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【劇場版感想】MyGO!!!!!から学ぶ、個性を潰さないたった2つのチームの作り方

劇場版「Bang Dream! It's MyGO!!!!!」前編 春の陽だまり、迷い猫
後編 うたう、僕らになれるうた&FILM LIVE

前後編どちらも視聴した感想としては、
「高校生ってやっぱり難しい時期よな」

僕は4年間、中高の教職課程を現在進行形で頑張っている。その際に、年齢が近いからという理由でよく「高校生の先生の方がいい」という学生が多い気がする。
まぁ、ただ高校生も高校生で難しい時期だよね。1つ大人になってしまうのだから。後編冒頭でしみじみと感じてしまった。

「大事なことって、どうして言えないんだろうね」
MyGO!!!!!はこれの繰り返し。みんな胸の内を言うのがそれなりに苦手な子たち。
ただ燈はそれを歌にできる。彼女がグループの燈になることで、崩壊寸前でも持ち堪える。発言力があるタイプでは決してない。それでも、その子がいるから安心できる太陽のような存在。MyGO!!!!!はそんなグループだと感じた。

さぁ前座はこれくらいにして、前後編の感想を深く掘り下げよう。

オーナーが伝えたかった『SPACE』の意義とは

MyGO!!!!!を語る前に、本劇場版MVPを挙げさせて頂きたい。僕は、詩船ことオーナーだと思う。

オーナーは芸術者としてでなく、教育者としても優れた方だなというのが2点を通して感じられた。

1つめは、「やりきったかい?」と「あんたが1番できていなかった」についてだ。アニメ版では、戸山香澄最大の挫折とも言えるシーンとして知られているだろう。

この「あんたが1番できていなかった」について、僕は技術面ではなく精神面なのではないかと考察したい。「やりきったかい?」という問いに手を挙げたのは香澄のみだった。個人でやってる分にはOKなのかもしれないが、グループとして見るとそれは「現状満足」だと捉えられかねない。香澄だからこういうのが許される、というのがエスカレートしていくと積もりに積もって亀裂が入る可能性もある。とした上での「あんたが1番できてなかった」なのではないだろうか。

2つめは、SPACEを閉めた理由だ。
バンドなんぞ軽音楽部でやろうと思えばできる。
でもバンドリ・『SPACE』はそうではない。
先程のような例から『SPACE』は技術だけでなく、精神面も1から叩き上げてくれる登竜門。言わば学校という認識がオーナーの考えであろう。
いつまでも留まる場所ではなく、羽ばたいて欲しい。そのような意図であったが、慣れというものは怖い。次第に利用者の意図は「お家」のようになっていたのではないか。幼少期の楽奈にとっては、理由がよく分からず『SPACE』を閉められた感覚だろう。だが、この閉め方もミュージシャンとしても教育者としても素敵な理由だと感じている。
芸術は個性をのばす場所、教育は協調性をのばす場所。個性を壊さず協調性を尊重したオーナーの働きには頭が上がらない。

個性は潰される?

話をMyGO!!!!!に戻そう。
MyGO!!!!!を一言で表現すると、「当たり前に憧れた人たち」だと思う。
高松燈は、昔から「不思議ちゃん」と呼ばれ「人間になりたい」と心から願っている。
千早愛音は、流行や世間体を気にしながら普通のフリをしている。
要楽奈は、居場所だった『SPACE』が失われ、路頭に迷いながら『RiNG』を仮の居場所としていた。
椎名立希は、優秀な姉の妹という特大な期待を持たれながらもそのプレッシャーを跳ね返せれていない。
長崎そよは、『CRYCHIC』を失い、他人を利用してでも当たり前を取り戻そうとした。


作中全員何かの当たり前を模索しながら日常を過ごしている。

※恐らくこの「当たり前」を強調するために同じく「いつも通り」が強調されるAfterglowが作中何度も登場する仕掛けなのではないかと考えている。

そんな当たり前を求める彼女たちの楽園であり居場所、それがMyGO!!!!!なのだ。
そんな楽園のMyGO!!!!!だったが、それぞれの思惑によるすれ違いでバラバラになってしまう。

僕も前々から感じていて、今回も感じたことだが、やはりチームを楽園とするのは非常に危険だ。
楽園を形成すると反するものは追放、または雰囲気に合わず自ら赴いてしまう恐れがある。なんでもかんでも願いが叶う場所など造れないことを考慮しなければならない。

個性を潰さないためには、個性を活かす環境を整えるべきである。

MyGO!!!!!の環境課題は、音楽を手段としているメンバーと目的としているメンバーの考え方のズレである。
そよはご存知の通り利用するため、愛音は見栄、立希は燈といるため。
埋まりそうで埋まらない人と人の距離はここにあった。
そんな中、燈は「伝えたい」「届けたい」があり、楽奈も「満足したい」と音楽を目的としてやっている部分が見える。
燈の1人舞台から最初に加わったのも楽奈だった。やはり、ここの2人に通じ合うものがあるかもしれない。
※楽奈が燈に対して言ったおもしれぇ女の正体はこの考え方の一致だと考察したい。

バンドストーリー第32話より

燈がとった環境を整える行動。
まずメンバーの誰1人も追放せず、そよもメンバーとして最後まで信じた。そして、1人になっても舞台に立ち続け、とにかく「待った」のである。
すると、それぞれの思惑で音楽が手段となっていた仲間が、音楽を届けるために集まり、迷子はMyGO!!!!!となった。

バンドストーリー第34話より


チームは個人の責務を問うもそうだが、チームとしての雰囲気・ルール・目標・目標に向けての意思疎通がズレてないかを常に確認し、改善していくべきだ。

「報連相ができない部下が悪いのではない、報連相されない上司もまた信頼を改善すべきだ。」
僕の好きな坪田信貴先生がこのような内容を仰っていた。人の責任に押し付けず、まずは環境から考えていく。チーム改善の近道はここにあると信じている。

MyGO!!!!!にリーダーは要らないことに気づいた

MyGO!!!!!のリーダーは断定できそうでできない。
燈だと言いたいところだが、楽曲製作など基本的な指示は立希、お母さん的役回りのそよ、存在証明として前に出たい愛音、ギターの裁量権を持ちたい楽奈もいる。誰か1人が大きく権限を持つと反感を買うか抱えきれずに爆発してしまう。

こうなる場合、リーダーを敢えて作らない最新のリーダーシップ論が有効的だ。従来までのリーダーシップは、誰かが先頭に立ちそれを部下が聞き、さらに下に伝えていくピラミッド型だ。しかし、最近では圧倒的なリーダーを置かず、それぞれがそれぞれの分野でリーダーシップを発揮するという手法が話題となっている。

これで期待できる効果として、主体性と自律性の向上だ。個性を発揮できるタイミングはリーダーシップを取り、違う分野ではまた別の人がリーダーシップをとる。これにより、個性が守られ全員が自発的に行動しやすくなる環境が生まれる。

侍ジャパンを世界一に導いた栗山英樹監督もこの手法を取っていた。今や誰もが知る大谷翔平や最年長のダルビッシュ有でもなく「キャプテンは決めません」とした。そのうえで、全員がキャプテンという意識を持つことで「大谷に縋るチーム」から「全員で勝つチーム」とり、世界大会優勝を現実のものにした。

ここで栗山英樹監督は、このような言葉を残している。

「全員『俺がキャプテンだ』と思えばプレーの仕方は変わるはず。キャプテンだったら『先輩がいるし、言うのはやめよう』とはならない。チームが勝つために必要なものは全員が行動し、全員が話をし、全員が引っ張ってもらいたい」

リーダー不要論は権威による妨げをなくすことができる。

MyGO!!!!!はというと、楽曲は立希、衣装は愛音、ギターリーダー(?)は楽奈、全員のまとめ役はそよ、最もメンバーから信頼されており最終決定権を握るのは燈となっている。

そよについては、1度テリトリーに入ってしまえば上手くまとめることができる。
(楽奈をテリトリーに入れることに苦悩しているうちに春日影されて自身の計画はおじゃんとなったが)
悪用しなければ、彼女の持つものは充分な才能なのだ。
立希も楽奈を「抹茶が貰えるからやる」という生理的欲求から「上手い空気を吸いたいからやる」という自己実現欲求に変化させるなどリーダーシップ力はやはり姉に劣らない。
この2人と信頼の厚い燈を軸として、天才型の楽奈・特化型の愛音と上手く交流していることもあり、そよの一件後、MyGO!!!!!はそれなりに機能しているとも考えられる。

一方で見えたMyGO!!!!!の次なる課題とは

作中今後のキーパーソンとして、椎名立希を挙げたい。

今回、性格診断としてエニアグラムを使用し彼女に該当するタイプを自身の考えなりに検索した。
※エニアグラムとは、人の思考や行動を9タイプに分類したものである。

その結果、椎名立希は、完璧主義者タイプに該当すると考えた。

完璧主義者のデメリットとして、hoymeではこのように記されている。

プロセスにこだわるあまり、重要でない細かな仕事を綿密にやりすぎ、時間が足らないことを不満に感じます。
融通が利かず、独善的になり、他人のミスや悪事にこだわり、非難がましくなります。 その結果自分の理想とは反対の行動にでることがあります。

バンドストーリー第40話より
バンドストーリー第16話より

完璧主義者は完璧を求めるあまり、それが周りを縛り付けることにもなってしまう。

Mustではなく、Want。すべきよりしたいを考えることが重要だ。

最後に

MyGO!!!!!を通して、全体的にメンバーはレベルアップしている。特に愛音は、楽奈のレベルについて行くために猛練習した成果か、メンバー内で最も成長したのではないかとも読み取れる。

4000字以上にわたって感想を述べたが、さぁ次はAve mujicaでどのような作品が待っているのか。
次回作に期待である。

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