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映画分析ノック⑮『麗しのサブリナ』(1954)

映画『麗しのサブリナ』

映画『麗しのサブリナ』ログライン


起「サブリナは、次男・デイビッドに夢中」

①:NY郊外の大富豪・ララビー家の使用人(運転手)の娘・サブリナ。彼女はララビー家の次男・デイビッド(遊び人)に恋をしている。木陰からパーティーで女性とダンスするデイビッドを見つめるサブリナ。

②:デイビッドの眼中にはないサブリナ。デイビッドを尾行し、屋内テニスコートへ。シャンパンとグラスを持ち出し、女性と甘い時間を過ごすデイビッドを窓影から見るサブリナ。悲しくなって…。

③:部屋に戻る途中、父から呼び止められるサブリナ。彼女はフランスの料理学校へ行くことになっているのだ。身分違いの恋などせず、料理を学んで慎ましい家庭を築いてほしいという父の願いを聞くサブリナ。

④:部屋に戻り、デイビッドと女性のことを思い出すサブリナ。思い立ち、机で父に宛てた遺書をしたためる。それを父の部屋に忍ばせて、車庫へ赴くサブリナ。

⑤:車庫にある数台の車のエンジンをかけ、扉を閉めるサブリナ。ガス中毒で死のうと考えたのだ。しかし、そこへララビー家の長男・ライナス(エリート実業家)が来て、サブリナを発見。気絶したサブリナを運び出す。ライナスに忠告されるサブリナ、肩を落とす。

承「サブリナ、弟・デイビッドと兄・ライナスの間で揺れる」

⑥:フランス。料理学校で卵の割り方を教わる、不器用なサブリナ/父にサブリナからの手紙。ララビー家の使用人たちがサブリナの近況を聞く。どうやらサブリナはまだデイビッドのことが忘れられないようだ。

⑦:車で仕事に出掛けるライナスと運転手のサブリナ父。ライナスは車内で遊び人・デイビッドに働くよう忠告。運転手の父は、サブリナは今に(デイビッドのことを)忘れます、と話す。

⑧:フランス。料理学校でスフレの焼き方を教わる。オーブンのスイッチを入れ忘れ、スフレが焼けていないサブリナ。隣の老紳士から「幸福な恋ならスフレが焦げる。恋に破れると(スフレの)スイッチを入れ忘れる」と言い当てられる。イメチェンを薦められるサブリナ。

⑨:父にサブリナからの手紙。ララビー家の使用人たちがサブリナの近況を聞く。まだデイビッドが忘れられない。そこへデイビッドが来て、車で走り去る(少し様子が変である)。使用人、デイビッドが婚約した噂をする。

⑩:デイビッドが向かった先は、ララビー家の会社(高層ビル)。ライナスの会議に殴り込むデイビッド。ライナスが力を入れているプラスティック事業のために、デイビッドは提携会社の娘と政略結婚を仕向けられ抗議する。が、聞く耳を持たないライナス。

⑪:フランス。すっかり垢抜けた素敵な女性・サブリナが父に手紙を書いている。2年間の料理学校を終え、来週に帰国予定。自分に磨きをかけ、恋に積極的になったサブリナ。

⑫:垢抜けたサブリナが駅で父の迎えを待っている。と、そこへ車でデイビッドが通りかかり、サブリナを見て一目惚れ(サブリナだとは気付かない)。サブリナをララビー家まで送っていく。

⑬:ララビー家についたサブリナを出迎える父や使用人たち。デイビッド、ようやく女性がサブリナであることに気付く。サブリナ、デイビッドに今夜のパーティーに誘われる。

⑭:父にデイビッドの結婚を聞かされるが、サブリナはお構いなし。フランスで垢抜けて自信をつけたサブリナは、今からでもデイビッドを自分に振り向かせられると考えているのだ。「月から手を伸ばしてくるの」。

⑮:パーティー。デイビッドは婚約者・エリザベスと踊っている。が、心ここにあらず。そこへドレスを着た美しいサブリナが来る。エリザベスを撒いて、サブリナと踊るデイビッド。その噂が兄・ライナスの耳に。

⑯:デイビッドがサブリナと飲むシャンパングラスを用意していると、ライナスに掴まる。部屋でご立腹の父とライナスとデイビッドで話し合う。ライナス、意図的にデイビッドを座らせ、デイビッドの尻ポケットのシャンパングラスが割れる(デイビッド、大怪我)。

⑰:屋内テニスコートでデイビッドを待つサブリナ。そこへ来たのは、ライナス。弟・デイビッドとの恋を止めるよう、サブリナを買収しに来たのだ。しかしサブリナの意志は固い。デイビッドがかつてテニスコートで踊った曲で、ライナスとサブリナが踊る。

⑱:尻を怪我して療養中のデイビッド。そこへライナスが来る。デイビッド、サブリナのために(怪我が治るまで)一緒にいてやってくれとライナスに頼む。承知するライナス。

⑲:ライナス、父からデイビッドとサブリナの恋を阻止する方法を相談され、手切金もダメ、運転手をクビにするのもダメ、だったら(自分がサブリナと結婚する?)。いやいや、どうにかサブリナを引き剥がそうと考えるライナス。

⑳:船の上。ライナスがサブリナを連れてセーリング中。過去の失恋を語るライナス、冷たい人間に見えて優しい人間なのだ。そんなライナスにパリへ行くことを勧めるサブリナ。「恋人がいなければパリは退屈」とライナス。

㉑:サブリナ父の運転で会社に向かうライナス。電話で観劇のチケットを予約。心配する父に、サブリナをフランスへ送る計画を話すライナス。

㉒:会社。サブリナを会議室に招いたライナス。埠頭の船を指し、あれに乗ってパリに行くと告げるライナス。サブリナはパリに行けば人生が変わる!とライナスの背中を押す(まだ一緒に行くとは思っていない)。

㉓:映画後のレストラン。サブリナはライナスにパリでの過ごし方を語る。ライナスは「恋人がいないことが不安だ」とこぼす。

㉔:レストランのフロアで踊るライナスとサブリナ。ライナスはフランス語で「弟に可愛い彼女がいる」「私は弟と代わりたい」は何と言うのか?とサブリナに尋ねる。ライナスはサブリナに惹かれ始めていた。サブリナも揺れる。

㉕:帰りの車。サブリナはパリでの身だしなみをライナスに教える。ライナスは「君がいなければパリを満喫できない」と言う。揺れているサブリナの気持ち。

㉖:ララビー家に車が到着すると、弟・デイビッドが待ち構えていた。デイビッドが思うほどライナスは退屈だけじゃないとサブリナは知っている。デイビッドの復帰予定日は、船の出発日だと分かる。ライナスに傾きかけている気持ちを振り払うようにデイビッドに「キスして」と頼むサブリナ。

㉗:会社。会議室で着々と進むエリザベス家との合併と結婚話。ライナスはサブリナをパリへ送る船を2人分予約。驚く父に、自分も行くと見せかけるためと釈明する。

転「サブリナを想うライナス、ビジネスをやめる」

㉘:会社の外にいるサブリナ、意を決してロビーへ。公衆電話から上にいるライナスへ電話をかけ「今日の夜(観劇)は会えません」と伝える。ライナスが好きになってしまった自分に戸惑っているのだ。そこへライナス、降りてくる。

㉙:会社の会議室。サブリナとライナス。観劇には行けない、とサブリナ。ライナスと過ごしただけでデイビッドを忘れそうな自分に嫌気がさしているのだ。サブリナは、お詫びにとライナスのためにスフレを焼く。その途中でパリ行きの船チケット2枚を発見。サブリナは自分もパリへ行けると喜ぶが、ライナスは事業のためにサブリナをパリへ送る目的で船チケットを取ったと白状する。ガッカリして立ち去るサブリナ。罪悪感でいっぱいのライナス。

㉚:翌日。会社の会議室。ライナスは、プラスティック事業や政略結婚の準備を全て白紙に戻すと言い出す。サブリナと弟・デイビッドの結婚を認めるよう指示。そこへデイビッドが来る。昨日サブリナと会ったデイビッドは、サブリナがライナスのことを好きだと悟ったのだ。ライナスは自分がサブリナのことを愛しているとは認めない。

㉛:父の運転で埠頭へと行くサブリナ。互いが自分を責めて謝る。

結「恋心を認めたライナス、サブリナの元へ」

㉜:翌日。会社の会議室。役員会議で、プラスティック事業の中止を宣言するライナス。弟・デイビッドとサブリナを船に乗せたのだ。しかし、船に乗っているはずのデイビッドが会議室に現れる。サブリナが好きなのはライナスで、ライナスも彼女のことを愛していると言う。ライナスを船場へと送り出すデイビッド。ライナス、出ていく。

㉝:小型船に乗ってサブリナを追いかけるライナス。船に乗っているサブリナの前に現れた。抱き合うふたり。


映画『麗しのサブリナ』分析


■主人公は誰で、どこから登場しているか

主人公は、サブリナ。

実業家のララビー家に仕える運転手の娘。

トップシーンで、パーティーにて女性と踊るララビー家の次男・デイビッドを木の上から見つめている。

デイビッドのことが好きなのだと分かる(身分違いの恋であることも)。

■二番目の人物は誰で、どこで登場しているか

副主人公は、ララビー家の長男・ライナス。
敏腕で冷徹な実業家だが、人間らしい一面が徐々に見えてくる。

起⑤、次男・デイビッドとの恋を諦めて、車庫でガス自殺しようとしたサブリナを助ける。
(→本格的に活躍するのは後半だが、冒頭で一回サブリナと絡めておくことで深みが出せる)


■主人公の物語が本格的に始まるのはどこか。それはどんな物語か

物語が本格的に始まるのは……「承⑫」、
フランスの料理学校から帰国したサブリナは、垢抜けた美人で自信満々。
憧れていた次男・デイビッドから声をかけられ、彼との恋を始めようとしているところ。

どんな物語か……
【実業家の運転手の娘・サブリナが、デイビッド(次男)とライナス(長男)との恋に揺れ動く、三角関係ラブコメディ】


■物語が大きく転換しているのはどこか

「承⑯⑰⑱」
弟・デイビッドがシャンパングラスで怪我をし、代わりに兄・ライナスがサブリナの相手をするようになる一連のシーン。

前半までは、弟・デイビッドがサブリナの相手と思われたが、
後半からは、兄・ライナスがサブリナの相手となる。

ここからは、
弟・デイビッドを好きだった気持ち
→兄・ライナスに移ってしまい、戸惑うサブリナが描かれる。


■クライマックスはどこか

転㉙:2人のすれ違いが最も盛り上がるクライマックス①
会社の会議室。サブリナが(パリへ行く予定の)ライナスへの気持ちを断ち切るために、観劇の約束を断るシーン。
途中でパリ行きの船チケット2枚を発見し、自分もパリへ行けると喜ぶ。
……が、そんなサブリナに申し訳なく思い、ライナスは事業計画のためにサブリナだけをパリへ送る嘘だったと白状する。
ガッカリして立ち去るサブリナ。罪悪感でいっぱいのライナス。

結㉜:2人の恋が実るクライマックス②
会社の会議室。役員会議で、ライナスがプラスティック事業の中止を宣言し、サブリナとデイビッドをくっつけようとするシーン。
しかし、サブリナと船に乗っているはずのデイビッドが会議室に現れ、サブリナが好きなのはライナスだと伝える。
ライナスは自分もサブリナを愛していると認めて、会議室を出ていく。

👉クライマックスは基本的に2回必要!


■主人公が困ること、苦しむことはどこでどんなふうに起こっているか

・思いを寄せるララビー家の次男・デイビッドが振り向いてくれない。
・身分違いの恋が故に、父から諌められる。
・フランスへ料理留学をしなくてはならない。
・やっと振り向いてくれた次男・デイビッドが、シャンパングラスで大怪我をしてしまう。
・デイビッドは大企業の娘と婚約している。
・デイビッドの代わりに来た長男・ライナスに、次第に惹かれてしまう。
・フランスへ行くライナスをこれ以上好きになってはいけない……。
・自分がフランスへ行く羽目になる。


■逆にホッとするようなことや主人公が喜ぶことはどこで起こっているか

・ガス自殺をしようとしていたところを、長男ライナスに救われる。
・フランスで垢抜けた女性となり、見違えるほど美人になる(恋に自信がつく)。
・ずっと片想いしていたデイビッドが振り向いてくれる。
・ライナスが実は人間味溢れる優しい人だと分かる。
・フランス行きの船にライナスも乗ってきてくれる。


■起承転結に分けるならどこまでが起でどこまでが承か

起「サブリナは、次男・デイビッドに夢中」
①:NY郊外の大富豪・ララビー家の使用人(運転手)の娘・サブリナ。彼女はララビー家の次男・デイビッド(遊び人)に恋をしている。木陰からパーティーで女性とダンスするデイビッドを見つめるサブリナ。

⑤:車庫にある数台の車のエンジンをかけ、扉を閉めるサブリナ。ガス中毒で死のうと考えたのだ。しかし、そこへララビー家の長男・ライナス(エリート実業家)が来て、サブリナを発見。気絶したサブリナを運び出す。ライナスに忠告されるサブリナ、肩を落とす。

承「サブリナ、弟・デイビッドと兄・ライナスの間で揺れる」
⑥:フランス。料理学校で卵の割り方を教わる、不器用なサブリナ/父にサブリナからの手紙。ララビー家の使用人たちがサブリナの近況を聞く。どうやらサブリナはまだデイビッドのことが忘れられないようだ。

㉖:ララビー家に車が到着すると、弟・デイビッドが待ち構えていた。デイビッドが思うほどライナスは退屈だけじゃないとサブリナは知っている。デイビッドの復帰予定日は、船の出発日だと分かる。ライナスに傾きかけている気持ちを振り払うようにデイビッドに「キスして」と頼むサブリナ。
㉗:会社。会議室で着々と進むエリザベス家との合併と結婚話。ライナスはサブリナをパリへ送る船を2人分予約。驚く父に、自分も行くと見せかけるためと釈明する。

転「サブリナを想うライナス、ビジネスをやめる」
㉘:会社の外にいるサブリナ、意を決してロビーへ。公衆電話から上にいるライナスへ電話をかけ「今日の夜(観劇)は会えません」と伝える。ライナスが好きになってしまった自分に戸惑っているのだ。そこへライナス、降りてくる。

㉚:翌日。会社の会議室。ライナスは、プラスティック事業や政略結婚の準備を全て白紙に戻すと言い出す。サブリナと弟・デイビッドの結婚を認めるよう指示。そこへデイビッドが来る。昨日サブリナと会ったデイビッドは、サブリナがライナスのことを好きだと悟ったのだ。ライナスは自分がサブリナのことを愛しているとは認めない。
㉛:父の運転で埠頭へと行くサブリナ。互いが自分を責めて謝る。


結「恋心を認めたライナス、サブリナの元へ」
㉜:翌日。会社の会議室。役員会議で、プラスティック事業の中止を宣言するライナス。弟・デイビッドとサブリナを船に乗せたのだ。しかし、船に乗っているはずのデイビッドが会議室に現れる。サブリナが好きなのはライナスで、ライナスも彼女のことを愛していると言う。ライナスを船場へと送り出すデイビッド。ライナス、出ていく。
㉝:小型船に乗ってサブリナを追いかけるライナス。船に乗っているサブリナの前に現れた。抱き合うふたり。


■三幕だとするとどこが分かれ目か


第1幕「デイビッドに片想い中のサブリナ」
①:NY郊外の大富豪・ララビー家の使用人(運転手)の娘・サブリナ。彼女はララビー家の次男・デイビッド(遊び人)に恋をしている。木陰からパーティーで女性とダンスするデイビッドを見つめるサブリナ。

⑪:フランス。すっかり垢抜けた素敵な女性・サブリナが父に手紙を書いている。2年間の料理学校を終え、来週に帰国予定。自分に磨きをかけ、恋に積極的になったサブリナ。

第2幕「垢抜けたサブリナに惹かれる兄弟(ライナスとデイビッド)」
⑫:垢抜けたサブリナが駅で父の迎えを待っている。と、そこへ車でデイビッドが通りかかり、サブリナを見て一目惚れ(サブリナだとは気付かない)。サブリナをララビー家まで送っていく。

㉗:会社。会議室で着々と進むエリザベス家との合併と結婚話。ライナスはサブリナをパリへ送る船を2人分予約。驚く父に、自分も行くと見せかけるためと釈明する。

第3幕「すれ違うサブリナとライナス」
㉘:会社の外にいるサブリナ、意を決してロビーへ。公衆電話から上にいるライナスへ電話をかけ「今日の夜(観劇)は会えません」と伝える。ライナスが好きになってしまった自分に戸惑っているのだ。そこへライナス、降りてくる。

㉝:小型船に乗ってサブリナを追いかけるライナス。船に乗っているサブリナの前に現れた。抱き合うふたり。


■このストーリーを3行で言うとどうなるか

実業家の次男デイビッドに片想いする運転手の娘・サブリナだが、全く相手にされず。
フランス留学を経て垢抜けたサブリナは、念願の次男デイビッドと恋仲になるが、次第に長男ライナスに惹かれてしまう。
長男ライナスもサブリナへの恋心を募らせ、経営を犠牲にしてサブリナとの恋を選ぶのであった。

■このストーリーを15項目くらいの箇条書きにするとどうなるか

・ララビー家の次男・デイビッドに片想い中のサブリナだが、全く相手にされない。
・叶わぬ恋を嘆いてガス自殺しようとしたところを長男ライナスに助けられる。
・サブリナはフランスへ料理の留学をするが、その2年間も次男デイビッドへの想いは変わることはなかった。
・垢抜けて帰国したサブリナに一目惚れする次男デイビッド。サブリナはデイビッドと念願の恋仲に。
・しかし次男デイビッドには会社のために政略結婚をする婚約者がいた。家族の反対に遭い、長男ライナスの策略で尻を怪我する。
・怪我した次男デイビッドの代わりに長男ライナスがサブリナの相手をすることに。
・長男ライナスはサブリナが次男デイビッドから手を引くように手切金で買収しようとするが、サブリナの意志は固い。
・サブリナの恋を阻止しようと画策するうちに、長男ライナスはサブリナに惹かれていってしまう。
・サブリナも次男デイビッドに恋をしていたはずが、次第に長男ライナスに恋をしていることに気付き、戸惑いを隠せない。
・長男ライナスは、事業のためにサブリナをパリに飛ばすことを決め、船のチケットを2枚予約する。
・サブリナは長男ライナスに惹かれている気持ちを振り払うように、ライナスとの観劇の約束を断る。
・サブリナを想う長男ライナスは、事業計画を中止して、パリへ行くサブリナの船に次男デイビッドを乗せようとする。
・しかし次男デイビッドは気づいていた。サブリナが好きなのは自分ではなく長男ライナスであると。
・次男デイビッドに背中を押され、長男ライナスはサブリナの乗った船を追いかけて一緒にパリへ行くのだった。

『麗しのサブリナ』から学ぶ脚本術

■構成/ストーリー


・写真撮影と、人物紹介ナレーションを合わせる

冒頭のシーン。大富豪であるララビー家の人物たちが紹介されるシーン。
ララビー家の4人(父・母・長男ライナス・次男デイビッド)が、写真撮影をしてもらっている。
👉写真撮影中なので微妙に止まってポーズしていて、そこに人物紹介の語り(ナレーション)が被さる。
→人物紹介ナレーションの際は、被せ方が大切

・サブリナのピンチに、寝ている父(カットバック)
カットバックの王道の使い方のワンシーン。
👉サブリナがガス自殺をしようと車庫のエンジンをかけている時、2階の寝室で寝ている父は起きそうで起きない。
視聴者は「早く起きないとサブリナが死んでしまう…!」と焦る。

ここで大切なのは、車庫の上に寝室があること
→エンジンをかけるたびに2階の寝室が揺れる
→起きそうで起きない!という状況が生まれる。
(これが別々の場所だと、全く起きそうにないため、ハラハラしない)。

・身分違いの恋を「月」に例えるセリフ
富豪の次男デイビッドに恋をする使用人の娘・サブリナ。
「月に手を伸ばそうとするな」:身分違いの恋を諌める父のセリフ。
「(車庫の窓から見える月を見上げ)……」:叶わぬ恋に父の言葉を想うサブリナ。
「月にロケットでいける時代」:フランス料理学校で男爵から励まされるセリフ。
「月から手を差し伸べるのよ」:フランスで自信をつけたサブリナが父に言い切るセリフ。


・会話セリフの「フリ」と「オチ」
👉フランス料理留学中のサブリナの近況を手紙で聞く使用人の会話は秀逸。
(使用人たちはどうにかデイビッドのことを忘れてくれればと思っている)

父「デイビッドのことは考えません」
使用人1「よかったわ」
父「夜だけしか」
使用人2「まずい」
父「彼の写真を破きました」
使用人3「よかった」
父「セロハンテープを送ってください」
使用人4「ダメだわ」

シャープで笑える会話劇になっている。

・デートの回数と心惹かれていく過程
物語の折り返し地点で、サブリナの相手は次男デイビッドから長男ライナスへ代わる。
👉デイビッドへの恋心が、いつの間にかライナスへの恋心に変わってゆく過程を、何シーンで描いているのか。

⓪回目:屋内テニスコートで踊るシーン(きっかけ)
デイビッドを待つサブリナ。そこへ来たのは、ライナス。弟・デイビッドとの恋を止めるよう、サブリナを買収しに来たのだ。しかしサブリナの意志は固い。デイビッドがかつてテニスコートで踊った曲で、ライナスとサブリナが踊る。

①回目:船の上のシーン
ライナスがサブリナを連れてセーリング中。過去の失恋を語るライナス、冷たい人間に見えて優しい人間なのだ。そんなライナスにパリへ行くことを勧めるサブリナ。「恋人がいなければパリは退屈」とライナス。

②回目:会社の会議室のシーン
サブリナを会議室に招いたライナス。埠頭の船を指し、あれに乗ってパリに行くと告げるライナス。サブリナはパリに行けば人生が変わる!とライナスの背中を押す(まだ一緒に行くとは思っていない)。

③回目:映画後のレストランのシーン
サブリナはライナスにパリでの過ごし方を語る。ライナスは「恋人がいないことが不安だ」とこぼす。

④回目:レストランのフロアのシーン
映画後のレストランで踊るライナスとサブリナ。ライナスはフランス語で「弟に可愛い彼女がいる」「私は弟と代わりたい」は何と言うのか?とサブリナに尋ねる。ライナスはサブリナに惹かれ始めていた。サブリナも揺れる。

⑤回目:帰りの車のシーン
サブリナはパリでの身だしなみをライナスに教える。ライナスは「君がいなければパリを満喫できない」と言う。揺れているサブリナの気持ち。

👉出会いのシーンを除いて、計5回のシーンで「長男ライナスとサブリナの恋」を描いている。

恋心が募っていく流れは……

 - 長男ライナスは意外に優しい人で、失恋や孤独などを抱えている。
 - そんなライナスにパリへ行くことをおすすめするサブリナ。
 - パリへ行くとしたら?という話を軸に、恋心に探りを入れていく。
 - いつの間にか「好き」になっている。

という風に描かれている。

・クライマックスは日程を重ねる!

👉物語のクライマックスは、2つのことが同時に進んでいた場合、転換点の日程を重ねると盛り上がる。

『麗しのサブリナ』の場合は……

 ①パリ行きの船が出発する日
 ②次男デイビッドの怪我が治り、出勤できる日

 が重なっている。

これによって、1つの大きなクライマックスシーンが作れる。
👉「サブリナが船で出発した日の会議で、船に乗っているはずの次男デイビッドが出勤し、兄ライナスに船に乗るように背中を押す」というシーンが出来る。

・繰り返しの笑い/勧善懲悪の精神

遊び人の次男デイビッドは、シャンパングラスを尻ポケットに入れたまま椅子に座り、尻を大怪我。
→そこから長男ライナスがサブリナの相手をすることになる。

サブリナのことを考えないビジネス最優先のララビー家の父。
オリーブの瓶を尻ポケットに入れたままの状態で悪態をついていると、長男ライナスに座れと言われて尻を大怪我。

👉前半で出てきたシーンを踏襲する「繰り返しの笑い」と、
👉悪い奴はしっかりと懲らしめる「勧善懲悪」のシーン。


■キャラクター

ー主要人物ー
ララビー家の運転手の娘・サブリナ(主人公)
ララビー家の長男・ライナス(副主人公)
ララビー家の次男・デイビッド(副主人公)

ララビー家の運転手・サブリナ父
ララビー家の父

ーサブキャラー
ララビー家の母
デイビッドの婚約者・エリザベス
ララビー家の使用人1234
ララビー会社の社員たち・秘書
料理学校の先生・男爵
デイビッドの過去の女


👉三角関係を描く場合、兄弟で全く違うふたりに設定する

ララビー家の長男・ライナス:冷徹な実業家
ララビー家の次男・デイビッド:仕事をしない遊び人

👉惹かれていく過程を描くには、「ギャップ」が重要

ライナスは、ビジネスのためなら手段を厭わない冷徹な実業家
……に見えて、実は孤独や失恋の悩みを抱える「心優しい人」だった。

👉惹かれてしまった気持ちを隠すために、元の恋に収まろうとする心理

ライナスに惹かれているサブリナは、デイビッドに「キスして」とお願いする。
→ライナスへの恋心をなかったことにするために、前に恋をしていたデイビッドに上書きしてもらおうとしているのだ。
(『中学聖日記』でも、聖ちゃんは生徒・黒岩くんへの恋心を振り払おうと、婚約者・勝太郎さんとの結婚を全力で進めようとする)


■小道具

シャンパングラス/オリーブの瓶
どちらも尻ポケットに入れて、椅子に座った拍子に割れて大怪我する。


■セリフ

男爵「幸福な恋ならスフレが焦げる。恋に破れると(スフレの)スイッチを入れ忘れる」

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