映画分析ノック㉒『ローマの休日』(1953)
映画『ローマの休日』ログライン
第1幕「アン王女の退屈な日々/脱走/出会い」(状況設定)
①:新聞記者の声(N)。親善旅行でヨーロッパの国々を巡るアン王女(点描)。ロンドン、アムステルダム、パリ、そして「ローマ」へ。
②:イタリア大使館。王女歓迎の舞踏会。アン王女の元に要人たちが謁見に訪れる。アン王女は礼儀正しく対応するが、スカートの下は退屈そうにヒールを脱いでいる。と、ヒールが脱げて外に。気付いた身内が、音楽に合わせてアン王女をダンスに誘うことで、ことなきを得る。【Hook】
③:大使館の寝室。ベッドに寝ているアン王女、窓の外を羨ましそうに見ている。世話係の夫人、アン王女のワガママを退け、明日の公務のスケジュール(分刻み)を確認してゆくが、アン王女は嫌気が差して癇癪を起こす。夫人は医者を呼び、医者はアン王女に眠くなる薬を注射。が、アン王女は夫人と医者が出て行った隙を見計らって窓から外に脱け出す。【Triger】
④:外に泊まっていたリアカーに乗り込んだアン王女は、門番の監視の目を潜って大使館の外で出ることに成功。
⑤:夜の街(道路)。アン王女にとって初めての自由な外の世界。リアカーを降りたアン王女は、あくびを一つ。とある建物の横を通り過ぎる。その建物にカメラが寄っていき……
⑥:建物の中。賭けポーカーに興じているジョー。同僚・アービングに大負け。明日はアン王女の写真を撮る仕事があるから、と早々に切り上げる。彼らは新聞記者なのだ。
⑦:ジョー、建物を出て帰る途中。道を歩いているとベンチに横たわる女性が。アン王女だ。ジョーは放っておけず介抱する。酔っ払いのようなアン王女は、孤児院で行う予定の演説を暗唱しながら、また寝てしまう。ジョー、タクシーを拾い立ち去ろうとするが、ベンチで寝るアン王女を置いていく訳にいかずタクシーに乗せる。彼女が目的地を言わないため、とりあえず自分のアパートまで行くことに。【PP/TP①】
第2幕「ふたりの休日/迫り来る追手/別れの時」(葛藤・対立)
⑧:アパートに到着。アン王女を置いていこうとするが、タクシー運転手に拒まれ、仕方なく彼女をアパートの部屋まで連れていくことになるジョー。アン王女、階段もろくに登れないほどフラフラである。
⑨:アパートの部屋。アン王女は寝ぼけて「ここはエレベーター?」と発言。その王女のような振る舞いに、ジョーは怪訝な顔。パジャマを着てソファベッドに寝かせようとするが、なかなか言うことを聞かないアン王女。ジョーは部屋を出てゆく。
⑩:大使館。アン王女が脱走したことに気付き、大慌ての使用人たち。絶対に世間に知られる訳にはいかない!捜索が始まる。
⑪:アパートの部屋。ジョーが戻ってくると、アン王女はパジャマでジョーのベッドに寝ていた。呆れたジョーは、アン王女をなんとかソファベッドに移動させる。全く手間がかかるひとだ……と。
⑫:新聞のタイプライターに文字が打ち込まれてゆく。”大使館の発表によるとアン王女は突然のご発病で……”。
⑬:朝。ジョーが起床するとアン王女が寝ている。時計を見たジョー「王女の会見が」と唖然。寝坊したのだ。
⑭:新聞社。デスクには新聞 ”アン王女の会見は中止” との見出し。そこへジョーが出社。文局長に呼ばれて遅刻を説教される。ジョーは咄嗟に「会見に出てきた」と言うが、会見は中止になっているため嘘は明らか。文局長に見せられた新聞を見たジョー、アン王女の顔写真に驚いて……。アパートの管理人に電話し、自分の部屋に誰一人近づけないでくれと頼む。ジョーは文局長に、もしアン王女の独占インタビューができたら5000ドル払うと約束を取り付ける。アン王女は明日アテネへ出発らしい。
⑮:アパートの部屋。廊下で管理人が門番してくれていた。金を借りようとするが断られる。お金がないのだ。部屋には、寝ているアン王女。新聞の写真と実物を見比べ、「王女様」と言うと返事をする。確信するジョー。起きたアン王女は昨日の記憶がない。すぐに帰らなければと言うが、ゆっくりしていけと引き止めるジョー。アン王女は「アーニャ」と名乗る。彼女にお風呂を勧め、ジョーは部屋の外へ。
⑯:ジョー、同僚のカメラマン・アービングに電話をかける。特ダネのスクープがあると言うが、アービングは撮影中で忙しい(=スクープ用のカメラがない!)。その間に開いていた部屋に掃除のおばさんが入り、風呂にいたアン王女と遭遇。イタリア語で捲し立てられるが、何を言われているかわからない。
⑰:ジョー、部屋に戻ると部屋が綺麗になっており、アン王女がいない。と、ベランダにいた。庶民の暮らしを慈しむアン王女だが、帰らなきゃと出ていく。見送った後、尾行するジョー(一旦アン王女がお金を借りにくる、その後ふたたび尾行へ)。
⑱:ローマの街。アン王女、大興奮で街を巡る。その後を尾行するジョー。トレヴィの泉で修学旅行生の女の子にカメラを借りようとするが、引率教師に睨まれて断念。アン王女は理容室で髪をバッサリと切った。理容師、アン王女を21時の船のパーティーに誘う。曖昧に返事するアン王女(覚えておく)。
⑲:アン王女が向かった先は、スペイン広場(階段)。尾行するジョー、偶然を装ってアン王女と再会する。「学校を休んで」と嘘をつくアン王女。時間を気にするアン王女に対して「今日は思いっきり遊ぶんだ」とそそのかすジョー。アン王女、色々なところを巡りたいと言う。
⑳:カフェ。ジョーはアイスコーヒー。アン王女はシャンパンを注文。互いの身分を偽って話す。そこへ同僚のカメラマン・アービングが合流する。勘の鈍いアービングはジョーの職業や彼女がアン王女と瓜二つであることを言おうとする(その都度ジョーが阻止する)。ジョー、店の奥でアービングにこっそり事情を説明して特ダネへの協力を仰ぐ。席に戻った2人、アン王女に煙草を渡し、吸っている様子をライター型の隠しカメラで撮影。
㉑:飛行場。着陸した飛行機から、秘密警察のような黒服の護衛たちが降りてくる。アン王女の捜索部隊である。
㉒:(点描)ローマの街。バイクに乗るジョーとアン王女。それを車で追いかけ写真を撮るアービング。目を離した隙にアン王女がバイクを運転してしまう。慌ててジョーも乗るが、アン王女が暴走し街中はちょっとしたパニックに。警察に追われるバイク。
㉓:警察署。捕まっているジョー、アン王女、アービング。が、こっそりと新聞社の名前を出して許してもらうジョー(新聞社の権力は凄いらしい)。アン王女に何の会社と問われてごまかす。嘘が上手ね!と。
㉔:真実の口。嘘つきは手を噛まれると言う。アン王女、恐る恐る手を入れて……大丈夫だった。ジョーも手を入れるが、噛まれた!手が無くなったと思ったら、嘘。アン王女、騙したわね!と怒る。それを撮影するアービング。距離が縮まるジョーとアン王女。
㉕:祈りの壁。ジョーはアン王女に何を祈ったか尋ねるが、アン王女は「どうせ叶わない祈りだから」と教えない。ジョーはアービングをここで帰す(写真を現像する作業のため)。アン王女は「0時にカボチャの馬車で帰る」と宣言。おとぎ話の終わりを意味する。
㉖:サンタンジェロ城。船のダンスパーティー。すっかり夜である。ダンスをするジョーとアン王女、急接近。と、昼の理容師のマリオがいた。アン王女がマリオとダンスをしている間、ジョーの元にアービングが合流。隠れてアン王女のダンス写真を撮る。
㉗:黒服の護衛たちが来る。アン王女、護衛に捕まるが、ジョーが助ける。乱闘騒ぎになるパーティー会場。護衛たちを撒いたかと思ったが、ジョーは桟橋で待ち構えていた護衛に殴られ海に落下。後を追ってアン王女も海へ飛び込む。そこへ警察が来て、護衛たちは乱闘騒ぎのため捕まってゆく。【Mid Point】
㉘:海辺。水に濡れて寒がるアン王女を抱きしめるジョー。目が合い、そのままキス。が、我に帰り「アービングの車で帰ろう」と言うジョー。
㉙:アパートの部屋。ジョーの服を借りているアン王女、ずっと一緒にいたいという思い。ラジオからアン王女の病状に関する憶測が。ラジオを消すアン王女「帰らなきゃ」と。ジョーとアン王女は抱擁。秘密を打ち明けようとするジョーに対し、アン王女は「何も言わないで」と拒否。何者でもない自分として居たいのだ。【Low Point】
㉚:車。ジョーとアン王女、何も会話しない。近づいていく別れが惜しいのだ。そして大使館の角で車が停まる。アン王女は「決して私の行先を見ないで」と訴える。ジョーはアン王女を抱きしめてキス。涙の別れ。【PP/TP②】
第3幕「写真の行方/王女との謁見(再会)」(結末)
㉛:大使館。アン王女、使用人たちと対面。いろんなことがあった、とだけ説明する。使用人たちの過度な世話を断るアン王女。その表情は精悍な顔つきになっている。アン王女は大人になったのだ。
㉜:アパートの部屋。朝。ジョーは喪失感で呆然としていた。と、ノック音。アン王女かと期待するが、文局長だった。賭けた特ダネの行方を尋ねる文局長だが、ジョーは何もなかったと嘘をつく。そこへアービングが写真を持ってやって来るが、ジョーは何とか文局長をごまかして追い出す。アービングに記事は書いてないと説明する。【Lowest Point】
㉝:ガッカリするアービング、撮れた写真をジョーに見せる。数々のシーンを切り取った写真、思い出を振り返るジョー。思い出に新聞の見出し風のタイトルをつけてゆく。これから王女の会見がある。仕事のため向かうことにするジョー。
※カタルシス
㉞:城(アン王女の国)。アン王女の会見。城を訪れるジョーとアービング。アン王女、新聞社としてジョーが来ていることに驚く。目を合わせるジョーとアン王女、無言の会話(再会)。国際情勢の質問に問われたアン王女、ジョーとの日々を思い出して自分の言葉で答える(冒頭のマニュアルではなく)。記者から「良かった都市は?」と聞かれたアン王女、忖度しようとするが「ローマ!なんと言ってもローマです」と答えた。【High Point】
㉟:集まった記者に対して順番に握手をしてゆくアン王女。アービングの番、船場の乱闘写真を渡すアービング。ジョーの番、新聞社の名前を名乗るジョー。アン王女は毅然とした態度で答える。そして最後、アン王女とジョーは見つめ合う。アン王女が去った後、会見会場に残ったジョー、名残惜しそうに振り返り、会場を後にする。
映画『ローマの休日』分析
■主人公は誰で、どこから登場しているか
主人公は、新聞記者のジョー。
第1幕⑥(17分地点)、アン王女が通り過ぎた建物の中で、賭けポーカーをしているシーンで登場。
このシーンで
・新聞記者であること
・お金がないこと
・明日、王女の取材があること
が分かる!
■二番目の人物は誰で、どこで登場しているか
二番目の人物は、アン王女。
第1幕①(冒頭)、新聞記者のNで、アン王女がヨーロッパ各国を巡っている点描。
このシーンで
・アンは某国の王女であること
・親善旅行でヨーロッパ各国を巡っていること
・今はローマに来ていること
が分かる!
■主人公の物語が本格的に始まるのはどこか。それはどんな物語か
物語が本格的に始まるのは……
第1幕⑦(19分地点):新聞記者・ジョーが、街中のベンチで眠ってしまったアン王女と出会うシーン。
どんな物語か……
【新聞記者の男が王女と出会い、ローマを巡る中で次第に惹かれてゆくが、立場の差から別れを選ぶ物語】
■物語が大きく転換しているのはどこか
物語の転換点は、第2幕㉗:船場にアン王女を追って黒服の護衛たちが襲来するが、何とか逃げ切るシーン。
このシーンは「結ばれるシーン」でありながら「別れを前兆シーン」でもある。
・追手から逃れた興奮(吊り橋効果)から互いを意識し、キスをする(結ばれる!)
・同時に「ずっとこのままではいられない」という別れを意識する(別れの予感…)
■クライマックスはどこか
クライマックスは2つ考えられる。
1つ目は、船場の後、アパートの部屋/車の中で、ジョーとアン王女が別れる一連のシーン(第2幕㉙㉚)
2つ目は、アン王女が去った部屋で、ジョーがアン王女を想い、特ダネのチャンスを棒に振るシーン(第3幕㉜㉝)
■主人公が困ること、苦しむことはどこでどんなふうに起こっているか
・賭けで負けてお金がない(大家も金を貸してくれない)。
・道端で寝ている酔っ払いのような女性を連れて帰らざるをえなくなる。
・女性のせいで新聞社に遅刻し、文局長に説教をくらう。
・特ダネであるアン王女が「帰らなければ!」と言い出す。
・アン王女を撮影するためのカメラがない。
・アービング(カメラマン)の勘が鈍く、秘密をバラしそうになる。
・アン王女が王室の金銭感覚で注文などをする。
・アン王女がバイクで暴走する。
・アン王女に追手が迫る。
・特ダネであるアン王女のことを次第に好きになってしまう。
・アン王女と別れなければならない(身分違いの恋)。
・アン王女のスクープを自ら発表しない選択をすることで、文局長の反感を買う。
■逆にホッとするようなことや主人公が喜ぶことはどこで起こっているか
・連れて帰った女性がアン王女だと分かり、一攫千金・特ダネのチャンス。
・アン王女の尾行や隠しカメラでの撮影に成功。
・アン王女に嘘を突き通したままバレない。
・アン王女とのローマ巡りが楽しい。
・無事に追手からアン王女と逃れることができる。
・特ダネを出さないという決断をアービングが理解してくれる。
・アン王女との謁見で、再会できる。
■起承転結に分けるならどこまでが起でどこまでが承か
起「アン王女の退屈な日々/脱走/出会い」(状況設定)
①:新聞記者の声(N)。親善旅行でヨーロッパの国々を巡るアン王女(点描)。ロンドン、アムステルダム、パリ、そして「ローマ」へ。
②:イタリア大使館。王女歓迎の舞踏会。アン王女の元に要人たちが謁見に訪れる。アン王女は礼儀正しく対応するが、スカートの下は退屈そうにヒールを脱いでいる。と、ヒールが脱げて外に。気付いた身内が、音楽に合わせてアン王女をダンスに誘うことで、ことなきを得る。【Hook】
〜
⑦:ジョー、建物を出て帰る途中。道を歩いているとベンチに横たわる女性が。アン王女だ。ジョーは放っておけず介抱する。酔っ払いのようなアン王女は、孤児院で行う予定の演説を暗唱しながら、また寝てしまう。ジョー、タクシーを拾い立ち去ろうとするが、ベンチで寝るアン王女を置いていく訳にいかずタクシーに乗せる。彼女が目的地を言わないため、とりあえず自分のアパートまで行くことに。【PP/TP①】
承「ふたりの休日/特ダネの仕事/追手の影」(葛藤・対立)
⑧:アパートに到着。アン王女を置いていこうとするが、タクシー運転手に拒まれ、仕方なく彼女をアパートの部屋まで連れていくことになるジョー。アン王女、階段もろくに登れないほどフラフラである。
〜
㉖:サンタンジェロ城。船のダンスパーティー。すっかり夜である。ダンスをするジョーとアン王女、急接近。と、昼の理容師のマリオがいた。アン王女がマリオとダンスをしている間、ジョーの元にアービングが合流。隠れてアン王女のダンス写真を撮る。
転「追手襲来/別れの時」
㉗:黒服の護衛たちが来る。アン王女、護衛に捕まるが、ジョーが助ける。乱闘騒ぎになるパーティー会場。護衛たちを撒いたかと思ったが、ジョーは桟橋で待ち構えていた護衛に殴られ海に落下。後を追ってアン王女も海へ飛び込む。そこへ警察が来て、護衛たちは乱闘騒ぎのため捕まってゆく。【Mid Point】
㉘:海辺。水に濡れて寒がるアン王女を抱きしめるジョー。目が合い、そのままキス。が、我に帰り「アービングの車で帰ろう」と言うジョー。
㉙:アパートの部屋。ジョーの服を借りているアン王女、ずっと一緒にいたいという思い。ラジオからアン王女の病状に関する憶測が。ラジオを消すアン王女「帰らなきゃ」と。ジョーとアン王女は抱擁。秘密を打ち明けようとするジョーに対し、アン王女は「何も言わないで」と拒否。何者でもない自分として居たいのだ。【Low Point】
㉚:車。ジョーとアン王女、何も会話しない。近づいていく別れが惜しいのだ。そして大使館の角で車が停まる。アン王女は「決して私の行先を見ないで」と訴える。ジョーはアン王女を抱きしめてキス。涙の別れ。【PP/TP②】
結「ジョーの決断/アン王女の変化/再会」(結末)
㉛:大使館。アン王女、使用人たちと対面。いろんなことがあった、とだけ説明する。使用人たちの過度な世話を断るアン王女。その表情は精悍な顔つきになっている。アン王女は大人になったのだ。
㉜:アパートの部屋。朝。ジョーは喪失感で呆然としていた。と、ノック音。アン王女かと期待するが、文局長だった。賭けた特ダネの行方を尋ねる文局長だが、ジョーは何もなかったと嘘をつく。そこへアービングが写真を持ってやって来るが、ジョーは何とか文局長をごまかして追い出す。アービングに記事は書いてないと説明する。
〜
㉟:集まった記者に対して順番に握手をしてゆくアン王女。アービングの番、船場の乱闘写真を渡すアービング。ジョーの番、新聞社の名前を名乗るジョー。アン王女は毅然とした態度で答える。そして最後、アン王女とジョーは見つめ合う。アン王女が去った後、会見会場に残ったジョー、名残惜しそうに振り返り、会場を後にする。
■三幕だとするとどこが分かれ目か
第1幕「アン王女の退屈な日々/脱走/出会い」(状況設定)
①:新聞記者の声(N)。親善旅行でヨーロッパの国々を巡るアン王女(点描)。ロンドン、アムステルダム、パリ、そして「ローマ」へ。
②:イタリア大使館。王女歓迎の舞踏会。アン王女の元に要人たちが謁見に訪れる。アン王女は礼儀正しく対応するが、スカートの下は退屈そうにヒールを脱いでいる。と、ヒールが脱げて外に。気付いた身内が、音楽に合わせてアン王女をダンスに誘うことで、ことなきを得る。【Hook】
〜
⑦:ジョー、建物を出て帰る途中。道を歩いているとベンチに横たわる女性が。アン王女だ。ジョーは放っておけず介抱する。酔っ払いのようなアン王女は、孤児院で行う予定の演説を暗唱しながら、また寝てしまう。ジョー、タクシーを拾い立ち去ろうとするが、ベンチで寝るアン王女を置いていく訳にいかずタクシーに乗せる。彼女が目的地を言わないため、とりあえず自分のアパートまで行くことに。【PP/TP①】
第2幕「ふたりの休日/迫り来る追手/別れの時」(葛藤・対立)
⑧:アパートに到着。アン王女を置いていこうとするが、タクシー運転手に拒まれ、仕方なく彼女をアパートの部屋まで連れていくことになるジョー。アン王女、階段もろくに登れないほどフラフラである。
〜
㉚:車。ジョーとアン王女、何も会話しない。近づいていく別れが惜しいのだ。そして大使館の角で車が停まる。アン王女は「決して私の行先を見ないで」と訴える。ジョーはアン王女を抱きしめてキス。涙の別れ。【PP/TP②】
第3幕「写真の行方/王女との謁見(再会)」(結末)
㉛:大使館。アン王女、使用人たちと対面。いろんなことがあった、とだけ説明する。使用人たちの過度な世話を断るアン王女。その表情は精悍な顔つきになっている。アン王女は大人になったのだ。
㉜:アパートの部屋。朝。ジョーは喪失感で呆然としていた。と、ノック音。アン王女かと期待するが、文局長だった。賭けた特ダネの行方を尋ねる文局長だが、ジョーは何もなかったと嘘をつく。そこへアービングが写真を持ってやって来るが、ジョーは何とか文局長をごまかして追い出す。アービングに記事は書いてないと説明する。【Lowest Point】
〜
㉟:集まった記者に対して順番に握手をしてゆくアン王女。アービングの番、船場の乱闘写真を渡すアービング。ジョーの番、新聞社の名前を名乗るジョー。アン王女は毅然とした態度で答える。そして最後、アン王女とジョーは見つめ合う。アン王女が去った後、会見会場に残ったジョー、名残惜しそうに振り返り、会場を後にする。
■このストーリーを3行で言うとどうなるか
新聞記者のジョーは、窮屈な日々から逃れてきた女性(アン王女)とローマの街中で出会う。
女性がアン王女であると知ったジョーは特ダネの記事にしようと目論むが、アン王女と過ごすうちに恋に落ちてしまう。
アン王女はずっと街にいる訳にはいかず別れることになるが、ジョーは彼女との思い出の写真を公開せず、自分の胸に仕舞うのであった。
■このストーリーを15項目くらいの箇条書きにするとどうなるか
・アン王女、退屈な公務にうんざり。
・城を抜け出し自由の身になるアン王女。
・新聞記者・ジョーは街で女性(アン王女)と出会う。
・女性がアン王女であると知り、彼女を尾行する(スクープを狙う)ジョー。
・一緒にローマ市内を巡るジョーとアン王女、徐々に惹かれてゆく。
・ジョーの同僚アーヴィング、アン王女の市内観光を撮影しまくる。
・アン王女を捜索する追手が迫る。
・船場のダンスパーティー、アン王女の追手が襲来。逃げ切るジョーとアン王女。
・別れを惜しむジョーとアン王女。
・城へ戻るアン王女、大人になっていた(変化)。
・ジョー、アン王女の特ダネ記事を世の中に出さない決意をする。
・ジョーとアービング、彼女の写真を思い出として胸にしまう。
・アン王女の会見、新聞記者と王女としての再会。
学びポイント
■構成/ストーリー
迫り来るピンチを途中途中で挟み込む!
「アン王女が城を逃げ出してローマの街を巡る」というベースラインがあり、
その合間合間で、アン王女に迫り来る追手の存在を見せることで、面白さが増す。
「ローマの休日」では、計4回の「追手シーン」が挟まる👇
①アン王女の脱走に気付く王室
②飛行場に黒服の秘密警察が降り立つ
③船着場でアン王女を発見する秘密警察たち
④ラジオからアン王女の安否を心配する声が流れてくる
💡ベースラインの合間に迫り来る障害物のシーンを挟む(それがどんどんとベースラインに接近してくる)!
(※冒頭は大家や掃除人など、人にバレそう?になるシーンを入れている)
(良い意味で)「都合の良い設定」を作る!
ジョーはアメリカの新聞社の人間であり、アン王女の顔をよく知っている。
しかし(アン王女はローマの王女ではないため)街の人はアン王女の顔をあまり知らない。
だからアン王女が出歩いていても街の人は気付かないから、なかなか見つからない!という絶妙に(都合の良い)設定に。
💡物語を成立させるために絶妙に都合の良い設定を(観客に気付かれずに)敷いてしまうことが大切!
「互いに隠し事」をしている設定が面白い!
・ジョー:新聞記者でありスクープを狙ってアン王女と一緒にいることを隠している
→ものを売る商売(肥料や化学薬品)
・アン王女:自分がアン王女であることを隠している(が、これはジョーにバレている)
→学校をズル休みした学生/父はある種の渉外係で勤続40年記念だった
💡互いに素性を隠していると、秘密がバレそうになる瞬間/相手の秘密を知ってしまう瞬間など、シーンが描きやすい。
どちらかが秘密を知っている状況など、情報の非対称性が生まれると、それはそれで面白くなる。
同じ目的を持っていた「共犯関係」の2人が、途中で利害相反する「敵対関係」に変わる!
新聞記者・ジョーと、カメラマン・アービングは、アン王女の特ダネで稼ぐ金を折半しようと約束する。
ジョーがアン王女とデートし、アービングが写真を撮影する「共犯関係」の存在。
しかし、ジョーがアン王女に惹かれてしまい、最終的に特ダネの公開をしないと言う。
アービングとは利害が相反することになる。
💡この「ローマの休日」ではラストシーンで利害相反が起こり、そこまで衝突せずに終わるが
→中盤(Mid Point)あたりで「共犯関係」だった2人に利害相反が起こり「敵対関係」になる展開も面白い!
場所(観光地)のキーワードに対して、アン王女の本音を引き出す。
真実の口=嘘をついたら噛まれる:アン王女は王室であることを隠し、学生だと嘘をついている。
祈りの壁=壁に祈るアン王女:アン王女が王室の立場を捨て、庶民の暮らしを願う様子がセリフなしで描かれる。
💡「象徴的な意味合いを持つ場所」と「登場人物たちの境遇」を重ね合わせることで、セリフ以外で語れることが増える。
(生方さんが上手な「場所に意味を持たせる」ということとも共通する?「踊り場」は「方向転換する場所」。そこに立つ方向転換している主人公)
「マルモのおきて」の利害型
物語のフォーマットは「マルモ型」の利害で繋がるパターンになっている。
「マルモ型」とは、最初は厄介な存在だった相手が、一緒に過ごすうちに愛おしい存在になるが、別れが来てしまう物語の型。
このフォーマットをベースにして、ジョーにとってアン王女は「厄介な存在」ではなく「利害」があって行動を共にする。
でも一緒に過ごすうちに「利害」ではなく「情」で繋がるようになるが、別れが来てしまう。
💡「利害」で繋がる場合は、別れた後にどう行動するかの選択が重要!
→積極的に「利害」で繋がる、「情」が湧いてしまう、別れたあと「利害」を捨てる(それは自分にとって損なこと!)
■シーン
未記入
■キャラクター
ー主要人物ー
ジョー(主人公):新聞記者
アン王女(副主人公):某国の王女
アービング:新聞カメラマン・ジョーの同僚
ーサブキャラー
新聞社の文局長
王室の使用人たち
王室の秘密警察
理容師・マリオ
ジョーの大家
ジョーの掃除人
新聞社の記者たち
タクシー運転手
💡「ローマの休日」は、キャラクターが少ない
ほぼジョーとアン王女とアービングの3人で物語を見せている
→少ない人物(3人)でも映画は描ける!
■小道具
ジッポライター
タバコを吸うアン王女を隠し撮りする小型カメラ。
最後に会見会場でライターで撮影することで、それがカメラだとアン王女に気付かせる。
新聞紙
酔っ払った女性がアン王女であることを、新聞の一面で知るジョー。
顔写真の載った誌面と、昨日の女性の顔が一致!などの瞬間は、面白ポイントの一つ(TVを見ていて「容疑者の顔」として「友達の顔」が映る、など)
■セリフ
アン王女がジョーの服に着替えるシーン。
ジョー「僕のどの服も合う」
アン王女「私が合わせてるの」
アパートの部屋
アン王女「お料理させて」
ジョー「台所はない、食事はいつも外だ」
アン王女「嫌でしょ?」
ジョー「ままならぬのが人生だ」
* * *
アン王女「お料理したいわ」
ジョー「学校で習ったのか」
アン王女「お料理は得意よ。専門でやれるくらい。お裁縫もお掃除も習ったのよ。ただ……人にしてあげる機会がなくて」
ジョー「……では、引っ越そうかな。台所付きの所に」
アン王女「(ジョーを見つめて、酒をギュッと飲み)……もう帰らなきゃ」
会見
アン王女「私はこの町の思い出をいつまでも懐かしむでしょう」