上智大学大学院 応用データサイエンス学位プログラムに通っています (①大学院紹介編)
tkgと申します。
2023年4月に開学した上智大学大学院応用データサイエンス学位プログラム(以降、上智ADSと略) の1期生で、現在修士課程の2年目です。まだまだ上智ADSの口コミ情報が少ないと思い、備忘録代わりにnoteを書くことにしました。
大学院の特徴
近年、データサイエンス系の大学・大学院が増加していますが、その中で上智ADSがどのような特徴を持っているか、以下リストアップしました。
このあたりの公式サイトのデジタルパンフレットと併せて読んでいただくのがよいかもしれません。
1. 社会人含めた多様なバックグラウンド
属性
時間割が5限(17:20~)、6限(19:10~)がベースとなっており、19:10~の授業で卒業要件をほとんど満たすことも可能であることから、社会人も多く通っています。
バックグラウンドは様々で、社会人だけでなく大学から直接進学される学生も、留学生も、休職中の方も、退職後の方も、経営者もいます。データサイエンスに対する知識はもともと豊富な方もいれば、特に社会人においてはほぼ0の方(←私)もいます。
様々なバックグラウンドの人がグループワークで協働する機会もあります。例えば、Pythonでゴリゴリとモデルを組める人と、マーケティングの経験が豊富で分析方針や施策の策定が得意な人と、プロジェクトマネジメントが得意な人が集まり、それぞれの得意領域を活かしてデータサイエンスプロジェクトを成功に導いていくという流れを体験できます。まさにビジネス実務で求められるコラボレーションを体得できる環境だと思います。
入学目的
なお、社会人の入学意図としては、もともと持っているデータサイエンスの知識を深めたい方もいれば、転職や異動を目的する方、現在の業務の中で課題を抱えているが機械学習や深層学習についての知識がなく前に進めない方(←私)、マネジメント層として会社をよりデータデータドリブンな組織に変えていこうと苦労している方、などです。公式サイトのデジタルパンフレットのp9の履修モデルに複数のロールモデルが記載されておりますが、それらが上智ADSの設定しているターゲットなのだろうと思います。
予備知識
社会人の場合は入学前に知識0の人もいます、と上述しましたが、0の定義づけが難しいので整理します。
0といっても今まで全くデータやITに触れてこなかった人はほとんどいない印象ではあります。統計や機械学習という点では知識は0ではあるものの、Excel等でデータ可視化や簡易な集計をした経験、システム開発経験があるなど、多少はリテラシーを持っている状態で入学されているように見受けられます。
ちなみに私は、統計は大学の教養科目で少し触れた程度(統計検定3級レベル)、単回帰や重回帰の存在はなんとなく知ってるが使いこなせるレベルではない、ニューラルネットワークは2, 3回さらっと授業を聞き流したことはあるが全く理解できていない、Pythonは書いたことないがJavaやPHPは書いたことがありプログラミングはなんとなくやれる、SQLは仕事でたくさん書いたのである程度理解している、そんなレベルで入学しました。
2. データサイエンスを基礎から習得できるカリキュラム
基礎科目
上述の通り、機械学習やAIについて知識が少ない方も多いです。実装経験もなく、PythonやRに初めて触れる、という方もいらっしゃいます。某教授は「入学のハードルは低いが、卒業までのハードルは高くしている」とおっしゃっていたのですが、卒業時にある程度のレベルを担保できるよう、初学者に向けた基礎科目もしっかりと用意されています。
現に私はM1で基礎科目を多くとりました。
大学は文系だったのもあり、まずは線形代数や確率といった基礎的な数学の授業を取ったほか、統計の授業も取り、単回帰・重回帰分析、ロジスティック回帰などの基礎中の基礎みたいなモデルの学習もしました。分析やモデリングを行うために必要なRとPythonの授業もとり、秋には機械学習や深層学習の簡単なモデルを組める状態にはなりました。
おかげでM2では応用的なトピックに触れられるようになり、因果推論、自然言語処理、深層学習、生成AI、数理最適化など実際に社会で求められるデータサイエンスの手法を学び、自身の研究や仕事につなげられるようにはなっています。
課題
カリキュラムについては、課題もあります。
数学や深層学習など、一部の基礎講座は4限(15:25~)だったことが結構大変でした。また数学の理解が深まる前に、機械学習の基礎科目で重回帰分析の導出が始まり行列や偏微分が出てきて困ることなどもありました。
本年は昨年と違って基礎科目の時間割を遅くしてくれるなど、上智ADS側も配慮をしてくれているようですが、効率的に学習するためには簡単な統計や線形代数などの知識は入学前にちゃんと入れておくべきだったなと反省しています。
なお、学生の中には数学やモデルに関する基礎的な理論の習得はある程度捨てている人もいることは補足しておきます。それは例えば事業会社の管理職の方など、モデリングはエンジニアや協力会社にお任せをしつつ、ビジネス応用のやり方(どのような技術・モデルを使えばどういうときに何ができるか、マーケティングにどのようにデータサイエンスを組み込んでいくか、等)を学びに来た、という方もいらっしゃるからです。
3. 実ビジネスの課題に応用するためのカリキュラム
データサイエンティストに必要な3つのスキル領域
一般社団法人データサイエンティスト協会によると、「データサイエンティスト」には3つのスキル「ビジネス力」「データサイエンス力」「データエンジニアリング力」が必要とされていますが、上智ADSではそれらを満遍なく学べるカリキュラムとなっています。
特徴がよく表れているのが「A」の先生、「B」の先生、という表現かなと思います。常勤の先生の中で、「A」(=Academic) の先生は他学部が主務の教員(理工・経済・地球環境)で「データサイエンス力」を理論的な面から担保、「B」(=Business) の先生はADS主務の実務家教員で、「ビジネス力」を担保、簡単にまとめるとそういった具合です。
上智ADSのM2は、「A」の先生のゼミ、「B」の先生のゼミ、の両方に所属することになります。それぞれ授業が実施されるほか、卒業要件として課されている特定課題(≒卒業論文)の指導も両方から受けることになります。
なお、「データエンジニアリング力」は「B」の先生の一部やその他の非常勤の先生(実務家)が補っているようなイメージで、用意されているカリキュラムを自ら積極的に履修しないと得られない部分かもしれません。
ビジネス力
その中でも上智ADSの強みは「ビジネス力」なんだろうと思います。
他大学院の状況をよく知らないので明確な比較はできませんが、ビジネス実務の最前線にいらっしゃった人が多く、テーマとしても分析の上流にあるような分野の授業が多いイメージがあります。
「B」の先生や非常勤の実務家の先生は、大手コンサルファーム出身、データアナリティクスの老舗ツールを運営している会社出身、巨大な事業会社でデータ分析を主導、データサイエンス関係で起業、だいたいそんな感じの経歴です。「A」の先生にも民間企業と共同でデータマーケティングの研究をされている方もおり、全体的にビジネス実務に明るい方が多いイメージです。
カリキュラムとしても、データ分析プロジェクトの上流で必要となるマーケティング、KPIマネジメント、ビジネスフレームワーク、企業戦略、財務会計の授業だったり、金融、通信、製造、メディア、スポーツなど業界のドメイン知識を学べる授業があったりします。
柔軟性
これはもしかしたら上智ADSが立ち上がって間もないから、という事情があるかもしれませんが、カリキュラムもかなり柔軟で、学生の悩みに沿って授業内容を変更してくれたり、新しい授業を追加してくれたりしています。例ですが、生成AIやLLMなど進化の流れが著しく速い分野に対応できるよう、授業がこの秋に新設されています。
大学や文科省のルールがあるようなので、今後も授業新設を気軽にポコポコできるかは正直分かりませんが、先生や学事のスタッフ経由で要望するとどこかで叶えてくれますので、そういった意味ではとても学生に寄り添ってくれる大学院だなと思っております。
まとめ
上智ADSの特徴は以下3つあるなと感じています。
上智ADSには幅広いバックグラウンドの人がおり、機械学習や深層学習については知識がほとんどない人も入学している
機械学習や深層学習を基礎から学べるカリキュラムが手厚く用意されている(もちろんある程度知識がある人に対する応用科目もある)
「ビジネス力」「データサイエンス力」「データエンジニアリング力」を満遍なく学べるが、特にビジネス力に重点が置かれている
リカレント目的で入学した私としては、すごく満足しています。
また、授業を受ければ受けるほど、同期と会話すれば会話するほど、まだまだ自分の知識量が不足しているなと感じることも多く、そういった刺激によって学習のモチベーションがさらに上がるため、入学してよかったなと思っております。
何かご質問や今後こういったことを書いてほしいといったご要望などございましたらコメント欄にお願いします。
ここまで読んでいただきましてありがとうございます。