「オッサンになってから柔道を始めた人が柔道家であり続ける」ために必要なこと

柔道――古武道から発展してきた、相撲に比肩し得る国民的競技。
現在では、すっかりオリンピック競技としても定着し、世界中で多くの競技人口を誇るスポーツになっています。
 
しかし実際のところ、他のスポーツと比べて「取っ付きやすいか」という点に関しては、これはハッキリと「NO」だと思います。


「オッサンになってからゴルフを始める」――ありますよね。
「オッサンになってからマラソンを始める」――これも結構いらっしゃいます。

しかし、

「オッサンになってから柔道を始める」

…どうでしょう。

あんまりピンとこないというか、なんだったら「ムチャすんな」などと諌められかねない雰囲気すらあります。
酷い場合だと、道場の指導員や関係者サイドから「大人になってから始めても強くなれない」なんて遠回しに拒絶してきたりします。


僕はかねてから、この現状についておかしいと考えておりました。

だって、柔道は「国民的競技」なんでしょ?
だとすれば、子供から大人まで楽しめる、生涯スポーツとしての側面を持っている必要があるのではないでしょうか。

実は僕も大人(20代後半)になってからから柔道を始めた人間です。
そして何とかここまで継続して、子供たちの指導を行う立場にまでなりました。


そこで本記事では、こういった問題点の解決策について、自分自身の経験を踏まえて考えていきたいと思います。
よろしければお付合いください。

大人の柔道初心者が継続できない理由は、指導員の無理解が8割

初っ端から関係者に目を剥いて怒られそうなタイトルで恐縮です。
しかし、残念ながらこれは本当のことです。


心無い指導員になると、上記のとおり、成人初心者の指導そのものを拒否したりします。

或いはここまで極端でなくとも、生徒の方が熱意に溢れているのに、指導員がその気持ちを汲んであげられず、いつまでも「お客さん扱い」していたり。

こういうことを繰り返していれば、そりゃ誰だって辞めたくもなりますよ。


大人になってから新しい動作を習得するのは、非常に難しいことです。
特に、着衣格闘技は体の使い方も独特で、他の武道・格闘技を経験していても、すんなりとはいかないのが普通です。

この「当たり前」を理解してあげて、指導員もまた粘り強くならなければなりません。
というか、僕はそうありたいです。

疲労感でいっぱいになってはいけない

で、あとの残り2割なんですが、これは「本人が頑張り過ぎちゃう」からじゃないかと。

慣れていない動きをする時は、いくら体力・筋力自慢であっても、疲れるのは当然なんですよ。

でも真面目な人は、周りの選手だったり子供たちが普通に練習をこなしているのを見て

自分は努力が足りないんだ。もっと頑張ろう!

と考えちゃうわけですね。

良いんですよ。最初からそんなに頑張らなくて。適当に休んで大丈夫です。
というか、多分明日も早くから仕事があるんだから、そんなに頑張っちゃダメです。

少しずつやっていけば、いずれ動きに慣れてきて、段々と楽になってきます。
練習する度に毎回疲労して、楽しさよりも不快感がそれを上回ってしまったら元も子もないです。

どうせ我々オッサンが、柔道でオリンピックに出場することはありませんから、のんびりやっていきましょう。

力(リキ)む癖をつけない

それと、僕の言う「頑張りすぎる」という言葉には、「力みすぎる」という意味も込められています。

常時力んでいたら、そもそも投技には入れません。なので、まずは抜く方を先に習得しましょう。
初期の段階で力を抜くことを覚えないと、おそらくその人は一生力む癖が抜けません。


更に、初心者で危険なのが

負けたくない

という感情です。


特に「他の格闘技経験はあるけど、柔道は初心者」という人にこのタイプが多いです。

負けたくないがために力を入れすぎ、力を入れすぎているが故に自分の技が出なくなるという悪循環。
結果、ただの力技だったり、返し技に頼るようになってしまうと。
これでは技術の向上はまったく望めません。


勘違いしている人が多いのですが、乱取(スパーリング)は練習であって、試合じゃありません。
投げられていいです。負けていいです。


それよりも、自分の打込や投込で覚えた技を、実戦形式の中でどのように仕掛けていけば良いのかこそを考えましょう。


…もっとも、これに関しても指導員が悪いことが多いです。

レベル差がある人(しかもオッサン)に対して、あまりにも一方的な展開にしてしまうのは良くないと思いませんか?
相手が良いタイミングで技を仕掛けてきたら自ら飛んであげて、「こうすれば技がかかるんだよ」というのを身体で覚えさせてあげることが重要ですよね。

場合によっては、自分自身はそうでなくとも、初心者に一方的な攻めを展開する生徒への指導も必要でしょうね。

まとめ

というわけで、オッサンになってから柔道を始めた人が「柔道家であり続ける」ためには、

・初心者に対して理解のある指導員がいる道場を選ぼう
・頑張りすぎないようにしよう
・脱力をしよう
・練習で勝ち負けにこだわるのはやめよう

ということです。

ほかにも色々とあるとは思いますが、取り敢えずはこれを意識するだけで、続けられる可能性が大幅に上がると思います。


私の所属する吼陽館鈴木道場は、基本的にこの辺りのことはしっかり踏まえた上で指導していますので、「大人から初心者として柔道を始めたいけど、どこにしようか」と悩んでいる方は是非お越しくださいませ。

ちなみに、脱力の具体的な身体操作については、別の記事でご紹介しようと思います。


― 追記 ―

書きました。


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