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夏期課題⑴ 早稲田大学商学部(2015)

こんにちは。

この記事は博耕房のハイレベル講座受講生向けのnote連動の課題に関するものです。ただ、問題さえ入手できれば意味があるので、是非とも全国の受験生の皆さんものぞいてみてください。

※まずはお詫びと今後の記事アップスケジュール

本来は7/31にアップ予定でしたが、その当日に急遽コロナウィルスワクチン(モデルナ製)の接種をしたところ、重い副反応に見舞われて数日ダウンしてしまった……ので一週間遅らせました。申し訳ございません。

また、今日中に二本アップしようと思っておりましたが、クオリティが確実に落ちそうなので、以下の通りにスケジュールを変更します。

第一回 8/7(というよりも8/8)    第二回   8/14  第三回  8/21

それでは早速まいりましょう。

◇今日の題材

2015年の早稲田大学商学部の問題です。何らかの手段で入手してください。(博耕房の受講生には配布済)

出典は内山節の『新・幸福論』です。

◇文章内容の確認

※段落番号を振ったうえで確認してください。空欄乙を除いて28段落になるはずです。

【第一のまとまり】①~⑤段落 現代の「ローカリズム」について

①段落で若者の「コミュニティ作り」を取り上げてる。
➡ 特徴として「ネット(=間接的なやり取り)を道具にして顔を合わせる(=直接会う)関係を作る」方向に向かっている。
➡ また、「共に生きる経済」を作るときにも「コミュニティ」がベースとなっている。

☆これを踏まえて筆者は新しいローカリズムが誕生した、と述べている。
関係により作り出されるものが、今日の「ローカリズム」である。

なお、ここまでの部分は全体の論理構造の中では「具体例」に相当するものである。つまり、「世界の新しい動き」の登場についての詳しく説明しているのだ。

【第二のまとまり】 ⑥~⑰段落 近現代の常識とその崩壊について

①~⑤のような新しい動きは「それまでの概念=近現代の概念」を揺るがすものだった。

〇近現代の常識とは
(例)代議制民主主義(⑧段落)、個人を基盤にした市民社会(⑨段落)
➡ 近現代は「保守主義」の時代であったのだ。(⑪段落)

*この文章中における「保守主義」(⑫~⑯段落の例を参照しましょう)
過去の事例を「追認」する(=そのまま受け入れる)態度を取り続けたことを指している。(まとめとしての⑰段落も確認のこと)

【第三のまとまり】⑱~㉘段落 近現代から現代への移行

〇 近現代の枠組みを支えたものの崩壊
➡ 世界の富を先進国が独占していたこと、すなわち国民国家・資本主義・市民社会が機能しなくなり、人々を支えることがなくなった。(⑱段落)
人々の熱狂の鎮静化(㉒~㉔段落)
☆ 人々は「虚無感」を覚えるようになった。(=近現代の終焉)

〇 現代社会を支えるもの
➡ 虚無化していった人々は熱狂を伴わないものを探し出した。
それが、「関係」であった。(㉖段落)
他者、自然との関係を結びながら人間は自らの存在を捉えなおした。
(➡そして、これが①~⑤の「ローカリズム」につながるのだ)

文章全体を本当に簡略化すれば「近現代の価値観とその終焉」と「現代の関係重視の在り方への移行」という二つの内容でまとめられる。

◇設問の解説

問一 漢字

a 阻止  b 履行 c 鼓舞

➡ 早稲田に合格するつもり(そのレベル)なら当然全問正解狙いです。

問二  換言問題(選択肢)

【設問】傍線部1「ネットを道具にして顔を合わせる関係をつくる方向」とはどのような方向を意味しているのか。その説明として最も適当なものを次のイ~ニから一つ選び、その符号の記入欄にマークせよ。
<解答までのアプローチ>
・ 「ネットを道具にして顔を合わせる関係を作る方向」の換言
→ これは「ローカリズム」における人々の在り方を意味している。
➡ ④段落に「ローカリズムとは、それぞれが関係の世界のなかで生きるという意味であり」とある。この部分と傍線部の「ネットを道具にして」を「ネットを介して」ぐらいに換言すればよい。

<根拠>
ネットを介して(=a)、それぞれが他人との関係の世界の中をいきること(=b(
<選択肢の分析>
イ ネットを活用して地域のコミュニティを確立するために、個人の資質を  
    最大限に生かした
ソーシャル・ビジネスを広めようとする方向。
       ➡ 「個人の資質を最大限生かした」の要素が「言及なし」よって×

ロ ネットの影響のもとで近現代が生み出したさまざまな特質をきめ細かく
   検証して
、そのなかからより効率的なものを推進しようとする方向。
      ➡  「近現代が~」と「効率的なもの」は「言及なし」よって×。

ハ ネットの効果に依拠した利己的な経済ではなく支え合う経済を実現させ
   るために改めて集団のなかの個人の位置を確立しようとする方向。
      ➡  ①「因果関係」(ために~)は根拠において成立しない。
         ② 「集団の中の個人の立ち位置」「言及なし」よって×

ニ ネットによって結ばれた世界のなかで(=a)
  仲間たちがともに生きようとする関係を構築しつつ自律した関係の世界
  を創造しようとする方向。(=b)

正解は「二」

問三 換言問題(抜き出し)

【設問】傍線部2「それは新しいローカリズムの成立だった」とあるが、「新しいローカリズム」に相当する人間のあり方を示す最も適当な五字の語句を文中から抜き出し、解答欄に記せ。
<解答までのアプローチ>
「新しいローカリズム」に相当する人間の在り方の換言。
→ そもそも「ローカリズム」への言及は①~⑤段落と㉖~㉘にしか存在しない
➡ その中で「関係」という語が人間の在り方において重要であると特に㉖段落以降に述べられており、その中で条件に合う言葉は「関係的存在」(=㉗段落)となるであろう。
<解答>
関係的存在

問四 換言問題(抜き出し)

【設問】傍線部3「旧来の考え方が変化しはじめている」とあるが、その「変化」をもたらす関係を端的に表す語句を、文中から二字で抜き出し、解答欄に記せ。
<解答までのアプローチ>
「旧来の考え方が変化している」の、「変化をもたらす関係を示す語句」を答える。
→字数の条件がなければ「ローカリズム」が答えの候補に挙がるかもしれないが、二字である。なお、言及していないが、問三と同様に探すのは①~⑤段落と㉖~㉘段落である。
➡ つまり、他人との関係を意味する語になるのだが、探してみると「仲間」(=①段落)ぐらいしか当てはまらない。
<解答>
仲間

問五 換言問題(選択肢)

【設問】傍線部4「私たちが「人々」として生きること」とはどのようなことか。最も適当なものを次のイ~ニから一つ選び、その符号の記入欄にマークせよ。
<解答までのアプローチ>
傍線部換言問題。傍線部換言においては以下の要素の有無をまず考える
⑴ 指示語 ⑵ 比喩表現 ⑶ 特殊な定義
これらの要素をまずは確実に換言する。

今回は「人々」が⑶の「特殊な定義」に相当する。この意味を解釈することが求められる。

この傍線部は「代議制民主主義とは…『人々』として生きることを…」と続いている。代議制民主主義とは本文中で「保守主義」の例として挙げられている。
➡ 保守主義とは「現状を追認する生き方」であり、「与えられてきたものを受け入れる」だけの存在であった。(=⑭段落)
この内容を踏まえて選択肢を分析する。

<根拠>
現状において与えられてきたものを追認し、受け入れる存在。
<選択肢の分析>
イ 平等で自由な「個人」として生きること。
もはや「真逆」。×。

ロ 固有の「個人」としては扱われない「国民」として生きること。
「追認」「受け入れる」ということは、個人の意思とは関係のなく行われるので、その意味では換言していると言える。正解。

ハ 暴走する「権力」に抗うすべもなく個性を抑制して生きること。
「暴走する」という語が「具体的過ぎる」。暴走の有無に関わらず、「追認する」のだ。よって×

ニ 「国民」を支えるという能力をもはや「国家」が維持できないと知って生きること。
➡ 根拠から「大ズレ」。本文中には同内容が書いてあるが、ここは言い換え箇所ではないよって×

【正解】 ロ

問六 換言問題(抜き出し)

【設問】傍線部5「それはちょうど今日の携帯電話のようなもの」とは、どのようなことの比喩として用いられているのか。そのことを表す一文を傍線部5より後の文中から抜き出し、その文の最初の五字を解答欄に記せ(句読点も一字とする)。
<解答までのアプローチ>
根拠の「被り」を感じてやまない……。
⑯段落のこの一文も「保守主義」の説明である。そのための比喩である。
念のため⑯段落を読んでおくと、「携帯電話が誕生した。だからそれを受け入れた。」とある。あとは条件に合わせて一文を抜き出すと、⑰段落の「受け入れていくうちに、受け入れざるをえない社会がつくられていった。」が該当するであろう。
【正解】 受け入れて

問七 空欄補充

【設問】空欄甲に入るのに最も適当な語句を、文中から五字以上十字以内(句読点も一字とする)で抜き出し、解答欄に記せ。
<解答までのアプローチ>
これも根拠が……かぶってる?笑
⑰段落はそもそもこれまでの例示を受けて近現代が保守主義の時代であることを抽象的に論じている段落である。(早稲田もやはり文章の論理構造が見えていると非常に答えやすいのである。)
よってあとは条件に合うように探すと⑪段落の「保守主義の時代」が該当するであろう。
【正解】保守主義の時代

問八 空欄補充(並べ替え)

【設問】空欄乙に、次のイ~ニの文を正しく並び替えて入れるとしたら、三番目に来るものはどれか。最も適当なものを一つ選び、その符号の記入欄にマークせよ。
<解答までのアプローチ>
並べ替えは①選択肢間②空欄前後の二つのつながりに留意する。

今回は並べ替えると「二→イ→ハ→ロ」となる。
【正解】 ハ

問九 脱文挿入

【設問】文中から次の一文が脱落している。次の文が入る場所として最も適当なのは( イ )~( ホ )のうちどこか。イ~ホから一つ選び、その符号の記入欄にマークせよ。

とすると近現代は終わろうとしているはずだ。

<解答までのアプローチ>
脱文挿入はまず「脱文の内容」を整理する。その内容を踏まえて指示語や接続語をもとに挿入する。
今回は「近現代が終わる」という内容を踏まえると、「ニ」しか当てはまらない。
【正解】 二

問十 内容一致

【設問】
問十 次のイ~ニの文のうち、本文の論旨に合わないものを一つ選び、その符号の記入欄にマークせよ。

<解答までのアプローチ>
論旨に合わないものを選ぶ場合、選択肢内に「完全なる誤り」が含まれていることに留意しよう。
そもそも選択肢は「作問者の解釈」なので多少の誤りは含まれている。「正しいものを選ぶ」ときはその中で「ベターなもの」を選ぶという営みになる。
しかし、誤ったものを選ぶときは正解の選択肢は「完全な誤り」として登場する。それを選ぶのである。
<選択肢の分析>
 近現代に獲得されたものと人間との関係が虚無的な関係に移行しつつあるときだからこそ、革新的な熱狂を復権するために可能なことに取り組み、保守的な傾向を超越する必要がある。
「革新的な熱狂を復権するために」とあるが、そもそも熱狂は虚無化し、現在はその熱狂を伴わないあり方が目指されている。(㉕~㉖段落参照)
よって、「完全な誤り」を含むので×である

ロ 私たちはいま大きな変革期を迎えており、近現代を支配したような熱狂もなく、いかなる関係の中で生きたらよいのかを模索する試みがいたるところで生まれているという状況にある。
㉖~㉘段落に述べられている。

ハ いまは「人々」として生きた時代から「それぞれ」として生きる時代への転換期であり、「それぞれ」の生き方を可能にする関係のあり方を模索するという意味で、新しいローカリズムの時代である。
➡ ①~⑤、㉖~㉘を参照すると「誤りとは言えない」。

ニ 国民国家や市民社会、資本主義が「人々」を成立させ、関係のなかで生きてきた人間を個人に分解し、その個人を「人々」として管理したり切り捨てたりする構造こそが問題なのである。
➡ 「問題なのである」と言い切ってはいないが、筆者は保守主義に批判的ではあるので「誤りとは言えない」。
【正解】 イ

◇総括

総じて、設問はそこまで難しくないので「どのようにアプローチして正解するのか」を学んでください。

それでは次回は8/14(土)に「このシリーズは更新します。




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