クランク(ルアー)のリップの設計。
近頃3Dプリンターを作っている八重樫(@tkc_exp)です。
私がルアーを作るきっかけになった「3Dプリンターで作ったルアー限定の釣り大会」が、としまえんフィッシングエリアで開催されているという事もあり、エリアトラウト用のルアーを作る事が多いのですが、実際にやってみると3Dプリンターでのルアー作りはエリアトラウト用から始める事はオススメです。
と、いうのも、エリアトラウト用のルアーは大きくても全長60mm程度とルアーの中では小型であり、またハイアピールな大きめのアクションの物から殆どアクションしない動かないルアーまで必要なルアーの要件が多岐に渡り、「どのような設計をすれば、どのようなルアーが作れるか」の基礎を学ぶ事ができるからです。
特に私は海での釣行が多かった為、トップでハイアピールなルアーの発想が足りず「こんなにリップ大きくするの!?」と驚く事がありました。
で、前置きが長くなりましたが、今回はその中でもクランクのリップの設計の話。
ボディサイズとリップの長さの比率。
エリアトラウトで使うクランクやミノーは海用のルアーと比べて、ボディサイズに対して大きめのリップが付いている事が多いです。
とりあえず、市販品のルアーのボディとリップの長さの比率を見てみましょう。
LUCKY CRAFT
Deep CRA-PEAがボディ長34mmに対してリップ16mmで、ボディの47%。
Bottom CRA-PEAがボディ長34mmに対してリップ21mmで62%。
Mukai-Fishing
ZANMU35 IDOがボディ長35mmに対してリップ17mmで49%。
Deep Spec DRがボディ長32mmに対してリップ24mmで75%。
どれもノギスでざっくり計測。
概ね50%ぐらいが標準で、潜航深度が深い物では60~75%ぐらいなようです。
ボディの幅とリップの幅の比率。
次に幅の比較をしてみます。
3Dプリンターでルアーを作っている体感としては、リップの幅はボディの幅と同一まで程度にしておくと、泳ぎが破綻し難い印象があります。
LUCKY CRAFT
Deep CRA-PEAはボディ14mmに対してリップ16.5mmで118%。
Bottom CRA-PEAはボディ14mmに対してリップ19mmで136%。
Mukai-Fishing
ZANMU35 IDOはボディ11.5mmに対してリップ9.5mmで82%。
DeepSpec DRはボディ14mmに対してリップ14mmで100%。
LUCKY CRAFTのルアーがボディの幅よりも広いリップが付いていて、Mukai-Fishingのルアーはボディの幅よりも狭い、もしくは同一幅のリップが付いています。
リップの形状。
リップの形状は大きく分けて
●丸形(ラウンドリップ)
●四角型(スクエアリップ)
●台形型(コフィンリップ…trapezoidじゃないの?)
の3通りだそうです。
で、リップの形状でアクションの傾向があると言われていますが、実際にルアーを作っている体感としてはリップ形状よりも重心と浮力のバランスの方がアクションに傾向が出るように感じます。
なので、私は基本的には丸形。
今回、比較している4つのルアーから見ると、「ボディ幅よりもリップ幅が広いルアーは台形」である事がわかります。リップの面積を大きく出来るから…?
ラインアイの位置。
今回、私が見たかったのは主にコレ。
3Dプリンタールアーの先輩方の製作記を拝見すると「最適化していくと、どれも同じような位置になる」という事が書かれています。
つまり、ラインアイの位置に関しては明確な正解があるという事です。
これが解かれば、リップの設計での悩みの大半が解決するはず…!
LUCKY CRAFT
Deep CRA-PEAがボディ端からラインアイまで5mm、ラインアイの幅が4mm、ラインアイ端からリップ先端まで7mm。なので、ボディ端からラインアイの中心まで7mmで、ラインアイの中心からリップ先端まで9mm。
Bottom CRA-PEAがボディ端からラインアイまで7mm、ラインアイの幅が3mm(窪んでいる為、リップ面で計測)、ラインアイ端からリップ先端まで1mm。なので、ボディ端からラインアイの中心まで8.5mmで、ラインアイの中心からリップ先端まで12.5mm。
Mukai-Fishing
ZANMU35 IDOがボディ端からラインアイまで2mm、ラインアイの幅が3.5mm、ラインアイ端からリップ先端まで11.5mm。なので、ボディ端からラインアイの中心まで3.75mmで、ラインアイの中心からリップ先端まで13.25mm。
DeepSpec DRがボディ端からラインアイまで9mm、ラインアイの幅が3.5mm、ラインアイ端からリップ先端まで11.5mm。なので、ボディ端からラインアイの中心まで10.75mmで、ラインアイの中心からリップ先端まで13.25mm。
ZANMU35 IDOはルアーのタイプが違うので除外して、残り3つで比較すると
こんな感じ。
で、リップ長を分母として比率にすると
こんな感じ。
なので、ラインアイの位置はボディ先端からリップ長の40~45%の位置にするのが良さそう。
まとめ
と、言うわけでクランクのリップを設計する際には
リップ長はボディ長の50%を標準として、潜航深度の深い物は60~75%程度、リップの幅は丸形ではボディ幅と同じぐらいまで、それよりも広くする場合は台形型、ラインアイの位置はボディ端からリップ長の40~45%の位置
で設計すると良いかも知れません。
最後までお読み頂き有難う御座います。モチベーション維持の燃料にサポートいただけると有り難いです。