職場はワイワイしてたほうがいい?
転職を繰り返していくと、いろんな職場がありました。わいわいガヤガヤしている職場、シーンと静まりかえっている職場、あいさつしても返ってこない職場……。
最初の職場(金融機関)がとても私語の多い職場で、そのこと自体は僕はとても気に入っていたのですが、外資系企業から転籍してきていたオバサマが言っていた「外資じゃ私語なんて信じられないワ」という言葉がいまも思い出されます。
実際、僕が外資のITに転職したとき、そっちではまたワイワイとしていたので、外資も外資によるんでしょうけれども。
ところで、人間の身体に測定器具を付けて、ソーシャルな出来事を科学しようとした試みがありました。
データの見えざる手
僕が読んだのは2014年版になるので、最新の版に比べると足りないところもあるかもしれないのですが、なかなかに面白い本でした。ひとことでいうと、人間って、熱力学なのね、と。物理学出身の僕なんかはそう思ったものです。
熱力学や統計力学は、完璧に統計の産物です。そこには努力したも努力しなかったもない。この本では、現に、平等な取引を無限回繰り返していくと、不平等な結果が得られるというようなことが書かれています。いわゆる二八の法則、パレートの法則とかいうやつです。
なんかそういわれちゃうと、がんばる気力を失いそうになるのですが。
活気を科学する
この本の研究結果では、人は行動の結果ではなく、行動を起こしたことによってハピネスを感じるのだそうです。人を快適にしてあげることはハピネスへの寄与度がわずか10%アップで、人の活動を支援すると40%もアップするのだとか。
どういう実験をしたとかどういう検証をしたとかはここでは端折っています。でも、結論は興味深いです。人間は、動くと幸せになる。行動をすると幸せになる。
つまり、貧富の差はパレートの法則(っぽいもの)に従うとしても、自分が幸せになるかどうかは、自分の行動に懸かっているというわけです。そうなると、行動を起こさないわけにはいかないですよね。
諦めは人を殺します。「あーもうあかんわ」という状況でも、行動を起こす。もちろん困難は解決できたほうがいいですが、行動のもたらす恩恵は、どうやら解決だけではないようなのです。
しかも、集団としては、活発度の高い集団のほうが生産性が高いということだそうです。そうなると、冒頭の、わいわいガヤガヤしている職場、一見無駄話に花を咲かせているかのような職場のほうが仕事ができるというわけです。なんだか不思議。
幸運を科学する
この本では活気を数値化して、営業成績などとくらべていくのですが、もうひとつ、重要な要素を数値化して調べています。
それが、リーダーの「運」です。
リーダーが(社内の)どのような人と関わって仕事をしているのかを、またもウェアラブルデバイスを使って調べてみたそうです。以下のふたつの組織では、どっちが生産性が高いと思いますか?
● リーダー主導: リーダーが現場のキーパーソンに対する繋がりを強く持ち、ハブとなっている
● 現場主導: 組織のメンバー同士の繋がりが強く、ネットワークが濃密
答えは、両方です。いや、すみません。でも、リーダー主導の組織と現場主導の組織、相反するものだと思いませんか?
大事なのは、リーダー主導と現場主導は両立するということなんです。リーダーは現場キーパーソンにきちっと繋がっておく。現場は濃密なネットワークを形成する。
ひとつだけ大事なことを述べておくと、リーダー自身はハブである必要はないんだそうです。つまり、リーダーは顔が広い必要はない。むしろ、現場のほうにハブとなる人間が存在して、リーダーはそのハブとしっかり繋がっておればよいということのようです。
パーティー・ガイじゃない僕はちょっとほっとしました。ずっとハブであるなんて、心理的負担が大きすぎて大変だと思ってしまう内向型INTP人間なので……。僕のような人間でも、上手くリーダーがやれるようです。
研究によると、リーダーの運を左右するのは、メンバー同士に三角形のソーシャルグラフができること。それも、組織内に無数の三角形の相関関係ができあがることだというわけです。これがあれば、「友達を友達に紹介する」という仕事の仕方が可能になり、処理能力が格段にアップするのだとか。
リーダーの周りのネットワークが多少濃かろうが薄かろうが、組織全体がワイガヤと仲良くやってくれていれば、組織の生産性は上がり、そして儲かるというわけです。なるほど。
じゃあってんで、これで、リーダーの新しい役割がわかりましたね。そうです。リーダーの役割は、部下同士をどんどん友達にして繋げていくこと、そしてみんなでわいわいガヤガヤすることです。