2021最難関国立大学入試分析④-1-2 大阪大学(文学部以外)大問1(問4~問5)
この記事の続きです。
この熱量で書き続けるのは楽しいけれど、難しい。来年の受験生に少しでも役立つといいなあ。
問4 理由記述
<プランニング>
① 傍線部=結果
理由説明問題は傍線部(や設問)に結果があり、その原因(=理由)を考えていく問題。今回は「著者のことなどどうでもよくなった」結果に対する理由である。
② 傍線部の分析
①をふまえて傍線部をもう少し整理する。
☆「ネガティブ・ケイパビリティをしってからは」
つまり、「ネガティブ・ケイパビリティ」の持つ意味が「著者の名前」などよりも大きなものであったことを説明できれば良い。
上記の内容について触れているところを本文中から探し出す。
理由問題はある程度の構造を作ったうえで本文から根拠を探すといい。
<構文>
ネガティブ・ケイパビリティという言葉を知ったことが○○という大きな意味を持っていて、発言者の名前など取るに足らないように思われたから。
あとは○○の部分を埋めていけばよい。
<解答への手順>
○○の部分は20段落にある。
<20段落>
・ネガティブ・ケイパビリティという言葉が、その後もずっと私を支え続けています。
・この言葉を思い起こすたびに、逃げ出さずにその場にい続けられたのです。
・私を救ってくれた命の恩人のような言葉です。
筆者の感情的な言葉が多いのでこれらを抽象化しよう。
<抽象化>
☆1(ネガティブ・ケイパビリティという言葉が)筆者にとっての心の支えとなっていたから。
しかし、これだけでは「著者の名前などどうでもいい」という要素に対する因果関係ができていない。
ここを詰めていくと、著者=ハーバード大学医学部精神科に属する人物らしい。
すると、医師として大事なのではなく「人間として」感銘を受けたことになる。ここから、
☆2 (ネガティブ・ケイパビリティという言葉が)医学上の重要概念にとどまることなく人生における重要な概念であると感じたから。
そして、☆1と☆2を組み合わせる。
<タケガワなりの解答>
ネガティブ・ケイパビリティという言葉は医学上の重要概念に留まるモノではなく、人生において重要な心の支えとなると思えたから。(61字)
やや少ない。字数は満たしているが。ちょい足しをしよう。
これに付け加える要素としては、「筆者自身が精神科医として不安にあった」という問二で検討した内容を添加すればよい。その上で字数を調えると…
精神科医として不安を抱えた時期に出会ったネガティブ・ケイパビリティという言葉は医学上の重要概念に留まるモノではなく、人生において心の支えとなると思えたから。(78字)
問5 理由説明/要約的内容
<プランニング>
① 条件の確認
・「ネガティブ・ケイパビリティ」を発揮することは困難だが必要である理由
A 困難である → 難しさについて記述されている箇所を探す。
B 必要である → Aを踏まえてそれでもなお必要な理由について考える。
・裏返しの能力についての検討
「ネガティブ・ケイパビリティ」の裏返しの能力とは何か。23段落以降にある「分かる」ための能力である。
そしてこの「分かる」能力についての短所(a)と長所(b)を検討する必要がある。
書くべき情報をまずは整理していこう。
②構文を考える
ここから構文をつくると、以下の通りになる。
<構文>
「分かる」能力にはbという長所があるが、aという短所があるのに対して、「ネガティブ・ケイパビリティ」にはAという困難があるがBという必要性があると言えるから。
<解答への手順>
① 「分かる能力」についての分析
b(長所)について。23段落から26段落から考える。
・脳は当面している事象に、とりあえず意味づけをし、何とか「分かろう」とする(23段落)
・問題が生じれば的確かつ迅速に対処する能力(26段落)
これを抽象化すると、以下の通り。
b 当面している事象に意味づけて理解を目指し、また問題が生じれば的確かつ迅速に対処可能である
a(短所)について25段落に「落とし穴」という記述がある。
・「わかった」つもりの理解がごく低い次元にとどまってしまい、より高い次元まで発展しない
これをまとめると
a 理解がごく低い次元にとどまってしまい、より高い次元まで発展しない
最後に「分かる」能力を以下のように抽象化。
物事を理解しようとする能力
これらを踏まえて前半部をまとめると
<前半>
物事を理解しようとする能力は、当面している事象に意味づけを可能にし、また問題が生じれば的確かつ迅速に対処可能であるが、その理解がごく低い次元にとどまり高い次元まで発展しないことが起こりうるのに対し、(99字)
ちょっと長いかも。
② ネガティブ・ケイパビリティについて
A(困難)について。21段落の最後に「実践するのは容易ではありません」とあり、その理由が22段落に書かれている。
・ヒトの脳には、後述するように、「分かろう」とする生物としての方向性が備わっているから。
つまり、ネガティブ・ケイパビリティは生物としての自然な在り方に反しているのだ。
A ネガティブ・ケイパビリティは生物としての自然な在り方に反するという困難を持つ
Bについて。必要性は18段落を参照しよう。これは問2でも触れた部分だが、そこでは使わなかった部分を使用する。
・相手が人間なら、相手を本当に思いやる共感に至る手立てだと、
ここからまとめると、
B ネガティブ・ケイパビリティは他者を本当に思いやる共感に至る手段であるため必要であると言えるから。
AとBをくみあわせると
<後半>
ネガティブ・ケイパビリティは生物としての自然な在り方に反するという困難を持つが、人間として他者を本当に思いやる共感に至る手段であるため必身につける必要があるから。(81字)
字数は問題なし。まとめてみよう。
<タケガワなりの解答>
物事を理解しようとする能力は、当面している事象への意味づけを可能にし、また問題への的確かつ迅速な対処が可能であるが、その理解が低次元にとどまり発展しないことが起こりうるのに対し、ネガティブ・ケイパビリティは生物としての自然な在り方に反するという困難を持つ一方で、人間として他者を本当に思いやる共感に至る手段となりうるため必身につける必要があるといえるから。(178字)
前半がやはりやや長いので「次元」の話の重複を解消させた。
いい問題でしたね。次は大問2をやりまーす。
それでは。