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鬼滅の刃で中学英語#28~英語には「僕の」「あなたの」が多過ぎな件~
前回、「Your」と「You're」の違いと使い方をご紹介しましたが、今回は「your」と「my」の使い方をより具体的にご紹介していきます。
「my=私の」「your=あなたの」で訳せば正解?
これまでに紹介した例文ですが、おさらいの意味も込めて「my」と「your」を使った文を紹介しますね。
どちらも、第3巻からの引用です。
まずは「my」を使った例。
My name is Tanjiro Kamado!
(俺の名は竈門炭治郎だ)
こちらは炭治郎が善逸と遭遇したときのやりとりの中で使われた自己紹介ですね。「My name=俺の名は」になっています。わかりやすいですね。
もうひとつ、何度も登場していますが、「Your」を使った例。
Your sister is beautiful.
(お前の妹は美人だよ)
Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba Vol.3より
こちらは「Your sister=お前の妹」になっています。
両方とも、
「my+○○(名詞)=私の○○」
「your+○○(名詞)=あなたの○○」
となっており、語順もそのままで、「my=私の」「your=あなたの」と日本語をそのまま変換すればいいだけなのでわかりやすいですね。
実際、この辺でつまずく子はほとんどいません。
なので、これが出てくる中1の前半の英語のテストはみんなすこぶる成績が良い(笑)。
日本語から英語にする問題にもご丁寧に、「あなたの家族は...」とか書いてありますから、日本語的に「あなたの=your」と置き換えて考えればいいわけですからね。
なお、この、「○○の」と訳せる「my」や「your」の仲間は、「所有している」ことを表す機能を持っているため「所有格」と言います。
後ろに説明する対象である名詞がくっつく場合は、「I」や「you」から、「所有格」に進化すると思ってもらってもいいです。
「あなたの=your」とはできない時
とはいえ、これはあくまでも、学校で習う「中学英語」として考えたら、という話であって、「実際に使う英語」「英会話」として考えた場合はそれだけじゃ説明できないことも出てきます。
これは例文を見てもらった方が早いでしょう。
那田蜘蛛山で、命の危機に直面した炭治郎が見た走馬灯のシーンです。
Look, Tanjiro.
(炭治郎 ほら)
Your father is doing a KAGURA dance.
(お父さんの神楽よ)
※look=見る、という動詞(発音)
※is doing a ○○ dance=○○踊りを踊っている
炭治郎の母は、炭治郎の父が踊る神楽のことを、「お父さんの」という言葉で伝えていますが、英語では「your father(あなたのお父さんの)」となっていますね。
原作では「your」に相当する言葉が書かれていないにも関わらず、英語版では追加されたのです。
普通に考えたら、炭治郎のお母さんが炭治郎に言っているんだから、「あなたのお父さんの」と言わなくてもわかりますよね?
でも、英語のルールとしては、訳に「あなたの」と書いていなくても、「あなたの父親」という”意味”であれば「your」は必要なのです。
もう一つ、「your」を使った例を見てもらいましょう。これは、物語の始まりである、第1巻第1話ですね。
家族が鬼に殺され、唯一生き残った妹の禰豆子は鬼になり、さらにそれをなぞの剣士に捉えられて殺されそうになっている炭治郎に対して、謎の剣士こと冨岡義勇が、炭治郎の心の内をおもんばかっているシーン。
Your family is dead and your sister has become a demon.
(家族を殺され 妹は鬼になり)
Your heart is crushed.
(お前が打ちのめされてるのはわかってる)
I know your pain, how you must want to cry out.
(つらいだろう 叫び出したいだろう わかるよ)
※is crushed=くだかれた(発音)
※pain=痛み、苦痛という名詞(発音)
※cry out=大声で叫ぶ(発音)
ちょっとゴチャゴチャしてるので「your」が見やすいように、対訳としてわかりやすいように「お前の」を追加して整理すると…
Your family is dead=(お前の)家族は殺された
Your sister has become a demon=(お前の)妹は鬼になってしまった
Your heart is crushed=お前の心は打ち砕かれた
I know your pain=(お前の)苦痛はわかる
こういう感じになりますが、日本語的に考えたら、こんなにあるのはヘンですよね。わざわざ「your(お前)」ってつけなくてもいいじゃないかと。
でも、英語では全部必要なんです。
くり返しますね。
日本語の「あなたの」だったら一つで済むが、英語の「your」だったら全部必要なんです。
それは、日本語が主語を省略しても文の意味が読み取れるような文章構造になっているからで、英語は文章構造がシンプル*な分、主語は省略できないし、それぞれが独立しています。
*さっきの四つの「your」の文のように切り分けできるのがその証拠。全部「主語+動詞」の似た文章構造になっているが、日本語では文章の形に統一感がありません。
だから、面倒に感じるかもしれませんが、毎回「それは誰の何のことを言っているか」というのを、ちゃんと説明しないといけない義務が生じると言うことです。
だから、意味としては「your=あなたの」ではあるんですが、実際の「使い方」は必ずしもイコールではない、ということです。
「my」も「your」も記号である
そもそも、英語の文章は「主語+動詞」で成り立っているのですから、英語はなんでも、原作に「俺」という言葉がなくても、自分のことなら「I」を使いまくっていましたね。
(Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba Vol.1)
ちなみにこのシーン、原作では一言も「私」に相当する言葉は使われていません。それでも、このシーンだけで7つも「I」が入っているのです。
つまり、日本語的に「私は」という話し方をしているのではなく、あくまでも「自分の○○」という説明のために、「I」という記号を使っているにすぎないということですね。
そして、「my」は「I」の変化したものですから、同じように記号として使えるわけです。
もちろん、「you」と「your」でも同じです。
そうすると、義勇さんの例のように、やたらめったら「your」を使ったりするのも、「あなたの○○」というのを記号(ラベル)として使っているだけで、日本語的に「あなたの○○」と言っているわけではない、ということがわかってもらえるかなと思います。
だから、何回でも使うし、使わないことがあり得ない。
なんでこういう風になっているかをひもとくと大変なので割愛しますが、文化的に、なんでもあいまいな傾向がある日本と、はっきりさせたがる英語圏の違いという風に理解しておくと良いでしょう。
たとえば、神様についての考え方もそうです。
英語圏(アラビア圏も)では神は一人で、「Oh, my god!(ああ、神よ!=なんてこった)」も一人の神のことを表していますが、日本では「神様仏様…」と言ったり、神社に行ったりお寺に行ったり、わけもわからず地蔵を拝んだり、朝日を拝んだり、色んな神がいますよね。
これって一つの神を信じる一神教の人たちからすると、アンビリーバボーな話です。でも、日本人にとって、これは当然の話ですよね。
それと同じように、文化も違えば言葉も違って当然、と思いながら、面倒かもしれませんが、英語圏の人たちのような「ラベル付け」をするため、「my」や「your」を使ってもらえるとよいなと思います。
でないと、たぶん、誰かに取られちゃうんですよ笑。
ジャイアンみたいに「お前のものは俺のもの」みたいな??
ちゃんと誰のものなのかラベルを貼っておきましょう、ということです。
英語には、今回取り上げた「your」や「my」の他にも「our(私たちの)」「his(彼の)」「their(彼らの)」など、いろんな所有格があります。
これは中1で一番覚えなきゃいけないポイントなので、また時間をかけて説明しますね!
本日のまとめ
・テストで「私の=my」「あなたの=your」と判断するのは良いが、英文を書くとき、話すときは日本語の感覚で省略してはいけない
・英語は日本語と違って、くり返しになっても「your」や「my」を省略せず、使えるものは全部使う