分析(潜在環境分析)

前者はゼロベース構築に関係なく言わずもがな重要、ゼロベース構築において特に重要なのは後者になります。

1.について
静環境分析とは、ある一定期間の大会使用率・大会入賞率が高いデッキの情報を入手してその瞬間の傾向分析することをさします。流行デッキに関しては現状SNS上でも様々なソースがあり、且つそのソースに基づく分析も様々な方が実施しています。あまり私が解説してもしょうがないので詳細は割愛します。

2.について
動的環境分析とは、未来の大会使用率・大会入賞率が高くなるデッキ(もしくは未開発デッキ)を予測することをさします。仮にカードプールが長期間変化しない場合、動的環境分析は静的環境分析の積分値的として捉えられるかもしれません。

しかし、実際はカードプールが高頻度に変化します。日本のポケモンカードでは1-2カ月に1回は50種前後のプール拡張が発生します。
B-0.カードプール熟知のフェーズにて、カードプール拡張↔カテゴリ状勢変化↔環境の変化が連動して予測できるようになることを説明しましたが、静的環境分析とカードプール熟知のフェーズがあわさることにより、動的環境分析が初めて実現できると考えています。
逆に言えばカードプールを熟知しないまま静的環境分析の積分値的解釈のみで環境分析を行う場合、ほかのプレイヤーが新しく環境立ち位置の良いデッキを開発したときに構築としてもプレイングとしても瞬時に対応することが難しく、どうしても後追いの対応になります。

前述でゼロベース構築において特に重要であるのが動的環境分析であると示した理由はこのためです。よって静的環境分析とカードプール熟知どちらも実行し、動的環境分析を日頃から行っておくことが重要になります。

B-2.仮説(≒ギミック)ブレスト~主軸カードの決定

B-2.仮説(≒ギミック)ブレスト~主軸カードの決定

B-1.環境分析を通して、環境に立ち位置が良い可能性がある、もしくは環境に対抗できる可能性があるカテゴリやカードの組み合わせをいくつか発見することができると思います。それらをスタートとして仮説をブレストします。
この段階ではあくまでブレストの段階なので、それが60枚のデッキとして再現性できるか、というのはあまり加味しません。とにかくたくさんの仮説を出します。

仮説ブレストの切り口は無数にあると思うのでここでの詳細な解説は避けますが、私の場合は基本的には”B-0.事前準備の中”で定義しているカードプールの「カテゴリ」の一部でもある、ゲームのアプローチ種別を仮説の部品にして序盤はブレストすることが多いです。

仮説の部品:ゲームのアプローチ種別

上記の例ではどちらかというとゲームプランのコンセプトにかかわる大まかなブレストになりますが、少し細かいレベルの仮説としては、たとえばアプローチを実現するための要素を仮説の部品としてブレストすることが多いです。

仮説の部品:アプローチを実現するための要素

以上のように、仮説の切り口を見つけて仮説をブレストしていきます。仮説をある程度ブレストしながら、「主軸カードの決定」を目指していきましょう。
ちなみに、「仮説のブレスト」と「主軸カードの決定」の順序性は厳密にはなく、行ったり来たりするのもありだと思います。
ただあまりにもブレストが煩雑になりそうだったら、「主軸カードの決定」はある程度の段階で固めてしまったほうが楽です。
あくまで例ですが、私は普段だと2〜3個環境に対抗できそうな仮説がブレストできた段階で「主軸カードを決定」し、さらに仮説のブレストを深める、という順序性で行うようにしています。


B-3.検証する仮説の吟味、ゲームプランの構築

B-3.検証する仮説の吟味、ゲームプランの構築

主軸カードを決定し、仮説のブレストが完了したら、次は検証する仮説の吟味およびゲームプランの構築を実施していきます。

検証する仮説の吟味: 新規性・唯一性のある仮説の選出
前提として、仮説には新規性・唯一性があるものでなければ、検証する意味がありません。ほとんど同じ共通点(強み、弱み等)をもつ別のギミックが既に存在している場合は、あまり検証の価値がありません。

逆に言えば、すでに検証済みのギミックとは何かを熟知していなければ、意味の薄い検証をするリスクが伴います。よって、過去に作成したデッキリスト・検証結果はたとえスクラップでも、過去に実施した仮説検証内容としてストックして参照できるようにしておいたほうがいいです。

ただしここで重要な注意点があります。ゼロベース構築でオリジナルデッキを目指すならば大前提として、過去の検証と(過去に登場したカードの性質と)少しでも差異があるならば積極的に徹底的に検証すべきです。検証しないと分からない差異というのはたくさんあります。「世間的に注目されていなくても、使ってみたら意外な結果がでた」とか、「世間的に注目されていたけど、使ってみたら既に検証していたギミックに似ていた」とか。なんでもかんでも仮説検証するわけにはいかないものの、頭ごなしに否定から入って検証せずにあきらめないこと、進んで泥臭い検証を通して机上の空論で終わらせないことは重要です。

ゲームプランの構築: フェーズ毎の理想状態の定義
どのような主軸カードを使うかによって厳密にはプランの作り方も変わると思います。あくまで一例ですが、私は下記のように、フェーズ毎に理想状態を定義して作成することが多いです。

①フェーズ
・序盤→たねポケモンの展開、ドローシステム・メインアタッカーを稼働させるプラン
・中盤→サイドを取り勧めつつ2体目以降のアタッカー育成・スイッチされるプラン
・終盤→ツツジやナンジャモのハンド干渉を乗り越えてサイドをとりきるプラン

②理想状態
・理想盤面(場、山札、手札、トラッシュ)
・取得サイド数
・打点ライン
・気絶タイミング(一撃気絶or二撃気絶)
・技要求エネの供給テンポ

尚、理想状態を構成する要素のいずれかに、主軸カードの強みに含まれていることが多いです。

B-4.採用候補カードのリストアップ

B-4.採用候補カードのリストアップ

検証する仮説が選出でき、ゲームプランが構築できたら、カードプールを参照しつつ候補カードを列挙します。

ピジョットexを使ったコントロールデッキの候補カードリストアップの例

あくまで一例ですが、私はマインマップのツール(SimpleMind)を使って上図のようにブレストする形で実施しています。

※参考までにマインドマップのツールのリンクを張っておきます。(基本有料版ですが、簡易版は無料です)


B-5.コンポーネント定義、採用カードの絞り込み


B-5.コンポーネント定義、採用カードの絞り込み


候補カードをリストアップしたら、60枚のデッキになるように絞り込みを実施してきます。60枚に絞り込む前提として、コンポーネントという概念について解説していきます。


コンポーネントとは?

複数のコンポーネントから成り立つデッキ

本書では、「特定の機能・役割をもったデッキの構成要素」をコンポーネントと呼称し、構築の基本概念として扱います。デッキのカードがそれぞれコンポーネントに所属し、複数のコンポーネントが絡み合い、機能することでひとつのデッキとして成立する、というイメージです。(上図参照)

※コンポーネントの定義は基本的にはデッキビルダーの好みにあわせて定義すればいいと考えています。同じデッキビルダーが構築したデッキでも、デッキによって共通する定義もあれば全く異なる定義が存在していいと思います。
※本書ではデッキを構成するコンポ―ネントについて、サンプルレシピをもとに具体例を多数あげてひとつひとつ詳細に説明していく、ということは分量の都合上できません。
よってコンポーネントの共通的な特徴にフォーカスして、いくつか具体例を挙げながら説明していきます。ご了承ください。


ポイントⅠ. カードのコンポーネント兼務

コンポーネントの定義のしかたにもよるかとは思いますが、1枚のカードに対してひとつのコンポーネントが結びついているのが基本というわけではなく、1枚のカードが複数のコンポーネントを兼務していることが多いです。

例えば、コンポーネントの定義として仮に、
・「ドロー」:山札の上からカードを引くコンポーネント
・「相手入れ替え」:相手のバトル場のポケモンをベンチの別のポケモンと入れ替えるコンポーネント

と定義した場合、サポート: ライムは「自分の山札を3枚引く。相手のバトルポケモンをベンチポケモンと入れ替える。[バトル場に出すポケモンは相手が選ぶ。]」という効果を持っているため、ライムは「ドロー」と「相手入れ替え」両方のコンポーネントを兼務しています。

「ドロー」コンポーネントと「相手入れ変え」コンポーネントを兼務するライム

カードのコンポーネント兼務の濃度を増やすことで、少ないカードでさまざまな役割を担わせることができるため、デッキスペースの圧縮を実施できる可能性が高いです。デッキスペースを圧縮できれば、空いたスペースをほかのコンポーネントに活用することができるかもしれません。
ただし、コンポーネント兼務の濃度が適切でないと、コンポーネントひとうひとつの再現性が薄まったり、1つのカードをどの役割で使うかという択によってプレイングにブレが生じるリスクがあるため、コンポーネント兼務の濃度調整には注意が必要です。
説明の都合上、あまり環境では見かけないライムというサポートを例に出しましたが、ドロー量としては3枚であり、バトル場に出すポケモンは相手に選択権があるため、各コンポーネントに特化したサポートに比べればどちらも中途半端、という見方ができます。
一方で、例えば火力をリソース消費量に応じて柔軟に変化させることができるアタッカー(キュレムVmaxなど)と組み合わせ、バトル場に出てきたポケモンのHPに応じてリソース消費を適切にコントロールしつつドローする、ということを実現したい場合には有効かもしれません。


ポイントⅡ. 複数カードの組み合わせ効果としてのコンポーネント所属
ポイントⅠではカード単体の効果としてコンポーネントに所属している(特定の機能・役割をもつ)ものを中心に説明しましたが、特定の条件下で複数のカードが組み合わさることで効果を生み出し、組み合わせの効果としてコンポーネントに所属する場合があります

具体的にサンプルレシピを参照して説明します。

サンプルレシピ: おとぼけリザードン(2023/8/14ジムバトル入賞)


サンプルレシピではコンポーネントのひとつとして、「入れ替え」というコンポーネントを定義しています。なお、ここでいう「入れ替え」とはバトルポケモンとベンチポケモンを入れ替える行為をさしています。(バトル場のポケモンの「にげる」、も含みます)
ひとえに「入れ替え」といっても逃げる権利の使用有無、および手張り権利の使用有無があるため、「入れ替え」コンポーネントの構成要素は4パターン存在します。(※スタジアム: 頂への雪道、シンオウ神殿、特性:とおせんぼ、グッズロック等のデバフは加味しない場合)

「入れ替え」コンポーネントの4パターンの構成要素

③逃げる権利有、手張り権利無のパターンにおいては、下記条件において「リザードンex」と「不思議な飴」の組み合わせを「入れ替え」コンポーネントとして扱うことができます。
 ・条件1:進化可能なヒトカゲが自分の場にいる
 ・条件2:山に炎エネルギーが必要数存在している
 ・条件3:リザードンexの特性:れんごくしはいが使用できる
  →以上の条件を満たし、リザードンexの特性を使用してバトル場に逃げるコスト分のエネルギーを共有する

以上のように、カード単体効果だけでなく、特定の条件下で複数のカードの組み合わせ効果によってコンポーネントに所属する場合があります。

カード単体効果でコンポーネントに所属しているものに比べ、特定の条件付きで且つ複数のカードによって生み出される効果、というのは一見複雑で使用しづらく感じます。しかし、60枚の限られたリソースにおいては複数カードの組み合わせ効果もコンポーネントを構成する重要な選択肢のひとつです。複雑だからこそ構築・プレイングの余地があり、見落とさないためにもコンポーネントを明示化し構築・プレイングの選択肢を漏れなく洗い出す工程は必要と考えています。


ポイントⅢ. コンポーネント定義の調整:汎用化(抽象化)⇔専用化(緻密化)

コンポーネントの定義は任意ですが、コンポーネントの定義を調整する場合、方向性としては以下の2パターンがあると考えています。

・汎用化(抽象化)
すでに過去にほかのデッキで検証済みのギミックやコンポーネント構成を流用したり、それをベースにコンポーネントの調整をかけること。
例)新弾で新しく登場した2進化exのデッキのコンポーネントとして、すでにほかの2進化exデッキで使用されているアルセウスVstarの特性を「進化先サーチ」コンポーネントとして流用する。

・専用化(緻密化)
ほかのデッキで検証ずみの汎用的なコンポーネント構成とは対極的に、主軸カードや主軸ギミックに専用化する形でコンポーネントの調整をかけること。いわゆる「尖った構築」というのはこのことをさしていることが多いと思います。

サンプルレシピ:雪道ゴローニャ (2023/06/28新弾バトル入賞)

例)ゴローニャexのデッキの最大の強みを耐久と定義し、サポート権に毎ターンモミの択をとるため、「ドロー」コンポーネントからサポートを極力排除し、「ドロー」コンポーネントにビーダルライン+巣穴に隠すホシガリス+ふしぎなしっぽミュウ+大量のボールを採用する。


以下の表に両者のメリットとデメリットを示します。

コンポーネントの汎用化と専用化

結局どちらが良い・悪いというものではないのです。重要なポイントとしては上図のようなトレードオフの関係があるため、自身の構築力、プレイング、引き運・マッチング運を認識し、適切なコンポーネント調整が必要になる、ということです。
運についてはさておき、構築力やプレイングについては仮説検証の繰り返しによって向上させることができるため、日頃から自己分析と照らし合わせつつコンポーネント調整も実施すべきと考えています。

以上、ポイントⅠ~Ⅲを踏まえたうえで、"B-4"でリストアップした採用カードを加味しつつ、コンポーネントの定義をします。
コンポーネントの定義では、最初は汎用・抽象的な定義から始めたほうがやりやすいです。ドロー、入れ替え、初ターン展開、エネ加速等わかりやすい定義から始めるといいと思います。コンポーネントが定義できたら、そのコンポーネントが機能するように採用カード絞り込みます。

「コンポーネントの定義」と「採用カードの絞り込み」は厳密には前後性がない、というか実際はデッキスペースの余剰などに応じて行ったり来たりすることになると思います。

B-6.1人回しによる再現性確認、コンポーネント調整

B-6.1人回しによる再現性確認、コンポーネント調整

1人回しによる再現性確認
ドラフト版として60枚のデッキが組みあがり、デッキコード出力ができた段階で、実際のプレイを想定して再現性確認をします。
私は普段はふなむし様(https://twitter.com/funamushi_2764)がWEB上で作成・公開されているブラウザ稼働のツールを使用させていただいております。

このフェーズにおける対面想定は、ほかのデッキを用意して対戦形式でまわすのではなく、ある程度ざっくりしたシナリオを用意して作成したデッキ単体でまわす形でいいと考えております。勿論環境しだいで想定内容は設定すべきとは考えておりますが、序盤終盤のハンド干渉、バトル場気絶タイミング・月光手裏剣等のベンチ狙撃・雪道・ロストマインあたりを一旦は考慮できればいいと考えてります。要所で前述の項目が撃たれる想定で1人まわししてみて再現性が低ければコンポーネント調整をする、というようにしております。


コンポーネントの調整をかける場合は"B-5"で解説した3つのポイント
ポイントⅠ. カードのコンポーネント兼務
ポイントⅡ.
 複数カードの組み合わせ効果としてのコンポーネント所属
ポイントⅢ.コンポーネント定義の調整:汎用化(抽象化)⇔専用化(緻密化)

それぞれのトレードオフの関係を意識して、調整をかけます。


コンポーネント調整ケース①:ポイントを加味した調整
ポイントⅠに基づき特定のコンポーネントの再現性を高める場合を説明します。

ライムのコンポーネント兼務解除を用いたコンポーネント調整

上図に示すコンポーネント兼務において、一人回しの結果、「相手入れかえ」コンポーネントは再現性十分であるものの、「ドロー」コンポーネントの再現性低いことが分かったとします。
この場合、ライムのコンポーネント兼務を解き(=ライムの採用を外し)、「ドロー」コンポーネントの専属としてアクロマの実験の採用枚数を増やし、もう一方の「相手入れかえ」コンポーネントは既存のほかのカードの再現性にまかせる、といった具合に調整します。
この時、「ドロー」コンポーネントとしての再現性は上がると考えられますが、「相手入れかえ」コンポーネントとしての再現性が下がると考えられます。

コンポーネント調整ケース②:ポイントⅡを加味した調整
ポイントⅡの複数組み合わせ効果を用いた調整をする場合を説明します。

複数組み合わせ効果を用いたコンポーネント調整

ケース①で「ライム」を採用から除外し、「アクロマの実験」の採用枚数を増やしてして引き続き一人回しで検証したところ、ドローを実施するうえで、ドローサポートはハンドにたくさん来るものの、サポート権利はターン1であるため、ドロー量が思いのほか伸びなかった、つまり「ドロー」コンポーネントの再現性が十分でなかった、とします。

この場合、サポート権利を用いない「ドロー」コンポーネントの拡張が必要になります。ここで、「アクロマの実験」の採用枚数を1枚減らし「輝くゲッコウガ」を新しく採用することにしました。
※前提として、あらかじめデッキにはエネルギーとして基本炎エネルギーが複数枚採用されていたものとします

この場合、「輝くゲッコウガ」と「基本炎エネルギー」の組み合わせ効果を「ドロー」コンポーネントとみなすことができます。
※厳密には輝くゲッコウガをベンチに出す手段として、現物をハンドにもっている以外にも、大抵のデッキに採用されているネストボールを使用してベンチに出すことができればネストボールも「ドロー」コンポーネントの一部として扱うことができますが、説明の都合上ここでは省略します

ポイントⅡでの解説同様、組み合わせ効果には以下の発動条件があります。
 ・条件1:輝くゲッコウガをベンチに出す
 ・条件2:ハンドにエネルギーがある
 ・条件3:ルール持ちたねポケモンの特性を使うことができる

この条件を満たすためには同時に、おなじコンポーネントのほかの要素、もしくはほかのコンポーネントに新しく求められる要件がいくつかあります。(下記以外にも多数あります)
 ・要件1:特性使用時にハンドにエネルギーがある状態を作り出す手段
  →「ドロー」コンポーネントのアクロマの実験で基本炎エネルギーをハンドにもってくる必要がある 
 ・要件2:ルール持ち特性を妨害する「頂への雪道」を破壊する手段
  →「デバフ」コンポーネントとして採用していた「ポケモンリーグ本部」を「頂への雪道」が張られた後のタイミングで使う必要がある

上記のとおり、ケース①にようにコンポーネントは単体効果で完結する場合もありますが、大抵はケース②のように特定の効果を得るためにほかの複数のコンポーネントに跨って求められる要件が発生して複雑に絡み合っているため、注意が必要です。
コンポーネント調整をかける際、各カードがどのコンポーネントに結びついていて、効果を得るためにコンポーネントのほかの要素やほかのコンポーネントに対してどのような要件を発生させて絡んでいるかを明確にしておく必要があります。

B-7.対面回し(大会参加)による環境適応性確認

B-7.対面回し(大会参加)による環境適応性確認


"B-6"が完了したら次は対面回しです。対面回しは大会参加するのが望ましいです。定期的に開催されている新弾バトルやジムバトルあたりの店舗大会が調度いいと思います。知人とのフリーの対面練習でも悪くはないのですが、きちんとしたルールのもと時間制限ありで不特定多数の人と対戦したほうが、環境適応性確認の目的に合致しているので大会のほうがいいと思います。

ゼロベース構築における「仮説立案・検証の繰り返し」

対面練習をして、想定と異なる状態になった場合は、どの想定を修正すべきかに応じて構築フェーズを遡ります。(上手参照)そもそもの環境分析から修正が必要ならば"B-1"に、ゲームプランの修正が必要ならば"B-3"に、コンポーネントの修正が必要ならば"B-5"に、といった具合です。A.導入編で説明していたゼロベース構築では「仮説立案・検証を繰り返す」というのが、この反復の部分になります。このフェーズ反復を経て、自分だけの構築知見を蓄積していきます。

ちなみに、ゼロベース構築のデッキ調整をするうえで「適当に枚数調整したらなんとなくうまくいった」というのは1番まずいです。そのタイミングでは一時的にいいかもしれませんが、その構築が通用しなくなってきたときに、そこまで積み上げてきた検証の担保範囲が不明瞭になるため、構築知見が活かし辛なくなります。
また、これは主軸カードを変更すべきかどうか(=いわゆる別のデッキを握るか)という判断のうえでも重要な考え方にもなります。主軸カードを変えずに新しい仮説を立てる・新しいゲームプランを構築して環境に立ち向かうか、主軸カードを変えてデッキを構成しなおすかは各フェーズを経て構築として成り立つか、というのがポイントになります。
「適当に枚数調整したらなんとなくうまくいった」を繰り返してしまうと、いわゆる、今のデッキを握り続けるか別のデッキを握るかの判断にブレが生じるリスクがあるため注意が必要です。

C.マインド編

ここからは普段私が心がけていることをマインド編として記述します。あくまで構築力を継続的に高めることを目的として心がけていることです。よって、心がけていることが厳密に事実か否か、というのはあまり重要視していません。もはや一種の自己暗示、極論が含まれていることはご承知ください。

C-1.デッキレシピに正解なんてない!変化し続けろ!

「結論構築」というワードを耳にしたことがあります。大会の立ち位置が瞬間的に著しく良くて入賞できた、だからこれは結論構築だ、と。私はこれにすこし違和感があります。
カードプールが変化しなくてもTCGが不特定多数の人間がプレイするメタゲームである以上、環境どうあっても変化し続けます。
また、TCGには引き・マッチングの運要素も大きく影響します。たとえ同じレシピ、同じ対面でもプレイングも人によって完全一致するということはないでしょう。
ここから導き出されることはつまりデッキレシピに正解はない、結論はないということです。

立ち位置の良いデッキレシピというのは大なり小なり常に変化し続けます。よってデッキ構築において求められることは環境の変化を先読みして「自身も変化し続けること、変化をあきらめないこと」です。変化に柔軟に対応できるのが「コピーベース構築」なのか「ゼロベース構築」なのか、構築編まで読んでいただいた方はもうお分かりかと思います。

C-2.「弱いカード」なんてない!1つでも多く良さを引き出せ!

いわゆる環境圏外と想定されるカードを、「弱いカード」と捉えるのではなくて「使うのが難しそうなカードで、弱く感じるのは強く使うデッキ構築ができていないだけ」と捉えたほうがデッキ構築力向上の観点では都合がいいです。
すべてのカードには可能性があり、環境が変わればいつか立ち位置が良くなるかもしれない。事実、環境に影響力の大きいカードが登場したときに、そのメタカードとして今まで採用されることが少なかったカードが環境トップのデッキに搭載される、なんてことは少なくありません。
また少し違う視点で考えると、この考え方をベースに日々デッキ構築を繰り返していくことで「そのカードにしかないオリジナリティ」を探す習慣がみにつきます。
HP、技の要求エネ、逃げエネ、火力、コストなど小さな偏差も見逃さず1枚1枚の個性を日々きちんと把握していくことが柔軟なデッキ構築への近道です。

C-3.攻略できない環境デッキなんてない!打ち負かされたら倍返しだ!

日々ジムバトルなどでせっかく頑張って自分で作ったデッキが、環境トップと言われているようなデッキにボコボコに打ち負かされてショックをうけることもあるかもしれません。「やっぱり環境に流行っているようなデッキじゃないと勝てないのかな…」なんて思いがよぎることもあるかもしれません。
しかし、どんなに環境の立ち位置の良いデッキでも、完全無欠の最強デッキなんてものはまずまず存在しません。どんなデッキでもガチガチにメタをはられたデッキと対面すれば負けるでしょう。勝ちの可能性は必ずどこかにあるはずです。
ここでいいたいことは、環境に臆することは、自由なデッキ構築の発想を阻害するバイアスの始まりでしかない、ということです。環境はまわるしカードプールは膨大に存在しているはずです。誰も検証できていない、まだ試せていない環境に突き刺せるギミックが必ずどこかにあるはずです。日々の対戦で大事なことは負けるにしてもただ打ち負かされることではなく、相手の弱点をしっかりと分析することです。ただ負けて反省も分析もせず悲しいだけ、なんてのは時間の無駄です。
一度負けたからには、反省し、分析し、しっかりと対策を生み出して倍返しでやり返す。この意識を普段から忘れずに。

C-4.おもいつきで止まってはだめ、仮説検証にトライして自分の血肉に変えろ!

「〇〇と××を組み合わせたら強そう」とか、
「□□強化キター!」とか、
「あー△△きたらミュウはもう終わりだな…」とか
仮説は誰でもいくらでもおもいつくことができます。ただし、おもいつくこと自体にあまり価値はありません。
なぜならば結局60枚に収まらない、ロストに勝てない、雪道で全断等、勝てるデッキとして構成するには、コンポーネント定義から始めて1つのデッキとして仮説検証しなければ使い物にならないからです。だから仮説検証の工程が必須になるわけです。思いついただけで対して仮説検証をせずに仮説を捨てるのはもったいないです。せっかく思いついたなら使い物になるまで仮説検証しましょう。仮説検証で得られた構築知見は、ほかの仮説検証をあきらめた人達にはない圧倒的アドバンテージです。
…なんだか堅苦しく説明しましたが、感情の話しでいえば、単なる思いつきだったものが、試行錯誤を経て自分の思い通りに動いてゲームに勝利できると楽しいものです。初めて触ったプログラミング言語でプログラミングがうまくまわったときの感覚に近いです。モチベーションをゲームの勝利だけではなく、そのような達成感を設定できるのはゼロベース構築の醍醐味かと思います。

C-5.構築に時間がかかるのでない、構築力が足りてないだけ!

「〇〇のデッキ、ずっと組もうと思っているんだけと、なかなか時間がなくて〜」
私の周囲でもいままで幾度となく耳にしてきました。この手の発言をしている人はほとんどの確率でそのデッキを自身で組みません。せいぜい他人の入賞レシピのコピペをするのが関の山です。

それはなぜか?それは時間がかかるということを言い訳にしてデッキ構築をする習慣から逃げ続け、構築力をあげる機会を失って結果的にデッキ構築時間を短縮することができないからだと私は考えています。

前述の通り、構築力は筋肉のようなもので鍛えられるし鈍るものです。
トレーニングをサボり続けた状態からいきなり激しい運動をしたら筋肉痛に悩まされることでしょう。そうならないためにも日頃から構築する習慣を意識して構築力を鍛え続けておく必要があると思います。

構築力がきちんと備わればデッキ構築に必要以上に多くの時間を要することはないです。

C-6.他人に相談する前に自分で考え抜け!

誰かに相談する、という行為すべてが悪というわけではありません。ここで言いたいのは自身でコンポーネント定義し、言語化し、仮説検証して考えぬいて、それでもAでいくかBでいくかで迷う、くらいの段階までは他者に相談すべきでない、ということです。
考えぬかず中途半端な状態で他人に相談し、他人のレシピを参照し、その結果を直接構築に反映させてしまうと、自身で考える習慣を放棄することになるので、構築力向上の阻害になってしまいます。仮にそのデッキで大会入賞できたとしても、長期的にその後もデッキ構築を繰り替えしていくことを考えればマイナスになります。
また、他人のレシピを参考にすることについても同様に注意が必要です。自分がまったく触ったことのない主軸カード・アーキタイプのレシピをいきなりまるまる参考にしてしまうと、他人のバイアスでしかその主軸カード・アーキタイプを見られなくなる危険性があります。基本的には急がば回れで、まず他人のバイアスを入れずに自分なりのデッキを構築する習慣をつけましょう。他人のレシピを参考にするのが悪ではなく、参考にするタイミングや参考にするポイントには注意が必要です。

C-7.目先の1勝よりも目先の1戦による構築力向上を!

デッキ構築には仮説検証のフェーズがあります。仮説検証はあくまで検証なので、検証の過程でゲームに負けてしまう、ということは往々にしてあると思います。むしろ勝てないことのほうが多いです。
しかし仮説検証によって得られる構築知見は、他人には絶対に盗まれないもの、確実に自身の構築力向上につながるもので、長期的に考えれば目先の1勝よりも価値があるはずです。
単なる目先の勝ち負けではなく、日々の仮説検証から得られる構築知見の積み重ね、構築力向上にモチベーションを設定するほうがデッキ構築には合理的です。

C-8.スタンでも勝つために、新弾バトルに出ようぜ!

C-7で、目先のゲームの勝敗よりも仮説検証から得られる構築知見が重要と言いましたが、それでもたまには勝ちたいものです。また、仮説検証の内容によっては、環境上位のデッキのゲームスピードが早すぎて、検証結果を判断する以前にゲームが決してしまう、なんてこともあるでしょう。
そんな悩みを解決するのにおすすめなのが、新弾バトルです。新弾バトルはジムバトルと比較するとカードプールに縛りがあるため、ゲームスピードが幾分か遅いことが多く、参加者もカジュアル勢が多いです。スタン環境で入賞が難しそうな特異なデッキでも新弾バトルでは入賞できた、というのは私自身今までに何度も経験しています。
新弾バトルで入賞できたデッキがそのままスタン環境で入賞できるわけではありませんが、縛られたカードプールだからこそ試せる仮説検証があり、その仮説検証によって得られる構築知見が後々のスタン環境のデッキ構築の引き出しを拡げてくれます

C-9.オリジナルデッキで勝てないなんてのは嘘!

入賞レシピをコピーして使う場合、そのレシピには実績があるわけなので、仮に作成者のプレイングと運をうまく自分にアジャストできて且つ環境が近ければ勝ちやすいかもしれません。
それではオリジナルデッキでは勝てないのか?…そんなことはありません。
というかカードプールが変わって誰よりも早く新カードで入賞している人がいる以上、そんなことはありえません。
勿論、テキトーなデッキでは勝てない、という意味では仮に入賞レシピだったとしても同じことです。

ここで言いたいことは「オリジナルデッキでは勝てないから、というのを言い訳にしてデッキ構築から逃げるな」ということです。
「入賞レシピは洗練されたものだからそれを超えることはできない」というのも基本的にありえません。なぜならば、仮に入賞レシピの立ち位置がある瞬間良かったとしても、そのレシピが世に出回ればたちまちメタの対象になり、環境の立ち位置は時間変化するからです。また強さとはレシピだけで決まるものではなく、運とプレイングとのセットです。結局デッキの強さ、勝ち負けとは複雑で相対的なものでしかないということです。
前述の通り構築力は鍛えられるものなので、日々構築の鍛錬を繰り返していけば、オリジナルデッキでちゃんと勝てるようになりますし、構築力が向上すれば環境の変化にもいち早く対応できるようになるはずです。

C-10.入賞したリストは隠すな!さらけ出せ!

デッキ構築力向上を目的にした場合、環境はどんどん目まぐるしくまわっていることが望ましいです。なぜならば今日通用したデッキが明日通用しなくなるような環境であれば変化に柔軟な構築力が必須であり、そのような構築力を兼ね備えたプレイヤーは必ず優位に立てます。
逆に言えば仮に狭く閉じたプレイヤー界隈で入賞レシピが秘匿され、環境のまわりが鈍化してしまうことは、自身のデッキ構築力向上の観点では望ましくないです。なぜならばデッキ構築をある程度サボってもその狭い界隈においては勝ち続けてしまう可能性がでてくるからです。
しかもそのような狭い界隈は、ほかの大きいプレイヤー界隈の環境変化と比較すると遅れをとるリスクすらあります。なので全国大会などを目標とする場合においても、日頃から入賞レシピを秘匿することは、自分の周囲の環境変化を鈍化させて練習環境の陳腐化を招くリスクがあるので、プレイヤーの面でもデメリットのほうが大きいと考えています。
ただし例外として、自身が大型大会を直前に控えていて、デッキをある程度固定化して(というか環境の周りを鈍化させて)練習したい、となった場合は上記の限りではないと思います。その場合は、「直近のデッキ構築力向上」<「直近の大型大会入賞」だと思いますので。デッキ構築力向上したいならレシピは晒す、直近の大型大会入賞を目的とした情報戦をしたいのならばレシピは隠す、を明確に使い分けるといいと思います。なんでもかんでも入賞レシピをとにかく隠す、は構築力向上の機会損失且つ環境変化の機会損失でもったいないと思います。

C-11.新弾発売前はbox確保よりもリストを舐めまわしてレシピをつくれ!

定期的に新弾発売1週間前の金曜日、大体12:00~14:00頃に公式HPにて新弾の全カードリストが解禁になります。
B.構築編でも詳述した通り、ゼロベース構築の基本はまずカードリストを熟読するところからになります。そこから仮説をブレストして検証を繰り返し、デッキが完成します。新弾発売1週間前の全カードリストが解禁された時点で、"B-0."~"B-6."までは少なくとも実施することができます。もし周囲にゼロベース構築のプレイヤーがいれば"B-7."すらできるかもしれません。仮に新弾発売日直後に大会を控えている場合、これを新弾発売日までに完了できていれば大きなアドバンテージになります。しかもこれはゼロベース構築だからこそ実現できる大きなメリットです。なぜならば他人の大会入賞レシピのコピーベースでデッキを構築しているプレイヤーには絶対にできないからです。
新弾発売1週間前の金曜日から新環境の戦いは始まっているといっていいでしょう。ゼロベース構築をする以上は、絶対的にこの期間を無駄にしないようにしましょう。

…え?新弾boxそもそも予約とれず売ってないから発売当日デッキが組めないって?…それは嘘ですね。そもそもシングル買いだけでいいですよね。レシピは発売日にほぼ完成しているはずですから。それにbox1-2箱剥いてもいずれにせよシングル買いしないと新弾カード主軸デッキはそうそう組めません。なんだろう…box剥きたい欲が満たされなかったからって、デッキ構築できない言い訳するのやめてもらっていいですか?

おわりに

自分は少し変な癖?みたいなものがあります。それはある程度大会で入賞できたレシピはもう使いたくないからあまり使わない、ということです。近しい理由で、流行りのアーキタイプを意図的に避けて、なるべくマイナーなアーキタイプで結果を出せるように構築を努めたりしています。
性格上、「誰かがすでに強いと証明できたものには興味がない」ようです。…だって誰にも注目されてない、なんなら弱いとまで思われているカードやギミックで、環境トップといわれるデッキを使う相手を撤退的に打ち負かすからポケカは最高に気持ちいいんじゃないですか。
…まぁそういう考えの人は決して多くはみかけないのできっとへそ曲がりなんだと思います。

だから本当の意味で環境の立ち位置の良いデッキは開発できないことのほうが多いです。使うカードやアーキタイプに選り好みしているから当たり前ですよね。プレイングに関しても、完全に極めきる前にデッキを変えてしまいます。
へそ曲がりビルダーからガチビルダーになるためにはこの性格が一生邪魔になるのだと思います。

でも私はこれでいいと思っています。なぜならばこれが私にとっての一番楽しいポケモンカードなので。このnoteを読んでくださったかたも、周りの意見に縛られることなく、自分にとっての一番楽しいポケモンカードを見つけて自由に遊んでくださればと思います。

語録

仮説:カードの組み合わせや対面によって生まれる仕掛け、ギミックの仮の説
検証(仮説検証):仮説をデッキ構築に組み込みプレイして実証すること
ギミック:仮説検証の結果、デッキ構築上有効と判断できた仕掛け
コンポーネント:特定の機能・役割をもったデッキの構成要素
カテゴリ:近しい特定の機能・性質を持ったカードの集合

参考文献

【WEB】
・ポケモンカードゲームトレーナーズウェブサイト|カード検索


【ツール】

・SimpleMind(海外WEBサイト)


・ふなむし様(https://twitter.com/funamushi_2764)作成 ポケカ1人回しツール


【書籍】

・1日ひとつだけ、強くなる。 梅原 大吾 (著)

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