「小5のときに勉強はしないと決めた」 AI研究者が語る!AI時代に最も必要な力、教育。STEAMじゃない。
AI技術はどこまで進化していくのか? 本当に半分の仕事がAIで置き換わってしまうのか? そのような時代にはどんなスキルが求められるのか? など、上映会そして、専門家の話を聞き、参加者の皆さんと語り合うダイアログを開催しました。
スピーカーの小林由幸さんはAI業界で著名な方!豪華な顔ぶれです。
映画"Most Likely To Succeed"は、AI時代に必要な教育をおったドキュメンタリー** **
10~20年後、米国の総雇用の47%がAIなどで自動化されるリスクが高いという英オックスフォードによる衝撃の研究結果。囲碁AI"AlphaGo"がトップ騎士に勝利。2045年にはシンギュラリティ(人工知能が人間の知能を超える技術的特異点)が起きるという予測。子どもたちが大人になる時代にはどんな世界が待っているのでしょうか。そのような時代、どんな能力が求められるのでしょうか。
映画"Most Likely To Succeed"は、AI, Roboticsが生活に浸透していく21世紀に子どもたちに必要な教育は?というテーマで、プロジェクト・ベースド・ラーニングを行うアメリカ西海岸のチャータースクール・ハイテクハイの高校の生徒を追いかけた「未来の教育のあり方を問うドキュメンタリーですが、ビジネスの世界でこれからの時代に求められるスキルを考えるうえでも多くのヒントがある映画です。
https://www.youtube.com/watch?v=Ze5zNYSiIKM&feature=youtu.be
映画の内容のエッセンスは、下記スライドから分かっていただけるかと思います。(映画の学校以外についても記載していますが)
https://speakerdeck.com/tkimura12/shi-jie-deqi-koruxue-bifalsege-ming-orutanateibujiao-yu
技術的進歩がなくても今後データが増えればAIの性能は伸び続ける
小林由幸:ディープラーニングは、人が一生かけても触れることができないほどの膨大な量のデータから学習することで、非常に高い性能を実現する。
浦野:実際、Facebookに投稿しての顔認識もそう。技術的にはそれほど新しいものではない。
小林由幸:ディープラーニングは、学習に用いるデータを増やせば増やすほど性能が向上するという特徴を持っている。学習に用いることができるデータの量は今後指数関数的に伸びる。つまり仮に技術的な進歩がなかったとしても、データの増加にしたがって性能は向上し続けると考えられる。
人間より100倍生きて多く学習したイキモノ?!
浦野:例えば、乗客予測するナビ付きのタクシー。AIの指示通りに運転していると、面白いようにお客さんを拾える。AIの予測は、開発者にもなぜかわからない。人が一生通じて学べない量を学べる。さらに、ロングテールにも強い。例外的なものも学べる。
小林由幸:例えば人間が一生をかけて触れる量の100倍のデータから学習したAIは、人間よりも100倍生きて多く学習したイキモノのようなもの。人より高い性能を示すし、その背景にあるロジックは人間には理解できないほど複雑。
人間の仕事がAIに置き換わる?
浦野:オズボーン氏の論文『雇用の未来』の中で、コンピューターに代わられる確率の高い仕事が紹介された。
”2013年9月、オックスフォード大学のカール・ベネディクト・フレイ博士とマイケル・A・オズボーン准教授は、アメリカにおいて10~20年内に労働人口の47%が機械に代替可能であるという試算を発表しました。日本に関しては、野村総合研究所が先述の両氏と研究を行ない、労働人口の約49%が就いている職業において機械に代替可能と試算しています。”
「AIが本当に人間の仕事を奪う?「自動化(RPA)」が創出する企業の未来」https://www.axa.co.jp/100-year-life/business/20190619/
浦野:もう一つ知っておいたほうがよい論文がある。ドイツ人のアーンツ氏によるもの。タスク(作業)は減るが、ジョブ(職)はそこまで減らないとうのが彼女の結論で、オズボーンの論文よりも現実味がある。
”ドイツのZEW研究所は、フレイ博士&オズボーン准教授の発表を受けて、新たな雇用の創出を検討せずに再試算。10~20年内の労働人口における機械代替の可能性について、アメリカでは9%、ドイツでは12%と発表しました。
なぜこれほどの差異が生じたのでしょうか。フレイ&オズボーンが「職(ジョブ)」ごとに代替可能性を推計したのに対し、ZEW研究所は「職」、「仕事(ワーク)」、「作業(タスク)」という概念を導入したため。ひとりの労働者が行っている作業の一部が機械に代替されても、その一人がすぐさま職を失うことにはならないことを示しています。”
「AIが本当に人間の仕事を奪う?「自動化(RPA)」が創出する企業の未来」https://www.axa.co.jp/100-year-life/business/20190619/
仕事がなくなると困るのか?どうなるのか?
小林由幸:仕事がなくなるというとネガティブに聞こえるが、仕事がなくなって楽になるなら機械にやってもらうのでいいのではないか。それを踏まえての社会のありかたを考えるべき。
浦野:子どもが将来就く職業はもう親としては分からない。おそらく今の私が知らない仕事をするだろう。好奇心もって没頭できることを見つけてほしい。
小林由幸:給料ではなく、ベーシックインカムになってもよいと思う。生活が保証されたうえで、好奇心を持って没頭できる、アート寄りの活動を行う。人が行う仕事はそういう分野にシフトしていくのではないか。
「私自身は小5のときに勉強はしないと決めた」
小林由幸:私自身は小5のときには詰め込みの勉強はしないと決めて、それ以来していない。自分の興味あることにだけ注力するようにしてきた。
自分の興味のあることは一瞬で身につくので、非常に習得効率が高かったと思う
また、世の中の変化は加速し続けている。学生時代までに身に着けた知識だけで、一生やっていけるわけはない。
だから生涯、常に学び続けることが必要だが、苦痛を伴う学びは続けろと言っても続かない持続的な学習のためには、興味あることを楽しんで学ぶという習慣をつけることが効果的。
STEM教育はもう古い!?
浦野:Googleの最高のマネジャーになるための8つの習慣を明らかにした「プロジェクトOxygen」も参考になる。
最近はSTEM教育のような特定分野のスキルを重視する教育の見直しが言われ、ソフトスキルが注目されている。この映画のテーマでもある。STEM教育自体が20年くらい前に唱えられたの教育方針であって、AIの存在がまったく考慮されていない時代のもの。
グーグルが2009年に実施した社員対象の大規模調査「プロジェクトOxygen」より
■最高のマネジャーになるための8つの習慣 (by プロジェクトOxygen)
習慣1 よいコーチであれ。
習慣2 部下に権限を委譲せよ。マイクロマネジメントはするな。
習慣3 部下の成功と幸せに関心を持て。
習慣4 くよくよするな。生産的で結果志向であれ。
習慣5 よいコミュニケーターであれ。そしてチームの声を聞け。
習慣6 部下のキャリアについてサポートせよ。
習慣7 明確なチームのビジョンと戦略を持て。
習慣8 チームにアドバイスができるように技術的なスキルを磨け。
習慣1から順に、最高のマネジャーとしての最重要順、必須順。
「グーグルが出した「最終解」 理想のリーダーとチーム」https://style.nikkei.com/article/DGXMZO48146440S9A800C1000000/
正解がわかればAIで評価できる。でも正解は分からない
Q.子供たちのコミュニケーション力、問題解決能力など人の持つソフトスキルの評価をAIを用いて行うことは可能ですか?
小林由幸:ソフトスキルのゴールを定義することができるかどうかがカギになる。例えば将来高い給料もらえることを正解だとすれば、AIによって将来の給料を予測させることはできる。しかし高い給料を得ることが指標として正解かどうかはわからない。
今まで1年かかて習得してきた知識を数ヶ月で学習できる理由
Q.今まで1年かかって習得させてきたような知識も、今なら1ヶ月、3ヶ月で学習できるという話がありました。なぜ、そんな短期間が身につくといえるのですか?
小林由幸:AI教育に取り組んできて、ツールを使って実習形式でやると定着率が大きく向上することがわかった。さらに今はYouTubeで講義動画を流している。10分程度の動画が数十本。こういったものを利用することで自分の興味あるところだけ集中的に学ぶことができるためさらに効率を上げることができる。
Neural Network Console Youtubeチャンネル
(ディープラーニング入門動画など)
https://www.youtube.com/channel/UCRTV5p4JsXV3YTdYpTJECRA
人が持つ何がやりたいのかという意思が重要
小林由幸:AIは人が集中して好きなことをやるための非常に強力な道具になる。何をやりたいかという意思が人間にあり、それを手伝うのがAI。
そうなった時、人の持つ何がやりたいかという意思が非常に重要になる。
小林由幸:今の同じ知識を持った子供を量産する工場のような教育では、今後重要性の高まる「自分が何をやりたいかを見出す力」は伸ばせない。
だから、何をすべきかを教えるのではなく、子供の意思や興味を邪魔しないこと。
何が好きなのか、何をやりたいのか、一番最後まで必要とされるスキルはそういった意思の力になる。
登壇者:
小林誠司(ミライプラス/Brightening the Future主宰)
大手電機メーカーにエンジニアとして入社。画像処理等の研究開発(社内MVP受賞)、医療機器の開発マネジャー等を歴任後に「教育」に関わるために人事に異動。2019年末に退職して独立。「社会」と「教育」をつなげるために活動。ビガーゲーム認定トレーナー。
https://www.facebook.com/groups/444233106405141/
浦野真理さん
AIベンチャーにて研究職に従事。個人活動として「URL(ユニバーサル・リサーチ・ラボ)」を2016年に立ち上げ、これまで人工知能、ポスト資本主義、サーキュラーエコノミー、北欧教育などの勉強会やワークショップを開催。ドキュメンタリーの自主上映会「URLシネマ」、本を読まずに参加できる読書会「Booked」の運営メンバーとしても活動中。
小林由幸さん
1999年ソニー入社後、2003年から機械学習技術の研究開発を始め、音楽解析技術「12音解析」コアアルゴリズム、認識技術の自動生成技術「ELFE」等を開発。近年は「Neural Network Console」を中心にディープラーニング関連技術・ソフトウェア開発を進める一方、機械学習普及促進や新たなアプリケーション発掘にも注力。
いかがでしたでしょうか。
イベントのトークの全てをお届けはできませんが、昨日の登壇者の皆様のご協力もあって、登壇者のみなさんがお話しされたことをまぁまぁ正確に載せることができました。
AIとかロボットとかをよく分からない私たちは、もしかしたら、子どもに対して、「これからはAI時代だぞ。そんな好きなこととかばっかりやらずに、プログラミングをやりなさい! とりあえず、毎日我慢して訓練したらできるようになるよ。あと、学校や塾でプログラミングを教えてくれないの!プログラミングの試験をしてくれ~」なんて思いそうですが(まぁ、そこまでは思う人はいないですよね?)、
AI研究者らから、「何が好きなのか、何をやりたいのか、熱中できることに没頭してくれ。正解なんてわからない。まずはあなたの意志だ」と言われることほど心強いことはないですよね!
正解はない、信じて見守る。人は機械じゃない。そんなことを今後もいろんな切り口から感じられるイベントをつくっていきたいと思いました。
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https://www.facebook.com/NagatachoGRID/
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イベント情報はこちらからも受け取れます!
NagatachoGRiDのイベント情報などのニュースレター
https://www.gaiax.co.jp/community/
小林誠司さんが特にAI時代の教育など中心に提供!
2020年2月22日にも上映会がありますよ!
https://www.facebook.com/groups/444233106405141/