映画分析ノック㉓『第三の男』(1949)
映画『第三の男』ログライン
第1幕「友人ハリーの不可解な死」(状況設定)
①:戦後のオーストリア・ウィーンの街並み。米英仏ソ、4つの権力に管轄されたこの街に、ホリー・マーチンズという陽気なアメリカ人の男が無一文でやってくる。彼は友人であるハリー・ライムという男から仕事を依頼されて来たのだった。
②:ハリー・ライムのアパートを訪ねるが不在。と、ホリーは大家から「ハリーは車に轢かれて死んだ(即死だった)」と告げられる。【Hook】
③:墓地。ハリーの葬儀に参列するホリー。帰りにキャロウェイ少佐に送ってもらう。道中、綺麗な女性を見かける。
第2幕「事件の真相解明/隠された第三の男の存在」(葛藤・対立)
④:バー。キャロウェイ少佐と酒を飲みながら、友人の死を悼むホリー。ホリーは売れない西部劇小説家だ。少佐から「ハリーは最悪の密売人だった」と聞かされるが、信じようとしないホリー。少佐の手配した軍のホテルに一泊することになる(帰国は明日)。ホリーは少佐に「ホリーを殺した真犯人を捕まえる!」と啖呵を切る。【PP①】
⑤:軍のホテル。ホリーが小説家だと知った文化教育局のクラビンが講演を依頼。ホリーの帰国は明日だが、滞在を延長できると聞き、承諾。そこへハリーの友人・クルツ男爵から電話が入る。
⑥:カフェでクルツ男爵と会うホリー。クルツは事故現場に居合わせた一人。事故現場で話をホリー。クルツ曰く、道を渡ろうとして車に轢かれたハリーを運んだのは、クルツとポペスコという男。負傷したハリーから「ホリーを頼む」と言われたクルツ。しかし大家の「即死」の証言とは食い違う。捜査をやめさせようとするクルツ。関わらないようにする大家夫婦。墓地にいた女性を紹介してもらうホリー。
⑦:劇場。墓地にいたのは舞台女優アンナ・シュミット。アンナはハリーの恋人だった。アンナからハリーの医師・ヴィンクルも現場にいたと聞く。ハリーの知人ばかりが事故現場に居たことを不審に思うホリー。アンナもただの事故ではないと思っていた。一緒に大家の元へ行くことに。
⑧:大家はやはり「即死だった」と言う。そして事故後にハリーを運んだ人は3人いたと証言した。クルツ男爵とポペスコと、もう一人いたのだ…!俯いていたので顔は見えないが、普通の男だったという。警察には証言しないという大家と口論になるホリー。それを大家の孫(子供)が目撃。結局、話は平行線のまま、ホリーとアンナは帰路に着く。
⑨:アンナのアパートにつくと、少佐がガサ入れに来ていた。ハリーに作ってもらった偽造パスポートとラブレターを押収され、帰国を命じられるアンナ。ホリーは少佐に「ハリーは殺された」と言うが相手にしてもらえず。ホリーはハリーの医師・ヴィンクルに会いに行く事に。
⑩:医師・ヴィンクル宅。ホリーは事故直後のハリーの様子について尋ねるが、煙に撒かれてしまう。
⑪:警察。少佐に取り調べを受けているアンナ。ハリーと仲の良かった「ジョセフ・ハービン」という男が消息を絶っているという。アンナは知らないと言うが、たしかにハリーからの手紙には、ハービンと行きつけのバー・カサノバで会うことが記されていた。その日、ハービンは消えたのだ。
⑫:バー・カサノバ。ホリーとアンナが赴く。クラビンに偶然会い、講演のリマインドをされる。クルツ男爵とポペスコがいた。ポペスコに話を聞くホリー。「第三の男」を知らないと言う。誰から聞いた?と聞かれたホリーは、大家からだと言う。なるほど…とポペスコ。
⑬:事故現場。大家と約束をするホリー。しかし、大家は何者かに襲われた(?)。
⑭:アンナの家。ホリーとアンナは、ハリーについて語り合う。まだアンナはハリーのことが忘れられずにいる。そんなアンナに少し惹かれている様子のホリー。二人は、共に約束した大家の元へと赴くことに。
⑮:大家の家。人だかりが出来ている。大家は何者かに殺されていた。そして大家と口論していた場にいた子供の証言で、ホリーは犯人と間違われてしまう。逃げるホリーとアンナ。映画館に入ることで何とか逃げ切れた。【MP】
⑯:軍のホテルに戻るホリー。少佐のところへ行こうとして、待ち構えていた一台の車に乗り込むが、それは少佐の車ではなかった!有無を言わさずどこかへ連れて行かれてしまうホリー。鉄格子で動けない。猛スピードで走る車。
⑰:連れて行かれた先は…クラビン主催の講演会だった。約束通り小説家として講演をするが、聴衆は飽きて帰ってしまう。途中で訪れたポペスコ氏に対し、ホリーは「第三の男」という事実に基づいた小説を執筆中だと啖呵を切る。ポペスコの手下に追われて逃げるホリー。
⑱:少佐の元に逃げてきたホリー。少佐から映写機でハリーの危険な組織について説明される。ハリーは軍病院からペニシリンを盗んで売り捌くチームを組織していた。そのせいで多くの人々が亡くなった。密告した軍病院の看護師・ハービンは行方不明だと言う。
⑲:少佐に諭され帰国を決意したホリー。帰国前にひと目とアンナのアパートへ。ホリーはアンナの猫を撫でるが、ハリーにしか懐かないという(そんな猫がアパート外の不審な人物に懐いている…!)。ハリーの知られざる裏の顔に落胆し、自暴自棄になっているホリー。しかしアンナは、それでも未だにハリーを好きでいた。そんなアンナに告白するホリー。撃沈。
⑳:アンナのアパートの外。不審な人影に話しかけるホリー。と、その人物はハリーだった。逃げるハリーの影を追うホリー。しかし、真ん中に円柱型の小さな建物が立っているだけの広場で、その影を見失ってしまった。【Low P】
㉑:少佐にハリー目撃のことを伝えるホリー。信じていない少佐だったが、円柱型の建物を覗くと、中が地下水路に繋がっていた。川へと続く地下の下水道。少佐はハリーの墓を掘り返してみることに。と、遺体は軍の看護師「ジョセフ・ハービン」だった。ハリーは生きていたのだ。
㉒:アンナのアパートに警官が来て、偽造パスポートの件でアンナを連行。が、少佐がアンナを呼び止め、ハリー逮捕のために協力すれば強制送還しないと交渉を持ちかける。しかし、それを断るアンナ。ハリーのことを未だに想っているのだ。
第3幕「ハリーとの邂逅/ハリーとの友情かアンナとの恋か/ハリー追撃戦」(解決・変化)
㉓:ホリーは、クルツ男爵とポペスコのアパートへと赴く。殺されぬようにアパートの外から「ハリーを出せ」と交渉。観覧車の前で待っていると、そこに訪れるハリー。白昼に再会を果たした二人は、観覧車に乗り込む。【PP②】
㉔:観覧車。ホリーはハリーを問い詰めて自首を薦めるが、ハリーは聞く耳を持たない。それどころか(ホリーが惚れた)アンナを見下し、ホリーにも薬の密売の組織に加わるように打診してきた。ハリーは友人としてホリーを信頼しているのだ。誘いを断るホリー。
㉕:警察。少佐からハリーの逮捕に協力するよう依頼されるホリー。しかしハリーが悪者だとは言え、友人を売るようなことは出来ないと、少佐の頼みを断るホリー。が、最後には交換条件に承諾するホリー。それは偽造パスポートでソ連に連行される予定のアンナを保釈することだった。
㉖:駅。保釈されたアンナが警察に連れられて列車に乗るところ。保釈された理由が分からず、困惑するアンナ。と、列車の窓から喫茶店に入っていくホリーが見える。アンナはホリーがハリーを売ったことを悟り、喫茶店でホリーに怒りをぶつける。ホリーはハリーを売ったことを白状し、アンナは出ていく(列車には乗らなかった)。【Lowest P】
㉗:警察。少佐にやはり頼みを断ると伝えるホリー。アンナが自ら保釈を辞退したことも伝える。呆れた少佐は自力で捕まえると言い、帰国するホリーを空港まで送ると言う。
㉘:車で空港まで送られているホリー。と、少佐は病院の前で車を停め、ホリーにペニシリンのせいで重症となった子供たちの姿を見せる。ハリーのせいで傷ついた人々、その現実を目の当たりにしたホリーは、再びハリー逮捕に協力することに決めた。
㉙:喫茶店。ハリーを待ち伏せするホリー。外では少佐らが待機している。と、そこへ招かれざるアンナが訪れ、ホリーとアンナは口論に。そこへハリーが来て、ホリーが密告したことを知り、逃走。ホリーや少佐は、ハリーを追いかける。
㉚:地下水路に入っていくハリー。激しい追撃戦の末にホリーはハリーを追い詰めた。銃を向けるホリーに対して、ハリーは頷いた。銃声が響き、ハリーが息絶える。【High P】
㉛:墓地。ハリーの葬儀。参列したホリーは、少佐の車で空港へ。が、アンナを見かけたホリーは車を降りて、アンナを待つ。しかし、アンナはホリーを無視して歩き去ってゆく。その背中を見送るしかないホリー。
映画『第三の男』分析
■主人公は誰で、どこから登場しているか
主人公は、西部劇小説家の陽気なアメリカ人「ホリー・マーチンズ」。
ハリーの友人としてオーストリアを訪問し、ハリーの死を知ることになる。
第1幕①、オーストリアの点描から駅のシーンに繋がり、汽車を降りるタイミングで登場。
ナレーションで彼のプロフィールが全て紹介されるため、物語の始まりが異常に早い。
■二番目の人物は誰で、どこで登場しているか
副主人公は、舞台女優でハリーの元恋人の「アンナ・シュミット」。
第1幕③、ハリーの葬儀の墓地で、車の窓越しにアンナが見える(前振り)。
第2幕⑦、劇場のシーンで本格的に登場する。
③墓地でホリーがアンナを見かけていたことから、⑦劇場に足を運ぶことになる。
(ホリーはアンナに一目惚れしていた状態に近い)
二人でハリーの死の真相を追求する過程で、ホリーはアンナのことが好きになってしまう。
しかしアンナはというと、ハリー亡き後もハリーのことを想いつづけている。
ハリーが生きており、極悪人だったことが分かると、ホリーとアンナのスタンスが別れてくる。
ホリー:ハリーの逮捕に協力する。
アンナ:ハリーの逮捕を阻止しようとする。
💡アンナへの恋心が、物語を停滞させずに駆動させてゆくガソリンとなっている!
■主人公の物語が本格的に始まるのはどこか。それはどんな物語か
物語が本格的に始まるのは……「④(第2幕)」、
ハリーの葬儀後、バーでホリーと少佐が酒を飲むシーン。
少佐が警官だと知ったホリーは、ハリーの死を巡って口論に。
ハリーの死の真相を突き止めると啖呵を切ったことから、物語が始まっていく。
どんな物語か……
【西部劇小説家のホリー・マーチンズが、友人・ハリーの死の真相を追求しながら、友人と恋人の間で揺れる物語】
■物語が大きく転換しているのはどこか
「⑳(第2幕)」
アンナのアパートの外。不審な人影に話しかけるホリー。と、その人物はハリーだった。
→死んでいると思われたハリーが生きていると分かり、物語はハリーの正体と追跡が本題となる。
■クライマックスはどこか
クライマックスは、第3幕㉚:地下水路で巻き起こるハリーの追撃戦。
→激しい追撃戦の末にハリーを追い詰めるホリー。ホリーの銃で、ハリーが息絶える。
■主人公が困ること、苦しむことはどこでどんなふうに起こっているか
・主人公ホリーは、遥々オーストリアまで友人ハリーを訪ねてきたが、その友人が死んだと聞かされる。
・亡きハリーのことを「死んで当然」という警官に啖呵を切ってしまう。
・滞在日数までにハリーの死の真相を突き止めなければならない。
・さまざまな人にハリーの死の真相を聞き出すが、皆の証言に違和感があり、真相がなかなか掴めない。
・重要な証言者として信用できる大家が、何者かによって殺されてしまう。
・大家を殺した殺人犯の濡れ衣を着せられそうになる。
・亡きハリーの元恋人・アンナに恋をしてしまうが、アンナはハリーを想いつづけているため、振り向いてくれない。
・アンナの偽造パスポートが分かり、国外追放されてしまうと知る。
・ハリーが生きていると分かるが、その正体は極悪な密売人であった。
・ハリーが極悪人だとしても、かつての友人であることには変わりないため、なかなか警察に売ることができない。
・アンナのためにハリーを売ると決めたが、ハリーを想うアンナによって邪魔されてしまう。
・友人であるハリーを自らの銃で殺める決断を迫られる。
・ハリーの葬儀後にアンナに声をかけようとするが、アンナに無視されてしまう。
■逆にホッとするようなことや主人公が喜ぶことはどこで起こっているか
・帰国させられそうになるが、講演会に誘われることで滞在日数が伸びる。
・大家が本当のことを教えてくれようとする。
・ハリーと観覧車で直接会って話すことができる。
■起承転結に分けるならどこまでが起でどこまでが承か
起「友人ハリーの不可解な死」
①:戦後のオーストリア・ウィーンの街並み。米英仏ソ、4つの権力に管轄されたこの街に、ホリー・マーチンズという陽気なアメリカ人の男が無一文でやってくる。彼は友人であるハリー・ライムという男から仕事を依頼されて来たのだった。
〜
③:墓地。ハリーの葬儀に参列するホリー。帰りにキャロウェイ少佐に送ってもらう。道中、綺麗な女性を見かける。
承「事件の真相解明/隠された第三の男の存在」
④:バー。キャロウェイ少佐と酒を飲みながら、友人の死を悼むホリー。ホリーは売れない西部劇小説家だ。少佐から「ハリーは最悪の密売人だった」と聞かされるが、信じようとしないホリー。少佐の手配した軍のホテルに一泊することになる(帰国は明日)。ホリーは少佐に「ホリーを殺した真犯人を捕まえる!」と啖呵を切る。【PP①】
〜
⑲:少佐に諭され帰国を決意したホリー。帰国前にひと目とアンナのアパートへ。ホリーはアンナの猫を撫でるが、ハリーにしか懐かないという(そんな猫がアパート外の不審な人物に懐いている…!)。ハリーの知られざる裏の顔に落胆し、自暴自棄になっているホリー。しかしアンナは、それでも未だにハリーを好きでいた。そんなアンナに告白するホリー。撃沈。
転「ハリーは生きていた!/真相発覚」
⑳:アンナのアパートの外。不審な人影に話しかけるホリー。と、その人物はハリーだった。逃げるハリーの影を追うホリー。しかし、真ん中に円柱型の小さな建物が立っているだけの広場で、その影を見失ってしまった。【Low P】
〜
㉔:観覧車。ホリーはハリーを問い詰めて自首を薦めるが、ハリーは聞く耳を持たない。それどころか(ホリーが惚れた)アンナを見下し、ホリーにも薬の密売の組織に加わるように打診してきた。ハリーは友人としてホリーを信頼しているのだ。誘いを断るホリー。
結「ハリーとの友情かアンナとの恋か/ハリー追撃戦」
㉕:警察。少佐からハリーの逮捕に協力するよう依頼されるホリー。しかしハリーが悪者だとは言え、友人を売るようなことは出来ないと、少佐の頼みを断るホリー。が、最後には交換条件に承諾するホリー。それは偽造パスポートでソ連に連行される予定のアンナを保釈することだった。
〜
㉚:地下水路に入っていくハリー。激しい追撃戦の末にホリーはハリーを追い詰めた。銃を向けるホリーに対して、ハリーは頷いた。銃声が響き、ハリーが息絶える。【High P】
㉛:墓地。ハリーの葬儀。参列したホリーは、少佐の車で空港へ。が、アンナを見かけたホリーは車を降りて、アンナを待つ。しかし、アンナはホリーを無視して歩き去ってゆく。その背中を見送るしかないホリー。
■三幕だとするとどこが分かれ目か
第1幕「友人ハリーの不可解な死」(状況設定)
①:戦後のオーストリア・ウィーンの街並み。米英仏ソ、4つの権力に管轄されたこの街に、ホリー・マーチンズという陽気なアメリカ人の男が無一文でやってくる。彼は友人であるハリー・ライムという男から仕事を依頼されて来たのだった。
②:ハリー・ライムのアパートを訪ねるが不在。と、ホリーは大家から「ハリーは車に轢かれて死んだ(即死だった)」と告げられる。【Hook】
③:墓地。ハリーの葬儀に参列するホリー。帰りにキャロウェイ少佐に送ってもらう。道中、綺麗な女性を見かける。
第2幕「事件の真相解明/隠された第三の男の存在」(葛藤・対立)
④:バー。キャロウェイ少佐と酒を飲みながら、友人の死を悼むホリー。ホリーは売れない西部劇小説家だ。少佐から「ハリーは最悪の密売人だった」と聞かされるが、信じようとしないホリー。少佐の手配した軍のホテルに一泊することになる(帰国は明日)。ホリーは少佐に「ホリーを殺した真犯人を捕まえる!」と啖呵を切る。【PP①】
〜
㉒:アンナのアパートに警官が来て、偽造パスポートの件でアンナを連行。が、少佐がアンナを呼び止め、ハリー逮捕のために協力すれば強制送還しないと交渉を持ちかける。しかし、それを断るアンナ。ハリーのことを未だに想っているのだ。
第3幕「ハリーとの邂逅/ハリーとの友情かアンナとの恋か/ハリー追撃戦」(解決・変化)
㉓:ホリーは、クルツ男爵とポペスコのアパートへと赴く。殺されぬようにアパートの外から「ハリーを出せ」と交渉。観覧車の前で待っていると、そこに訪れるハリー。白昼に再会を果たした二人は、観覧車に乗り込む。【PP②】
〜
㉚:地下水路に入っていくハリー。激しい追撃戦の末にホリーはハリーを追い詰めた。銃を向けるホリーに対して、ハリーは頷いた。銃声が響き、ハリーが息絶える。【High P】
㉛:墓地。ハリーの葬儀。参列したホリーは、少佐の車で空港へ。が、アンナを見かけたホリーは車を降りて、アンナを待つ。しかし、アンナはホリーを無視して歩き去ってゆく。その背中を見送るしかないホリー。
■このストーリーを3行で言うとどうなるか
友人を訪ねてオーストリアを訪れた西部劇小説家のホリー・マーチンズは、そこで友人ハリーの死を知る。
その不審な死や「第三の男」の存在を怪しむホリーは、友人の死の真相を突き止めるために、さまざまな人に会っていく。
ハリーが生きていたと知ったホリーは、恋をしたアンナのためにハリーを警察に売ることを決め、追い詰めてゆく。
『第三の男』学びポイント
■構成/ストーリー
本題が超高速で始まる!
序盤をナレーションでぶっ飛ばし、本題に入るまでのスピードが異常に早い
3シーン目でハリーの葬儀/4シーン目でバー(真相を究明するという目的が明示される)
💡本題に入るまで10分もかかっていない!
設定を追加するときは、2つの意味合いを持たせるべし!
アメリカから来たホリーは友人の死を受けて帰国を迫られてしまうが、小説家であることを理由に講演会を頼まれて滞在延期が確定する(予算問題も解決)。
そしてこれはただの滞在延期を作る道具としての講演会ではなく、ホリーに危機が迫っているときに車で連れされて講演会へ連れていかれるというフェイントにもなっている。
💡物事の理由を新しく作るときは、2つの意味合いを作るのが理想
(①:講演会は主人公の滞在を延期させるためのものであり、②:講演会に連れ去られる展開で、物語のスパイス(フェイント)にもなっている)
数珠つなぎで物語が展開してゆく!
目的は、友人ハリーの死の真相を解明すること。
そのために、事故現場に居合わせた人を次々にあたっていくホリー。
Aの証言の聞いた最後にBを紹介され、Bの証言を聞いた最後にCを紹介され……という風に数珠つなぎで展開してゆく(主に前半)。
全ての証言が噛み合わない中で、どうやら本当のことを言っているらしい大家に再度話を聞こうとすると、殺されてしまい…
さらにその犯人と疑われたことで逃げる羽目になり、と思いきや講演会に連れ去られて、と雪だるま式に転がっていく(主に中盤)。
全体の中で大きな謎を1つ作り、それが真相の軸となる!
ハリーの事故現場で、ハリーを運んだ人は2人だと思われていたが「実は3人いた」との証言を聞く。
その男は俯いていて顔は見えなかった(犯人/重要参考人なのでは…?)。この「第三の男」の正体を軸に、後半の物語へと展開してゆく。
💡全体の謎のなかに核となるキャッチーな謎を一つ作ると、物語がキュッと締まる!
どんでん返しを作る!
ハリーの事故現場にいた「第三の男」は、ハリー自身であり(死んでなかったのだ…!)、棺桶に入っていたのは行方不明のハリーの仲間だった。
無念の死を遂げた善良人だと思われていたハリーは、実は極悪人だった。
💡死んでいるという前提で進んでいた良い人が実は生きていて、悪い奴だった!というパターンは多くあり、確実に面白くなる!
副主人公の立ち位置が変わっていくこと
物語のキーパーソン(副主人公)である、ハリーの元恋人・アンナ。
主人公と彼女は、前半は「ハリーの死の真相を追う仲間」という関係性だった。
しかし、ハリーが生きていたことが分かると、後半は「ハリーを庇う敵」という関係性になる。
(本当はもっと複雑だが、割愛するとそんな感じ)
💡主人公と既存のキャラクターとの関係性が、出来事の展開によって変化してゆくと面白い!
最後の最後まで葛藤させる!
・主人公は、警察からハリー逮捕への協力を依頼されるが、友人を売るわけにはいかないと拒否
・しかし国外追放されてしまうアンナを見逃すことを条件に、ハリー逮捕に協力することを承諾
・待ち合わせ場所でアンナにハリーを警察に売ったことを避難され、ハリー逮捕に協力することを断念
・帰国するために空港に向かう道中で、ハリーのせいで苦しむ子供たちを見せられて、やはり逮捕に協力することを決意
💡クライマックス付近の「ハリー逮捕」という1つの目的に対しても、ホリーの感情は4転ほど揺れ動く(葛藤)。
このクライマックス付近でも手を抜かずにどんどんと葛藤させることが、物語を面白くするポイント!
■シーン
キャラクターたちの不気味さは、視線で表現
ホリーがハリーの死の真相を解明するため、数珠つなぎで現場に居合わせた人の証言を聞くが、どれも不審で違和感がある。
証言自体は特に普通だとしても、彼の視線が泳いでいるところを映像的に写すからこそ、不気味さが際立っている。
大家の死も「飛躍」で表現
何者かにアパートの大家が殺されるのだが、直接的に殺されるシーンは描かれない。
①:振り返った大家が何かに驚く👉②:アパートの前に人だかりができており、野次馬から「大家が殺された」と聞かされる。
💡割愛することでテンポが出て、観客に想像させる余地が生まれる分、直接的に描くよりも面白くなる。
猫の存在でハリーを匂わせる!
アンナの飼い猫はホリーには懐かない。アンナは「ハリーにしか懐かないの」と言う。
そんな飼い猫が外に出て、アパートの外にいた謎の男(顔は見えない)の足元に擦り寄る!
👉猫が懐いている=この不審な男はハリーなのでは…!?
と、匂わせるシーンになっている。
■キャラクター
ー主要人物ー
ホリー・マーチンズ(主人公・西部劇小説家)
アンナ・シュミット(副主人公・舞台女優)
ハリー・ライム(キーパーソン・死んだとされる友人)
キャロウェイ少佐(警察官)
クルツ男爵(ハリーの仲間)
ポペスコ(ハリーの仲間)
ジョセフ・ハービン(ハリーの仲間)
ヴィンクル(ハリーの医師)
クラビン(講演会の主催者)
大家
大家の妻