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Netflixドラマ『Wave Makers 〜選挙の人々〜』の感想

少し前に話題のNetflixドラマ『WAVE MAKERS 〜選挙の人々〜(原題:人選之人~造浪人~)』が面白かったので、ネタバレしない程度に感想をメモ。

1.概要

  • 一言でいえば、台湾総統選挙までの10か月を野党広報部門の目線で描いたドラマ。

  • 謝盈萱(Hsieh Ying-xuan)演じる主人公・翁文方(ウェンファン)は新北市市議を一期務めたものの、色々あって再選できず、立法委員(国会議員)である父のコネで政党広報部副部長に。タイトルの「Wave Makers」とはウェンファンを含め、選挙運動のうねり(波)をつくる人々のこと。

  • 作中では総統選そのものはもちろん、同性婚、共働き家庭の苦労、死刑制度、環境問題、セクハラ、リベンジポルノ…etcと現代台湾が直面(?)する問題を扱う。

2.特徴

このドラマは台湾の選挙キャンペーンをかなりリアルに描いているらしい。台湾政治の専門家もプッシュする。

同ドラマの内容、登場人物たちの軽妙な会話や人間関係の在り方は、台湾政治や社会の一面をかなりリアルに体現しており、筆者も自信を持って視聴を推薦できる連続ドラマである。

石原忠浩「有力政党の総統候補が内定、鄭文燦行政院副院長の訪日(2023年4月中旬-2023年6月下旬)」『交流』No.988(2023年7月)、7-14頁。

作中、台北市内・総統府前の凱達格蘭大道で開催された政治集会は、過去に自分が参加した実際の政治集会そのものだった(トップ画像=2020年総統選投票日前夜の民進党の政治集会を参照)。もちろん実際の政治集会の方が人口密度が高く、熱気もすごいけれど、ドラマから台湾選挙の「お祭り」感は伝わってくる。

3.作中と現実の二大政党について

『Wave Makers』では公平正義党(公正党)と人民党という二大政党が登場する。いずれも党主席(党首)は女性で、主人公らが所属するのは野党・公正党、現政権・与党は人民党。

作中の二大政党と現実の二大政党(民主進歩党、中国国民党)の関係はあからさまではないが、おそらく公正党は民進党をモチーフにしているのではないかと感じた。その理由として、

  • 公正党のシンボルカラーは黄色と緑色(黄色が主っぽいが、緑色もちょいちょい強調。グリーンパーティ=民進党)

  • 公正党の政策が民進党に近い?

  • 公正党のある政治集会の開催場所(凱達格蘭大道ではない場所)が民進党党本部前っぽい?(これは勘違いかもしれない)

  • そもそも公正党と人民党という政党名が、それぞれ民進党と国民党を意識しているっぽい

この辺は素人の推察なので、プロの見解を聞いてみたいところです。

なお、人民党から副総統候補として出馬する立法院長・趙昌澤氏の雰囲気が(現実の)副総統・民進党主席で次期総統候補の頼清徳氏に似ているような。もちろんダンディーなイケメンという点は共通するが、頼副総統はあんなダメ男ではないはずだ。

4.現実世界との関連

『Wave Makers』第1話は2023年4月に公開された。第1話は総統選まで残り10か月という設定で、これが実際の次期総統選・立法委員選(2024年1月)のタイミングとほぼ重なり、台湾内で大きな話題となった。その影響なのか、実際、5月末に民進党元職員がセクハラを告発。台湾版#MeToo運動に発展した。
ただし、これは因果関係が逆かもしれず、『Wave Makers』制作陣が民進党への取材過程でセクハラ問題を知る機会があったということかもしれない。

またドラマでは終始、公正党の林月真・党主席が力強いリーダーシップを発揮する。この林主席を演じた賴佩霞(Tammy Lai)氏は、本当に2024年正副総統選に出馬予定らしい。無所属で総統を目指す鴻海精密工業創業者・郭台銘(Terry Gou)氏が彼女を副総統候補に指名した。

5.その他

  • 王淨(Gingle Wang)演じる公正党の若手職員・張亜静(ヤーチン)はとても魅力的なのだが、行動派でなんとも形容しがたい。流石に●●の娘に正体を偽って接触するのはヤバイ。なお作中での彼女の実家は宜蘭県頭城鎮大里。

  • 両岸関係(台中関係)は総統選で避けて通れぬテーマにも関わらず、ドラマでは一切触れられていない。この点に批判的な人もいるようだが、エンターテイメントとして成り立たせるには、触れないのが賢明だろう。

  • カラオケのシーンが2回あり、いずれもめちゃくちゃ楽しそうだった。


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