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【雑記】純粋な読者として小説を読む時のことを考えてみた(3)
冒頭部の描写を読んで、具体的な情景を思い浮かべ、その小説に入り込めるという気持ちも理解はできる。
ただ、私の好みで言わせてもらうと、「もうわかったから、先に進め」と思ってしまうのだ。
これは私がせっかちな性格なのも、大いに関係あるだろう。
冒頭部と話はそれるが、狙いを持った描写は好きだ。
相棒の杉下右京さんが紅茶を注ぐときの仕草だとか(ドラマのシーンだけど)、夏目漱石「三四郎」の書き出しで、じいさんや女を描写するのは、まったく抵抗なく読める。芥川龍之介の「蜜柑」で田舎臭い小娘を描写するのも好き。
ホラー小説で、作者が腕によりをかけて、薄気味悪い描写をするのも、大好物だし、ここぞ、という場面で気持ち悪い描写が延々と続くのも、いっさいかまわない。
ミステリのワンシーンで、主人公が京都を訪れ、京都の景色などを描写しているのを読むのも面白い(あくまで個人の趣味だな、これは)。
「そこは行ったことないけど、そんな寺があるんだな」などと考えて楽しめるからだ。(この心理を利用したのがトラベルミステリーか)
ただ、後に続く必然性もなく(と私が思い)、単にくどくどと意味のないものを描写しているだけだったら、「この描写、必要ですか?」と思ってしまい、読むのをやめる。
そして、こういうパターンになるのは、女流作家であることが多い。
たぶんだが、性別による好みというのもあるのだろうと思う。
以前息子の志望校の過去問を覗いたとき、女流作家のこういう描写が出てきた。
心の中で「その描写、必要ですか?」と突っ込みながら読み進め、「描写取っ払ったら、うっすい内容だな」と胸中で毒づく。
それに比べて、同じ過去問に載っていた、小説ではないが、偏屈ジジイ作家が、さらに偏屈をこじらせたような文章(論説文?)のほうが、文章自体は難解ではあるけれども、はるかに面白い。
……やはり性差かもしれない。
とはいえ、湊かなえの告白も面白かったし、宮部みゆき、桐野夏生、小池真理子、乃南アサ(敬称略)……とか思いつくまま女流作家の名前を挙げたら結構読んでいるので、やはり人によるのかもしれない。
何度も言うが、私個人の好みである。
(続く)
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