1996年。未曽有の経済クラッシュ前夜の西部邁先生の発言集
1998年から2006年にかけて日本は未曽有の金融と経済クラッシュが起こり、戦後最大の企業倒産、就職氷河期の到来、自殺者が年間1万人跳ね上がる事になります。
原因は90年代に信用拡大を抑圧する様々な規制(BIS規制など)をアメリカの外圧で受け入れて、その後ブッシュ政権に言われて、小泉政権で不良債権半減政策を強行したことです。その後日本は30年近くに及ぶ経済停滞に入っていきます。
その当時の西部邁先生の発言を見つけて見ていると、その後の日本のたどる道を予言しているかのような発言が多々あってやはりすごい人だな、と思ったのでnoteにアップしておきたいと思います。(この動画ではほぼ一人アウェーのような状態になっていますねwしかし今考えるとほぼ正しいことを言っていたと私は思います。)
なぜバブルが発生したか
「どうしてバブルが発生したかを考えると、僕の解釈では前川レポートが出た時から始まった。アメリカから内需拡大要求が来た。内需拡大要求に屈して、全経済界マスコミが内需拡大が必要だといった。そうなると当然不動産投機が始まるわけです。バブルの始まりにも終わりにもある種の政治的な要因があった。バブルの終息のことだけを問題にしていいものか。」
貨幣的経済
「いいですか市場経済っていうけどね、市場経済は物々交換じゃないんですよ。貨幣的な金融的な市場経済なんですよ。金融機構が崩壊すると、市場経済全体が速やかに大規模に崩壊するわけですよ。金融という産業のレベルの違いを論じなきゃだめですよ。」
なぜ銀行に資本注入することだけを反対するのか?
「大体日本国民の考え方はおかしい。去年は11兆円の景気対策を行った。これは日本企業のある種の救済であって、こっちはよかったよかったと喜んでいる。金融機関に5千億を注入するのになぜみんな怒っているのか?」
デフレ化(急速な価格破壊)は市場に大きなショックを与える
「バブルが急速にはじけるときに価格破壊(デフレ誘導政策)をやったわけですよ。しかし市場機構で価格破壊をやるとものすごいショックがあちこちに飛び散るわけですよ。一方では不動産問題で価格破壊をやっていて悪いといっている、もう一方では価格破壊をやれと言っている。こういうでたらめがまかり通っている。
バブルの行方は正確に見通せなかったから、過剰投資をしたりして、いろんな産業が苦しんでいる。これはある程度は助けないといけない。」
バブルで国民も利益を得た
「バブル化して10億円で売れた土地とか建物の利益の4億から5億円は税収となり、政府は歳出という形で老人ホームを創ったり、橋を創ったりしているわけですよ。税金を通じて、バブルを通じて国民を恩恵を受けている。一人5千円ぐらい出すこと(金融機関を税金で救う事)ここまで騒ぐことじゃあるまい。そう思うわけです
政府が税金を通して国民に恩恵を与えるから何をやってもいいといっているわけではなく、政府はもっと長期的な方針のもとに、あんなふうなバブルを作ったような政策を実施するのではなく、もちろんアメリカの要求もあったから少々やむを得ないけど、あんなアメリカの要求に簡単に従うべきではないんですよ。そういう立派な政府を創ろうぜという議論をするべきだ。」
自己責任を今強調するのは誤り
「これまでの護送船団方式というのは、海外に進出するための物だったわけです。これから大いに必要になってくるのは、苦境の中である種の集団主義的な耐え方としての護送船団方式が必要となるわけです。最近言われている自己責任、個人の自立、競争とか、もちろんそれは大事だけど、そういう事がうまくいくためにはある程度の平等性がこの国に満たされていないと単なる弱肉強食になる。自己責任でつぶせるものはつぶせというのを100%強調するのはこの国の在り方としてどこか間違うと思う。」
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西部先生が言わんとしていることは下記の3点だと思います。
・マスコミの感情論にほだされて首尾一貫性のない言論が繰り返されている
・金融機関を自己責任でつぶせと言っているが、そうなるとそれに紐づくあらゆる産業に被害が飛び火する、それでもいいのか?(つまりマクロで考えろよっ!てことです)
・そもそもこのような状況になったのはアメリカの要求を簡単に受け入れる政府を国民が作ってしまったことによる。そうならないために屈強な政府を作る方法を考えるべきでは?
なんでその当時の有権者は西部先生の意見を真剣に検討しなかったんでしょうね。(いまだにこの議論されていないですけどね)
被害を受け続けているのはその後の世代です。我々の次の世代も我々の行動で次第で被害を受ける可能性があるのです。