世界各地の紛争地で調停役を務めてきた東京外国語大学教授の伊勢崎賢治さんの最新のインタビューでこう言われている。
特に詳しいのがこちら。
全文を読んで理解できたのだけど、まさか、この熱狂が戦争を終わらせることの障害になっているなんて思いもしなかった。
インタビューを読んで、大切だと思ったのはここ。
民主主義は多数決ではない。少数意見の尊重との二本柱ということ。実際、米国大使館のサイトにも民主主義の原則が紹介されていた。
そして、伊勢崎さんは、僕らが感情的になり、少数派を排除することを引き起こしていると言っている。
多数決の原理と少数意見の尊重が、民主主義の両輪だというのはどういうことか。もう少し詳しく書いてあり、それを要約すると以下。
多数決の原理は、政府を組織し、公共の課題に関する決断を下すための手段であり、抑圧への道ではない。民主主義国においてさえも、多数派が、少数派や個人の基本的な権利と自由を取り上げることがあってはならない。
いかなる少数派である人でも、基本的人権は保障され享受できる。民主主義政府が必ず保護しなければならない基本的人権には、異議を唱えることも含まれる。
少数派は、政府が自分たちの権利と独自性を擁護してくれることを確信する必要がある。それが達成された時、その少数派集団は、自国の民主主義制度に参加し、貢献することができる。
多数派の目に異様とはまでは映らなくても、奇妙に見える民族や文化集団を受容することは、どんな民主主義政府も直面しうる難しい課題のひとつである。しかし、民主主義国は、多様性が極めて大きな資産となり得ることを認識している。民主主義国は、こうした独自性や文化、価値観の違いを脅威と見なすのではなく、国を強くし豊かにするための試練と見なしている。
少数派集団の意見や価値観の相違をどのように解決するかという課題に、ひとつの決まった答などあり得ない。自由な社会は、寛容、討論、譲歩という民主的過程を通じてのみ、多数決の原理と少数派の権利という一対の柱に基づく合意に達することができる。そういう確信があるのみである。
今この少数意見の権利、排除しないということこそ、あらゆる場所で起こっている紛争を解決する鍵なのではないかと思う。
民主主義の2本柱の一つの少数意見の権利・排除しないということがなぜ、社会実装できていなかということだ。
これは理念を唱えるだけでは難しい。
そこに取り組んでいるNVC(非暴力コミュニケーション)と、プロセス指向心理学(プロセスワーク)のディープ・デモクラシーについて触れたい。
NVC(非暴力コミュニケーション)の書籍では、これを、対立への向き合い方だと紹介されている。
2021年冬に日本語訳が発売された『「わかりあえない」を超える』(著者 マーシャル・ローゼンバーグ、訳者 安納献、今井麻希子、鈴木重子)の前がきに、とても感動させられた一節がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/4909934014/
以下、2005年7月のロンドン地下鉄同時爆破テロ後のデヴィッド・ハート 紛争解決協会(ACR)CEOの言葉。
対立や紛争は健全なもので、根絶するものではない。それよりも、対立への向き合い方を深めていくことが、社会創造なんだ。
これは日々の会話や会議の中にある。それが、アーノルド・ミンデルの著書で、分かりやすいエピソードで紹介されていた。
理論物理学とユング派心理学をバックボーンにもつアーノルド・ミンデルは、1988年に、ディープデモクラシーを提唱している。
彼は、少数派の権利を確保する法律が制定されたとしても、社会の実態は相変わらず多数派の原理によって動き続けることが多い。2つの柱を持つ民主主義の理念は素晴らしいが、それだけでは足りないとミンデルは考えた。
彼は、少数派の意見はもちろんのこと、自分自身の中にある強い感情・価値観だけでなく、現れ出ようとする自分の中の何かにも注意を払うこと、自分の中で、周縁化された感情・価値観に気づくことを唱えている。
2021年末に日本語訳が発売されたアーノルド・ミンデルの
『対立を歓迎するリーダーシップ 組織のあらゆる困難・葛藤を力に変える』より
前書きより抜粋
対立を歓迎し、そこから大いなる変容への旅路を歩む
パンデミックでより複雑化した現代社会において、対立と変容と扱う達人・ミンデルからの力強いメッセージ
「対立を歓迎し、そこから大いなる変容への旅路を歩む」
個人の変容、組織の変容、世界の変容を本気で考えている方に届くとうれしい。
僕が好きな動画アーノルド・ミンデルがワールドワークについて語ってくれています。Black Lives Matter の事例です 12:45からの数分をどうぞ。