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オラファー・エリアソン 「キッチン」

東京都現代美術館で展示が行われているオラファ・エリアソンのベルリンのスタジオでは、毎日のように大勢のスタッフのために料理が作られている。確か、アップル本社でも同じようにオーガニック素材を使った料理がいつでも自由に食べられるということを聞いたことがあるが、やはり思考能力を高めクリエイティブな仕事をするためだったり、人と人との繋がりを良好にするために、旬の食材を使った料理というのはとても重要なものなのだということをこの本は教えてくれる。

学校給食のように、エリアソンのスタジオでは毎日全員が長いテーブルに着席して昼食をともにする。写真を見る限りおそらく60−70名くらいだろうか。そのためにこの本では大人数のための食事づくりのアイディアも紹介しつつ、100の美味しいベジタリアンレシピが紹介されていて、食材さえ揃えばほ家でも作れるものがわりとある。ちなみにスタジオの日本人スタッフである岩間朝子さんがレシピと料理に関わっていて、おむすびや梅干しの作り方も載っている。

このスタジオには、シェ・パニーズのアリス・ウォータースら、多くの食の関係者たちが招かれ、料理を振る舞い、それを共有している。本の帯にもそのアリスの言葉が使われ、オラファ自身も最初に短いテキストを寄稿している。

「料理をするというのは、ほかの人たちに心を配ることだ。惜しみなくもてなす気持ちをジェスチャーで示すことだし、人と人とを結びつける役割をする。料理は人と人との関係を拡げ、頭のなかの考えを食べものというかたちに変え、与え、分かち合うことへと移しかえる。料理をするとき、ぼくらは世界を利用し、同時に世界をつくり出す。そして食べることを通じて、ぼくらは世界を取り込む。光を体内に取り入れるのだ。たとえばひときれのレタスというのは要するに、太陽光が貯えられたものだ。陽の光にさらさらなければ育たなかったわけだから、太陽電池のような働きをしていると言ってもいい。食べることで、ぼくらはそのエネルギーを体内に取り入れる 。

『ザ・キッチン』は、人間と食べものと太陽のあいだの結びつきのすばらしさを、エネルギー交換のシステム、与え、もらい、分かち合うことから成り立つ 生 態系として描き出す。微視的なものから巨視的なものまで、さまざまなレンズを通して、食べものを考えてゆく」 ーオラファ・エリアソン

もし、エリアソンの展覧会にこれから行く予定であれば、この本を読んでいくことで、彼の環境や自然界のエネルギーに対する一環した考え方がより理解できるはずだ。しかもとてもわかりやすく整理されたテキストである。