
出会いはいつも突然やってくる。
僕がその曲と出会った場所は、家から遠く離れた長野県上田市。
上田にはお気に入りのパン屋さんがあって、年に数回車で3時間かけて買いに出かけます。パンはウマいよね。
去年の11月。いつものようにそのパン屋さんで1万円くらいパンを買って(買いすぎだろ)、ぶらぶらと通りを歩いていると小さな古本屋さんを見つけました。
店の外の商品棚には文庫本や映画のパンフレットなんかが並べられているよくある古本屋さんです。
狭い店内に入ると写真集や地元上田市に関連した本などが置いてあり、手にとってパラパラと立ち読みしていました。
背表紙を目で追って何冊か手にとっては読むでもなくページをめくっていた時、店内に流れる曲にふと耳を奪われました。
軽快なギターのイントロ。
疾走感のあるロック調のメロディ。
若い女性ボーカルの少しはかなげだけど伸びやかな声。
本棚の上に置かれた小さな丸いスピーカーから流れるその曲を聞いていると、「この曲いいな。なんていう曲かスゴく知りたいぞ!」という欲求が湧き上がってきて思わず店員さんに、
「この曲めっちゃいいですね!誰の何という曲ですか?いますぐ教えてくださいお願いだから!本は買わないけど。」
などと聞いてしまいまいした…という勇気はもちろんなく。
「きっとあれはBluetoothスピーカーだな。ってことは店員さんが自分のスマホから飛ばしてるんだな。」と仮説を立ててレジにいる店員さんのスマホをなんとか盗み見できないか考えたけど、それは無理そうなので、どうしたらこの曲のタイトルを調べられるか考えて頭に残った歌詞をスマホに速攻でメモすることにしました。
幸いなことに若い女の店員さんはその曲がお気に入りのようで何回もリピート再生してくれています。いい店員さんだ。
僕は耳をいつもより3倍くらい大きくしてその曲に集中したんだけど、なかなか歌詞を聞き取れません。店員さんもう少し音量上げて!頼むから。
少しだけ聞き取れた歌詞の断片は、「汽車」「走る」「準備はいいか」「体よ」たったこれだけ。それもたぶん違ってる可能性大。
ここまで僕が得た情報は、
①疾走感があって突き抜けるような気持ちのいいメロディ。
②女性ボーカルのロックバンドだろう!…のような気がする。
③歌詞に「汽車」「準備はいいか」「体よ」が入ってるだろう!…ような気がする。
④わりと最近の曲だよね!…のような気がする。
って気がするばっかりじゃん!こんなんで調べられるのか?
でも知りたい。どーしても知りたいの。お願いします。
…なんて神様にお願いしても神様はそんなに暇じゃないので教えてくれません。
しょーがないので帰宅してからSpotifyを開いて女性ボーカルのバンドを片っ端から聞いていったんだけど、普段あまり日本のバンドは聞いてないのでなかなかそれらしき曲に辿り着きません。うー、いったいあの曲は誰が歌ってるんだーー。
20曲くらい聞いたでしょうか。
ある1つの曲に行き当たりました。
「ん?この疾走感とボーカルの感じ。もしかしてこれか?!これなのか?!」
そうしてやっと巡り会えた曲がこれ。
羊文学の「光るとき」という曲でした。
羊文学って名前は聞いたことあったけどこれか!
でも間違いなくこれだわ。
・「汽車」なんて歌詞はどこにもない(笑)たぶん「荒野を駆ける この両足で」って所がそんなイメージを持ったのだろう。
・「準備はいいか」は「準備はいいかい」だからだいたい当たってた。
・問題は「体よ」だ。たぶん「君がそれを諦めないからだよ」の所を脳内で勝手に一部抜粋したんだろう。
とにかく曲名がわかってスッキリした。
改めて聴くといい曲だよね~。
この曲を知ってから羊文学の曲を色々聴いています。
ギター・ボーカルとベースとドラムのシンプルな三人編成が渋い!
何と言ってもギター・ボーカルの塩塚モエカさんの、時にか弱く時に力強い歌声にやられました。

また一つライブに行きたいアーティストが増えたな。
ところでチケット取れるんだろうか…。