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鬼滅の刃で中学英語#32~「Are you all right?」と「Are you OK?」の違い
前回、「Are you~?」で始まる疑問文のご紹介をしました。
そこで今回は、その定番中の定番表現の中で似たような表現である、「Are you all right?」と「Are you OK?」の違いを、『鬼滅の刃』の英語ネイティブによる翻訳版『Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba』でどう訳されているかを見ていきながら、違いを理解していきましょう。
まずは「Are you all right?」
出典は『鬼滅の刃』英語版『Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba Vol.1』から。
修行中に出会った兄弟子・錆兎(さびと)にフルボッコにされて気を失った炭治郎が目を覚ましたときに目の前にいたのが、これまた姉弟子の真菰(まこも)でした。その真菰が開口一番に言ったシーンです。
Are you all right?
(大丈夫?)
※all right=問題ない、うまくいっているという、形容詞的な成句(発音)
これは、日本語の「大丈夫?」によく当てはめられる表現で、もともとは
You are all right.
((あなたは)大丈夫だよ)
という文の、主語で名詞の「you」と、be動詞という動詞の「are」の順序を入れ替えて、最後に「?(クエスチョンマーク)」をつけることで、疑問文になったものですね。
ちなみにこの「all right」は、日本でも車がバックしたり、スポーツなどでよく使われる「オーライ!」という言葉の元ですね。
日本語は主語や動詞をすっ飛ばすという良い例かもしれません。
「Are you OK/okay?」
定番中の定番「Are you all right?」ですが、ちょっと言い方を変えたものもあります。
こちらは第5巻、那田蜘蛛山で善逸が胡蝶さんと初めて出会うシーンですね(なんか初めて出会うときに使うことが多い気がする…)。
Hello, there!
(もしもし)
Are you okay?
(大丈夫ですか?)
※hello there=「やあ」的な呼びかけ(発音)
※okay=大丈夫という形容詞。OKの正式な表記方法
こちらも同じ「大丈夫?」という意味の表現ですね。
真菰:Are you all right?(大丈夫?)
しのぶ:Are you okay?(大丈夫ですか?)
という感じで、前半部分の「Are you~」は同じで、それが「all right」か「okay」かの違いですね。ちなみに両方とも形容詞です*。
*all rightは、allという副詞と形容詞の組み合わせだけど一つの形容詞として考えます
どちらも「大丈夫か?」という表現で、ほぼ同じように使うことができます。
ちなみに日本語だと、「大丈夫?」「大丈夫か?」「大丈夫ですか?」「大丈夫なの?」など、語尾が色々と変化しますが、英語の場合はそういったことはありません。
なので、たとえば、しのぶのセリフが「大丈夫?」となったとしても、英文は変わらず「Are you okay?」になります。
では、同じように使える「Are you all right?」と「Are you okay?(=Are you OK?)」は一体何が違うのでしょうか??
「all right」と「okay=OK」の違い
「Are you all right?」と「Are you OK?」って、教科書にも出てくる定番表現で、中学英語では「同じ」とされますが、それぞれの形容詞の意味がちょっと違うんですね。
「all right」の方はそもそも、
「right(申し分がない)」を、前に付いた「all(すべて)」という意味の副詞で意味を強めている*言葉なので、「万事申し分がない」というのが本来の意味です。
だから、車のバックの誘導で「オーライ!」を使うのは正解です。
*意味を強める副詞については#6で解説
「okay=OK」の方は、その言葉自体が「大丈夫、まあまあ、結構だ」という意味を表しています。
だから、ローラの「オッケー!」やガッツ石松の「オッケー牧場!」の軽い感じは、使い方としては正解なんですね。
つまり、細かく比較すると、「all right」の方が「よい状態」を表しているわけですね。
「Are you all right?」と「Are you okay?」の違い
では、それが疑問文だとどうなるのって話です。
「all right」の方が大丈夫感が強いので、つまり・・・どういうこと? 「万事大丈夫ですか?」ってこと?
わかりにくいですね。
そこで、先ほどの2つの例を比較して考えてみましょう。
真菰の「Are you all right?」(大丈夫?)
胡蝶さんの「Are you okay?」(もしもし 大丈夫ですか?)
どうです?
なんか、日本語の文字面としては胡蝶さんの方が丁寧なんですが、表情とか声のかけ方をみると、胡蝶さんの「大丈夫ですか?」は、なんか軽く感じないですか?
丁寧な口調で聞いてはいますが、遠巻きに「もしもし(Hello, there)」と呼びかけてから言うなんて、本当に凄く心配していたらしますかね?
駆け寄ってみたり、真菰のように、心配そうにのぞき込んだりするものではないでしょうか?
ということで、こうやって比較すると、真菰の方が心配している感が伝わりますよね?
だから、真菰の、「all right」を使った方が「心配している感」が強いということが言えますね。
英語は先ほども言ったように日本語における語尾の変化がほとんどないので、チョイスする英単語で意味が変わるってことですね。
もっと心配してあげて!?
ちなみに胡蝶さん、同じ那田蜘蛛山で、炭治郎の先輩隊士、サラサラヘアーの村田さんを救出したシーンでも同じ言い方をしていました。
Are you okay?
(大丈夫ですか?)
鬼の作った繭に閉じ込められて、体が溶けている人もいたのですが、胡蝶がそんな繭を割り、出てきた村田さんにも、心配そうな顔をするそぶりもなく、「大丈夫ですか?(Are you okay?)」と聞いているわけですね。
この辺、たくさんの鬼を切り捨て、たくさんの隊士の死を乗り越えてきた「柱」だからこそのある種の「冷たさ」も含んでいるわけです。
死んでいたら死んでいたらでしょうがないけど、生きていてよかったねと。そんな感じ。
実際、胡蝶さんはこの後のシーンで、死ぬかもしれなかった村田さんに対してこうやって接しています。(『鬼滅の刃』第5巻)
メッチャ笑顔!
普通なら命の危険があったら「Are you all right?」を使うはずですが、無傷だからいいよね!という胡蝶さんだから「Are you OK(okay)?」なんですね。
メッチャ心配してるぞ!!
では、最後に「Are you all right?」の他の例を見てみましょう。
こちらは第1巻の第2話で、鱗滝さんの元へ行く道中に、禰豆子を連れた炭治郎が寝泊まりする場所にとお堂に入ろうとしたときに、血の匂いがしたため、「この山は道が険しいから誰か怪我をしたんだ(下の右のコマの原文)」と心配して慌てて駆け込んだシーンです。
(Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba Vol.1)
Are you all right?
(大丈夫ですか…)
この炭治郎も、真菰と同じ「Are you all right?」でしたね。
血の匂いがしただけで、「怪我をしてるかもしれない」と慌てて駆け出しているわけですから、心配している感が出てますよね。いいヤツです。
だから、「Are you OK/okay?」ではなく、より丁寧で、心配している感が出る「Are you all right?」になる、と。
つまり、使う人の考え方によって、使う表現が変わるってことですね。
ま、中学英語でそこまで聞かれることはありませんけどね。
本日のまとめ
・「大丈夫?」は「Are you all right?」もしくは「Are you OK/okay?」
・結構心配している感が強いのが「Are you all right?」
・普通に心配しているのが「Are you OK/okay?」
・胡蝶さんの例もあるので、日本語の「ですか」を基準にしちゃダメだぞ!