国公立大学入試分析⑭ 筑波大学
おはようございます。4日連続の更新になります。(たぶん)
北関東シリーズも第三弾。宇都宮大学、高崎経済大学に続いての筑波大学です。
筑波大学は九州の予備校で教えていても志望者が毎年いる、関東の中でも全国規模の人気を誇る大学ですね。
そして何より良問揃いの大学です。 #良難問フェチ としては楽しみな分析でございます。
〇全体概観
・時間 : 120分(現代文は60分位で解く)
・分量
【大問1】3,000字程度
【大問2】2,000~4,000字程度
・文章
【大問1】が評論
【大問2】が随筆か小説
・設問
各大問記述4問
<コメント>
分量面は年度ごとの大きな変化もなく、また、他の国公立大学と非悪しても標準的なものである。
特徴は大問2の随筆、小説の出題。小説を出してくる大学の国語は、良問揃いになる説を帰納的に証明できるかもしれない。
〇各年度の短評
では、ここからは各年度の問題について簡単に評しておく。
◆2016年 全体:標準
【大問1】標準
難易度
【文章】★★★
【設問】★★
<総評>
文章は標準的。教育の在り方についての内容。15年前の著作なのに色あせないものがある。
設問はやや平易。根拠となる箇所の発見が容易い。まとめるのもそんなに苦労しない。
【大問2】標準
難易度
【文章】★★
【設問】★★★★
<総評>
文章はやや平易。山田詠美の随筆だが、この読みやすさがまた怖い。
設問はやや難。平易な文章の何気ない比喩を考えてみると…わからない。という状態に陥りそうな問題。問2~問4の解釈は特に難しい。
◆2017年 全体:やや難
【大問1】標準
難易度
【文章】★★★
【設問】★★★
<総評>
文章は標準的。仲正昌樹の一冊におけるもっとも入試問題になりそうな部分をピックアップしている印象。文章選択にセンスを感じる。
設問も標準的。後述するが、丁寧に文章が読めていることがそのまま得点力に結びつくこと、少なくとも解答力の土台になることを、筑波大学の問題は示している。
【大問2】やや難
難易度
【文章】★★★
【設問】★★★★
<総評>
文章は標準的。幸田文が植物を通して父との関係をつづった随筆。読みにくさは受験生も感じないと思われる。
設問はやや難。随筆独特の比喩的な表現の解釈が求められる。一方で、2016と比べると解きやすそうでもある。
◆2018年 全体:標準
【大問1】標準
難易度
【文章】★★★
【設問】★★★
<総評>
文章は標準的。例年に比べるとやや難しい気もするが、論理展開が明確なのでその把握に努めれば対処可能。
設問も標準的。具体例部分の抽象化や指示語把握など至極シンプル。大学受験ではないが、高校入試の開成・慶應女子・国立附属を受験する子にはぜひ解いておいてほしい問題。
【大問2】標準
難易度
【文章】★★★
【設問】★★★
<総評>
文章は標準的。どことなく幻想的な雰囲気もある文章だが、基本的には読みやすい。
設問は標準的。問4の問題は主題把握。「引っ越し」の意味合いをどこまで掘り下げられるかがポイント。
◆2019年 全体:やや難
【大問1】やや難
難易度
【文章】★★★★
【設問】★★★★
<総評>
文章はやや難。論理展開の把握が難しい。例年以上に読みにくさを感じそう。
設問もやや難。根拠となる箇所の文章表現が把握しにくい。抽象化のスキル、しかもある程度のレベルが問われる印象。
【大問2】やや難
難易度
【文章】★★★★
【設問】★★★★
<総評>
文章はやや難。捉えどころのない感じで展開していく小説。
設問もやや難。その捉えどころのない文章の内容や表現について記述するのはなかなか難しい。
◆2020年 やや平易
【大問1】
難易度
【文章】★★★
【設問】★★★
<総評>
文章は標準的。論理展開が追いやすい。茶室というテーマは受験生になじみがないかもしれないが。
設問は標準的。問1~問3はやや平易だが、問4が手こずること必至。ただ、論理展開を負うことを筑波大学がいかに重視しているか、が分かる問題。
【大問2】やや平易
難易度
【文章】★
【設問】★★
<総評>
文章は平易。時代背景が大きく異なるとはいえ、このレベルのものは受験生はしっかりと理解できないと困る。
設問はやや平易。この5年間では最もオーソドックスな出題であり、できれば全て解けてほしい問題。
〇過去問から考える筑波大学が求める力
①文章の論理展開を追いかける力
設問の文章はそこまで難しくないが、しっかりと論理展開を追いかけることが求められている。解くことについつい目が行ってしまいがちなのが受験生の常ではあるが、しっかりと文章展開を追いかける鍛錬を積み重ねてほしい。
②基本的な記述解答のスキル
比喩の解釈、指示語の把握、因果関係の構築……と基礎的な作業を心がけることによってしっかりと答えを作り上げましょう。
〇筑波大学の対策に役立つ他大学の過去問
①全体の構成、難度が近いもの
→東北大学や岡山大学を推奨。評論と小説をしっかりと聞いてくる学校を使って練習しましょう。
②小説問題の練習
→香川大学や岡山大学の過去問を推奨。文章の傾向、記述問題などがよく似ています。
〇補足:高校受験とのリンク
① 全体的に
国立附属高校の対策に役立ちます。筑波大学附属、お茶の水女子大学附属の対策としても役立ちます。また、早大本庄の対策としても有意義でしょう。
② 小説問題
開成高校の対策として非常に有効です。開成で問われるタイプの問題、心情把握や比喩の解釈、そして主題の把握などがバランスよく問われております。
明日は埼玉大学の過去問分析をお送りいたします。
それでは!