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【雑記】小説新人賞について(3)

自分の経験で言うと、最終選考に残って落選したときも辛いが、なんの音沙汰もなく落選したときは、もっと辛い。
最低でも三カ月間全精力を傾けて書いた小説に、なんの知らせもなく、ただ落選したという現実だけが、いきなりドンと突きつけられるのだ。
いや、ドンではない。応募したことさえ確認できないわけなので、知らないうちに、なかったことにされているというのが正確な表現だろう。
応募した事実さえなかったような、ただひたすらに「無」の世界……。

せめて一次選考に通過していれば、「一応小説として評価されたんだ」と思うことができるのだが、一次にも通過しない場合には能力を全否定されたような気分になる。
しかも「なにが悪いのか」はだれも教えてくれない。自分で考えて、「この部分が悪かったんじゃないのか」とか「人物がうまく描けていなかったのではないか」とか「そもそも面白くないのではないか(作品全否定だが)」とか分析して、「次はこうしてみよう」など試行錯誤するしかない。

そして萎えた気力を再び奮い立たせて、3カ月から半年間かけてひたすらに書き続ける。
はっきり言って、書くことが好きでなければ、とうてい無理な作業である。
「それくらいの覚悟で作家を目指しなさい」ということなのだろうが、やはり、辛い。辛すぎるのだ。
この先行き止まりになっているかもしれない道を黙々と歩いているような、蟷螂の鎌で巨大な敵に向かっていくような、決して芽が出ない種を植えて水をやっているような、どうしようもない徒労感、無力感、絶望感に苛まれるのだ。

応募料5万円を払ってもいいから、落選したときには、悪いところを指摘してもらえないだろうか。そう考えたこともあった。
だが、なにかの本で読んだが、「人に講評されなければわからないようならば、そもそも作家(小説家)に向いていない」そうだ。

(続く)



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