鬼滅の刃で中学英語#29~あの定番あいさつの意味を考えたことある?~
5月に入りました。
本来なら毎日更新で#45ぐらい行っていたかった鬼滅英語ですが、まだ#30にも行っていないことに愕然としております……それでも100記事目指して地道に頑張りたいと思います。
今回は、本来はこれが最初じゃねーのと言われかねない、「ザ・英語の定番あいさつ表現」をご紹介します。
ただ、今のタイミングで紹介すると言うことなので、ただただ丸暗記するのではなく、その意味と、これまで学んだことを活かして「本当の意味」を理解してもらえたら嬉しいです。
自己紹介の定番フレーズ
日本ではじめて会った人同士の定番フレーズは「はじめまして」ですね。
昔は「始めまして」を使っていたようで、広辞苑にはこちらが載っていますが、小学館の新選国語事典には「初めまして」だけが載っていたり、大辞林にはどっちでもいい感じの扱いになっていたり、それぐらい、元々の意味がよくわからんまま、今は「おそらく初対面だから初めまして」が正解なんだろうという感じで使われている「はじめまして」。
ちなみにこの議論については日本語学者の飯間氏が深掘りしているので興味があればご覧くださいませ。
ではそれを英語でなんと言うかという時によく登場するのが、
Nice to meet you.
ですね。これは7、80歳くらいの人でも「言える」定番英語です。
『鬼滅の刃』の英語版、『Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba』でも、使われているシーンがありました。
Hello, nice to meet you.
(こんにちは 初めまして)
My name is Kanae Kocho.
(私は胡蝶カナエといいます)
こちらは本編とは別の番外編。アニメ版しか見たことがない人は初めてかもしれませんが、左の人は、蟲柱・胡蝶しのぶの姉で、花柱の胡蝶カナエです。
花柱ということで、花の呼吸の使い手ですが、そう、栗花落(つゆり)カナヲと同じ呼吸の使い手です。というか、カナヲの師匠です。そして、右の汚らしい格好した子は、実はカナヲです!(詳しくはコミックス第8巻をご覧くださいませ)
本題に戻ります。
「My name is ...」は大丈夫ですね。自己紹介の中でも、比較的丁寧な表現でだということは、#4でお話ししたとおりです。
もちろん、名乗りの挨拶は#1でやったように、「I am Kanae」でも間違いではないのですが、汚らしい格好をした(そしておそらく臭い)よくわからん子どもに対して、膝を落として目線を合わせて「私は胡蝶カナエといいます」と丁寧な言葉で挨拶しているのですから、やはり「My name is」を使った自己紹介が正解なんですね。
さてそれでは、肝心の「Nice to meet you.」に入りますね。
「はじめまして」と教える教科書
日本では「Nice to meet you.=はじめまして」と訳されてきました。
確かに、初対面の挨拶で、今も教科書で使われています。
最近の教科書はご丁寧なことに、辞書を引かなくても巻末に単語の訳が書いてあるのですが、そこにもちゃんと「Nice to meet you.」が入っていましたよ。
(東京書籍『NEW HORIZON English Course 1』)
でも、不思議ですよね。
ご丁寧に「nice(よい、すてきな)」の単語の活用として書いてあるはずなのに、なんで「はじめまして」なんでしょうと。
もう一つの定番表現がその上に載っていますね「Have a nice ...(よい…をお過ごしください)」。「Have a nice day!(よい一日を!)」のように使うわけですが、ここでも「nice」は「よい」とされています。
しかし、②として「Nice to meet you」を書いていますが、それをすんなり受け入れる人もいれば、私のように「なんでよ!」となる人もいると思います。そしてそれを放置しておくと、学生時代の私のように英語が嫌いになっていくのです・・・。
さて、そもそもこの文、これまで散々言ってきた「主語+動詞」の形の文じゃないってことに気づいた方もおられるかもしれません。
もし、そう思えた人は、英語で大伸びする可能性があります。
「Nice to meet you.」の本当の意味
実は、「Nice to meet you.」は、主語と動詞が省略された表現なんですね。
というのも、あまりにも定番すぎると、文の一部を使う必要がなくなってしまうんですね。
これは日本語でも同じです。
「こんにちは」は、本来は「今日(こんにち)は、ご機嫌いかがですか」「今日(こんにち)は、いいお天気ですね」と言葉を続けるための表現だったのが、くり返し使われていくうちに、「今日(こんにち)は」だけが残り、いつしか「今日(きょう)」という意味も消えて「こんにちは」だけになったのです。
では、英語で省略された主語と動詞を入れてみましょう。
It is nice to meet you.
(あなたに会えることは良いことです)
※nice=良いという形容詞(発音)
※meet=会うという動詞(発音)
実は、主語が「It」、動詞がbe動詞で、これまで「I」や「You」を使った、「主語+be動詞+形容詞」の文がベースだったのです。
スラッシュリーディングで分解していくと、
① It is nice(それは良いことだ)
② to meet you(あなたに会えることは)
①は「It(主語)+is(be動詞)+nice(形容詞)」、
②は中2で習う「to+動詞の原形(不定詞)」
の組み合わせなんです。
①の「It(それ)」は代名詞ですが、これは、②のことを表しています。日本語で「それ」「これ」はその前のことを説明していますが、英語は後ろから引っ張ってくることもあります。
それは、「主語を短くして、本題に入りたい」という英語の特徴があるからです(詳しくはまた別途)。
つまり、ざっくりまとめると、
[To meet you] is nice.
(会えたこと)はナイス
↓
会えて良かった
ということになり、「Nice to meet you.」の本来の意味は、「会えて良かったです」なんですね。
それを、学校ではムリヤリみんなに言わせているんです。別に良かったとは思っていなくても!
しかも、後ろに「too(私もです)」をつけて(笑)。
「英語の教師と会えて良かったと思ってねーよ!」って思っちゃいましたか??
Nice to meet you. にソックリな挨拶がある?
「Nice to meet you」は定番ですが、ちゃんとした意味がある言葉で、文法的にもちゃんとしていることをご紹介しました。
だから、実は「Nice」の部分を変えれば、他の表現にすることが可能です。
一番ポピュラーなのが、
Glad to meet you.
(会えて嬉しいです)
※glad=嬉しく思うという形容詞(発音)
「Nice(良い)」と「Glad(嬉しい)」の違いだけなので、同じく初対面の挨拶で使えますし、使います(ちなみにGladの隠れ主語+動詞はI amで、こちらは省略せず使うことも多い)。
とはいえ、今回、鬼滅の刃番外編の、胡蝶カナエ・しのぶ姉妹と栗花落カナヲとの初対面シーンでは、みすぼらしい格好をしたカナヲに対して、炭治郎のように鬼にすら同情するカナエらしい丁寧さを表した自己紹介ですから、「Glad」は使わず「Nice」を使った自己紹介、
を使ったのが正解、なんですね!
「Nice to meet you=はじめまして」の怪
そういうことを考えると、ますます、どこが「Nice to meet you.=はじめまして」なんだよ!
・・・って感じですね。
私もそう思います。
でも、まぁ、日本人がよく(子ども同士ではない)丁寧な挨拶に使うのはやはり「はじめまして」ですから、それと同じレベルで使うという言葉と言えば「Nice to meet you.」なんです。
実際、最初にご紹介したように、日本語の「はじめまして」も我々は意味も分からずに、なんとなく「初めて会ったけどよろしくね」って意味だろう的な感じで使っていますが、英語の「Nice to meet you.」も、英語で大事な主語と動詞をすっとばしてまで「Nice」ということが言いたいから「Nice」から始まっていると考えれば、やっぱり、意味は違うけれども、使い方としては「はじめまして=Nice to meet you.」になるんでしょうね。
ちなみに、今年から小学校の『学習指導要領』が変わり、教科として英語を学ぶのが必須となり、NEW HORIZONも小学校版が導入されることになりました。
そこで初めて学ぶのが「Nice to meet you.」笑。
(NEW HORIZON Elementary English Course 5)
・・・・この文化を作ったのはお前が原因か!!
しかし、小学校でこれを習うということは、中学での「Nice to meet you.=はじめまして」という丸暗記式の教え方は終わっていき、日常会話として何パターンかの挨拶をおぼえていくのでしょうか??
中学の教科書改訂は来年なので、楽しみに待つとしましょう。
本日のまとめ
・本当は「はじめまして≒Nice to meet you(会えて良かった)」
・応用編に「Glad to meet you.(会えて嬉しい)」があります
・基本的に丁寧な表現なので、友だち同士では使わないことが多い