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鬼滅の刃で中学英語#43~4つの「わからない」英語表現を比較する
久しぶりの更新になりました。
英語には「わからない」に相当する表現がいくつもあります。
代表的なものとして、
I don't know.
I don't understand.
I'm not sure.
I have no idea.
があります。
これらはすべて、訳すと「わからない」という意味になりますが、じゃあ全部同じかというともちろんそんなことはありません。
ということで、今回は『鬼滅の刃』英語版で、「わからない」の意味を持つこれらの英語表現が、ネイティブ表現としてどうやって使われているのかを見ていきますね。
英語で「わからない」①~「I don't know」
まずは最も有名な、「I don't know=わからない」からご紹介します。
こちらは、前回#42で、一般動詞の否定文「don't」を使った表現の例として、善逸のセリフをご紹介しました。
(出典『Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba Vol.3』/原作『鬼滅の刃』第3巻)
I don't know when I'll die!
(いつ死ぬかわからないんだ俺は!!)
※when I'll die=俺が死ぬであろう時
〈英文訳〉俺には自分が死ぬ時がわからない
「know」が「知っている」という意味なので、それの否定形で「知らない」ということはわかりやすいと思いますが、これに「わからない」という意味があると教えられることもあります。
「know」は中1で習う上、よく出てくる単語なので、英語で「わからない」という時にはついつい「I don't know.」と言いたくなりがちですが、実際には使い方に気をつけなければいけない言葉です。
というのも、「I don't know」は、文字通り、
「don't know=知らない」という意味の「わからない」
だからです。
この善逸の言葉も、死ぬ時期を「知らない」という意味ですね。
他にも、実際に英語で使うシチュエーションとしては、先ほどの善逸の続きのシーンで、
(出典『Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba Vol.3』/原作『鬼滅の刃』第3巻)
I don't know anyone like you!
(お前みたいな奴は知人に存在しない 知らん!!)
※anyone like you=お前のような奴
〈英文訳〉俺はお前のような奴は知らん
このように、ハッキリと「知らん」と伝えるときに使う表現なんですね。
だから、場合によっては相手にイラッとされる可能性もありますので、使うシチュエーションに気をつけて下さいね。
英語で「わからない」②~「I don't understand」
「I don't know」よりも一般的に使われる「わからない」という英語表現は、「understand=理解する」の否定形、「I don't understand」です。
鬼滅英語版で使われていたシーンはこちら、
(出典『Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba Vol.5』/原作『鬼滅の刃』第5巻)
Give me your sister. If you hand her over quietly, I'll spare you life.
(君の妹を僕に頂戴 大人しく渡せば命だけは助けてあげる)
I don't understand what you're talking about.
(……何を言ってるのかわからない)
※understand=理解する、という動詞(発音)
※what you're talking about=お前が語っていることについて
〈英文訳〉俺にはお前の言っていることが理解できない
上弦の伍の鬼、累(るい)が、身を挺して兄をかばう妹・禰豆子を見て、「こういう、家族のために動ける家族が欲しい!」と思って、「妹を頂戴」と炭治郎に真顔で提案したシーンですね。
原作では「……」を使っているように、炭治郎が累の言っていることが一瞬理解できないから間があったんですね。
だから、「理解できない=don't understand」という翻訳となり、
「I don't understand=理解できない」という意味の「わからない」
になっているんですね。
なお、人気芸人コンビ、サンドイッチマンのネタ、「ちょっと何言ってるかわかんないです」ですが、これも、「I don't understand」を使って、
「I don't understand what you are saying.」と訳されています。
これも、同じように「言っている意味が理解できない」という意味での、「わからない」だからですね。
つまり、言っていることに対して「わからない」という時は、「I don't understand=理解できない」を使うのが一般的なんですね。
そこで「I don't know」を使ってしまうと、理解する気も始めからなく、「知らん」という意味になっちゃうので、キツく感じられる、というわけです。
あくまでも自分が理解できないだけと言う方のほうがカドが立たないですよね?
英語で「わからない」③~「I'm not sure」
ここまでは、「don't」を使った一般動詞の否定形での「わからない」をご紹介してきましたが、「be動詞」を使った「わからない」もあります。
それが、「I'm not sure」。
「sure」というのは、「確かな」「確信している」という意味の形容詞です。
形容詞の否定形なので、「I don't」ではなく「I'm not」になるんですね。
文法上は実にわかりやすいです。
でも、じゃぁ、どういう時に「I'm not sure」と使うんでしょうか?
使われているシーンを見てみましょう。
(出典『Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba Vol.6』/原作『鬼滅の刃』第6巻)
Uh... I'm not sure about this.
(あのぉ でも疑問があるんですけど…)
これは、炭治郎が柱の前に連れてこられて、鬼をかばった隊律違反の罪で、死刑になりそうな時に、甘露寺さんがボソッとつぶやいた一言です。
確かに鬼をかばうことはいけないことだけど、2年前に鬼になった妹を連れ歩く鬼殺隊士のことを、何でもお見通しのお館様が知らないはずないと思うので、その点が疑問、というか謎、というか「わからない」という意味で、「I'm not sure」を使っているんですね。
つまり、「don't know=知らない」や「don't understand=理解できない」という「考える」という行動の結果の「わからない」と違って、あくまでも自分にとって
「I'm not sure=確信を持てない」という意味の「わからない」
なんですね。
だから「don't」ではなく、状態を表す「be動詞」の否定形(この場合はam not)を使って「わからない」としているんですね。
英語で「わからない」④~「I have no idea.」
こちらは「not」の入らない、「わからない」という表現です。
動詞の「have」は、「持つ」という意味よりも「有る・有している」という意味で考える方がよいですね(詳しくは#38に)。
「no」は、「not」と同じく「ない」という意味ですが、数として無い(=ゼロ)ということでもあります。
文法上は「not=副詞」で、「no=形容詞」なので、名詞を続ける場合(この場合は「idea」)は「no」を使います。
「idea」は、日本語でも使う「アイディア」ですが、他にも「考え」「思いつき」とかにも使います。名詞であって、動詞ではないです。
なのでこの場合は、「no idea=考えが何もない」を「have」している状態なので、
I have no idea.
↓
私には何も考えがない
↓
わからない
なんですね。
「ない(no)がある(have)」というのは、日本語にはない、英語ならではの表現ですね。
実際に使われているシーンがこちらです。
(出典『Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba Vol.4』/原作『鬼滅の刃』第4巻)
Do you know how to forge a Katana?
(刀の打ち方を知ってるか)
※how~=~する方法、という副詞
※forge=鍛える、という動詞(発音)
No, I have no idea... but if you keep hitting me, I'm gonna cry.
(知らんよ ずっと叩くの? 泣くよ俺)
※if you keep hitting me=俺を叩き続けるなら
※I'm gonna cry=泣きます(gonnaはgoing toの簡略形)
善逸の回想シーンで、育手である「じいちゃん」にボカボカ叩かれながら、「刀の打ち方(作り方)を知ってるか」と聞かれ、「知らんよ」と思ったセリフを「I have no idea」と訳しています。
武士でも何でもない善逸ですから、刀の打ち方なんて知らないのは当然ですが、それをそのまま「知らない=I don't know」とするのではなく、理不尽にボカボカ叩かれて質問されるから、そんなこと考える気にもならないわけですね。
その結果、「知らんよ=I have no idea」になったんですね。
「I have no idea=思いつかない」という意味の「わからない」
なんですね。
「no」は「無」ですから、「まったく見当がつかない」「1ミリもわからない」時に使うのが、「I have no idea」ということです。
全部一緒じゃない!
ここまで、4つの「わからない」をご紹介してきましたが、いかがでしたか?
「don't」を使う表現は、一般動詞の否定だから「できない」という意味の「わからない」。
「be動詞+not」を使う表現は、形容詞や名詞の否定だから「そうじゃない」という意味の「わからない」
「no」を使う表現は、そもそも「ない」という意味の「わからない」
ということですね。
日本語でも「わからない」という言葉は、漢字を加えて「判らない」「解らない」「理解らない」みたいな使い方をしたり、同じような言葉でも状況によって表現が変わりますよね?
英語も同じように、状況に応じた表現があり、その時々で最適な言葉を使うのが一番ベストです。まぁ、中学英語にそこまでは求められませんが……。
こういったことを学べるのは、生きた英語、「ネイティブの表現」です。つまり、英語ネイティブの人向けに書かれた文章ですね。
そういう意味で、「マンガの翻訳本」というのは、表現の幅を拡げてくれるので勉強になるワケです。
本日のまとめ
・英語の「わからない」にも色んな表現があって、相応しい使い方がある
・I don't know=わからない(知らん)⇒出来ない系
・I don't understand=わからない(理解できない)⇒出来ない系
・I'm not sure=わからない(確信がない)⇒そうじゃない系
・I have no idea=わからない(考えられない)⇒ない系