【英国ゴルフ場探訪記】第2回 WIMBLEDON COMMON GOLF CLUB
460ヘクタール、これはロンドン南西部に位置するWimbledon Common という自然公園の総面積だ。ロンドンの中心部から10km ほどの場所にあるにしては相当な広さである。公園といっても、自然の森をそのまま残しているようなところなので、野生の動物や草木が自由にのさばっている。
Wimbledon Common Golf Club はこの公園の一角にあるゴルフ場だ。コースの大半の部分が、公園でハイキングやピクニック、犬の散歩や乗馬などを楽しむ人々の動線と交差している。公園を歩いているほかの人にボールを当てないよう気を付けてプレーをしなくてはならない。私もこの公園にはジョギングで何度か訪れたことがあり、「ああ、ゴルフ場もあるのか」と思いながら走ったことを覚えている。
9月に入り徐々に気温も下がり、段々と肌寒くなってきているが、サマータイムの中、まだまだ日は長い。私は午後2時ごろからの予約をとり、当日クラブハウスに向かった。
クラブハウスはレンガ造りで味のある外観、“ザ・イギリス”という感じだ。屋根に乗っかっている時計塔が良い味を出している。建物の小さいドアをくぐると右側にラウンジ、正面にショップと更衣室に続く通路があった。英国のゴルフ場のクラブハウスの受付は、ショップやバーの受付と兼ねているところがほとんどだ。受付と言ってもプレー時間と支払いを確認するだけなので、大げさなものは必要がないのだろう。
このゴルフ場で一つ変わったところがあるとすれば、プレー中の服装の決まりがあるということだ。公園を使っている人とゴルフをプレーをする人とを区別するために、何かしら赤い色の服を着なければならないのだ。ショップにはクラブのロゴが入ったポロシャツやセーターなどがたくさん並んでいた。
私は季節を問わず使えるように、上着にもなり、シャツとしても着れそうなスポーティーなジャンパーを購入した。広島カープのカラーのような鮮やかな赤で、腕に入るワッペンがかっこいい。こういうロイヤリティグッズを買うのもゴルフ場に来る楽しみだ。
早速着替えて、1番ホールへ。今日は18Hプレーなのでテンポよく行きたい。と思ったら、1番ホールのティーグラウンドが見つからない。ウロウロしていると犬の散歩をしている家族の横にそれらしいところが。このコース、ホールの案内板がないのである。ゴルフ場アプリとスコアカードに表記された地図をたよりにようやくティーグラウンドにたどり着く。
気を取り直して1番は223ヤードのPar3。長めのショートホールだ。人が歩く道や車が通る道路の間にあるコースなので、緊張しながら5Wでティーショットを打つ。なんとか曲げずに、ボールはグリーン脇のラフまで飛んだ。
2番ホールは437ヤードのPar4少し長めのミドルホール。ティーグラウンドに向かうために、1番ホールを終えてから、一度クラブハウスの近くまで歩いてもどってこなくてはならない。そこそこのティーショットからセカンドを少しミスし、結局4オン2パットのDouble Bogey。
3番ホールは274ヤードのPar4。短いPar4だが見た感じは距離があるように感じる。順調な運びで、きれいにワンパットのParをとる。この調子で進めばよいのだが。。。
4番ホールはショートホールで170ヤードPar3。このホールから段々公園の奥へ入っていくようだ。人気が少なくなっていくのは良いが、油断していると木陰から歩行者が顔を出すので要注意だ。
5番ホールは280ヤードPar4。これもまたちょっと中途半端な距離。ティーショットを盛大にトップする。まだ200ヤード以上残っているので、ここから5Wで勝負。これはいい当たりで逆に飛びすぎた。ボールを探しに行くと、前の組が左側からティーショットを打とうとしている。若いイギリス人カップルの組だ。6番ホールは5番ホールはすぐ近くで、グリーン付近で垂直に交差するように配置されている。彼らのティーショットを待った。残念ながら彼はミスショットで、ボールはすぐ手前右側のブッシュに突き刺さった。もう一人のショットを待つ間暇だったのでボールを代わりに拾ってあげた。初心者同士仲良くしないとね。
6番ホールは392ヤードのPar4。先ほどの前の組をみているので右側のブッシュと5番ホールに行かないように気を付ける。若干スライスしながらもなんとかラフで止まり、刻みながら5打のBogeyであがる。
7番ホール330ヤードPar4で、大きく左にドッグレックしていて、しかもティーショットは谷越えの難しいコースだ。しかし、このコースで一番難しいのは、左への曲がり角の正面は人通りの多い遊歩道だということだ。私もジョギングで通ったことが何度かある道だ。もちろん柵やネットなんてものはない。人に当ててしまうかもしれないというプレッシャーが腕を縮こませる。そのせいかどうかわからないが、ここでは谷にボールを二回落とした。打ちやすい7Iで刻みにいったのに。
8番ホール225ヤードのPar3 。ここは折り返し地点、ここからクラブハウスに向けて戻ってくる。長めのPar3なのでクラブに迷うが、20°UTをつかう。ティーショットはグリーン付近の右手の大きな栗の木の下に。まだ青いが栗の実が生っている。地面に落ちている栗をお土産に家に持って帰ることにした。
9番ホールは谷越えの259ヤードPar4。谷底に池になっており生物多様性が豊富そうな湿地になっている。ここでも一つボールを失う。谷や池があるとそこに落とすっていうのはどういうことなんだろうね。人間の心理と身体の関係っていうのは不思議だ。
10番ホールは311ヤードPar4。特筆すべきことはないが、ここも公園の遊歩道がコースを横切っている。しっかりと通行人を待ってからショット。散歩するにも覚悟がいりそうだ。
11番ホールもミドルホールで382ヤードPar4 。ここは3オンに成功するも、3パットしてしまいDouble Bogey。今日は序盤からパットの調子が良かったのだが、ここでは叩いてしまった。また栗の木を発見。秋に収穫に来ようかな、と場所をメモる。
12番ホールは237ヤードPar3。ティーショットしようかと思ったら、犬の散歩をしている家族がコースを横切る。さらに馬が横切る。え、馬?と二度見する。WimbledonCommonには乗馬クラブがあり、公園周辺で乗馬を楽しんでいる人がいる。ゴルフをしていて馬が横切るとは驚きだが、面白いものを見られてよかった。
13番ホールは230ヤードPar4。中途半端な長さのミドルホールが続く。このくらいの距離だと5Wか20°UTを使うか、新しく買ったアイアン型23°UTという手もある。ティーショットがドライバー一択にならず、自由度があるのは楽しい。
14番ホールは383ヤードPar4のしっかりと距離のあるミドルコース。ティーグラウンドの前が少し下がっていて谷のようになって、そこから上り200ヤードくらいのところでフラットに戻る形だ。前の組を待っているとその谷のところを少年が3人歩いてきた。楽しそうに遊んでいるのだが、坂の中腹で寝転がって腰を落ち着けてしまった。私のティーショットの番になったのだが、退く様子はない。楽しそうにしてる子どもを退けるのは心苦しいが、あまりスロープレーになってもいけないので、すこし右側に横に避けてくれるよう声をかけた。ティーショットはやや左へ。退いてといった手前、ちゃんとしたティーショットを打たなければならなかったが、うまくいってよかった。
15番ホール、288ヤードPar4。5Wでティーショットを打つとやや左へフックした。なぜかドライバー以外は少しフックの癖が。グリーンまで100ヤード弱のラフでボールを見つける。アプローチに入ると、ん?中型犬がちょうど旗とボールの直線上に寝そべっているぞ。このまま打つと犬に当たりそうだ。飼い主は携帯で誰かと話していて気づいていない。前の組も次のティーグラウンドで待っているようなのでゆっくりとしようか。その後、犬は走り去り無事このホールを終える。
16番ホールはショートホール、130ヤードPar3。8番アイアンでティーショットをうつとグリーンわきのラフへ。やけにラフが深くボールが見つかりにくいが、アプローチは上手くいった。
17番ホールは318ヤードのPar4、ミドルホール。右側にドッグレッグの形のホールで、ティーグラウンドからグリーンは見えないが、曲がりはきつくないので、距離的にはまっすぐ打ってもよさそうだ。ティーショットは今日イチのベストショット。ドライバーで真っすぐフェアウェイへ。前の組が少し見えていたのでボールが当たらないか心配なくらいだ。このホールではボールをなくさず済ませることができたが、いつのまにか今日持ってきている残りのボールはあと一つ。ホールアウトできるのか。
18番ホールは473ヤードのPar5。ここにきてこのコース唯一のロングホールである。しかもティーグラウンドの前は藪になっていて、さらに左側から林がせり出してきている。ティーショットを打とうとボールを置くと、後ろの遊歩道で犬を散歩させているおじさんが待っている。しかし犬が多いよねこの国は。犬好きだけど。見られているプレッシャーからか、ティーショットは見事に左の林に突っ込む。これは見つからないな。結局ホールアウトできませんでした。
最後にボールがなくなってホールアウトはできなかったが、公園の中のゴルフコースを満喫することができた。公共の空間を市民とともにシェアにするところが英国風なところだ。ゴルフを身近に感じるという目的に最も合っているコースだったのではないだろうか。ゴルファーもほかの人も、犬も馬も誰もお互いを気にしすぎることなく自然を楽しんでいるように感じた。
更衣室を借りようとクラブハウスに入ると、バーラウンジでビールを飲んでリラックスしている人々がいた。雰囲気のあるクラシックなクラブハウスでアフターゴルフを楽しむのも格別だろう。今日は時間も遅くなってしまったので、歩いてバス停まで向かう。家が近く、バスですぐ帰れるところが良い。また練習がてら気軽にプレーをしに来ようか。
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