ジョブ理論にみる今の「商品/サービスの立ち位置」とは
最近Xでマーケティングに関する面白いポストがありました。
・人間には「コントロール欲」というものが存在する
・顧客が物やサービスを購入するときに「自分で選んだ感覚」を作ると幸福度や満足度が高くなる
といった内容で、顧客に選択権がある(また、そう感じさせるマーケティング)が成否に関わる点に共感しました。
これは「ジョブ理論」にも通じる所があるなと感じています。
ジョブ理論について
ハーバードビジネススクール教授を務めたクレイトン・M・クリステンセンの著作。原著は「Competing Against Luck: The Story of Innovation and Customer Choice」(運との競争: イノベーションと顧客の選択の物語)となっており、作中で出てくる「Job-to-be-done(片づけるべきジョブ)」から、日本ではジョブ理論として知られています。
ジョブ理論とは
ジョブ:顧客が抱える片付けるべき用事や問題
商品やサービス:解決のために "選ばれる" 存在
と顧客と商品/サービスを位置付け、
企業が顧客データを大量にもつ現代でも、アイデアが成功するための理論体系的が無いのでは?という問いから「人はなぜその商品/サービスを購入するのか」を説明しています。
購入因果 - 私とマッサージガン -
例えば最近、私は「寝起きに背中が痛いことがあり、睡眠の質が悪くなっている」という課題からマッサージガンを購入しました。
下記が購入〜利用のフロー。
改めてみると超絶簡単にコンバージョンした消費者です。
この例でいうと私は「体の不調に対して整体や寝具ではなく、マッサージガンを選んだ」という流れがありました。
1万円ぐらいだったのと、できるだけ早く「自分の習慣に何かを取り入れることでよくしたい」(≒自己コントロール)という気持ちにマッチした結果、マッサージガンを選びました。
結局、数日後には使っていないという状態なのですが😂
それは私のジョブ(背中が痛い)が軽度だったのでたまに感じるぐらいなのと、マッサージガン使用初期に "健康レベルが上がる感覚" がそこまで生まれなかった背景がありました。
商品/サービスはHire(雇用)される
こうした選択を、ジョブ理論ではHire(雇用する)という表現を用いて
買う瞬間・消費する度に、顧客の中であらゆる選択肢(それには何もしないという選択もある!)から、どの商品やサービスを利用するかの選択が行われると説明しています。
↑は商品購買〜利用終了までの接点を示したもの。
・商品Aをメインで使っているが、ある場面では商品Bを使っている
・ある問題があり商品Aを購入したが、結局使用をやめてしまった
という体験は、誰もがさまざまな形であるかと思います。
このHire(雇用)という視点は、顧客の消費行動を考えたときにスッと入ってきました。
選ばれる商品/サービスになろう
これを考えるとサービス提供者である我々は
・自社プロダクト/サービスの良さをプッシュしまくるのではなく、顧客のベネフィットに資する(より強い表現でいうと"奉仕する")存在として認識してもらう
・利用中(また利用をやめた)ユーザーにとって、問題を解決できる存在となっているか
と考えるのが、無数に選択肢がある現代のマーケティングで重要になっていると感じます。
「ジョブ理論」は数値や相関を見るだけでは発見しにくい、行動の因果を考えるもので、当然ながらすべてに効く万能薬ではありません。
(n1のデプスインタビューから、その人の置かれたコンテキストやインサイトを掘る作業に近いかもしれません)
ただ、顧客指向のマーケティングを行う上で読んでよかったなと素直に思える本なので、興味がある方はおすすめの一冊です。
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