映画分析ノック⑫『ギルバート・グレイプ』(1993)
映画『ギルバート・グレイプ』ログライン
起「退屈な町/ギルバートの生活」
①:丘にいるギルバートと弟・アーニー。トレーラーに興奮するアーニーは仕草が幼いようだ(トレーラーを降りるベッキーと祖母)。
②:退屈な街・エンドーラ。潰れそうな職場・食料品店。2階建の木造一軒家。弟・アーニーは知的障害/姉・エミーは母親役/妹・エレンはまだ幼い/ママは父の他界後に巨漢へ/そして主人公・ギルバート。木に登るアニーを探すふりをするギルバート、喜ぶアーニー。
③:食料品店で働くギルバート。客は皆、隣にできた大型スーパーへ。カーヴァー宅へ配達を頼まれるギルバート。
④:カーヴァー宅で奥様と浮気。旦那が帰宅、バレないように平然を装うギルバートだが、旦那から「話がある」と言われる。車へ戻ると、アーニーがいない。鉄塔を登っていた。
⑤:警察に囲まれた鉄塔の麓。上から手を振るアーニー、説得して降りてこさせるギルバート(通りかかるベッキー、説得するギルバートを微笑ましく見る)。怒る警官を「これで最後」と説得するギルバート。
⑥:家族で食卓を囲みながらアーニーの誕生日パーティーの役割決め。妹・エレンと喧嘩気味のギルバート。
⑦:修理工・タッカーがギルバートの外から屋根を直している。近所にできるハンバーガーチェーンに応募したらしい。巨漢の母を覗きにきた近所の子供たち。抱きかかえ窓越しに見せてやるギルバート。
⑧:アーニーを風呂に入れ、寝かしつけるギルバート。「僕と兄ちゃんはどこにも行かない」と歌うアーニー。
承「ベッキーとの交流/家族の問題」(21分)
⑨:ギルバート、友達であるタッカーとボビーと喫茶店。ハンバーガーチェーンの退屈な話。窓の外を通りかかるベッキーと目が合う。
⑩:食料品店。ギルバートが働いているとカーヴァー奥さんが来店し、不倫の約束。そこにベッキー来店。宅配を依頼される。
⑪:ギルバートの車にアーニーとベッキーも乗り、ベッキー宅(トレーラー)へ宅配。アーニーの失礼に対し、ベッキーはとても寛容。
⑫:家族で食卓を囲みながら誕生日パーティーの食事について相談。妹・エレンと喧嘩になるギルバート「父は死んだ」という会話から母が癇癪を起こしてしまう。地団駄を踏む母の重みで床が抜けそうになる。
⑬:疲れて眠る母。世話をするギルバートと姉・エミー。
⑭:喫茶店で友人たちにベッキーとのことを追求されるギルバート。同じ店にカーヴァー家族。旦那に「電話しろ」と言われ、殺されるのか…?と心配するギルバート。
⑮:一階にいる母に気付かれぬよう、地下室の天井を角材で補強するギルバートとタッカー。木の上に登っているアーニーに応援を頼むが来たがらない。父は地下室で首を吊って死んだらしい。
⑯:鉄塔に登ろうとするアーニーを引っ張って止めるエレン。そこへ駆けつけるギルバート。エレンを叱り、アーニーを助ける。「誰にもお前をいじめさせない」と約束するギルバート。深まる妹・エレンとの確執。
⑰:車でベッキーのトレーラーに赴くギルバート。ベッキーと祖母は放浪しながら暮らしている。
⑱:ベッキーとギルバートの交流。アイス屋でアイスを買う二人(そこへカーヴァー奥さんが二人を目撃)。
⑲:夕陽を眺める二人。ギルバート、アーニーの風呂のため一旦帰宅。途中でアーニーを一人残し、ふたたびベッキーの元へ。
⑳:町を離れられないギルバートは、鬱屈した心の内をベッキーに語る。二人は心を寄せていく。
㉑:ギルバートが家に戻ると、アーニーはまだ風呂に入っており凍えていた。家族は「ギルバートの責任」と言う。
㉒:食料品店から宅配の依頼でカーヴァー宅に行くギルバート。奥さん、ギルバートが旦那と電話中にフェラをするという悪戯を。旦那に呼び出されたギルバートが家を出ようとすると、奥さんが「行かないで」と。ベッキーとのことが気になっているようだ。
㉓:ギルバートがカーヴァー旦那の保険オフィスに向かうと、旦那は不倫のことを追求するかと思いきや、ギルバート自身の保険のことを心配していた。「君が病気や事故に遭ったら家族はどうなる?」と。そこへカーヴァー奥さんから電話。家で問題が発生したようだ。
㉔:カーヴァー宅の外で泣いている奥さん。旦那とギルバートが車で駆けつけると、クッキーが焦げて燃えている。旦那は一生懸命そのクッキーを食べ、子供たちをプールで遊ばせる。そこまで尽くしても満足な反応が返ってこないことに旦那は癇癪を起こす。奥さんはギルバートに「あなたならこの町から出ていかないから」と言う。
㉕:家族で映画を見ている。汽車で町を離れる男の描写。風呂を拒むアーニー。そこへエレンが「カーヴァー旦那が死んだ」と伝える。唖然とするギルバート。
㉖:カーヴァー宅へ行くと捜査網。タッカー曰く、ビニールプールで溺死したらしい。
㉗:喫茶店で友人たちと溺死について退屈な噂話。そこへ通りかかるベッキー。アーニーが話しかけ、車で送っていくことに。
㉘:ベッキーのトレーラーを修理するギルバート。湖で遊ぶベッキーとアーニー、ギルバートも混ざる。
㉙:草っぱにギルバートとベッキー。「あなたの望みは?」と聞かれて、自分以外の家族のことばかり話すギルバート。ふと気付くとアーニーがいない。
㉚:鉄塔に登るアーニー。ギルバートの懇願虚しく、アーニーは警官に勾留されてしまう。
㉛:アーニーの勾留を受け、巨漢の母、数年ぶりに家を出ることに。警察署でアーニーを返すよう要求する母。
㉜:アーニーは無事に釈放されるが、外を歩く巨漢の母を町の人がジロジロと見る。母への好奇の視線に耐える本人と家族。
㉝:家の中は空気が沈んでいる。窓の外に巨漢の母を見にきた子供たち。エレン、堪らず物を投げて窓ガラスを割る。
㉞:トレーラーでベッキーから「母に会わせて欲しい」と言われ、言葉を濁すギルバート。二人、キスをする。
㉟:カーヴァー旦那の葬式に参列するギルバートたち。沈むカーヴァー奥様。新しいバーガー屋のトラックが通りかかり、アーニーが叫ぶ。
㊱:食料品店でレジを打つギルバートからタバコを買うカーヴァー奥様、この町を出ていくと言う。自分を捨てて皆の世話をするギルバートのことを案じる奥様。そこにベッキーが来店、奥様はベッキーに一言「譲るわ」と。
㊲:ベッキーのトレーラーに宅配するギルバート。故障中だったトレーラーが直る。抱き合うギルバートとベッキー。
㊳:町に新しくきたハンバーガー屋のオープンイベント。タッカーは店員になってギルバートたちにバーガーを振る舞う。ベッキーは「明日出発する」と話す。
㊴:アーニーは誕生日パーティーにベッキーを誘う。ベッキーはハッキリしないギルバートの態度に落胆。
転「アーニーを殴ったギルバート」(80分)
㊵:家の中を興奮して走り回るアーニー、姉エミーと衝突して誕生日ケーキをダメにしてしまう。
㊶:大型スーパーで代替のケーキを購入したギルバート。スーパーで買い物をしているところを食料品店の店主に見られてしまう。
㊷:アーニー、ギルバートが買ってきたケーキを冷蔵庫から勝手に食べていた。怒ったギルバート、思わずアーニーを殴ってしまう。
㊸:車を走らせ町を出ようとするギルバート、思い直して引き返す。一方、アーニーはベッキーのトレーラーに走っていく。ベッキー、アーニーを保護して一緒に湖に入る(その様子を木陰から見るギルバート)。
㊹:ベッキー、アーニーを送ったあと陰で見ていたギルバートに気付く。罪悪感で胸がいっぱいのギルバートを抱きしめるベッキー。
㊺:ギルバート、父を亡くした母が肥満であること、家族を支えなくてはならないこと、をベッキーに話す。ベッキーは自分の感情を表に出そうとしないギルバートのことを指摘する。抱き合う二人、朝を迎える(アーニーの誕生日になった)。
結「母の死/訪れる自由」(93分)
㊻:家でアーニーの誕生日パーティーが開かれている。戻ってくるギルバート、アーニーを抱きしめる。
㊼:ギルバート、母に謝る。ギルバートの不在をずっと心許なく思っていた母「人の笑い者になるつもりはなかったの」と。
㊽:ギルバート、母にベッキーを紹介する。
㊾:町を離れるベッキー。別れを惜しむギルバート。去りゆくトレーラーを追いかけるアーニー。
㊿:自力で階段を登る母。ベッドに横になる。アーニー、母が亡くなっていることに気付く。
51:母の亡骸をどうやって運び出すか考える家族。笑い者になりたくない。発狂するギルバート。
52:家財を外に運び出し、家を燃やすギルバートたち。燃えゆく我が家を見つめる。
53:1年後。丘にいるギルバートとアーニー。家族の近況のN。ベッキーのトレーラーを待っている。「僕たちはどこへでもいける」。
映画『ギルバート・グレイプ』分析
■主人公は誰で、どこから登場しているか
主人公は、ギルバート。
冒頭「起」①で、知的障害を持つ弟・アーニーと丘にいる。
アーニーの世話をする良い兄ちゃんの姿。
■二番目の人物は誰で、どこで登場しているか
ギルバートの弟・アーニー。
冒頭「起」①で、ギルバートと丘にいる。
トレーラーに興奮する様子から、知的障害を持っているらしきことが視聴者に分かる。
■主人公の物語が本格的に始まるのはどこか。それはどんな物語か
喫茶店で退屈な話を聞いているギルバートが、窓の外を通りかかるベッキーと目が合うシーン。
「承」⑨(開始22分)、ベッキーとの出会いからギルバートの世界が少しだけ広がる。
これは【問題のある家族を支えながら退屈な町で暮らすギルバートが、放浪人・ベッキーとの交流をキッカケに自分を見つめ直す物語】。
■物語が大きく転換しているのはどこか
ギルバートがアーニーを殴ってしまうシーン。
「転」㊵(開始80分)、常に良い人を強いられてきたギルバートが限界に達してしまう。
👉ギルバートは、慰めてくれたベッキーに自分の家族のことを話すことで「自分の感情も大切にすべきであること」に気付かされる。
■クライマックスはどこか
母が自力で2階のベッドまで上り、眠ったまま亡くなるシーン。
〜家を燃やすシーン。
👉ギルバートを縛り付けていた「家」が燃える。
母との別れは悲しい出来事だが、結果的にギルバートを自由にさせる。
■主人公が困ること、苦しむことはどこでどんなふうに起こっているか
町に縛り付けられている現状
・知的障害のある弟アーニーの世話のほとんどを引き受けている。
・弟アーニーのことを巡って妹エレンと仲が悪い。
・母が巨漢で家に篭もっており「父」の話になると癇癪を起こす。
・カーヴァー奥様との不倫が旦那にバレそう…?
・食料品店の店主もギルバートを頼りきり。
・家族の面倒を見るあまり、自分が何をしたいのか分からない。
・皆から「支えてくれる存在」として依存されている(家族、不倫相手、勤務先)。
展開の中で起こる出来事
・アーニーをお風呂で放置したところ、凍えてしまう。
・家族からアーニーのミスのことで責められる(いつも世話をしているのにミスだけが取り沙汰される感覚)。
・母が父のことで癇癪を起こし、床が抜けそうになってしまう。
・アーニーが何度も鉄塔を登ってしまう。
・アーニーが警察に勾留されてしまう。
・巨漢の母が町の人々の見せ物になる。
・アーニーが誕生日ケーキを落としたり、勝手に食べたり。
・カッとなってアーニーを殴ってしまう。
・母が亡くなってしまう。
・ベッキーが町を去ってしまう。
■逆にホッとするようなことや主人公が喜ぶことはどこで起こっているか
・弟アーニーが笑っていること。
・周囲の人々から頼られていること(重荷でもある)。
・放浪人ベッキーとの出会い。
・ベッキーはアーニーを迷惑だと思わない人。
・カーヴァー旦那が不倫に気付いていなかった。
・誕生日パーティーでアーニーと抱き合う。
・母がベッキーを紹介させてくれる。
・ギルバートを縛り付けるものが無くなり、どこへでもいけるという感覚が持てること。
■起承転結に分けるならどこまでが起でどこまでが承か
起「退屈な町/ギルバートの生活」
①:丘にいるギルバートと弟・アーニー。トレーラーに興奮するアーニーは仕草が幼いようだ(トレーラーを降りるベッキーと祖母)。
〜
⑧:アーニーを風呂に入れ、寝かしつけるギルバート。「僕と兄ちゃんはどこにも行かない」と歌うアーニー。
承「ベッキーとの交流/家族の問題」(21分)
⑨:ギルバート、友達であるタッカーとボビーと喫茶店。ハンバーガーチェーンの退屈な話。窓の外を通りかかるベッキーと目が合う。
〜
㊴:アーニーは誕生日パーティーにベッキーを誘う。ベッキーはハッキリしないギルバートの態度に落胆。
転「アーニーを殴ったギルバート」(80分)
㊵:家の中を興奮して走り回るアーニー、姉エミーと衝突して誕生日ケーキをダメにしてしまう。
〜
㊺:ギルバート、父を亡くした母が肥満であること、家族を支えなくてはならないこと、をベッキーに話す。ベッキーは自分の感情を表に出そうとしないギルバートのことを指摘する。抱き合う二人、朝を迎える(アーニーの誕生日になった)。
結「母の死/訪れる自由」(93分)
㊻:家でアーニーの誕生日パーティーが開かれている。戻ってくるギルバート、アーニーを抱きしめる。
〜
53:1年後。丘にいるギルバートとアーニー。家族の近況のN。ベッキーのトレーラーを待っている。「僕たちはどこへでもいける」。
■三幕だとするとどこが分かれ目か
第1幕「退屈な町/ギルバートの生活」
①:丘にいるギルバートと弟・アーニー。トレーラーに興奮するアーニーは仕草が幼いようだ(トレーラーを降りるベッキーと祖母)。
〜
⑯:鉄塔に登ろうとするアーニーを引っ張って止めるエレン。そこへ駆けつけるギルバート。エレンを叱り、アーニーを助ける。「誰にもお前をいじめさせない」と約束するギルバート。深まる妹・エレンとの確執。
第2幕「ベッキーとの交流/家族の問題」
⑰:車でベッキーのトレーラーに赴くギルバート。ベッキーと祖母は放浪しながら暮らしている。
⑱:ベッキーとギルバートの交流。アイス屋でアイスを買う二人(そこへカーヴァー奥さんが二人を目撃)。
〜
㊳:町に新しくきたハンバーガー屋のオープンイベント。タッカーは店員になってギルバートたちにバーガーを振る舞う。ベッキーは「明日出発する」と話す。
㊴:アーニーは誕生日パーティーにベッキーを誘う。ベッキーはハッキリしないギルバートの態度に落胆。
第3幕「自分自身と向き合うギルバート」(80分)
㊵:家の中を興奮して走り回るアーニー、姉エミーと衝突して誕生日ケーキをダメにしてしまう。
㊶:大型スーパーで代替のケーキを購入したギルバート。スーパーで買い物をしているところを食料品店の店主に見られてしまう。
㊷:アーニー、ギルバートが買ってきたケーキを冷蔵庫から勝手に食べていた。怒ったギルバート、思わずアーニーを殴ってしまう。
〜
53:1年後。丘にいるギルバートとアーニー。家族の近況のN。ベッキーのトレーラーを待っている。「僕たちはどこへでもいける」。
■このストーリーを3行で言うとどうなるか
青年・ギルバートは、知的障害を持つ弟、父を亡くして巨漢になった母など、家族の面倒を見ながら暮らしている。
町の皆から「支えてくれる存在」として依存されており、鬱屈とした日々を送るギルバートの前に放浪人・ベッキーが現れる。
ベッキーとの交流を通して、ギルバートは家族や周りのことだけではなく「自分の人生」について見つめ直してゆくのだった。
■このストーリーを15項目くらいの箇条書きにするとどうなるか
・問題を抱えた家族を「よき兄」として支える青年・ギルバート。弟アーニーは知的障害を持っている。
・客のいない食料品店で働くギルバートは、常連のカーヴァー夫人と浮気をしている。
・鉄塔を上るアーニーに世話を焼くギルバート。「僕と兄ちゃんはどこにも行かない」と歌うアーニー。
・放浪人ベッキーと出会い、彼女のトレーラーへ食料品を宅配。アーニーの失礼に対し、ベッキーはとても寛容。
・アーニーの誕生日パーティーについて家族会議。妹・エレンとの喧嘩。父のことで癇癪を起こす母。
・ベッキーと夕日を見るギルバート。アーニーの世話が疎かになって家族から責められる。
・カーヴァー旦那から保険を勧められるギルバート。「君に何かあったら家族はどうなる?」と。後に旦那はプールで溺死。
・ベッキーから「あなたの望みは?」と聞かれ、自分以外の家族のことばかり話すギルバート。
・アーニーが鉄塔を上り、警察に勾留される。
・母が7年ぶりに家を出てアーニー奪還のため警察署に赴くが、巨漢の体が好奇の目に晒され、落ち込む。
・葬式を終えたカーヴァー夫人は町を去ることに。自己犠牲的に皆の面倒を見るギルバートのことを案じる。
・アーニーが誕生日ケーキをダメにしてしまい、カッとなってアーニーを殴ってしまうギルバート。
・罪悪感に苛まれるギルバートだったが、ベッキーに慰められて蓋をしていた自分の感情を見つめ直す。
・アーニーの誕生日パーティーで、傷つけてしまったアーニーを強く抱きしめるギルバート。
・母にベッキーを紹介するギルバート。ベッキーは町を去ってゆく。
・母がベッドで眠ったまま亡くなっているのをアーニーが見つける。一家は家を燃やすことにする。
・1年後、ベッキーと再会。「どこにでもいける」と希望を見出しているギルバートの姿。
面白いと感じたポイント
■キャラクター
《主要人物》
ギルバート
アーニー(知的障害を持つ弟)
ベッキー(放浪人)
ボニー(巨漢の母)
エイミー(母役を担う姉)
エレン(反抗期の妹)
ベティ(浮気相手カーヴァー夫人)
ーサブキャラー
カーヴァー旦那(保険屋)
修理工・タッカー
葬儀屋・ボビー
ラムソン(食料品店の店主)
ベッキーの祖母
警官
近所の子供たち
■構成/ストーリー
「承」が長いが、大きく分けると7つのセクションで構成されている。
承「ベッキーとの交流/家族の問題」
承1「放浪人・ベッキーとの出会い」
⑨:ギルバート、友達であるタッカーとボビーと喫茶店。ハンバーガーチェーンの退屈な話。窓の外を通りかかるベッキーと目が合う。
⑩:食料品店。ギルバートが働いているとカーヴァー奥さんが来店し、不倫の約束。そこにベッキー来店。宅配を依頼される。
⑪:ギルバートの車にアーニーとベッキーも乗り、ベッキー宅(トレーラー)へ宅配。アーニーの失礼に対し、ベッキーはとても寛容。
承2「家族の問題と確執」
⑫:家族で食卓を囲みながら誕生日パーティーの食事について相談。妹・エレンと喧嘩になるギルバート「父は死んだ」という会話から母が癇癪を起こしてしまう。地団駄を踏む母の重みで床が抜けそうになる。
⑬:疲れて眠る母。世話をするギルバートと姉・エミー。
⑭:喫茶店で友人たちにベッキーとのことを追求されるギルバート。同じ店にカーヴァー家族。旦那に「電話しろ」と言われ、殺されるのか…?と心配するギルバート。
⑮:一階にいる母に気付かれぬよう、地下室の天井を角材で補強するギルバートとタッカー。木の上に登っているアーニーに応援を頼むが来たがらない。父は地下室で首を吊って死んだらしい。
⑯:鉄塔に登ろうとするアーニーを引っ張って止めるエレン。そこへ駆けつけるギルバート。エレンを叱り、アーニーを助ける。「誰にもお前をいじめさせない」と約束するギルバート。深まる妹・エレンとの確執。
承3「自由なベッキーと縛られるギルバート」
⑰:車でベッキーのトレーラーに赴くギルバート。ベッキーと祖母は放浪しながら暮らしている。
⑱:ベッキーとギルバートの交流。アイス屋でアイスを買う二人(そこへカーヴァー奥さんが二人を目撃)。
⑲:夕陽を眺める二人。ギルバート、アーニーの風呂のため一旦帰宅。途中でアーニーを一人残し、ふたたびベッキーの元へ。
⑳:町を離れられないギルバートは、鬱屈した心の内をベッキーに語る。二人は心を寄せていく。
㉑:ギルバートが家に戻ると、アーニーはまだ風呂に入っており凍えていた。家族は「ギルバートの責任」と言う。
承4「カーヴァー宅にも問題はあって」
㉒:食料品店から宅配の依頼でカーヴァー宅に行くギルバート。奥さん、ギルバートが旦那と電話中にフェラをするという悪戯を。旦那に呼び出されたギルバートが家を出ようとすると、奥さんが「行かないで」と。ベッキーとのことが気になっているようだ。
㉓:ギルバートがカーヴァー旦那の保険オフィスに向かうと、旦那は不倫のことを追求するかと思いきや、ギルバート自身の保険のことを心配していた。「君が病気や事故に遭ったら家族はどうなる?」と。そこへカーヴァー奥さんから電話。家で問題が発生したようだ。
㉔:カーヴァー宅の外で泣いている奥さん。旦那とギルバートが車で駆けつけると、クッキーが焦げて燃えている。旦那は一生懸命そのクッキーを食べ、子供たちをプールで遊ばせる。そこまで尽くしても満足な反応が返ってこないことに旦那は癇癪を起こす。奥さんはギルバートに「あなたならこの町から出ていかないから」と言う。
㉕:家族で映画を見ている。汽車で町を離れる男の描写。風呂を拒むアーニー。そこへエレンが「カーヴァー旦那が死んだ」と伝える。唖然とするギルバート。
㉖:カーヴァー宅へ行くと捜査網。タッカー曰く、ビニールプールで溺死したらしい。
承5「ベッキーが問うギルバートの望みとは」
㉗:喫茶店で友人たちと溺死について退屈な噂話。そこへ通りかかるベッキー。アーニーが話しかけ、車で送っていくことに。
㉘:ベッキーのトレーラーを修理するギルバート。湖で遊ぶベッキーとアーニー、ギルバートも混ざる。
㉙:草っぱにギルバートとベッキー。「あなたの望みは?」と聞かれて、自分以外の家族のことばかり話すギルバート。ふと気付くとアーニーがいない。
承6「アーニーと母に向けられる好奇の視線」
㉚:鉄塔に登るアーニー。ギルバートの懇願虚しく、アーニーは警官に勾留されてしまう。
㉛:アーニーの勾留を受け、巨漢の母、数年ぶりに家を出ることに。警察署でアーニーを返すよう要求する母。
㉜:アーニーは無事に釈放されるが、外を歩く巨漢の母を町の人がジロジロと見る。母への好奇の視線に耐える本人と家族。
㉝:家の中は空気が沈んでいる。窓の外に巨漢の母を見にきた子供たち。エレン、堪らず物を投げて窓ガラスを割る。
㉞:トレーラーでベッキーから「母に会わせて欲しい」と言われ、言葉を濁すギルバート。二人、キスをする。
承7「ギルバートを残して町を去る人々」
㉟:カーヴァー旦那の葬式に参列するギルバートたち。沈むカーヴァー奥様。新しいバーガー屋のトラックが通りかかり、アーニーが叫ぶ。
㊱:食料品店でレジを打つギルバートからタバコを買うカーヴァー奥様、この町を出ていくと言う。自分を捨てて皆の世話をするギルバートのことを案じる奥様。そこにベッキーが来店、奥様はベッキーに一言「譲るわ」と。
㊲:ベッキーのトレーラーに宅配するギルバート。故障中だったトレーラーが直る。抱き合うギルバートとベッキー。
㊳:町に新しくきたハンバーガー屋のオープンイベント。タッカーは店員になってギルバートたちにバーガーを振る舞う。ベッキーは「明日出発する」と話す。
㊴:アーニーは誕生日パーティーにベッキーを誘う。ベッキーはハッキリしないギルバートの態度に落胆。
全体を通して以下の要素が描かれる。
・町に縛られるギルバートの姿
・自由に生きるベッキーとの対比
・ギルバートとベッキーとの恋模様
・家族が抱える問題(母・弟)の顕在化
・ギルバートを残して町を離れる人々
👉構成というより「鬱屈した感情」をベースに物語全体が流れてゆく印象がある。
自分がいないと町の人は困るのではないか…しかし自分を残して町を離れる人々。
「周り」ではなく「自分」は、何がしたいのだろう、何を望んでいるのだろう。
・ギルバートを町に縛り付ける描写たち
風呂で歌うアーニー「僕と兄ちゃんはどこにも行かない」。
大型スーパーへの客流出を憂う食料品店の主人を励ますギルバート。
アーニーの風呂事件をギルバートのせいだと責める家族。
カーヴァー夫人「私を置いて行かないで」。
カーヴァー旦那「君に何かあったら家族はどうなる?」
カーヴァー夫人「あなたならこの町を出ていかないと思うから」。
見張っていないと鉄塔を上ってしまうアーニー。
巨漢の母「もう戻ってこないんじゃないか、と心配した」。
それに対して、ベッキーが視聴者を代弁するように問いかける。
「(周りのことじゃなくて)あなた自身の望みは?」。
「(自分の感情に蓋をする)そういう人を知ってる」。
・勘違いのフェイントで面白くなる
カーヴァー夫人との浮気中に旦那が帰宅してくる。
ごまかしたつもりだが、ギルバートの唇にはアイスがついている。
旦那から「話がある。男同士の話だ」と言われる。
(ここで浮気がバレている…!と視聴者は思う)
中盤まで引っ張り、旦那が「保険の営業」の話をしているのだと分かる。
安堵するギルバート。旦那は浮気には気付いていなかったのだ。
(さらに「保険の話」はギルバートを町に縛り付ける描写にもなる、二重の意味になっている)
・目を離したら「いない…!」の面白さ
弟アーニーが鉄塔を上ってしまうシーンは、3回。
そのうち2回は、気付いたら「いない…!」という描写になっている。
1回目
カーヴァー夫人との浮気のあと、車に戻るとアーニーがいない。「……!」
遠くの鉄塔を見ると、上っているアーニーが小さく見える。「!?」
3回目
草っ原でギルバートとベッキーが話している。
と、さっきまで近くにいたはずのアーニーがいない。「……!」
(通り過ぎてゆくパトカーに嫌な予感がするギルバート)
案の定、鉄塔に上っていたアーニー。
『バック・トゥー・ザ・フューチャー』でも、喫茶店で市長との話に夢中になっていたマーティ。
気付くと席にいたはずの父が、いない…!
👉主人公の視線に誘導しておいて、気付いたら「いない!」。ハッとするポイントを作る時のコツ。
■セリフ
アーニー「違うよ。ギルバートが小さくなったんだ。ギルバートは縮んでる。縮んでる!縮んでる!」
知的障害のある弟アーニーの面倒を見ている兄のギルバート。
毎年決まった時期にやって来るトレーラーの行列を2人で見たあと、ギルバートはアーニーを背負う。
そして、間もなく18歳になるギルバートが大きくなったことを実感するのだった。 ・・・
ベッキー「(空は)大きいなんて言葉じゃ足りないわ。大きいって言葉は小さすぎる」
ベッキーとギルバートは空を見ながら話をする。空の大きさについて語るベッキー。
「大きい」と語るギルバートに対し、ベッキーは空の大きさを表現するには足りないと語る。
ギルバートはベッキーともっと話をしたいと思うのだった。 ・・・
ギルバート「くっついてるっていうのは正しい表現じゃないな。ママは家の一部になってる」
自分の母親についてベッキーに語るギルバートの言葉。
ギルバートの母親は太っており、ソファでテレビを見る生活を送り、7年もの間にわたって外出していないのだった。
引用:https://www.eiga-square.jp/title/whats_eating_gilbert_grape/quotes
■小道具
クライマックスで「家」を焼くギルバート。
この町にギルバートを縛り付けておく物の象徴が無くなる。