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夏期課題⑵ 2015一橋大学大問1

こんにちは。

先週に引き続き、夏期課題をお届けいたします。

前回のはこちら。

今回は「2015年一橋大学」を題材にnote講義を行っていきます。

問題を入手したうえで実施してください。博耕房のハイレベル受講生は配布されたプリントをご利用ください。

◇今回の題材

今回は齋藤希史氏の『漢字世界の地平』が題材でした。氏の文章は2014年のセンター試験でも使用されていましたね。

◇文章内容の確認

※段落番号を振ったうえで確認してください。引用を除いて9段落になるはずです。

【第一のまとまり】①~④段落 「語」=「シーニュ」とは?

① 一般的な「言語」学の概念についての小林英夫の訳
・ シニフィエ (=意) → 「所記」
・ シニフィアン(=音) → 「能記」
➡ しかし、シーニュ(=語)にまつわる言葉に「記」と充てることは誤りである。<筆者の立場>

② 「記」とは「書記」に関わる動詞
➡ そもそもそこに「意味する」という語義はない

③ そもそも「シーニュ」に「記号」の意味を持たせることが誤り
※ここでは「語」の「記号」という側面を取り上げていることに留意。

➡ 日本語の「記号」「ほとんどの場合、外形的に固定された、もしくは一定の形態をもったもの」という意味。

④ しかし、「シーニュ」は「それ自体が意味であり表現」であり、「意味することそのものが何らかのかたちとして知覚されたもの」であり、「記されて固定されるようなもの」ではない

「意も音(動作や表情)も、時間軸に沿って知覚され、上書きされる(=変化する/固定的ではない))」ものなのである。

※その意味で、シーニュは「音声言語」(発話)に近いものとして想定されているのかもしれない

【第二のまとまり】 文字言語の特徴 ⑤~⑨

<問題提起> 文字は記号なのか

<答え>   文字は暗なる記号ではない(では何なのか)
➡  音声言語との対応が「発見される」もの。
➡ その結果、単なる要素(音と記号)の対応ではなく、そこに秩序や体系(=ルール)の対応が起こる
ここに、「文字言語」が誕生する。

⑦ <答え>の続き
・ 「文字言語」は文字であり言語なので、そこに「書き記される」もの。
➡ よって、記号としての性質を持つ

⑧ そして、言語が「書き記される」ものであることは、「言語のあり方」に「大きな変化」をもたらした。(=変化を追いかける!
→ うつろいやすい「シーニュ」(口頭言語に近い意味で取られている)に、固定した形(=記号/文字)が与えられた。これが、拡大された言語世界を開くことになる。

⑨ 書記言語は口頭言語を超えて伝播する。
→ そして、「口頭言語との相互作用によって、そのすがたを変化させ、また、口頭言語のありかたにも何らかの(時には大きな)作用を与える」。
➡ 一方の文字言語は「保守的」(=変化を嫌う)で、「言語規範(言葉のルール)の形成」に寄与しようとする
(例)文法(=文章上のルール)の形成など。

◇設問の解説

問い一 漢字

A 原語 B 想起 C 掲載 D 増殖  E 緊張

➡ Aがやや難しい。文脈で適切な語を入れる。同音異義語を押さえる。

問い二 語の意味

⑴ 分節する
→ (答)ひとまとまりのものを分割すること
➡ (基準)「一つのものをわける」の意味になれば正解。
⑵ 陥穽
→(答) 人を誤りに導く計略
➡(基準) 失敗に導く「罠」の意味があれば正解。落とし穴は…文脈上▲。

問い三 換言問題

【設問】傍線一「文字は記号なのか。」とあるが、著者は文字と記号の関係についてどう考えているのか記しなさい(四〇字以内)。
<設問分析>
筆者の考える「文字と記号の関係」の換言

<アプローチ>

⑴ 文字と記号の関係についての言及箇所を探す。
➡ ⑥段落において「単なる記号ではない」と言っている。では、どういう記号なのか
➡ ⑥の後半に「音声言語に要素のみならず対応し、秩序、体系として対応する」とある。その意味で「特殊な記号」と言える。
➡ また、⑦段落において「書記」されるものとしての「文字言語」の「記号」としての特徴があると書いてあるので、ここまで採用する。

⑵ 字数に合わせて要素をまとめる

まずは、⑴の要素をすべて足してみる。

文字は単なる記号ではなく、音声言語に要素のみならず、秩序、体制として対応し、また、書記される特殊な記号であるということ。(60字)

長い。20字削る必要がある。
字数を削るときの基本は以下の通り。

① 重複表現をまとめる
② 言葉の抽象度を上げる
③ 否定表現は肯定表現に一本化する

ここから「体系・秩序」はまとめる。
また、「単なる記号ではない」=「特殊な記号」なので、前半も削れる。

これらを踏まえていくと、

文字は音声言語と要素、秩序の面で対応し、書き記される特徴を持つ特殊な記号である。(40字)

綺麗に収まった。めでたしめでたし。

【答え】文字は音声言語と要素、秩序の面で対応し、書き記される特徴を持つ特殊な記号である。(40字)
<採点基準>
・ 音声言語との対応(要素・秩序or体系)
・ 書き記されるもの
・ 特殊な記号への言及
の3点が含まれるかを確認したい。

問い四

【設問】著者は音声言語(口頭言語)と文字言語(書記言語)との関係をどうとらえているのか、問題文全体をふまえて答えなさい(一〇〇字以内)。
〈設問分析〉音声言語と文字言語の関係性の換言

<アプローチ>

⑴ 音声言語と文字言語についての内容確認
❶ 音声言語
・ 文章前半①~④段落に言及されている。また、⑦段落でも触れられている。
→ 音声言語とは「シーニュ」のことである。その特徴は④・⑦段落にまとめられている。

「それ自体が意味であり表現」であり、
「意味することそのものが何らかのかたちとして知覚されたもの」であり、
「記されて固定されるようなもの」ではない。
「意も音(動作や表情)も、時間軸に沿って知覚され、上書きされる(=変化する/固定的ではない))」ものである。
「示す」機能を持つ

これらをまとめると以下のようになるだろうか。

音声言語はそれ自体で意味と表現を示すものであり、時間の経過によって変化するもの(…A)

❷ 文字言語
→ その特徴を追うと、⑧~⑨段落にたどり着く。そしてそこで「音声言語」との関係にも言及されている。
※ その意味では、❷から❶にたどり着くルートも存在すると思われる。

その特徴をまとめると以下の通り。

文字言語は「言語のあり方」に「大きな変化」をもたらした。
→ 拡大された言語世界を開くことになる。
口頭言語との相互作用によって、そのすがたを変化させ、また、口頭言語のありかたにも何らかの(時には大きな)作用を与える」。
一方の文字言語は「保守的」(=変化を嫌う)で、「言語規範(言葉のルール)の形成」に寄与しようとする
「記す」機能が両者間に緊張関係をもたらす

これらをまとめると以下のようになるだろうか。

文字言語は「記す」機能により、音声言語に影響を与え何らかの作用を及ぼすが、自身は保守的に言語規範の形成に寄与するため、両者は緊張関係にあると言える。(…B)

❸ AとBを足す
→ Bの音声言語の部分にAを入れてみよう。

すると、

文字言語は記す機能により、それ自身で意味と表現を示す音声言語に影響を与え形や存在に何らかの作用を及ぼすが、自身は変化を好まず規範の形成に寄与することを望むことから、両者は緊張関係にあると言える。(97字)

今日は震えるほど字数の感覚が良い(笑)

【答え】文字言語は記す機能により、それ自身で意味と表現を示す音声言語に影響を与え、形や存在に何らかの作用を及ぼすが、自身は変化を好まず規範の形成に寄与することを望むことから、両者は緊張関係にあると言える。(98字)
<採点基準>
⑴ 音声言語について
・ 「意味と表現を示すもの」への言及
・ 「形や存在に作用が及ぶこと」への言及
⑵ 文字言語について
・ 「記す」機能を持つ ことへの言及
・ 「保守的性格」への言及
・ 「規範の形成」への言及
⑶ 関係性
・「緊張関係」への言及

以上です!また来週!


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