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標準配列禁止のタイピングコンテストに参加した話

# この記事はタイパーAdvent Calendar 2024の23日の記事です。
22日はyonezuosiさんの「タイプウェル憲法トライアスロンに挑戦してみた」、24日はれんこんさんの「高校3年間の毎パソを振り返る」が公開されています


はじめに

こんにちは。TK Lab. ラボ長のTK ( @TK_Lab_ ) です

今回は、先日開催された、標準配列禁止のタイピングコンテスト
「Alternative Typing Contest 2024」(以下、ATCと略す )
に参加した話をしたいと思います。

標準配列禁止のタイピングコンテストって?

その名の通り、標準配列禁止のタイピングコンテストです。
興味のある方はこちらの動画をご覧ください

標準配列とは

わたしも「標準配列」という言葉を今回初めて聞いたのですが、
どうやら自作配列界隈や自作キーボード界隈において使われている言葉らしく、ATCにおいては以下のものを指す言葉として使われていました
・QWERTY配列(ローマ字入力)
・JISかな配列(かな入力)
・OSに最初から搭載されているフリック配列(フリック入力)

それ以外に何があるの?

Dvorak配列や親指シフトなどの歴史あるものから
有志による「自作配列」まで様々です。
今回私が使用した配列も自作配列となります。
興味がある方は「自作配列」や「新配列」でググると幸せになれると思います

自作配列「どぼ楽」

私が作りました
「どぼらく」と読みます
お察しの通り、Dvorak配列リスペクトです

レイアウト

「どぼ楽」のレイアウトはこんな感じです 

どぼ楽

母音を左手に中段、子音はすべて右手に移しました
その際にQWERTYの位置はなるべく引き継いでいます

開発の経緯

ATCの存在を知り、興味を惹かれ、大昔Dvorak使いだったことを思い出し、
ATC参加のために Dvorak配列でローマ字入力練習を始めました

Dvorak配列というのは、こんな感じの配列です

Dvorak配列

Dvorak博士が考案した、英語を打つ際の打鍵効率を重視した配列で、 
母音が左手中段に集まっており、日本語を打つ場合、交互打鍵になりやすいのが特徴ですね 

さて、大昔Dvorak使いだった、とは言ってもさすがに8年ぶりとかなので、
何も覚えてはいなかったのですが、2~3時間ぐらいでタッチタイピングはできるようになりました(とはいっても1打/秒くらいですが)
覚えるキーが少ないから習得が楽なのがローマ字入力のいいところですね!
で、そこから2日ほど練習をしたところ、いくつか気になる点が

1.P, K が母音側
  Dvorakに求めたのは「母音と子音が分かれている」
  なのですが、この2キーのせいで片手落ち感がある
  PとL、CとKを交換したい・・・

2.Y, H, B がQWERTYと1個ずれ
  全く違う場所に置かれているならまだしも、下手に1個ずれだと、
  キーの配置を意識したときにどっちがどっちだっけと非常に混乱する
  YとF、HとD、BとXを交換したい・・・

3.N が慣れた位置にない
  日本語入力で非常によく打つ N の位置変更は、
  ある程度速く打とうとしたときに手癖が出てしまいめちゃくちゃミスる
  N は QWERTYと同じ位置に置きたい・・・

などなど

で、ローマ字入力の習得の楽さを体感したばかりだったこともあり、
ここからさらに別の配列を覚えなおすのも無茶じゃないなと思い、
QWERTYが染みついている私が、楽に覚えて移行できるような新配列を
作ってみるか、ということでこの配列を作りました    

解説

QWERTYを引き継いでいるキーは覚えなおす必要がないので、
ローマ字入力に使うキーで覚える必要のあるキーは

・母音の O, E, U, I
・子音(清音)の F, T, R, S, Q, L, W
・子音(濁音)の B, V, D, G, J, Z

母音の4キーはは左手ホームポジションに集約させているので、
覚えきれていなくても4択なので、落ち着いて考えればよい
 # E は QWERTY の1個ずれなので手癖を抜く苦労は発生する

子音(清音)の T, R, S は、使用頻度が高いキーが中段に集まっており、
覚えきれていなくても3択なので、落ち着いて考えればよい

子音(清音)の F, W, Q, L は、
Q, L はほとんど使わないし、特徴的な位置にあるのでむしろ覚えやすいはず
W, F の2キーだけは頑張って覚えるしかないですが

子音(濁音)は、清音のほうを覚えてしまえば、
D, G, Z はそれぞれ T, K, S と上下関係、
B は H とは離れているが P の横隣り
V, J はそれぞれ B, Z と横隣り
覚えきれていなくても、清音から考えればわかる
 # J はもともと右手の打ちやすい場所にあったキーを移動させているので、手癖を抜く苦労は発生する

ということで、頑張って覚える必要がある W, Fの2キー、
手癖を抜く必要がある E, J の2キー、計4キーだけ頑張れば、
タッチタイピングができるという算段

なお、ここでいう「タッチタイピングができる」とは、
事項で述べる「タッチタイピングの習得過程」でいうところの
「2.配列を頭で思い出しながら打つ」ができるようになる、
ぐらいのレベルを指します。(1打/秒ぐらいのイメージです)

実装

実装はVC++でフルスクラッチしました
GitHubに公開してますので、
興味のある方はご参考ください

タッチタイピングの習得

さて、QWERTYにおいて 20年以上前に通過し、もはやよくおぼえていない
「タッチタイピングを習得する過程」を再体験することに成功したので、
あらためて一度整理してみたいと思います

1.配列を頭に入れる

まずはここからですね。

左手の母音は、
お・も・て・な・し(古いか?)
的なノリで
あ・お・え・う・い
と頭の中で10回ぐらい唱えたら、大体頭は入るんじゃないでしょうか
唱えながら対応する指を、エアタイピングでいいのでピクピクさせるとより良いと思います
10回でダメなら100回唱えましょう(脳筋)

右手も同様に
は・た・か・ら・さ
と頭の中で(ry

最初はガチガチに覚える必要はなく、
「えーと、母音の並びは『あ・お・え・う・い』だから、・・・
 『う』は人差し指!」
とか
「濁音は清音の上下に置いたから・・・DはTの上!
 『は・た・か・ら・さ』だから・・・Tは人差し指、その上段だ! 」
といった具合で、ゆっくり思い出したり、考えたりすればひととおりわかる、ぐらいで十分かなと思います

2.配列を頭で思い出しながら打つ

例題「モデル」

「M・・・ QWERTYと変えてないから下段人差し指 」
「O・・・ 母音なので左・・・『あ・お・え・う・い』だから薬指 」
→MOを打鍵
  
「D・・・  濁音は清音の上下に置いたからTの上・・・T? 『は・た・か・ら・さ』だから・・・人差し指・・・の、上段だ 」
「E・・・ 母音なので左・・・『あ・お・え・う・い』だから中指 」
→DEを打鍵

「R・・・ R? 多分中段のはず・・・『は・た・か・ら・さ』だから・・・薬指!」
「U・・・ 母音なので左・・・『あ・お・え・う・い』だから人差し指 」
→RUを打鍵
みたいな感じですね。

コツとしては、ひらがな一文字分は、思い出し切った後に、まとめて打つようにすると、覚えが速いと思います。
「から」「こと」のように母音が同じ2文字や、「かこ」「たて」のように子音が同じ2文字などは、2文字まとめて打つなどするとなおよいです。
余裕があれば、3文字単位でまとめても良いですね。

3.配列を頭に定着させる

一通り思い出せるようになったら、
次はそれをいかにスムーズに思い出せるようにする必要があります
要するに、反復練習を頑張りましょう、というだけではあるのですが、

それではここで問題です

Q. 人間の記憶は、いつ、定着するでしょう?
A. 忘れたものを「思い出したとき」です

記憶を定着させるには、一度覚えたものを、いったん忘れかけて、それから思い出す必要があります
1度見聞きしただけのものは、すぐに忘れてしまいますね
何度も何度も「思い出す」ことで、少しずつ、よりスムーズに「思い出せる」ようになり、やがて「定着している」へと昇華されます

なので、練習初期は、覚えたつもりでもすぐ忘れてしまう、ということが頻発すると思いますが、その「忘れてしまう」は「定着させる」ための重要なステップなので、ガンガン忘れて、ガンガン思い出しましょう

4.指の動きを思い出す

さて、練習をしていると、
「さっき打ったばかりのキー」を打つ機会があります
そして「さっき打ったばかりのキー」は、「配列」を思い出さなくても
「さっきの指の動き」を思い出して、もう一度行えば打てます
そうして、思い出す対象を「配列」から「指の動き」に変えていきます

なお、「さっき」は結構短いです。体感3秒くらいでしょうか。
配列が頭に定着しておらず、スムーズに思い出せないキーが多いと、
思い出している間に「さっき」が過ぎ去ってしまい、
「さっき打ったばかりのキーを打つ」機会になかなか出会えませんので、
配列が頭に定着していないうちは、無理をせず、ゆっくり考えて思い出し、忘れかけて、思い出し、忘れかけて思い出し、配列を頭に定着させるところから地道にやっていきましょう

5.指の動きを定着させる

それではここで復習です

Q. 人間の記憶は、いつ、定着するでしょう?
A. 忘れたものを「思い出したとき」です

これは知識的な記憶だけでなく、タイピングのような動作記憶においても同様です。
繰り返しになりますが、ガンガン打って、ガンガン忘れて、ガンガン思い出しましょう

練習に使用したサイト

マイタイピング

最初は、ひよこのタイピング練習 練習2~練習17をひたすらやりました
五十音を各行ごとに、短い単語で練習できるのでオススメです
下記のATCテスターで90文字ぐらいを出せるようになるまでは、
こちらを集中的にやるのがいいと思います

ATCテスター

今回参加したコンテストの本番環境ですね
マイタイピングでは身につかない、英数、記号、漢字変換、改行などが必要になるので、ある程度打てるようになったら、ひたすらこちらで実戦練習しました

e-typing

皆さんご存じ、e-typing
これは、「どぼ楽」の練習というよりは、主に「QWERTY維持」のために使用しました
今回、練習中に「QWERTYが打てなくならないようにする」という隠れ目標を定めていたので、具体的には、「どぼ楽」の練習を

1.練習開始時、QWERTYで e-typing をいつも通り打てることを確認する
2.QWERTYに問題が無ければ「どぼ楽」を練習する
3.練習終了時、QWERTYで e-typing をいつも通り打てることを確認する
4.1、3 でQWERTYに問題が生じていると思ったらQWERTYの練習をする

といった形で行いました
職場のPCはQWERTYなので、 QWERTYが打てなくなると死活問題ですからね  

練習の記録

練習1日目

「1. 配列を頭に入れる」のフェーズは、そもそも自分で考えた並びなので、考える過程でだいぶ頭に入っていたこともあり、30分とかからず、なにも見ずに打てるようにはなりました
そこから1~2時間ぐらい練習して、初日のうちに、2打/秒ぐらいは到達

QWERTYキープ練習
この日は特に混乱はなかったし、LaseBeamは上出来もいいことろ

練習2日目

この日以降はATCテスターを練習に使い始めました
「2.配列を頭で思い出しながら打つ」のフェーズですね
1日目のe-typingより遅めなのは、ワード慣れしてないからですね

QWERTYキープ練習
この日は混乱を感じたので、どぼ楽はそこまで打ち込まずにQWERTYを打って、さっさと寝た


練習3日目

2.7打/秒(1文字/秒)
>>一定以上速く~
とか言っているのは
「2.配列を頭で思い出しながら打つ」から
「3.配列を頭に定着させる」に移行しているぐらいのフェーズなのに、
「4.指の動きを思い出す」を無理やりやろうとしているんでしょうね
反省、反省

QWERTYキープ練習
何を言っているのかよくわからない
つまり混乱していたんでしょうね

練習5日目

3.4打/秒(1.5文字/秒)
「3.配列を頭に定着させる」がおわって
「4.指の動きを思い出す」のフェーズ
このあたりから、
「もう十分、実用に耐えうる速度 だな~」と思い始めた記憶
ワープロ検定1級の基準(70文字/分)も超えているし、
1日1時間程度の練習でここまでやれれば上出来でしょう

QWERTYキープ練習の記録がツイートされていないので、多分特に混乱しなかったとおもわれる

練習7日目

練習開始から1週間の集大成
フェーズとしては「4.指の動きを思い出す」を頑張っているあたり
100文字/秒の大台に乗ったし、もう提出してもいいかもな~なんて思っていたはず

練習10日目

QWERTYキープ日
この日は練習開始時ののQWERTYに問題を感じたので、
「どぼ楽」は打たずにQWERTYの維持に努めました
気分転換もかねて寿司打を打ってますね

練習14日目

4.7打/秒 122文字/秒 
練習開始から2週間
「4.指の動きを思い出す」のフェーズへの移行このあたりで完了
あとはひたすら「5.指の動きを定着させる」ために「忘れる→思い出す」のループをぶん回すだけ
ちなみに、このあたりからQWERTYの混乱はほとんど感じなくなりました

練習22日目

5.5打/秒 155文字/秒
練習開始から約3週間
会心のリザルトといっていいでしょう
コンテストにはこのリザルトで提出しました

提出したリザルト

提出した動画はこちら

本編はこちら
33:32~あたりからが私です

結果は、なんと審査員特別賞をいただきました!
「『1か月でこれぐらいできる』ということを示した」というところを評価していただいたようです
参加した甲斐がありましたね^^

おまけ①

提出後、一か月以上「どぼ楽」を一切打たずにQWERTYで過ごしたら、
覚えたはずの「どぼ楽」はいったいどうなってしまうのか?
その答えは・・・ 

おまけ②

おまけ①の二日後、QWERTYでe-typing腕試しの自己ベストを更新
完全にQWERTYと「どぼ楽」の両立を果たしていると言っていいでしょう
混乱も一切ありません
最高の結果です

終わりに

はい、というわけで、標準配列禁止のタイピングコンテストに参加した話でした
タイパーアドカレ、ということで、この記事をご覧いただいた方の多くは競技タイピング勢なのかなと思います
「競技」という性質上、RTCなどの大会のレギュレーションなどもあり、
QWERTYローマ字とJISかな入力以外には手を出しにくいと思いますが、
「タイピング」という遊びには、こんな世界もあるんだよ!
1か月弱で、首を突っ込んで、楽しんで、ちゃんと戻ってこれるよ!
ということを知ってほしいなと思い、この記事を書かせていただきました  

ここまでお読みくださった皆さんの、素敵なタイピングライフの一助になれれば幸いです

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