解毒
コンサートホールの外壁の看板をバックにこっそり自撮りして、猫背で画像を確認しながら帰ろうと思ったら、撮りますか?と声をかけてくれた方がいた。
まさか見られているとは思わなかったので、あっ、はっ、へへ、とうすら笑いを浮かべ、大丈夫です、ありがとうございます、と答えて相手をみると、にっこり手を差し伸べてくれていた。
天使かな?と思うくらいその女性は姿勢良く控えめに立っていたので、一瞬これはやっぱり頼んだ方がいいのかな、と考えたけど、実際コンサートホールの名前と自分の写真なんて必要なかったのになんで自撮りしてたんだろうと感謝を伝えお断りした。今考えたら天使とツーショットすれば良かったのか。
そのまま立ち去るのもなんなので、ライブ、めっちゃ良かったですね、なんてコンサートホールを指をさして言ってみた。ねー、なんて言ってくれたのか覚えていないぐらいちょっとおばちゃん過ぎたかなと恥ずかしくなって、お辞儀をして信号まで小走りで去った。途中、ちょっとスキップみたいなステップになっちゃったのも見られただろうか。
こんなご時世じゃなく、もうちょっとわたしが若かったらお友達になれたりしたのかな、なんて想像しながら駐車場までの道を鼻歌歌いながら早足でぐんぐん歩いた。
余韻のまま無音で帰るか爆音でおさらいしながら帰るか迷って、やっぱり熱唱して帰った。
この心が良いものだけで満たされている状態がずっと続くといいのに。
あの天使はHELP EVERだったけど、わたしはHURT NEVERできてたかな。
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