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システマで学ぶリスクマネジメント
ゼロリスクという幻覚
名越康文さんがシェアしていた記事をTwitterで共有した。
この記事に「ゼロリスク」という言葉が出てくる。
リスクをゼロにする、という考え方だ。その善意が、人を家畜にしていくということが書かれている。
今回の騒動での最大の発見は「世の中には『自分は死なない』と思っている人があんがいたくさんいる」ということだ。死なないってゾンビかよ笑https://t.co/ynjBxGwnWG
— 北川貴英 システマ東京 (@systemaTYO) April 15, 2020
「万が一のことがあったら」「念の為」と言って、発生確率が極めて低いことのために、過剰な対処をする。だが危険はゼロにはならない。交通事故がゼロになることはない。ゼロにするには、自動車を全面的に禁止するしかない。それをやってしまうと経済的なロスが計り知れないから、交通事故のリスクを受容しながら、自動車を使い続けるのである。これを「リスクに対して、コストが大きすぎる」と考える。
このゼロリスクの発想が行き過ぎると、コストについて考えず、とにかくリスクをゼロにしようとする。つまり「交通事故をなくすために自動車を禁止せよ!」みたいなことを言い出す。そうするわけにはいかないから、リスクのマネジメントが必要になる。
上記の記事を読んで思ったのは、「もしかしたら、世の中にはリスクマネジメントについてよく分かってない人がけっこういるんじゃないか」ということだ。
システマというリスクマネジメント
僕はシステマを通じて、リスクマネジメントのなんたるかを文字通り「叩き込まれた」ように思う。
そこでリスクマネジメントをシステマに置き換えてみよう。
リスクマネジメントについては、中小企業庁の白書で次のようにまとめられている。
システマでは「全ての攻撃を避けられるわけではない」と教えられる。つまり「ゼロリスクはありえない」「どんなに優れた戦士でも、必ず攻撃を食らうリスクがある」という前提に立つ。
白書によると、リスクマネジメントは「リスクコントロール」と「リスクファイナンシング」に大きく2つに分けられる。
ざっくり言えばリスクコントロールとは「殴られる頻度を減らす」と「殴られた時のダメージを最小限にする」だ。
「リスクファイナンシング」は「殴られた後の回復」だ。
そのまんま、システマである。
上記の表にシステマを代入して書き換えてみよう。
システマ的リスクコントロール
回避…リスクを伴う活動自体を中止し、予想されるリスクを遮断する対策。リターンの放棄を伴う。
システマ的解釈…システマのトレーニングに参加しない。それによってストライクを受ける機会そのものをなくす。練習による成長というリターンを放棄することになる。リターンの放棄はコストである。
損失防止…損失発生を未然に防止するための対策、予防措置を講じて発生頻度を 減じる。
システマ的解釈…練習を通じて適切な位置取りを身に着け、ストライクを受ける頻度を減らす。
損失削減…事故が発生した際の損失の拡大を防止・軽減し、損失規模を抑えるための対策。
システマ的解釈…リラックスすることで、ストライクのダメージを軽減する。ストライクを受けながらも止まることなく、動き続けられるようにする。
分離・分散…リスクの源泉を一箇所に集中させず、分離・分散させる対策。
システマ的解釈…一箇所に留まって集中的に殴られるのではなく、常に動き続けて打たれる部位を散らす。
システマ的リスクファイナンス
移転…保険、契約等により損失発生時に第三者から損失補てんを受ける方法。
システマ的解釈…マッサージなどで、他者の助けを得てリラックスし、受けたダメージを和らげる。
保有…リスク潜在を意識しながら対策を講じず、損失発生時に自己負担する
方法。
システマ的解釈…ブリージングやバーストブリージングなどで、自力でストライクのダメージを排出する。
もうシステマでしかない。中小企業庁が白書を通じて経営者たちにシステマを教えているんじゃないかと思えてしまうほどだ。
コストを加味する
ここにコストの考え方も入れてみよう。
コストとは要するに「システマによって得られるもの」と「システマによって失うものの」の引き算で考えられる。
上記のようなリスクマネジメントや教養、体力、スキル、人脈などシステマによって得られる価値が、参加費や練習時間などシステマのために消費するものの価値を上回るなら、やる価値があると考えることができる。
価値とは金銭に限らない。幸福とかQOLとか、その人がより納得のいく人生を歩めるか、といったことなんじゃないかと。
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