アンジュルムの不遇だったアルバムたち
今週22日に、アンジュルム4年ぶりのアルバム『BIG LOVE』がリリースされた。
昨年頃から「そろそろアルバム出てほしいなあ」とぼちぼち思い始め、そんな折の秋頃に「インスタライブでお知らせしま~す!」ときて、いよいよアルバムか?と期待したものの、ニューシングル「悔しいわ/Piece of Peace~しあわせのパズル~」発売のお知らせ。まぁ、シングルはシングルで良いんだけどもね…。
それと同時に、あぁ、アルバムは竹内朱莉が卒業するタイミングで出すんだな、と。そして、それまでも漠然とは思っていたが卒業はそう遠い先の話じゃないなと確信した。
なおその後、BEYOOOOONDSがアルバムを出すとなって、今まで出た順番的にはアンジュが先のはずなのになということから、尚更確信した。
スマイレージからアンジュルムに改名後、アルバムは『BIG LOVE』で3作目になるが、1作目『S/mileage / ANGERME SELECTION ALBUM「大器晩成」』は福田花音の、2作目『輪廻転生〜ANGERME Past, Present & Future〜』は和田彩花の、いずれもそれぞれの卒業のタイミングでの発売だった。
ただこの2作、ちょっと手放しでは良いアルバムだとは言いにくい事情がある。
S/mileage / ANGERME SELECTION ALBUM「大器晩成」
2015年11月25日発売。
大器晩成
乙女の逆襲
七転び八起き
魔法使いサリー
ぁまのじゃく(和田彩花セレクト)
私の心(福田花音セレクト)
ヤッタルチャン(中西香菜セレクト)
臥薪嘗胆(竹内朱莉セレクト)
サンキュ!クレームブリュレの友情(勝田里奈セレクト)
自転車チリリン(田村芽実セレクト)
地球は今日も愛を育む(室田瑞希セレクト)
夕暮れ 恋の時間(相川茉穂セレクト)
私、ちょいとカワイイ裏番長(佐々木莉佳子セレクト)
ここまではよかったのだが(もっと良い案があったのになという個人的な希望は後に触れる)、問題はここからだ。
通常盤・初回A・初回Bの3種類で発売されたのだが、14・15曲目に収録される新曲がそれぞれ異なるのだ。
通常盤:交差点/友よ
初回A:涙は蝶に変わる/カクゴして!
初回B:マリオネット37℃/汗かいてカルナバル
それまで、スマイレージでも、モーニング娘。でも、シングルでは種類によってカップリング違いというのはあった。
単価が3倍以上も違うアルバムでそれをやるのは、全くファンのことを、特に若いファンのことを全然考えていない。「配信もするからいいじゃん」という問題でもない。
私はその頃は娘。を中心に推していたが、娘ヲタ界隈でも「今後こんなのがデフォになってはいけない」と、アンチとかそういう事じゃなしに買い控える動きまであった。
アルバム新曲6曲は、大器晩成らのシングル曲とともに、“アンジュルムの楽曲”として1枚にまとめるべきだった。
そして、メンバーセレクト盤のDisc2を作ってほしかった。竹内は臥薪嘗胆じゃなく他の曲をよろしく。
ところで、スマイレージ2ndアルバム『②スマイルセンセーション』発売からアンジュルム改名までの間、4枚のシングルが出ている。
新しい私になれ!/ヤッタルチャン
ええか!?/「良い奴」
ミステリーナイト!/エイティーン エモーション
嗚呼 すすきの/地球は今日も愛を育む
「ヤッタルチャン」と「地球は今日も愛を育む」以外は、アルバム未収録なのだ。(『プッチベスト』は除く)
「ミステリーナイト!」は改名後も比較的多く歌われているし、「新しい私になれ!」は昨秋のツアーで歌われた。
この、“谷間”の子たちをなんとかしてあげたかった。「シングル買えばいいじゃん」という問題じゃなく、複数買わせることを前提にしすぎて“アルバム”たる物の何たるかを全然考えていなかった。
輪廻転生〜ANGERME Past, Present & Future〜
2019年5月15日発売。
I 無双 Strong!
赤いイヤホン
帰りたくないな。
いとし いとしと Say My Heart
もう一歩
人生、すなわちパンタ・レイ
わたしの夢見た 15年 / 和田彩花
上記のDisc1に加え、「次々続々/糸島Distance/恋ならとっくに始まってる」から「泣けないぜ…共感詐欺/Uraha=Lover/君だけじゃないさ...friends(2018アコースティックVer.)」までのシングル曲を収録したDisc2、2015年に発売されたシングルと同年発売されたアルバム『S/mileage / ANGERME SELECTION ALBUM「大器晩成」』に収録された楽曲によるDisc3で構成。
…いや、Disc3いる!?
これは明らかに前作でおかしな売り方をしてしまったのが、4年後にまで影響している。
「出すぎた杭は打たれない/ドンデンガエシ/わたし」がアルバム未収録だったが、うまくやれば2枚で収まるだろうと。
通常盤でDisc3まであるって、娘。ですら無いぞ。
これでまた、若いファンにはちょっと手を出しにくい価格帯に。
とにもかくにも、アルバム発売前から始まっていたツアーでは「赤いイヤホン」と「もう一歩」が先行披露されていて、セットリストに新たな彩を添えていた。「赤いイヤホン」は、この年発表されたどのシングル曲よりもずっと定番として歌われている。
さて、「もう一歩」。なぜか和田の卒業公演ではセトリから落ちてしまったためにステージ映像がない。のちに『Premier seat』で歌唱するが、客前でパフォーマンスしたものではない。昨秋のツアーにて、メドレーの中の1曲としてではあるが、実に3年半ぶりに客前で歌唱した。
ようやく復権の兆しが見えてきた「もう一歩」だが、それ以上に披露の場に恵まれていない曲はもっとある。「帰りたくないな。」は、「交差点」並みに“ここぞ”という時にしかやれない曲になってしまった感がある。
19年9月の勝田里奈卒業コンサートではそれまで歌われていなかったアルバム曲が歌われ、“現在進行形のアンジュルム”を印象付けた内容となった。だがその後にわたって歌い続けられるようになったのは「人生、すなわちパンタ・レイ」のみで、今のところこの一夜限りの披露となってしまっている曲も少なくない。
「フラグをぶっ壊せ!」「今夜もステキに落ち着けない」「鏡の国のひねくれクイーン」といったユニット曲は、グループ激変期を経て歌いにくくなってしまったのも理解はできるが、このまま埋もれてしまうのは勿体なさすぎる。
船木結の卒業コンサートでは「鏡の国のひねくれクイーン」を船木と伊勢という本来はどちらのユニット持ち歌ではない2人が歌っているのだから、橋迫鈴以下の若手たちにも歌う機会がほしいところ。
そして全体曲「いとし いとしと Say My Heart」は、ホント、何でやらないんでしょうね。
勝田卒業公演のセトリは、本当ならこれで全国を回ってしかるべし内容。一夜限り数千人しか目にしていないのが実に悔やまれる。
そして満を持してリリースされた「BIG LOVE」。
新曲は新曲だけのDiscでまとめられてしまい、オリジナルアルバムといえる体裁なのか疑問が残るところではあるが、前2作ほどの買い手への負担は強いていない。
あとは、大切に歌い継がれるアルバムとなっていくことを願ってやまない。