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2022 関西学院大学全学部入試(2/1・2/2)現代文の分析

こんにちは。

この職業にしては珍しく、2月は解答速報、授業の収録、講習会、新学年授業……とかにかと忙しくさせていただいているのですが、隙をみて担当外の入試問題についての解答分析と雑感を述べさせていただきます。

共通テストのものもまあまあ良く分析できてるな、と思います。(自画自賛)

・2/1入試の分析

〇出典

松本健太郎『「複数の状態」にひらかれたデジタル写真をどう認識するか』
➡『記録と記憶のメディア論』より

〇設問について

※問題は東進ハイスクールの過去問データベースなどで確認してください。

<予想配点> 75点満点として
問一 4点
問二 各2点×4問
問三 各2点×2問
問四 8点
問五 8点
問六 3点
問七 3点
問八 3点
問九 3点
問十 8点
問十一 3点
問十二 8点
問十三 各3点×2つ
問十四 各3点×2つ

<設問別難易度と雑感>

難易度目安
☆ … 90%以上正解したい
☆☆ … 70%以上正解したい
☆☆☆ … 50%以上正解したい
☆☆☆☆ … 30%以上正解したい
☆☆☆☆☆ … 諦めてもOK。

問一 脱文挿入 ☆☆
(正解)【ハ】
→ 脱文が「デジタルを軸にしたアナログの対比」なので、考えやすいかな。11段落以降は写真の「フロー性」と「複数性」について論じているので10段落末に挿入するのが適切。

問二 漢字 3/4問は取りたいが、現実的には2問死守かな。正解以外の漢字が難しい。
A 収監 (正解)ロ
イ 迎賓館  ロ 監修者  ハ 観測  ニ 機関  ホ 官邸
B 把捉 (正解)イ
イ 把持  ロ 破砕  ハ 葉境  ニ 覇者  ホ 以呂波
C 搭載 (正解)二
イ 踏破  ロ 投獄  ハ 劈頭(へきとう) ニ 搭乗  ホ 五重塔
D 惹起 (正解)イ
イ 起死回生  ロ 危急存亡  ハ 旗しょく(変換できず) ニ 毀誉褒貶  ホ 奇想天外

問三 漢字の読み
二問死守。語彙が重視される大学を受けているのだからこれぐらいは得点してほしい。

a 示唆【しさ】 (正解)ロ
b 曇天【どんてん】(正解) ニ

問四 比喩換言 ☆☆
(正解) ホ

→傍線部の比喩そのものはそれなりに難しいが、「…さらに……また」と並立でつながれていることを踏まえて考えると、同内容の繰り返しであることがわかる。そこから考える。

問五 比喩換言 ☆☆☆
(正解) ハ

→「死の影」は比喩であり、「過ぎ去ってしまった時間」(=過去)を意味することを5段落から読み取る。ロ「風化」二「哀惜」という余計な意味が挿入されている選択肢に惑わされないこと。

問六 空欄補充 ☆☆
(正解) ロ

→「ものを見る時計」は隠喩(~ような/みたいなを用いない比喩)であろう。

問七 空欄補充 ☆☆☆
(正解) ホ(信憑性)

→ 直前の「客観性」と並立になるものであり、そこから写真は「編集・加工」ができるので「ありのままの姿を映すことを保証しなくなった」という意味が出てくるので、その対比からアナログ時代には写真にはありのままのものを写す「信憑性」(しんぴょうせい)があったと考えるのが妥当。これも最後は「語彙力」が必要かな。

問八 語句の意味 ☆☆
(正解) 二

→ 台頭とは「勢力が伸びること」の意。語彙力。

問九 空欄補充 ☆☆☆
(正解) 二
 
→ 【前】景化とはある性質が表面化すること。語彙力。

問十 定義語換言 ☆☆☆
(正解) イ

→ 「潜在的な複数の関係」を本文における意味(定義)においてとらえ直すという問題。11段落の末尾「スクリーン上での他の映像と合流して際限ないデータの流れ(フロー)の中の一要素になっている」が根拠。ロ「交換可能性」ハ「異同(=相違点)」二「常に同時に」ホ「動画の一要素」が誤り。

問十一 空欄補充 ☆☆☆☆
(正解) ハ
 
→ 12段落の内容から、「Google ストリートビュー」では複数のばらばらの時間の写真が組み合わされて一つの場所が表示されている。この状態をたたえるならば「断層」(複数の異なる地層が組み合わさってできたもの)となるだろう。結構な難問であるが、結局、語彙力。

問十二 理由説明 ☆☆☆☆
(正解) ロ

→ 撮影時間の唯一性とは「アナログ」時代の写真の持つ性質。それは、「過去のある時点を切り取る」ものである。それがGoogleストリートビューでは失われてしまうのである。関学の問題は前の問題との連関がたまにつくられるので要注意。

問十三 定義語換言 ☆☆☆
(正解) イ・ホ

→ まず、傍線部は14段落の具体例である。14段落では心理学者のチクセントミハイの語る「フロー」、「時間を忘れるほどに何かに没頭する状態」を指している。これが、具体的に言い換えられているのが傍線部の「レーサーの意識」となる。さらに傍線部直後に「現在」に集中するとある。よって正解はイ・ホとなる。ロ「長時間のレースに堪えることが出来る」ハ「旅に魅せられて」二「未来に拘泥」が誤り。

問十四 内容一致☆☆☆
(正解)イ・ホ

→ 内容一致。文章と問題が多いので解く気力を失いそうな問題ではある。この手の問題は文章内容を踏まえて消去法的にアプローチするとよい。
ロ「看過している」のではなく「あまり意識していない」ではないか。
ハ「交換されること」が誤り。
二 この「複数性」はアナログ時代でも同様のもの。
へ チクセントミハイはあくまでも引用。そして彼は写真について論じていないので誤り。

〇 欲しい得点

上記の目安を期待値として計算すると、下記の通りとなります。

約44点/75点(59%)

思ったよりも低い。ちょっと厳しめに判定しすぎたかも。
実際は65%ぐらい(49点)が合格ラインのように感じます


・2/2入試の分析

〇出典

山内朋樹『都市のライオン』
➡『ユリイカ』2019年三月号より

猫のお話。『世界ねこ歩き』著名な岩合光昭さんの特集。


〇設問について

※問題は東進ハイスクールの過去問データベースなどで確認してください。

<予想配点> 75点満点として
問一 各2点×5問
問二 各2点×4問
問三 3点
問四 6点
問五 3点
問六 6点
問七 6点
問八 3点
問九 6点
問十 6点
問十一 7点
問十二 7点
問十三 3点
問十四 7点

<設問別難易度と雑感>

難易度目安
☆ … 90%以上正解したい
☆☆ … 70%以上正解したい
☆☆☆ … 50%以上正解したい
☆☆☆☆ … 30%以上正解したい
☆☆☆☆☆ … 諦めてもOK。

問一 漢字 
全問正解を狙いたい。難しいものは皆無。不正解選択肢の方が難しい。
a 結界 (正解) 二

イ 判決  ロ 欠勤  ハ 潔癖  二 妥結  ホ 血路
b 砂利 (正解) イ
イ 利器  ロ 離脱  ハ 情理  二 郷里  ホ 履行
c 帰属 (正解) ホ
イ 奮起  ロ 寄稿  ハ 忌避  二 併記  ホ 帰着
d 途端 (正解) 二
イ 版図  ロ 徒党  ハ 吐露  二 別途  ホ 渡世
e 純然 (正解) ロ 
イ 照準  ロ 純真  ハ 順応  二 巡礼  ホ 潤色

問二 漢字の読み
なんだかんだで2問死守かな、と。3問は正解してほしいが。

① 穿たれた ハ うがたれた
② 仕業   ホ しわざ
③ 繰って  ロ くって
(「めくって」は「捲って」と書く)
④ 絡めて  イ からめて

問三 空欄補充 ☆☆
(正解) 二
 
→ 「ところ」せましと。語彙力。

問四 比喩換言 ☆☆☆
(正解) 二

→ 「年に棲みつくノイズ」とは「猫や犬」のことで、「わたしたちに侵入する」とは、「人間の住む空間にやってくる」ぐらいに言い換えられるので正解は二。イは「騒音」が、ロは「鳴き声や物音」が、ハは「人間の飼育している」以下が、二は「害虫や害獣」が誤り。

問五 語句問題 ☆☆☆
(正解) ハ

→ あわいとは「間」と書く。

問六 定義語換言 ☆☆☆
(正解) ホ

→ 5段落傍線部の直前には「背景から猫が浮いていない」とあり、猫を撮影しても猫だけが浮かび上がるのではなく、猫と背景が溶け合うように写ることを意味しているのでホが正解。イは「見つけにくい」が、ロは「風景の方が主題になって」が、ハは「風景の中で自由に生きて」が、二は「風景に集中してしまって」が誤り。

問七 比喩換言問題 ☆☆☆☆
(正解) ロ

→ 「屈託がない」とは本文において「人間の間にあるような共通理解によって生じるようなふるまいがないこと」を意味している。要は写真を撮るときには「ピースサイン」を作ったりする、というようなことである。その上で、「屈託がない」とは「気にかけない」という意味まで考慮すると、正解はロとなる。
正直、イ「期待する姿かたちで立ち現れる」ハ「人間と自然なコミュニケーション」二「人間を警戒することがない」は語彙力が足りていない。ホが迷うが、「屈託のない」の言葉の意味を踏まえるとロの方が適当と言える。
やはり、語彙力は大事。

問八 空欄補充 ☆
(正解) 二

→ 裏腹に。

問九 定義語換言 ☆☆☆
(正解)ロ

→ 猫と野生動物が一致する点はその後の犬との対比で説明されているが、要は「屈託のなさ」がポイントとなってくる。(やはり前の問題との連関は考えるべきである)つまり、人間に迎合することのない性質が前面に出てくるので「野生動物」と考えられるのだ。ここから正解はロ。
傍線部の解釈は難しいが、その分選択肢が平易である。イは「切り替わる」のではない。ハ「外観」の話ではない。二「物理的距離」の話でもない。ホ「生活空間」の話でもない。

問十 理由説明 ☆☆☆
(正解)二

→ 犬がモデルとして優秀なのは「屈託」があるからであり、こちらとの関係性を踏まえて写真に写ることが出来るのだ。しかし、それ以上のものはないので被写体としてはつまらないのである。ここから正解は二となる。
イは「自ら考えて」以降が誤り。ロは「子犬など」はむしろ被写体として優秀なので誤り。ハは「命令する」以降が誤り。ホは「端正に」が誤り。

問十一 語彙問題 ☆
(正解) ホ

→ 慣用句問題。これは落とせない。

問十二 理由背説明 ☆☆
(正解) ハ

→ これは16段落を踏まえよう。猫は時に不遜であり時に親密なのだ。犬はほぼ親密な存在であるので、これが違いとなる。
選択肢が切りやすい。イは「ひもで」が、ロは「受容」が、二は「上下関係」が、ホは「独立しようとしている」が誤り。

問十三 語彙 ☆☆☆☆
(正解)イ(ただしロの可能性も)

→ 基本的にはイレギュラーなので、不規則・変則的と考えるべきなので「イ」(例外的)が正解だが、文脈上は「ロ」の不自然も入らないことはない。微妙な問題。

問十四 比喩換言 ☆☆☆
(正解)ハ

→ 猫は野生であり、人間の領域にも属するということを説明している選択肢を選ぶ。これも正解以外の選択肢がイマイチ……。(考察略)

〇 欲しい得点

上記の目安を期待値として計算すると、下記の通りとなります。

約47点/75点(63%)

結構点差がつく気がします。語彙力をつけて再現性の高い読解法・解答法を身につけていれば難なく高得点が取れる気もします。

以上です。

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武川 晋也
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