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博耕房授業記録【6月③】

こんばんは。

博耕房の授業も早くも9回目です。全部で12回ありますので、一学期も最終盤、という感じです。

今週は……

・ ハイレベルに関しては一度『はみ出しの人類学』をお休みして、小説文読解について扱いました。今週と来週は小説を扱います。
・ ベーシックについてはキソトレは小説を、文章は『友だち幻想』を用いた要約トレーニング第三弾です。

それではそれぞれの授業内容について確認をしていきましょう。

◇キソトレの「キントレ」

今回は2009年のセンター試験『雨の庭』加賀乙彦の問2を用いて演習を行いました。

個人的には入試現代文の小説文読解と趣味の読書は似て非なるものであると考えております。

趣味で行う読書というのは基本的に制限がない。作品の中の登場人物を実際の俳優に置き換えていいし、アテレコで声優の声で再生してもよい。だからこそ、小説文というのは想像力を刺激し、楽しみが無限に広がるものであると思っております。

一方で、入試現代文には多くの制約があります。まず、文章全体を読むことが(全文掲載でない限り)許されないこと。そして、作問者の意図に従って内容の解釈をする(=設問を解く)ということが求められることが次いで挙げられるでしょう。

その制約の中で求められる作業をできる限り一般化してあげて授業で伝えていくことが我々の役目です。

さて、そんな入試現代文の一つであるセンター試験については問題の傾向を把握すると非常に質の良いトレーニングを積むことができます。

・ センター試験の小説問題は心情そのもの/様子(言動・態度)の理由が問われるものが全体の75%。(共通テストも現在のところその傾向を踏襲している)
・ 心情が問われているが、実際はその原因となるきっかけ(出来事)の確定が重要。なぜならそこが問われているから。
・ 小説文の世界は必然性のある世界。表現の意図意図を考えると読解は非常に楽になる。

最初の項目は単なる統計です。2006~2020年のセンター小説の問題を分類した結果、75%が心情にまつわる問題でありました。ただそれだけ。

二番目は小説の心情問題を解いていく上では最も大事なことだと思っております。センターだから、ではなく、国公立でも極論、高校入試や中学入試でも同様かと。
心情が問われる問題は多いですが、そもそもなぜ問われるのかというと、それが省略されているからに他なりません

大学に合格した。だから泣いた。

この一文からもわかるように、日本語文において心情の省略は頻繁に生じます。

その省略内容を考えることも大事なのですが、それを類推するために必要な情報が、心情(=結果)に対するきっかけ(=原因)になるのです。

そして、共通テストは(いろいろあって)客観式のままです。客観式の試験で心情という主観的なものを解答に反映させることは非常に難しい。だから、客観的に答えを導くことができる「きっかけ」を答えの根拠とする問題が作られるのです。この点を把握すると問題はめちゃくちゃ解きやすくなります。

最後の項目は文章を読む時にお話するのですが、キントレは一場面だけを抜粋しているのでここでは割愛。

◇ハイレベル

これを踏まえて2017年の三重大学『てっぺん信号』三浦しをんを扱いました。

キントレで因果関係の構築を意識してもらったので、今度は「心情」をどのように導出するかを記述の演習を通して確認してもらいました。

国公立大学の小説問題は最難関の中学入試に親和性がありますね。実際にやるべき作業は何も変わりません。そして「心情語」が出てこない。そんなあなたにこんな本を。


大学受験でも十分に使うことの出来る一冊です。むしろ、こういう観点でまとめられている本があまりない。しかし、重要なんですよね。心情に関する語彙がないと解けないですからね。

と、著者にゴマをすりながら授業は終了。

◇ベーシック

引き続き、『友だち幻想』の第三章の要約です。6月は要約強化月間として授業でも宿題でも書いてもらっています。その際に、まずは文章の論理構造を一緒に確認して、どこを書くべきでどこを削ったらよいのか、等を考えてもらっています。

非受験学年のうちに「書くこと」「読むこと」への抵抗をできる限りなくしてもらうことが一つの目標です。今のところはいい進捗。


というわけで第9週目は以上でございました。

また来週。それでは。

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