【測量 基礎の基礎】レベルを用いた標高の観測

測量士の八重樫です。こんにちは。

【測量 基礎の基礎】トータルステーションを用いた観測では、トータルステーションを用いた観測によって座標値を求めるという事について書いた。
トータルステーションでも標高を測る事は出来るが、このレベルを用いた標高の観測と比べると精度は良いと言えない。

より高い精度を要する測量では、このレベルを用いた標高の観測を行う。

観測精度

トータルステーションで標高を測る事は「間接水準測量」と呼ばれる。
対して、レベルを用いた標高の観測は「直接水準測量」と呼ばれる。
距離にも依るが間接水準測量では±20mm程度、直接水準測量では±5mm程度の精度と考えて良いだろう。

間接水準測量は、【測量 基礎の基礎】トータルステーションを用いた観測で書いたように延長角と射距離からの計算で標高を求める。

例えば、上の図で射距離が100m、鉛直角が100°だったとしよう。
この際のトータルステーションの軸と、目標との高低差は

sin10° = 高低差 / 100m
高低差 = sin10° ✕ 100m
    = 0.17365 ✕ 100
    = 17.365 m

目標への鉛直角は、トータルステーションの望遠鏡を覗いて視準する為、当然だが角度に誤差が生じる。
視準誤差が30″あったとしよう。
鉛直角を100° 00′ 30″とした時の高低差は

100° 00′ 30″ = 100 + 0 + ( 30 / 3600 )
       = 100.0083°

sin10.0083° = 高低差 / 100m
高低差 = sin10.0083° ✕ 100m
    = 0.17379 ✕ 100
    = 17.379 m

14mmの差がある。
このように、トータルステーションでの間接水準では角度によって生じる誤差が大きい。
また、当然だがトータルステーションを設置する高さ、設置した高さの観測誤差、目標を設置した高さの誤差など人為的な誤差が生じる項目多くなる。

そこで、より精度の高い直接水準測量を用いる。

直接水準測量

直接水準測量はレベルと呼ばれる測量機を用いて行う。
レベルとは水準器の総称で、気泡管水準器なども含まれるが、ここでのレベルとはオートレベルや電子レベルのような測量機を指す。

レベルは「水平に据える事が出来、水平方向に回転する、視準線を備えた望遠鏡」と考えれば良い。

図のように、標高10.014mの点に鉛直に据えた標尺に対してのレベルの読み値が2.021m、新点に標尺を鉛直に据えた標尺に対してレベルの読み値が3.206だったとしよう。
この際の新点の標高の求め方は

10.014 + 2.021 - 3.206 = 8.829m

である。
トータルステーションでの平面座標の計算と同様に、基準となる点(水準点)が国土地理院や市区町村によって管理されている。
また、上記は基準となる点が近傍にあった際での観測に限られる。
では、近傍になかった際にどのようにして測るかというと、上記のような観測を繰り返し、同じ又は別な基準となる点まで測る。

先程測った新点A( h=8.829m )以降が、図のようであった場合

8.829 + 2.673 - 0.851 = 10.651m (新点Bの標高)

10.651 + 1.720 - 2.003 = 10.368m

10.368 - 10.365 = 0.003m

と、基準となる点~基準となる点までの観測誤差が3mmである事が解る。
基本的なレベルを用いた標高の観測は以上の通りだ。

誤差の許容範囲

実施する水準測量の等級や距離にもよって、誤差の許容範囲が設けられ、誤差が許容範囲を超えてしまった場合は再測となる。

上の例の基準となる点~基準となる点の距離 ( S ) が 1.2km、誤差の許容範囲が5mm√S だった場合、誤差の許容範囲は

5 ✕ √ 1.2 = 5.47mm

観測誤差が3mmだったので、この観測は誤差の許容範囲に収まっている事になる。

誤差の許容範囲については、測量士補の試験でも出題される。
【測量士補資格試験】簡単な計算問題で点を稼ぐで過去問を解説しているので、受験する方は是非。

まとめ

このようにして、レベルを用いた標高の観測では、標高を決定する。
実際には、様々な補正計算や、誤差の標準偏差を用いた標高の最確値の計算などがあり、ここまで単純ではない。
測量士の試験では、なかなかにややこしい問題も出題される。

以前、路線測量を行っている際にお散歩中のオジサンに原理を聞かれ、説明してもなかなか解って頂けなかったので、書いておいた。

最後までお読み頂き有難う御座います。モチベーション維持の燃料にサポートいただけると有り難いです。