政府の赤字はみんなの黒字、、、ではなかった
反緊縮派の言う、政府が赤字を増やせば国民の黒字となり国民が豊かになるという論法がよくよく調べると、実は政府が赤字を増やすと、海外が豊かになるという全く逆の帰着をもたらしていることがわかったのでそのことについて書きたいと思います。
1 政府の赤字を吸収しているのは企業
まず、下図は資金循環統計のグラフになります。日本において国民、法人、政府でどの経済主体が赤字(借金を増やしている)か、もしくは黒字(貨幣を吸収している)かを図示したものです。
見ていただくと分かるように1998年から突然企業が黒字主体に躍り出て、国民の黒字を減らし、政府の赤字を吸収する主体となっていることがわかります。
つまり、政府の赤字は労働者の黒字ではなく企業の黒字なのです。
ただ、企業も国のものですので、国民の黒字とも言えなくもないですね。
2 企業は黒字を何に使っている?
次に企業は黒字(余ったお金)を何に使っているのかですが、これが俗に言う内部留保の拡大に使っているのです。内部留保は500兆円規模にも膨れ上がっています。
※これも1998年からの傾向であることに注目してください。
内部留保とは何なのかを大企業と中小企業でグラフを分解したものが下図です。
これを見ると内部留保の多くは大企業の投資有価証券になっていることがわかります。
↓
政府の赤字は主に大企業の投資有価証券になる
この大企業の投資有価証券とは何なのでしょう?
つまり大企業の投資有価証券は、海外投資なのです!
となると、下記のように言う方が正しいことになります。
政府の赤字は主に大企業の海外投資の原資
政府の赤字は大企業によって海外投資で海外の雇用を生み、給料を発生させ、海外を豊かにしていると帰着することがお分かりいただけましたでしょうか?
むろん、中小の現預金の内部留保も多少は増えていますので、政府の赤字がみんなの(労働者ではなく中小企業のちょっとした)黒字である側面はあるでしょう。しかし、圧倒的に多くの政府の赤字は海外に流れ海外の人を豊かにしていると考えられます。(そして政府の赤字がやばいからと言って国民負担率を上げ続けているのです)
※日本企業の対外直接投資は年間20兆円にも及ぶ
海外にお金が流れるとどうなるのか?
しかし、大企業が海外投資する場合、現地通貨で行わなければいけないはずです。
つまり、大企業は儲けた円を現地通貨に交換して投資しているのではないかと推測されます(そして円は現地の人や政府が保有することになる)。これによって、円が売られ海外通貨が買われますので円の価値を下げていると考えられます。
つまり、円安でコストプッシュインフレになっている現在、政府が赤字を掘ると、上記の流れから、通貨価値を下げることに寄与する可能性が高い→より国民生活が物価高で困窮するのでは?とも考えられるのです。
↓1998年に企業が突然黒字主体に転換し国民の黒字を喰う存在になった原因は著書で深く考察しています。よかったらこちらも参照してくださいませ。