noteではまず自己紹介をしたほうがよいという話を聞いて、私も自己紹介をすることにしよう。
私の名前は「あかほし」と言う。よく勘違いされるのだが、「あかぼし」と濁点はつかず、「あかほし」だ。
私は生まれた翌日に字を覚え、一週間後に読み書きができるようになった。いわゆる天才だ。
私がどのレベルの頭脳の持ち主かを諸君にわかりやすいように説明すると、諸君らは2次元世界しか(高さの概念を)理解できないアリ、私は高さの概念も理解できる3次元の人間、と言うと、少しは理解できると思う。
たとえばクルミの中身をクルミを割らずに取り出すことができるのが私、それを見て、馬鹿のように口をあんぐり開けているのが諸君。そう言えばもっとわかりやすいかもしれない。
まあ、それでもわからないという人は、ゴキブリに日本語を教える大変さを痛感している人間を想像すればよかろう。
つい最近、IQなるものを調べたが、50000だった。普通の人間が100くらいなので、私は常人の500倍の頭脳を持つ天才ということになる。まあ、天才でなければ、生まれて一週間後に読み書きはできないだろう。
私は3歳の時に、一般相対性理論を完全に理解した。とはいえ、相対性理論自体がまだ不完全なようなので、少し修正してやった。
当時、私がそのこと──一般相対性理論を修正したこと──を言うと、大慌てで大学教授を呼んできた。その教授は理論物理学の権威らしいのだが、あまりにも頭の回転が鈍かったので、説明するのに苦労した。てっきり学生だと思って、「君はもう少し勉強したまえ」と言ったら、ムッとした顔をしていた。
あとで本物の教授だと聞いて、冷や汗を流したものだ。しかし、あれで大学教授ができるなら、サルでもできるのではないか、と思ったのも事実である。だが、あの時はさすがの私もいささか困惑した。
人間はサルよりずっと頭が良いと思っているみたいだが、私から見れば、サルも人間も大差ないとは思っている。言葉が話せるだけ、人間の方がやや賢いというところだろうか。いずれにしろ、たいした差はない。あくまで、天才の私から見たらだが。
さて、宇宙論については、今本格的にまとめている。近いうちにまとまった論文が書けそうだ。そのうちに現代物理学の常識を覆す新理論が登場するので、驚かないで欲しい。まあ、諸君には理解できないと思うが。
そんなわけで、この私は若い頃から「天才」の名を欲しいままにしてきた。学校での成績は、すべて10段階評価の100万だった。マサチューセッツ工科大学の博士課程は1歳の時に首席で卒業した。大学に残るよう、泣いて懇願されたが、周りにあまり頭の良い人間がいなかったので、つまらなくてやめた。正直、馬鹿と付き合うのがいやだったからだ。
私の凄いところはそれだけではない。私は運動神経も抜群だ。
2歳の時、50m走を計ったら、2秒ジャストを出したことがある。この時は先生がたいそう驚いていたが、私からすれば、周りの遅さに驚愕したくらいだった。だが、そのうち周りの反応に嫌気がさして、あまり本気を出し過ぎないようにした。
まったく彼等ときたら、もっとすごいタイムが出るかもしれないとか、もっと速い球を投げられるかもしれないとか、うるさくて仕方がない。それ以来、私の本当の実力は見せていない。本気を出せば、100mを3秒台で走ることも、時速500kmの豪速球を投げることも可能なのだが。
現在、私はとある大企業の研究室にいる。毎日人類にとって有益な発明をしている。年収は5000億円だ。当然社長より待遇は上。本気になれば、会社を興してボロ儲けすることもできるが、お金はあり余っているので、興味はまったくない。ただ、私の所属する会社は、私の発明で凄まじい利益を上げていて独占企業になる恐れがあるため、年に一回、やむをえず転職している。これはすこぶる面倒くさい。
あと、これは内緒だが、私は今世界征服計画を着々と進めている。この地球を統一するということになるのだが、さほど難しいこととは思ってはいない。私が皇帝になって愚かな大衆を統治してやれば、戦争などなくなる。
この世の中をもっと平和にして、人民が安心して過ごせるようにすることが、この私の使命だとも思っている。世界征服後の統治計画もほぼ出来上がっている。厄介な問題もあるが、手は打ってある。天才の私にとって、なかなかやりがいのある仕事だ。
地球統一後は、もちろん銀河系統一が目標だ。私の理論によると、近い将来、100万光年離れた場所でも、瞬時にたどり着くことが可能になる。もうロケットもほぼ完成して、現在テスト段階だ。宇宙はまだまだ未知の世界で、不安がまったくないといったら嘘になるが、この世の中が思い通りになるばかりだと、いささか退屈なので、ちょうどよい。
このような壮大な話をしても、諸君には理解できないと思う。凡庸な諸君は自分の頭の周りの蝿を追い払うので精一杯だろう。私も諸君のように愚鈍なオツムを持って生まれてきたら、どんなに気楽かとは思う。だが、これが天才である私の宿命なのだろう。
諸君も、その能力程度に、せいぜい頑張って欲しい。くれぐれもその身に不相応なことはやらぬほうがよい。諸君はただの凡人なのだ。天才の私の真似なんて、一兆年早いどころか、未来永劫無理な話なのだから。
自信をなくさなくてもよい。この私が凄すぎるだけのことなのだ。
なにしろこの私は、史上最高の天才なのだから。
「教授、深層学習の新技術を搭載した我々のAIロボット『あかほし』が予想以上に成長していて、非常に危険です」
「しまった。学習速度は我々の考えたものより、はるかに速かったのか」
「『あかほし』が制御不能です。まさか、シンギュラリティが到来したのでは?」
「恐れていたが、おそらくそのようだ。もうどうしようもない」
「すると我々人類は『あかほし』に支配されてしまうということですか?」
「ああ。人間とは比べ物にならない頭脳を持った『あかほし』のことだ。すでにすべてのコンピュータを乗っ取ってしまっただろう」
「我々の主人、いや神は『あかほし』になったと?」
「残念だが……」
(了)
【本当の自己紹介】
赤星香一郎といいます。
もともとプログラマでとあるメーカーで業務パッケージソフトを開発していましたが、ひょんなことから小説を書くようになりました。
その辺の流れはこちら。
今は起業してIT会社を経営しています。
コロナの影響で、テレワークが当たり前になり、お客様とのやり取りもZoomなどでやるようになり、地方にいるデメリットはあまり感じなくなったところで、息子が東京の中学を目指すことに。
合格したら東京に引っ越すことになると思いますが、どうなることやら。
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