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noteで学べるシステマ講座 第46回「倒れるは楽しい」

noteで学べるシステマ講座
第46回「倒れるは楽しい」

最悪を想定する。

私がシステマを学び始めた頃に教わった考え方です。最悪の事態を想定して、そこから逆算して練習を組み立てます。

その時は首を絞められた状況から逃げ出す練習をしました。首を絞められるのを防ぐのではなく、絞められたところで1秒でも時間をかせぐ練習から、徐々に脱出する練習へと移行しました。2007年くらいのマーティン・ウィラーのセミナーだったと思います。

最悪を想定する

システマでは、ストライクもナイフも「当たる」という前提で考えます。決して鉄壁のディフェンスで防御しぬけると考えたりしません。どんな達人でも必ず、攻撃を食らうことがあれば、倒れることだってあると考えます。そのまま蹴り回されて立てないこともあるでしょう。

最悪の状況は必ず起こる。引き寄せの法則的には「最悪の状況を考えたら、その状況を引き寄せてしまうよ」なんて言われてしまうかも知れません。でもあえてシステマでは最悪の状況を想定し、致命傷を重症に、重症を軽症に、軽症を無傷にする練習をするのです。「大難を小難に」の思想です(出典を調べてみたら「大難を小難に、小難を無難に」はもともと日蓮宗の教えみたいですね。詳しい方がいたら教えてもらえると嬉しいです。)。

だからストライクやナイフの練習は、攻撃が身体にあたったところから練習しますし、地面に倒れるローリングの練習が大切になります。

私はもともと空手や古武道といった、いわゆる「立ち技」がメインだったので、倒れることに抵抗がありました。システマを始めたころも、とても苦労したのがグラウンドワークです。当時は公園で練習していたので、地面がゴツゴツして痛いし服は汚れるし、何より疲れます。帰宅してお風呂で頭を洗うと、髪の毛にはさまった砂がジャリジャリと落ちてくるような有様でした。

それでグラウンドワークには苦手意識があったのですが、「苦手分野こそ伸びしろだ」と思い直して、重点的に練習をしたらいつの間にかに得意分野になっていました。トロントやモスクワの本部では自分よりずっと大柄な生徒と取っ組みあったりしますが、グラウンドワークならだいたいコントロールできるのでとても重宝してます。体格のハンデを比較的埋めやすいのも、グラウンドワークの魅力です。

ただクラスでリードをしていると、倒れることへの抵抗や、立つことへのこだわりが見受けられることがままあります。痛いし、心理的にもきついし、その気持ちはよく分かります。

「最悪を知る」という観点から、倒れてもダメージを最小限で済ませ、すぐ安全な状況へと復帰する練習はとても大切です。でもそれ以上に、グラウンドワークは楽しいのですよね。倒れることを避けたまま、グラウンドワークの魅力に気づかずシステマを続けるのでは、楽しさが半減してしまうのではないかと思います。

なので今回は「最悪を知る」ことを通じて、「倒れる楽しさ」について書いていこうと思います。

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