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【雑記】純粋な読者として小説を読む時のことを考えてみた(9)

読むのを途中で断念する。
これは冒頭部で引きつけたのにもったいない、という考えと、クソつまらない内容でも冒頭部さえクリアすれば途中までは読んでもらえる、という考えの二つあるが、後者のほうを考える。

たとえばトラベルミステリ。
大体冒頭部で、京都や金沢などの古都の描写が出てくる。いいなあと思って読み進めるが、事件も陳腐、内容も陳腐で断念するパターンは多い。
正直、明治~昭和の文豪の長編小説を読んでも、内容に変化がなく、飽きることがよくある。若い頃だったら、もう少し我慢して読むかなって程度。

さて、面白くないパターンを先述したが、その中で一番致命的なものは、なにか?

私は、「登場人物に魅力がない」ことではないかと思っている。
登場人物に魅力がなければ、セリフもつまらないし(セリフがつまらないから魅力がないともいえるが)、ストーリーも作者の意図によって動かされているように感じる。登場人物が勝手に動くことなんて、いっさいない。

逆に魅力があれば、相当に牽引力がある。
例えば、テレビドラマの「相棒」や「古畑任三郎」など。
主人公がとても魅力的なので、トリックや犯人などはあまり気にならない(古畑任三郎はもともと倒叙ミステリなので犯人はわかっているが)。

つまり、登場人物さえ、魅力的であれば、その人物が「なにを言い出すか」、「なにに着眼するか」が楽しくて、次を観るのだ。
もちろん、水谷豊や田村正和のお陰で(俳優の演技力など)、ここまでのキャラクターになったとは思うが、キャラクターが魅力的であれば、絶対的に有利になる。

わかりやすいので、ドラマの例を挙げたが、小説でも、キャラクターが魅力的なものはたくさんある。
銀河英雄伝説のヤン・ウェンリーやラインハルト、キルヒアイス。嫌われ者のオーベルシュタインでさえ魅力的だ。
司馬遼太郎や吉川英治の登場人物(坂の上の雲や三国志など)も魅力的だ。
「八つ墓村」、「犬神家の一族」などの金田一耕助、「点と線」の鳥飼重太郎、「容疑者Xの献身」の湯川学や石神哲哉などなど――。
古くは「坊っちゃん」なども魅力的な主人公だと思う(私の場合、正義漢と言うより、騙されやすく不平が多い、ならず者的な意味での魅力だが)。

登場人物さえ魅力的なら、登場人物が勝手に動いてくれるので、今後のストーリーの展開も多彩になるのだ。

※ブーメランと言った通り、自分の小説についての戒めでもある。

(続く)


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中学受験 将棋 ミステリー 小説 赤星香一郎
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