見出し画像

【一幅のペナント物語#2】雪夜に聴こえる鬼の声

◉漆黒の闇にしんしんと降る牡丹雪を背に立つ二体のナマハゲ。ありがちな赤や青ではない茶と緑の顔色や、ラベンダーパープルの蓬髪など常套をハズした色のチョイスに作者のセンスが滲み出ている。金色に輝く角や牙、身を包む藁装束は、背後の漆黒に浮かび上がって不気味さを強調する。そのくせ、どちらもなんだか愉しげな表情で親しみを感じたりもする。胸元に散る赤い(実際は茶色)飛沫の正体がなんなのか、ちょっと気にはなるけれど・・・。

◉というわけで、ペナントを旅するお話の第2弾は「男鹿半島」である。ペナントの特徴のひとつに、モチーフにしているエリアの多様性があげられる。いわゆるポピュラーな観光地を筆頭に、ピンポイントな観光施設だったり、はては都道府県まるごとといったものまで存在する。今回は半島まるまるが対象となっているケースだ。しかし、男鹿半島をナマハゲ一点集中突破というのはどうなんだ?と思って調べてみるとそれで問題なさそうだ(笑) 

◉そもそも男鹿半島の大部分は男鹿市が占めていて、ナマハゲの伝統はこの地域に集中しているらしい。2012~2015年のある調査では男鹿市内148地区のうち約80地区でナハマゲの行事が存在していることが確認されている。実際のところ、国の重要無形民俗文化財も「男鹿のナマハゲ」の名称で指定されているとのこと。東北のあちこちにある行事だと思っていたけど、わりとエリア限定なのであった。

◉こうした広域くくりのペナントは、やはり広いエリアで販売されていて狭域エリアのペナントよりも売れていたのだろうか? 狭域レイヤーではモチーフとなるものがなくペナントの作りようがなかった、なんて事情があるならともかく、男鹿半島の場合、男鹿温泉郷などの温泉地や、入道崎・入道埼灯台、八望台といった景勝地もあるようだし、どうせならそっちのペナントのほうが欲しいとコレクター的には思ったりもするのだけど。

◉今回のペナントは、ふさふさ金糸の“たてがみ”や、立派な深紅のあて布や“しっぽ”と言われる紐もついていて、谷本研氏の『ペナント・ジャパン』で紹介されている年表に当てはめれば、昭和40年代初期頃の匂いがするのだがどうだろう? メーカーはもちろん、詳しい製造年代が特定しづらいというのもペナントの特徴だ。それがかえって面白いと感じる部分でもある。たまに当時の購入者がマジックで購入年月日を記載しるのを発見すると、逆に嬉しくなる(笑)

◉最後になるが、今回の「男鹿半島」ペナントで一番好きな部分は、文字の上に降り積もる雪の表現だ。日本海の重い湿った雪の冷たさまでも感じられるではないか。

「泣く子はいねがー、親の言うこど聞がね子はいねがー」

いいなと思ったら応援しよう!