萌芽

快楽とは逃走であり、安楽とは退屈である。

失望は驟雨であり、だが冀望はそれよりも短く。

現実はなによりも残酷であるが、それは戯言に過ぎない。

霧がかった脳では、知覚を誤る。

何度も、何度も。

螺旋階段を、ずっと降りている。

底は怖い。

でももう、上る気力もない。

明日になったら、いや、もう明日だった。

今年が終わる。

鬼が嘲笑している。

来年はいい年になるなんて、口が裂けても言えない。

なぜならそれは、去年口にしてるから。

私が無駄にしてきた月日に、私は顔向けできない。

あるいはあの時、螺旋階段から飛び降りればよかったなんて。

過去の悔恨を、誰が笑えるだろう?

いっそ笑い飛ばしてくれ。

笑う門には福来る。

馬鹿野郎。

どの面下げて笑えると言うのか。

なぜこうも暗く、私の心は。

過去は重いが人生は軽薄だ。

2つの線は、反比例して2度と交わらない。

放擲したいのだ、人生が含有するあらゆる事象を。

だが浮かばれない、このままでは散っていった日々が。

臆面もなく、私は言う。

言わせてくれ。

来年はいい年になる。

私の人生は、萌芽の時を迎えようとしている。

その芽が前途洋々たる希望の、美しい芽でありますように。

そしていつか芽吹いて、私の顔に笑顔が戻りますように。

そしていつかこの文章を、笑い飛ばせますように…


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