【一幅のペナント物語#14】キッチュを超えた世界と縁を結んでくれるのだ
◉「出雲大社」でこういう配色を商品化するって、どのくらいの勇気がいるのだろう?と余計な心配をしてしまうくらい、ペナントの世界にはこちらの既成概念を覆すパワーがある。コレジャナイ感というか、幼児が自由に塗ったぬり絵というか。この一幅も、出雲大社の文字と剣花菱の神紋が無ければ「あれ?これどこの神社だっけ?」となりかねない怖さがある。たぶんこれにも色違いバージョンがあって、黒地に白い主線で金文字&金神紋・・・みたいなのが売れ筋で、こいつはきっと不人気バリエだったに違いない、気付くとそう願って止まない自分がここにいたりする。
◉お寺と並んで、やっぱり神社もペナントモチーフの代表格。その中からやはり地元を代表して「出雲大社」に登場してもらおうと思ったわけだが、よりによってこれしか見当たらなかった。繰り返しになってしまうけど、よくぞこの配色で売り物にしようと思ったなと。僕が上司なら、絶対にGOサイン出さないんだけど、そこはやはり何かペナント界独自のジャッジ基準があるのだろうか。金色に赤ラメとグリッター度高めのゴージャス仕様なのに、なんかあまり飾りたくないというか・・・。初代オーナーさんはどんな気持ちでこれを買ったのか聞いてみたい。
◉なんだかDisってばかりのような気がするが、何度も言うように、このハレーションを起こす世界こそがペナントが持つ魅力というか、魔力だ。あの神聖なる注連縄が、赤くラメラメされるのが許されてしまうのである。三種の神器を表すという剣花菱の神紋を、赤ラメラメしちゃってもいいのである。それはキッチュを超越した、どこかウォーホルにも似た説得力をもって、僕らに迫ってくるのだ。惜しむらくは、もっと早くに、多くの人がこの魅力に気付いていれば、観光ペナント文化はここまで衰退せずに済んだのかもしれないということだ。とはいえ完全消滅の前に、こうやって僕がペナントという昭和絶滅文化に出逢えたのは、日頃から敬ってきた出雲大社の縁結び力のおかげやもしれぬ、と思うと、この毒々しいペナントにすら深く頭を下げたくなるのであった。