
ランダム入試問題解説①東北大学2019 大問1
この企画の目的
こんにちは。
今年は国公立大学志望のクラスを担当することも多いので、記述のアプローチについてのプリントを作ることが多い。
翌年以降も体裁はさておき、作ったものを下地にしてTOYOTAよろしく「カイゼン」していく……ウナギ屋の秘伝のたれ方式で受け継いでいく予定なのだが、このnoteでも定期的に放出していってもいいのではないか、と思いこの企画を始めることにした。
入試問題解説同様、週に一度、ランダムに解説をしていく。
この企画の想定読者層
・ 国公立大学志望で現代文の授業を受けていない受験生
・ 私よりも年齢が若かったり、業界歴が浅い現代文講師
・ 私よりベテランの方(からアドバイスが届くと良いなという甘え)
・ 教育業界関係者(お仕事お待ちしております)
なにとぞ、ご意見あればTwitterのDMか、LINEまで直接どうぞ。
実際のところ、このnoteは自分の出来得る教育の機会均等を目指しているので、諸事情で現代文の授業を受けたり勉強する機会があまりない人の役に立つと良いなあ、と考えております。
今回解説する問題
2019年の東北大学の大問1です。
大問2を夏にアップしていたので、これで両方揃いましたね。
文章は東進の過去問データベースなどで入手してください。(微々たる所属先貢献)
http://27.110.35.148/univsrch/ex/menu/index.html
問一
⑴ 増幅 ⑵ 排除 ⑶ 滞在 ⑷ 網目 ⑸ 建立
問二
<問題>傍線の箇所(ア)に「臼という生活道具が、ここでは同時に楽器でもあった」とあるが、筆者はイバン族の「臼」に「楽器」としてのどのようなはたらきを見出したのか。本文の内容に即して四十五字以内で説明せよ
〈プランニング〉
① 設問分析
【設問タイプ】 筆者はイバン族の「臼」に「楽器」としてのどのようなはたらきを見出したのか。 ➡ 条件の換言
② 条件分析
<筆者はイバン族の「臼」に「楽器」としてのどのようなはたらきを見出したのか。>
→ 「臼」の「楽器としての働き」を明らかにする。
〈アプローチ〉
⑴ 「臼」の「楽器としての働き」が書かれている箇所を探す。
→ 直後の⑤段落に存在している。
⑤朝ごとにつく臼の音が、そのあたり一面にこだまする。その音を聞いて働く女性たちがたのしくなり、村びとがたのしくなる。それだけではない。この心地よい音は、もともとは、屋根裏部屋の大籠のなかにいる稲魂(いなだま)、つまり稲の神を喜ばせるためだったのである。眼に見えない神をよろこばせる。そのためには心地よい音が、音楽が必要だったのである。
⑵ 書くべき要素の確定
→ ⑤段落は「それだけではない」の前後で二つの要素が並立されている
並立は同じ重要度のものを並べているので、原則的に両方の要素を書く必要がある。
A. 朝ごとにつく臼の音が、そのあたり一面にこだまする。その音を聞いて働く女性たちがたのしくなり、村びとがたのしくなる。
B.この心地よい音は、もともとは、屋根裏部屋の大籠のなかにいる稲魂、つまり稲の神を喜ばせるためだったのである。眼に見えない神をよろこばせる。そのためには心地よい音が、音楽が必要だったのである。
⑶ 書くべき要素の抽象化
→ 最後にこれらの要素を抽象化して字数に合うように加工する。
A 臼の音が働く女性や村人を楽しませる(一七字)
B 稲の神を喜ばすために必要なものである(一八字)
AとBをうまくつなげる。文末に「働き」を入れた方が無難かな。
解答(45字)
毎朝の臼の音は、働く女性や村人を楽しませるだけでなく、稲の神も喜ばせる働きがあると考えた。
問三
(問題)傍線の箇所(イ)「音の灯台」とは、スムライ族の「ブバリン」に対するどのような比喩的解釈か。その内容を四十五字以内で説明せよ。
〈プランニング〉
① 設問分析
【設問タイプ】 比喩換言問題
② 傍線部分析
<傍線部>音の灯台
⑴ 「灯台」の比喩の意味を考える
⑵ 「音の」という文脈に合わせて解釈する
〈アプローチ〉
⑴ 「灯台」の解釈
<比喩換言の方法>
①「そのままの意味」をまずは考える。
②①を文脈に合わせて解釈する。
・ 灯台 = あたりを照らすもの/船の位置を示すもの(=①)
⑵ 「音の」という文脈に合わせた解釈(=②)
→ 「音の」だけではなくさらに前後に視野を広げて考えてみよう。
⑦村びとの話によると、村のなかでもっとも高い木の梢(こずえ)にブバリンをとりつけると、風とともにブーン ブーンと音を立てる。この音によって、遠方の森のなかにいる狩人(かりゅうど)が自分の村の所在を知る、ということであった。音の灯台ということであろうか。
➡ ⑦段落から「音」によって狩人に村の所在地をしらせる(=灯台の役割)ことであることがわかる。
※ ⑧段落以降の「他界への呼びかけ」の内容を採用するか
→ この内容は「ブバリン」という楽器のもつ意味の一つを説明してはいるが、「音の灯台」という比喩の範疇ではない。すなわち、「音の灯台」と並立されている要素なので、この設問の解答には含まずに解釈することが適当である。
⑶ 答えのためのまとめ
→ 「音によって森の中にいる狩人に自分の村の所在地を教える役割」(二八字)を中心に字数に合わせてまとめる。
解答(45字)
木の高い所から音を鳴らすことで、森の中の狩人が自分の村の所在地を見失わないようにする役割。
問四
(問題)傍線の箇所(ウ)に「声によって、人間の世界と野生の世界との交流が、二つの世界の共存が、表面的にではなく、人間の文化を超えた深層において成就されている」とあるが、「声」によって成就される「交流」や「共存」とはどのような状態か。本文の内容に即して四十五字以内で説明せよ。
〈プランニング〉
① 設問分析
【設問タイプ】 「声」によって成就される「交流」や「共存」とはどのような状態か。→ 条件換言
② 条件分析
「声」によって成就される「交流」や「共存」とはどのような状態か。
→ 方針としては該当箇所を探すのだが、その前に「傍線部」を分析することを忘れずに
〈アプローチ〉
⑴ 傍線部を分析する
→ 必中のものではないが、このタイプの問題は傍線部を分析すると答えの手がかりが浮かび上がることがある。というよりも、やみくもに前後を探すことをする前に「まずは傍線部からはじめよ」である。
(傍線部)
声によって、人間の世界と野生の世界との交流が、二つの世界の共存が、表面的にではなく、人間の文化を超えた深層において成就されている
➡ 傍線部から「人間の世界と野生の世界との交流が、二つの世界の共存が、表面的にではなく、人間の文化を超えた深層において」ということがわかるので、「人間と野生の世界が表面的にではなく深層において交流する」状態であることがわかる。ここで「深層」とは何かを考えなくてはならない。
⑵ 「深層」とはなにか
→ 対応する内容が本文中にないときは自力で換言することも検討する。
深層とは「根源的」などと言い換えられる。
⑶ 字数を踏まえて残り要素を確定させる。
→ ⑴と⑵を踏まえると下記の通りとなる。(交流は「交感」などに換言)
「人間と野生の世界が根源的な次元において交感している状態」(二七字)
となる。おそらくこの字数では「もう一つ要素を入れなくてはならない」のであろうと予測する。ここでは、⑪段落に注目する。
⑪言葉という眼に見えない網目、言葉というクモの巣のとりこになって、局限された、不自由な生活を強いられているのであるが、実は、言葉の向こうに声があり、声の向こうに音があり…
⑪段落の内容も比喩的だ。「目に見えない網目」、「言葉というクモの巣」を言い換える必要がある。網目や蜘蛛の巣……ここは以下の通りに換言しよう。
言葉による制限から解放された(14字)
これらを踏まえて答えを作ると…
解答(41字)
人間と野生の世界が言葉による制限から解放された根源的な次元において交感している状態。
問五
(説明)傍線の箇所(エ)に「なんとかして『岩にしみいる声』を聞きたいと思っている」とあるが、ここで筆者はどのような態度によってフィールドワークをおこなおうとしているのか。本文全体の趣旨をふまえて七十字以内で説明せよ。
〈プランニング〉
① 設問分析
【設問タイプ】 ここで筆者はどのような態度によってフィールドワークをおこなおうとしているのか→ 条件換言
② 傍線部分析
(傍線部)
ここで筆者はどのような態度によってフィールドワークをおこなおうとしているのか
→ 方針としては該当箇所を探すのだが、その前に「傍線部」を分析することを忘れずに(問三と同じ)
⑴ 傍線部分析
(傍線部)
なんとかして『岩にしみいる声』を聞きたいと思っている
これは、⑭段落の内容を踏まえて考える。
『岩にしみいる声』=「聞こえないが存在する音」=「音以前の世界」
と考えるべきであろう。
そしてこれは、さらに⑩段落と対応させることができる。
⑩われわれは民族の文化を機能的に分析し、合理的に解釈することに慣れているけれども、実は、かれらの文化のなかにはわれわれの想像を超える、異次元の世界が映っていたかもしれないのである。
つまり、「音以前の世界」とは「われわれの想像を超える、異次元の世界」なのであり、それを「感受したい」(=聞きたい)と思う態度で筆者はフィールドワークをすべきであると考えているのだ。
⑵ ⑩段落を解釈する
→ 要素を抽出する。
A 民族の文化を機能的に分析し、合理的に解釈すること(二四字)
B 彼らの文化の中には我々の想像を超えた異次元の世界がある(二七字)
⑶ 構文
Aではなく、Bに積極的に寄り添う(=認める/感受する)などとまとめればよい。
解答(69字)
各民族の文化を機能的に分析し、合理的に解釈するのではなく、各文化が持つ我々の想像を超えた異次元の世界の存在を積極的に感受しようとすること。
以上です。また来週のどこかで。
いいなと思ったら応援しよう!
