誰が名付けたか、もう一隻の韓国生まれの「ムサシ」発見
前回、80年代に密かに宇宙に旅立っていた『宇宙戦艦ムサシ』の存在について紹介しましたが、実はその1年前にもう一隻の「ムサシ」が就役していた事実を入手したのでお知らせします。
◉韓国で生まれ、なぜか日本で「ムサシ」となる
最初にこの韓国製映画のことを知ったのは2019年(6月)のtoggtterのアーカイブでした。「韓国アニメ『宇宙戦艦ムサシ』がステキ」というテキストに検索がヒットしたのです。
「韓国アニメ? なぜに韓国?」と思ったので同記事の情報を頼りに追跡調査。確かに韓国で製作されたアニメでしたが、もともとは『날아라! 우주전함 거북선(飛べ!宇宙戦艦亀甲船)』という映画であって、ムサシのムの字もありません。実際のあちらの映画ポスターがこんな感じ。
映画自体、1979年に製作されたということで若桜木さんの『宇宙戦艦ムサシ』の出版前の年になるので、直接的な関係はないのは明白ですが、これがどこかのタイミングで日本語吹き替え版になり、その際に邦題が『飛べ!宇宙戦艦ムサシ』にされたようです。大手の配給会社ではなく、三共教育映画社という教育映画を専門に扱っていたプロダクションの名前が、日本版の宣伝用ポスターの中に見えるので劇場公開というよりは、学校や地区のイベントなどで上映された類いのものだと思われます。『ムサシ』の名前もそこで採用されたのでしょうか。ちょうど『宇宙戦艦ヤマト』が盛り上がりを見せていた時代ですから、僕や若桜木さんのように「"ポスト・ヤマト"はやっぱりムサシでしょう!」と思ったのかもしれませんね。
◉韓国のオリジナル映画を視聴してみた
YouTubeで検索すると、さすがに日本語吹き替え版は見当たりませんが、韓国オリジナルを全編アップロードしている韓国の方がおられました。もちろんセリフは全然わからないのですが、まあこのテの話はだいたい理解可能なので観てみることに。
『飛べ!宇宙戦艦 亀甲船』のあらすじはこんな感じ。
実際に見ると、要所要所で日本アニメの影響を色濃く感じる作品で、韓国のでも、『宇宙戦艦ヤマト』の盗作疑惑が取り沙汰されたようです。滅亡の危機にある地球を救うために有用な汚染除去装置を、他の惑星で受け取りために旅する展開がまったく同じ、というのがその主な理由。この作品の原作者は著書の中で「あまりこの話はしたくない」と前置きをしながら、当時『宇宙戦艦ヤマト』に偶然出会い、実在した戦艦を素材に宇宙船を作ったというプロットに感銘を受け、亀甲船を宇宙船にするというアイデアが生まれたと明らかにしているので、まあ、平たくいえばパクっちゃったということでしょう。
◉どこかで出逢ったようなアイツにコイツ
この作品には「登場人物もどこかで見たことあるキャラばかり」という指摘もありますが、例えば主人公の男の子・フンイは、古代進というよりは『惑星ロボ ダンガードA』の一文字タクマっぽいですし、彼女のヨンヒは新谷かおる先生が描いたような森雪っぽさ。脇役にも『キャプテン・ハーロック』のまゆのような少女や、その父親役の男はまんま徳川彦左衛門。敵役に『銀河鉄道999』に出てくる機械伯爵みたいな顔のやつもいます。衣装デザインもヤマトっぽかったり、ブラックタイガーの紅白版のような戦闘機も。なんなら回想シーンにちらりとヤマトっぽい宇宙船も登場したり(上のポスターの右下にも紹介されていますね)と、まさにやりたい放題な感じです(笑)
またネタとして有名なのか、亀甲船をフルスクラッチしている韓国のモデラーさんもいて、これがなかなか見事な出来栄え!
◉日本語吹き替え版、どこかで観れないものか?
まあ、ともかく、若桜木さんの『宇宙戦艦ムサシ』とは全然別モノだったので僕的には一安心です。三共教育映画社という会社が、まだ今も存在しているのかどうかわからないのですが、日本語吹き替え版も機会があれば見てみたいものです。なぜかというと、この声優さんのラインナップを見てもらえば納得かと。なかなか贅沢な布陣だと思いませんか? というか、どのキャラがどういう役名にされてるのか想像するのが楽しいですね。デビルサターンって『マシンロボ』よりももしかしてこっちが先?
最後になりましたが、今回はあえて「テコンV」には深入りしないようにしました(笑) 語り出すとキリがないので。ちなみに本作にテコンVが登場するくだりについては、当のテコンV製作陣にはまったく知らされていなかったようで、テコンVの監督らもこれを見て「え?」と驚いたそうです。とことん凄いなあ、韓国って。という感想だけ書いておきます。